2010年8月4日水曜日

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第5回)

 
 6月24日付けの本ブログで米国連邦環境保護庁(U.S.Environmental Protection Agency:EPA)は「メキシコ湾原油流失に対するEPA対応」サイトを立ち上げ、同サイトでは、まず「BP社による原油分散化剤(dispesants)の安全性、環境面から見た解説」を行っている旨紹介した。
 その際に、EPAはBP社が使用する原油分散化剤は「2-Butoxyethanol」 および「2-Ethylhexyl Alcohol)」と説明していた点につき、筆者もまったくの専門外ではあるとはいえ、その危険性についてほとんど認識せずにEPAの情報開示は十分に行われているとコメントしていた。

 しかし、為清勝彦氏が主催・翻訳する2010年6月11日付けのブログ(Beyond 5 senses)「メキシコ湾に撒かれている分散剤コレキシット(Corexit)の有毒性」(筆者はマイク・アダムス(米国のヘルス・レンジャー)や6月14日付けのプロジェクト綾氏のブログ「原油流出:懸念される『分散剤』の環境汚染」を読んで唖然とした。

 後者によると、米国連邦環境保護庁(EPA)は「コレシキット(Corexit) 9500 およびCorexit 9527」の化学成分につき6月8日に公表している。そもそも薬品の化学成分の内容は最もレベルの高い企業秘密であり、EPAもやっと聞き出したようである。

 その大規模な環境汚染問題とともに(1)2010年6月8日、BP社の株主2名によるメキシコ湾のディープウォーター・ホライズン原油流失事故発生前における株主への情報開示を意図的に怠ったとして、BPグループのCEOであるAnthony  Bryan "Tony" Hayward 等を被告とする告訴(クラス・アクション)が行われ、また(2)ルイジアナ州の牡蠣(かき)採取業者グループ(oystermen)は2010年6月16日、ルイジアナ東部地区連邦地方裁判所に「実質的損害賠償(actual damages)」および「金額不特定の懲罰的損害賠償(unspecified amount of punitive damages)(筆者注1)」の告訴(クラス・アクション)を行った(身体的被害訴訟ではない)。

 さらに(3)6月26日にはBP社とCorexitの製造メーカーであるNalcoに対し、2人のガルフコースト住民や資産所有者によるBPが多量に使用した原油化学処理剤(chemical dispersant)によるはじめての「吐き気(nausea)」、「めまい(dizziness)」、「息切れ(shortness of breath)」等直接的身体疾患を理由とする申立がアラバマ南部地区連邦地方裁判所(クラス・アクション)に起こされた。

 今回のブログは、(1)日常生活の中で、わが国の一般メディアではほとんど報じられていない石油分散剤の有毒ガス化の危険性や我々自身が安易な化学物質汚染を引き起こしている日常性の怖さを関係レポートやブログに基づき解説し、(2)前記3つのクラス・アクション裁判の訴状の内容を中心に解説する。
 なお、6月中旬で州および連邦裁判所への原油流失事故に伴うBP社等の告訴は230件以上あるとされており、アラバマ南部地区連邦地方裁判所だけで見てもBP社関連の訴訟は環境破壊、土地への不法行為、財産物への損害賠償事件が数多く係属されており、その意味で裁判籍問題も含め裁判上でも多くの課題を生じさせているといえる。(筆者注2)

1.3つのメキシコ湾原油流対策の人体への直接的影響を論じた小レポート」
レポート1「メキシコ湾のBP石油噴出の有毒ガスから身を守る方法(2010年7月10日)」、レポート 2「メキシコ湾の石油漏出対策に関する17の疑問(2010年6月19日)」、レポート3「石油分散剤コレキシット(Corexit)の有毒性(2010年6月11日)」のインパクトについて述べておく。

 これらの小レポートは、いずれも為清勝彦氏が米国の関係者のレポートを訳したものである。同氏のメキシコ湾の原油流失事故に関するブログはこの他にもあるが、ここでは代表的なものを取り上げる。
とりわけ、[レポート1]によると「今回関係者が焦点を当てている有毒ガス発生のメカニズムは1989年3月24日アラスカ州プリンスウィリアムサウンドにおける「エクソン・バルディス号 」座礁事故においてエクソンが使用したもので何千人もが被害を受けた。当時の清掃作業に直接関わった人で、今も存命している人はいない。平均死亡年齢は51歳だった。エクソンは、苦しむ人々に医療費を払わずに済ませている。
このあまり役に立たないが非常に有毒な分散剤は、イギリスでは禁止されているが、BPはEPA(環境保護庁)の求めにもかかわらず、使用中止を拒んでいる。・・
汚染物質としては、硫化水素、ベンゼン、塩化メチレンである。かなり有毒だ。・・
2つの防護手段がある。活性炭粉を塗布したマスクと、室内用の空気フィルターである」と説明されている

