2010年7月16日金曜日

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第4回)

 
  6月24日付けの本ブログ6月29日および7月9日のブログで、世界的に注目されている歴史的海洋汚染事故である米国「ディープウォーター・ホライズン(Deepwater Horizon)」 の半潜水型海洋掘削装置(rig )爆発事故とその後の大規模な原油流失について連邦監督機関の対応や欧州議会総会での欧州委員会エネルギー担当委員の証言を中心に3回にわたりとりあげた。

 今回は引き続き、ルイジアナ連邦地裁判決が出した連邦政府が発布した6か月間の掘削猶予モラトリアムに対する仮差止命令の意義や国土安全保障省合衆国沿岸警備隊(USCG)、連邦保健福祉省・食品医薬品局(FDA)の対応等について解説するつもりであった。

 しかし、ここに来てこの問題が長期化し米国経済に大きなマイナス材料となることを予想させる情報が筆者の手元に入ってきたので急遽取り上げる。

 すなわち、7月14日に連邦金融監督機関である連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、財務省通通貨監督局(OCC)、財務省貯蓄金融機関監督庁(OTS)、全米信用組合管理機構(NCUA)および州銀行監督機関協議会(CSBS)が連名でディープウォーター・ホライズン事故で影響を受ける金融機関やその顧客保護のための支援策を表明したことである。

 連邦機関が、大規模災害時にこのような金融支援策を打ち出すことは今までも珍しくない。また、本文で紹介するとおりその内容は決して即効性があるとは思えない。金融監督機関の姿勢を表明する程度かも知れないが、逆にこのような定型的な施策しか打ち出せないことが米国の悩みの証左といえるかも知れない。


1.取組みの背景
 金融監督機関は金融機関が顧客とともに行動し、この状況下で影響を受ける借り手を支援し、あわせて結果的に地域コミュニティに良い影響をあたえる手段を検討することを強く促す。ガルフ・コーストに沿った地域ではかなりのビジネスに混乱や損害が発生した。この大規模災害に対応して、金融機関は顧客やコミュニティの重要な金融ニーズに合致すべく各種手段をとりうる。

 この点で、金融監督機関は金融機関に対し、今回の大規模災害により影響を受けたと証明する顧客に代替手段を配慮するよう奨励するものである。その代替手段とは次のようなことを含む。

2.金融機関が取るべき顧客支援策例
①貯蓄性定期預金(CD)の満期前解約に対するペナルティ処分(early withdrawal of savings)、ATM手数料および住宅ローンの返済遅延に対して課される遅延支払金(late payment charge)の自主的撤回。

②融資希望者において安全性および健全性に合致する場合、可能な限り貸付決定の実行。

③BP社への損害賠償請求を見越した融資債務者に対する融資実行や融資契約の再設定。

④良識的な銀行の行動に合致する一定の借り手に対する与信条件の緩和や手数料の引下げ。

3.これらの対応による金融経営面の影響に関する金融検査官の検査内容
 これらの手段は顧客が財政的に回復に寄与するかも知れないし、また彼ら自身債務を履行する上で良い立場におくことになるかも知れない。被害を受けている地域では、これらの努力が地域社会の健全性や金融機関とその顧客にとって長期的利益に貢献するといえる。
 債務契約の修正や返済条件の緩和措置を考慮して、金融検査官は金融機関が出来る限り迅速に損失を推計し、適切に与信損失を認識するよう期待するであろう。

 その上で、検査官は金融機関が内部の融資に当たっての融資格付け方法の完全性を保持しつつ、影響を受ける与信の保持、適切な未収利息計上の地位、影響を受ける与信を保持しているかを検査するであろう。

 もし影響を受ける金融機関の自己資本比率において重大な低下が起こることが見込まれるときは、金融検査官は金融機関の取締役会が時宜にあった資本増強を実行させる十二分な資本回復経計画をたてるかにつき考慮することになろう。

[参照URL]
http://www.fdic.gov/news/news/press/2010/pr10155a.html

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