2014年1月26日日曜日

中国人民最高法院がプライバシー保護を踏まえた判決検索データベースにかかるオンライン公表規則を公布

 


中国の最高裁にあたる「人民最高法院(Supreme People’s Court )」は、2013年11月21日付け通達で裁判情報の迅速性、透明性と独立性、個人のプライバシー保護等を担保するとともに国内の全「高級人民法院(32ある)」(筆者注1)の判決文検索サイトを構築するため、早期公表にするオンライン・データベース規則を制定し、2014年1月1日から施行する旨公布した。

このニュースは、筆者は1月24日に米国の大手ローファーム(Hogan Lovells)のニュース(筆者注2)で知ったのであるが、わが国においてこの分野に詳しいとされる特許庁、京都大学国際法政文献資料センター神戸市外国語大学学術センター図書館 等においても紹介されていない情報であることから、本ブログで取り上げた。

1.人民最高法院の規則通達の要旨
最高人民法院关于 人民法院在互联网公布裁判文书的规定(2013年11月21日最高人民法院审判委员会第1595次会议通过)(以下「規則」という)の要旨を概観する。なお、条文番号は筆者が追加した。

○規則の下で、国民の情報の入手権、司法の参加ならびに司法手続きの監視権を保証するため、全人民法院は全判決文(中国全体で3,000以上)につき判決日の7日以内にオンラインで公布し、一部例外を除き裁判の当事者名を本名で掲載することを義務付ける。(第8条)

○規則は、国家機密(涉及国家秘密)、個人のプライバシー(个人隐私的)、未成年が関与した刑事事件(涉及未成年人违法犯罪的)、調停を介した和解事件(以调解方式结案的)、その他オンラインでリリースすることが適さない事件(其他不宜在互联网公布的)については例外としてオンライン・データベースには掲載しない。(第4条)

○さらに、規則第7条は第4条に特に定める以下の例外の場合を除き、国民の知る権利に基づくアクセスを保証すべく裁判当事者の本名を保持する旨定める。
・婚姻関係の事件および家族法事件の当事者名(婚姻家庭)、遺産紛争事件当事者および法定代理人名(继承纠纷案件中的当事人及其法定代理人)
・刑事事件における被害者および法定代理人(刑事案件中被害人及其法定代理人)、証人(证人)および鑑定人(鉴定人)の氏名
・3年以下の刑を言い渡され、かつ常習犯でない刑事事件の被告の氏名(被判处三年有期徒刑以下刑罚以及免予刑事处罚、且不属于累犯或者惯犯的被告人)

○規則は、国民の知る権利とプライバシー保護のバランスを配慮すべく考慮されている。第7条はオンラインの判決文において次の情報は削除すべき点を義務付ける。
・自然人の自宅の住所(自然人的家庭住址)、電話番号など通信情報(通讯方式)、身分証明番号(身份证号码)、金融機関の口座番号等(银行账号)、健康状態その他の個人情報(健康状况等个人信息)
・未成年者に関する情報(未成年人的相关信息)
・法人またはその他の組織の金融機関口座番号等情報(法人以及其他组织的银行账号)
・企業機密情報(商业秘密)
・その他、公開が不適切といえる情報(其他不宜公开的内容)

○上記にあげた例外項目と情報を除き、オンラインで公開される判決情報は、裁判の関係当事者間で扱われるバージョン内容と同一である。

2.参考情報
(1)オンライン判決データベース(中国裁判文书网)

(2)11月29日に最高人民法院がメデイア等に対し行ったQ&A(最高法院就在互联网公布裁判文书的规定答记者问) 中国語のみ


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(筆者注1)高級人民法院は、省・自治区・直轄市などに設置されている。詳しくは、「中国民事裁判制度の概要」">>、「中国ビジネス・ローの最新実務 Q&A」等を参照されたい。

(筆者注2)Hogan Lovellsの英文記事では、法定代理人等規則の内容を正確に翻訳していない箇所もあり、筆者の責任で原文に基づき補足した。


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