また、[レポート2](筆者は米国のヘルスレンジャー:マイク・アダムス)では、訳者は次のような極めて現代資本主義社会の根本的問題を投げかけている。「マイク・アダムズが訴えているのは、企業による政府の支配の問題である。我々は、国営など公共事業は非効率であり、「自由競争」の私企業こそが素晴らしいという思想を刷り込まれてきた。確かに公共事業の職員には態度の悪い人が多いため、実感的にも受け容れやすい発想だった。だが、一方で、厳しい競争にある私企業は「お客様は神様」と態度は柔らかいが、笑顔で消費者を騙す。つまり、エラそうな態度に嫌な思いをするのと、おだてられて騙されるのと、どっちが良いかという究極の選択に過ぎず、実は問題の本質は、民営か公営かではなく、競争の有無でもない。」
本文で紹介されている米国政府等の対応の問題点は、米国の先進的とされるメディアの視点をさらに超えた批判的内容といえよう。

 なお、英国海洋管理機関(Marine Management Organisation:MMO)(筆者注3)は2010年5月18日に「英国における石油流失時処理剤の使用認可一覧」を公表している。その最終10頁で“Corexit 9500”は1998年7月30日に本一覧から削除されている。これに基づき欧米の関係者が英国では“Corexit 9500”の使用が禁止されていると述べているのである。

[レポート3]は、まさに今回取り上げている「石油分散剤コレキシット(Corexit)の有毒性」についての危険性問題である。
その中で特徴的に感じた点は「住まいの洗剤、化粧品、園芸用品など、全般的にアメリカの大企業では日常製品に含まれる有毒化学薬品は危険な秘密のままである」と言うくだりである。わが国との比較において訳者の為清氏は「日用消耗品の危険物質の日本国内における表示義務については、よく調べたわけではないが、例えば「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」という労働省の告示に次のような条項がある。その第5条では「前2条の規定は、主として一般消費者の生活の用に供するための容器又は包装については、適用しない。」とある。
第3条(譲渡提供者による表示)は「 危険有害化学物質等を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、当該容器又は包装(容器に入れ、かつ、包装して、譲渡し、又は提供する場合にあっては当該容器。次条において同じ。)に、当該危険有害化学物質等に係る次の事項を表示するものとする。以下略」
第4条(譲渡提供者による表示)「危険有害化学物質等以外の化学物質等を容器に入れ、又は包装して、譲渡し、又は提供する者は、当該容器又は包装に当該化学物質等の名称を表示するものとする。」
この点につき、為清氏いわく「確かにシャンプーや歯磨きに髑髏マークの警告が付いていると不快な思いをするので、一つの「やさしい」心遣いであろう。」と皮肉られている。

 また「ヘルスレンジャーの指摘する通り、有害化学物質で髪を洗いながら、メキシコ湾の石油災害を心配するのも変な話である。確かに、家庭排水から下水道を通じて河川や海を汚すことと、飛行機で空中から有害物質を散布することに、本質的な違いは無いだろう。」と言う言葉が強く印象に残った。

 とりわけ筆者自身、石油分散剤の気化による有毒ガス問題についてはほとんど認識がなかった。

2.牡蠣業者による損害賠償請求(クラス・アクション)および原油化学処理剤(chemical dispersant)による身体被害者からの告訴(クラス・アクション)

(1)2010年6月16日、ルイジアナ東部地区連邦地方裁判所への実質的損害賠償(actual damages)および金額不特定の懲罰的損害賠償(unspecified amount of punitive damages) 請求
・原告はスコット・パーカー(Scott Parker)、スコッチ M.デュファレン(Scottie M. Dufrene) )、ジェス・ランドリィ(Jesse Landry)、レオン・ブルネ(Leon Burunet)は個人およびクラス・アクション代理人として告訴した。

・起訴状によると“actual damages”として、「原告の経済的ならびに補償(economic and compensatory damages)として500万ドル(約4億3,500万円)以上」とある。

