2009年6月13日土曜日
海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み(N0.5)
世界保健機関(WHO)は6月11日、日本時間午後7時に開催された緊急委員会で「国際保健規則」の改定を議論し「フェーズ6」の引上げを決定した。
6月12日の本ブログでも簡単に紹介したとおり米国の米国疾病対策センター(CDC)は11日東部標準時間午後12時45分に緊急電話記者会見を行っている。
その中で気になったのは、①米国の感染者は予想より増加していることと、もう1点は②「インフルエンザH3ウイルス」の感染リスクについて具体的に言及していることである。その箇所について抜粋すると「インフルエンザH3ウイルスは、高齢者に影響する傾向があって、そこでしばしばかなりの重症を引き起こす。 同ウィルスに関しては、ワクチンという私たちのとって当然一般的予防策がないがゆえに、このウイルスの性格は季節性インフルエンザH1N1に似ていない。 それは「非常に新しいウイルス(very new virus)」である。 我々が報告を受けている事例の57%は5歳から24歳の人々に感染が起きている。そして、その同じ年齢層(年長の子供とヤングアダルト)では41%が入院している。また、人口10万あたりでみた入院率は実際に5歳未満の子供が最も高く、次に高い入院率は5歳から24歳の層である。」
一方、6月11日の朝日新聞はその特集記事で、今世界中に感染拡大しているウイルスは「伝統的ブタ由来インフルエンザH1N1」ではなく、1998年に検出された「3種混合H3N2」に「北米ブタ型H1N2」や「ユーラシアブタ型H1N1」が混合したウィルス(2009年H1N1)の可能性を米国や欧州の研究者等が指摘して点をあらためて紹介している。(筆者注1)
専門外の筆者としてはこれ以上言及しないが、CDCやECDC等のインフルエンザA(H1N1)の起源(possible origins)に関する研究結果等からみて、2009年春から急激に拡大した「新型インフルエンザAH1N1」の実体は「 H1N1 Influenza 2009 (Human Swine Flu) 」であり、そのルーツに「H3ウイルス」があるとすると、今後の展開は急速に入院を要する重症化事例の拡大や高齢者感染や死者数の増加が懸念される。また、すでに英国やわが国など主要国が製薬メーカーに依頼した新ワクチンの開発への影響等も気になる。(筆者注2)
1.わが国の最新情報
2009年6月12日現在の厚生労働省の発表では、日本の新型インフルエンザ感染者数は、549人(6月5日比+147人)である。各都道府県別発生状況は厚生労働省サイト「新型インフルエンザに関する報道発表資料」で確認できる。
2.WHOの最新発表情報
WHOの公表感染者数(2009年6月12日世界標準時7時現在)(update48)のデータに基づき累計確認感染者数が100人以上の国(12か国)のみ紹介する。(多い順に並べ替えた)
全体の数字は74か国(6月11日比+0か国)、累計感染者数は29,669人(6月11日比+895人)(うち死者は145人(6月11日比+1人))
「国名」、「累計感染者数(死者数)」、「6月11日比増加数(死者数)」の順に記載した。(WHOの集計が今回は前日比のため必ずしも各国の最新情報を反映していない)
①米国:13,217人(内死者27人(+10人))(+0人)(6月12日のCDCの公表数は後記のとおりである)、②メキシコ:6,241人(内死者108人(+2人))(+0人)、③カナダ:2,978人(内死者4人)(+532人) 、④チリ:1,694人(内死者2(+0人))(+0人)、⑤オーストラリア:1,307人(+83人)、⑥英国:822人(+0人)、⑦日本:549人(+31人)、⑧スペイン:488人(+131人)、⑨アルゼンチン:343人(+87人)、⑩パナマ:221(+0人)、⑪中華人民共和国:188人(+14人)、⑫コスタリカ:104人(+0人)
3.米国の最新発表情報
米国CDCは毎週金曜日に各州からの集計結果を公表している。
6月12日東部標準時間11時現在の数字は次のとおりである。
52州(6月5日比+0人)、確認感染者数17,855人(6月5日比+4,638人)、内死者45人(6月5日比+18人)である。
1,000人以上の感染者数の6州は次のとおり。
・ウィスコン州:3,008人(死者1人)
・テキサス州:2,049人(3人)
・イリノイ州:1,983人(5人)
・ニューヨーク州:1,160人(13人)
・カリフォルニア州:1,094人(6人)
・マサチューセッツ州:1,078人(0人)
(筆者注1)朝日新聞の記事は元なる研究者の資料名はなく「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メデイア(NEJM)などから作成」としか記述がない。筆者が独自に米国NEJMのサイトを調べてみたが、次の資料が源にあるらしい。
また、EUの感染症監視機関である「欧州疾病予防管理センター( The European Centre of Disease Prevention and Control:ECDC)」が発表した6月4日号“Eurosurveillance”の論文は、(1)400以上の系統のタンパク質相同性解析(protein homology analyses:複数のタンパク質の間に存在する類似性を検出をする解析の一種)結果に基づき、新型インフルエンザが最近時のブタ・インフルエンザから進化していること、(2)5,214のタンパク質の系統発生解析(phylogenetic analyses)結果として、1989年から2009年までの20年間に北米で変異を繰り返してきた際、新型インフルエンザの進化的特徴として、ブタが変異の介在役つまり「鳥、ブタ、人の3種混合ウィルスの混合容器」として機能してきた点を改めて論じている。
(筆者注2)6月12日、米国ヴォイス・オブ・アメリカは30か国以上の政府がスイスの製薬メーカーNovartisにブタ・インフルエンザ・ワクチンを発注した旨報じている。
〔参照URL〕
http://www.who.int/csr/don/2009_06_12/en/index.html
http://www.cdc.gov/h1n1flu/update.htm
http://www.eurosurveillance.org/public/public_pdf/Origins_influenza_A(H1N1)virus_04062009_Supplementary_material.pdf
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