・訴因(cause of action )は過失(negligence)である。項目23(起訴状8頁以下)の内容に基づき補足する
原告が集めた情報および確信にもとづき、全被告は次のとおり直接または間接的に「Corexit® 9500」の空中散布を行った。
a.原油そのもの以上に有毒な(toxic)化学物質を散布した。
b.メキシコ湾の浄化と原油の除去にかかる財政負担の軽減化を図るため100万ガロンになる大量の有害化学物質を散布した。
c.海底に有害物質を取り込ませることでメキシコ湾の生態系システムを恒久的に変えた。
d.化学物質により数百人の湾内の清掃作業員に疾患を引き起こさせた。
e.被告のその他の原因となる行為については証拠開示手続および審理公判で明らかにする。

(2) 6月26日、アラバマ南部地区連邦地方裁判所に対するBP社とCorexitの製造メーカーであるNalcoに対し、2人のガルフコースト住民や資産所有者によるBPが多量に使用した原油化学処理剤(chemical dispersant)Corexit9500に関するはじめての吐き気(nausea)、めまい(dizziness)、息切れ(shortness of breath)等直接的身体疾患を理由に基づくクラス・アクション請求

・原告はGlynis H. Wright(19歳) と Janille Turner(19歳) の2人であり、事件番号「1:2010cv00397」である。

・原告側弁護士事務所はアラバマ州都モントゴメリーの大手法律事務所である「ビーズリー・アレン・ロー・ファーム(Beasley, Allen, Crow, Methvin, Portis & Miles, P.C.)」である。
なお、本事件の起訴状につき筆者なりに調べてみたが、見出しえなかった。しかし、同事務所のサイトでは簡単に見つけられた。同裁判所の電子有料検索サイトである“PECER”によることも考えたが時間と手間を惜しんだ。起訴状原本の検索方法としては、弁護担当のロー・ファームのウェブサイトに当たるのが一番近道であるという良い経験であった。

・訴因(causes of action)の内容は次のとおりである。
第一訴因は「過失(negligence)および危険性の放置(wantoness)」
第二訴因は「私的生活妨害(private nuisance)」(筆者注4)
第三訴因は「過去および現在継続する不法侵害(trespass)」(筆者注5)
本件では原告は“trespass to land”に 関しては「違法な土地リースまた恐喝的リース」および「原告の身体や合法的に占有する財産への有害な化学物質の分散剤の被曝(exposure)」である。
第四訴因は「過去および現在継続する暴行(Battery)」(筆者注6)

3.6月8日、ルイジアナ東部地区連邦地方裁判所に対するBP社の株主によるBP社や同社「安全性・倫理・環境保全委員会」等に対するクラス・アクション
・原告代表は、Lore GreenfieldとAlan R. Higgsの2人である。
・事件番号:「10-cv-1683」(告訴状原本は本件に関するlexisnexisの解説記事からリンク可)

・本訴訟の意義と内容(nature of the action)
本訴訟はクラス・アクションであり固有の手続が必要となる。その一例が“nature of the action” である。連邦民事訴訟規則第23条はクラス・アクション固有のルールを定めている。(筆者注7)
・わが国ではクラス・アクションの起訴状自体を直接読むケースが少ないので参考までに概要を紹介する。

1.本クラス・アクションは、2008年2月27日から2010年5月12日の間(クラス期間)、BP社の普通株式(BP sahares)および「米国預託証券(American Depository Receipts:ADR)」(筆者注8)の全購入・取得者を代表して被告の連邦証券法の違反に基づく包括的損害の回復をもとめるものである。
2.各ADRは6つのBP社株からなる。
3.本訴は、被告の安全性や運営の完全性とりわけ深海での原油掘削の取組みについての説明により誤った情報を得たBP社株やADRの購入した投資家を含む。
4.クラス期間を通じて証券取引委員会(SEC)、鉱物資源管理局(Minerals Management Service:MMS)」に記録された資料およびその他の公的文書によると、被告はBP社について(a)メキシコ湾での原油探査や生産につき安全かつ信頼性がある方法を用い、(b)深海掘削技術を持ち、(c)深海掘削にかかる周知の
流失などリスクその知識、手続を持つと述べてきた。
5.本起訴状の申立にかかわらず、被告はBP社の事業運営はとりわけ原油流失やその結果の関するリスクに関し不適切かつ安全性に欠くことを認識していた。

・被告:
BP社、BP explorastion & production inc.、CEOのAnthony B. Hayward、CFOのBryone E.Grote、探査・生産担当執行役員のAndy G. Inglis、BP社の「安全性・倫理・環境保全委員会(BP environmental assurance committee of the board :SEEAC)のメンバーであるCarl-Henrie Svanberg、Paul M.Anderson、Anthony Burgmans、Cynhia B.Carroll、William Castell、Erroll B.Davis、Tom Mckillop、およびBP社の日々の運営監視担当役員であり、連邦議会で証言したH.Lamar Mckay等である。

 特にBP社の「安全性・倫理・環境保全委員会(BP environmental assurance committee of the board :SEEAC)の現メンバー全員(非常勤役員)が被告となっている点で世界的企業における名目だけでない対外的責任の重さが理解できよう。

 また、その法的責任を問う根拠として起訴状ではBP社の「2009年度年次報告書(BP annual Report and Accounts 2009)」の中の“Board performance and biographies”の2頁目に記載されている「BP社のガバナンス概要図(BP governance framework)」を起訴状に転記している。このことからもSEEACの責任を重要視していることは間違いない。

・クラス・アクションの対象となる申立内容
A.BP社の米国における刑事事件における安全面の過失
 今回の申立内容は、本年4月20日に発生した爆発事故やその後の原油流失だけでなく2005年テキサス市で発生、15人が死亡(170人が負傷し、10億ドル以上の救済費用)した事故や2006年アラスカ州プルドー湾(Prudhoe Bay)の操作パイプラインからの流失事故等、過去のBP社の掘削施設等における原油流失、火災、爆発事故等についても対象としている。

B.BP社の業務運営の安全性に関する誤った一般イメージ

C.BP社の沖合いの原油掘削に関するリスクの無視
噴出防止バルブの安全性等に関する懸念の無視、掘削にあたり十分なセメンチング(cementing)やパイプ保護のためのケーシング(casing)の無視(筆者注9)

D.被告CEOやCOO等のBP災害発生後の被害拡大の容認

E.市場に対する詐欺的情報提供
「2008年度BP社の戦略成果発表」「2008年度年次報告」および「BP社行動規範」等における株式市場を故意に(scienter)騙す行為を行ったことは「1934年証券取引法」に違反する行為である。

F.BP社の株主やADR購入者に対する損失の原因発生責任
その結果、事故発生時に60ドルしていたBP社の株価は7月初めには約30ドルと約半分に下がり株主やニューヨーク証券取引所やロンドン証券取引所の普通株主やADR購入者に多大な損失を生じさせた。

・本訴の原告代表の届出締め切りは、2010年7月20日である。


(筆者注1) 6月18日付けの“Bloomberg Businessweek”の記事では“unspecified punitive damages ”と記載されているが専門用語としてはおかしい。筆者は独自に関係サイトで調べてみたが起訴状原本の以下の記述等から見て“unspecified amount of punitive damages”が正しいと思う。
JURISDICTION AND VENUE:This Court has jurisdiction over this class action pursuant to 28 U.S.C. §1332 (d) (2) because the matter in controversy exceeds the sum or value of $5,000,000, exclusive of interest and costs and it is a class action brought by citizens of a state that is different from the state where at least one of the Defendants is incorporated or does business.

(筆者注2) アラバマ南部地区連邦地方裁判所に現在係属しているデイープウォーター・ホライズン・リグ事故に関する訴訟については、筆者は米国訴訟検索サイトの“Justia .com”で調べた。

 また、米国連邦裁判官会議(U.S. Courts)が8月3日に発表した連邦裁判所の裁判管轄を決める「広域係属訴訟司法委員会(Judicial Panel on Multi-District Litigation)に関し、メキシコ湾原油流失事故に伴う大規模裁判移送・統合等に関する意見書(証拠開示手続(discovery)の重複、無節操な正式事実審理前手続(pre-trial rulings)の防止、訴訟当事者・弁護士や司法関係者の人的資源の節減の働きかけ)や7月29日付けの Bloomberg.co.jpの記事「BPと米政府や原告:流出事故関連の裁判、最初の審理場所めぐり対立 」を参照されたい。

(筆者注3) わが国の海洋政策研究財団の論文「 平成21年度総合的海洋政策の策定と推進に関する調査研究各国および国際社会の海洋政策の動向報告書」(2010年3月)37頁以下で同法制定の経緯や海洋管理機関の活動内容につき次の通り解説している。英国の海洋開発や環境戦略が鮮明に書かれており、米国の取組みと比較する上で貴重な論文である。
「海洋管理機関は、今回制定される海洋法に基づいて設立され、イギリス海洋管理において主導的な立場をとり、環境・食糧・農村地域省大臣を通して議会への報告任務を持つ機関である。また、環境・食糧・農村地域省大臣は、海洋管理機関が持続可能な開発の達成に寄与する様、管理局に対し指針(guideline)を出し、大臣はこの指針の準備において、海洋管理機関の機能と資源を勘案して、海洋管理機関と協議する義務がある。
海洋及び沿岸アクセス法は、すでに競合する海域利用の調整と今後の新たな海域、および海洋資源利用の実施を戦略的また包括的に行う事を目的として制定された。 単一の法制は、海洋における活動を管理する為これまで重層化していた開発に関する手続きを環境アセスメント等の管理制度の質を下げることなく効率化する。さらに、同法制の利点として、今後気候変動等の環境変化によって生じる海洋の利用・管理への影響とその対策に、政府の柔軟な対応を促す事が可能になる。また、沿岸域管理と直接関連する事項として、同法制において「沿岸へのアクセス」という項目を新たに加え、散歩等による国民の沿岸地域環境への触れ合いを促す事を政策の重要な目的として提示している。

 なお、為清氏の訳ではMMOを「海務局」とされている。しかし、MMOのHP“About us”では「2009年海洋および沿岸アクセス法(Marine and Coastal Access Act 2009)」に基づく特定の省庁の直下には属さない無所属公的行政機関(NDPB: Non Departmental Public Body:NDPB)として運営され、政府から一定の距離を保った自律的組織であるのが特徴」とされている。
NDPBの意義ならびにその法的解説や訳語につき、わが国では正確なものが少ない。
「独立行政組織」、「独立行政法人」「非省公共団体」等と正確な意義も含め遅れている。

(筆者注4)米国法に詳しくニューヨーク州弁護士でもある平野晋中央大学教授の説明「アメリカ不法行為法の研究」は次のとおりである。「ニューサンス」(nuisance)の典型事例は、隣地の被告の運営する家畜飼育場からの悪臭や、空気や水の汚染により、近隣の土地に居住する原告が権利侵害を受けたと主張するものである。損害賠償を請求するのみならず、当該活動の差止を求めるインジャンクション請求が伴う場合も多い。すなわち「 ニューサンス」とは、近隣の土地使用および享受に於ける利益へのアンリーズナブル(理不尽)な侵害である。

(筆者注5) 不法侵害(trespass)は、①trespass to land(土地への不法侵害)は、土地の「占有権」(possession)の排他性を保護法益とすると、②「動産」(trespass to chattels)即ちpersonal property(人的財産・動産))の侵害の両者を含む概念である。前述の平野論文参照。

(筆者注6) 人を殴り、または唾を吐き掛けた場合のような、他人への違法な接触を対象とする類型が、「battery」(暴行)である。前述の平野論文参照。

(筆者注7) 連邦民事訴訟/規則第23条の仮訳を日弁連の消費者問題対策委員会が2007年6月にまとめた「アメリカ合衆国クラスアクション調査報告書」「資料1」として、弁護士の大高友一氏が仮訳されている。

(筆者注8) “ADR”とは「外国企業・外国政府あるいは米国企業の外国法人子会社などが発行する有価証券に対する所有権を示す、米ドル建て記名式譲渡可能預り証書」である。ADRの預かり対象は、通常は米ドル以外の通貨建ての株式であるが、制度的にはあらゆる種類の外国有価証券でも可能である。」野村證券「証券用語解説集」から抜粋。
 
(筆者注9)「 セメンチング」や「ケーシング」の石油や天然ガス掘削における安全性や生産性向上面での重要性について、東京大学エネルギー・資産フロンテアセンター長縄成実氏「最新の坑井掘削技術(その11)」(石油開発時報No.158(2008年8月号))が素人にも分かりやすく解説されている。

[参照URL]
[石油分散剤の有毒ガス化の危険性]に関するもの
・http://tamekiyo.com/documents/healthranger/toxicair.html
・http://tamekiyo.com/documents/healthranger/bp17q.html
・http://tamekiyo.com/documents/healthranger/corexit.html
・http://eco-aya.info/energy-news/67-2010-06-14-06-58-23

[メキシコ湾の牡蠣業者による損害賠償請求(クラス・アクション)]
・http://www.courthousenews.com/2010/06/17/Disperse.pdf(告訴状原本)

[原油化学処理剤Corexit9500に関するはじめての吐き気、めまい、息切れ等直接的身体疾患を理由に基づくクラス・アクション]
・http://www.beasleyallen.com/newsfiles/07%2026%202010%20-%20Wright%20Complaint.pdf(告訴状原本)

[BP社の株主等によるクラス・アクションの解説レポート]
・http://www.lexisnexis.com/Community/emergingissues/blogs/gulf_oil_spill/archive/2010/06/13/shareholders-pursue-class-action-suit-in-eastern-district-of-louisiana-for-misleading-investors-over-deepwater-horizon-gulf-oil-spill-by-bp.aspx(告訴状原本へのリンク可)

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