2009年5月20日水曜日

WHO事務局長マーガレット・チャン氏が新型インフルエンザ大流行について再度警告

 
新型インフルエンザA(H1N1)の弱毒性について、わが国のメディアが悪しき影響を受けているが、感染者数が圧倒的に多い米国の疾病予防管理センター(CDC)において“Novel Infuluenza A(H1N1)”(筆者注1)と言う表現やその危険性が季節性インフルエンザと同程度といった解説が定着し始めている。CDCが持つ世界的な影響度から見るとこのような評価を現時点で出すことはいかがと考え、参考として欧州疾病予防管理センター(ECDC)や欧州委員会「健康・消費者保護総局(the Directorate General(DG) for “Health and Consumers”)」(筆者注2)等の関係サイト等を見てみたが、”novel“は国別感染状況の地図の標題で出てきたのみである。
 その問題はさておき、本題に入る。5月18日にWHO事務局長マーガレット・チェン博士(Dr Margaret Chan Directorate-General of WHO)が第62回世界保健機構(WHO)総会(Sixty-second World Health Assembly)におけるスピーチの内容は、国際機関の立場や現実の世界が今取組むべき多くの課題を取り上げており、また世界的に深刻な大流行の兆しを見せる新型インフルエンザ問題について医療専門家としての警告をならすものである。(筆者注3)
 今回の総会の主たる議題がまさにフェーズの引上げの是非であり、英国やわが国の主張である引上げ反対とWHO事務局の意見調整である点は報道されているとおりであろう。
 わが国の関係者は改めて強い関心をもって世界的視野の問題を理解すべきと考え、専門外ではあるが仮訳を試みる次第である。


〔スピーチの仮訳〕(筆者の責任において補足的な訳語を追加した)
過去30年以上、世界は平均的により豊かになった。人々はより寿命が延びより健康的な生活を楽しんでいる。しかし、これらを助長した傾向には残忍な現実が隠されている。今日、同一国内や国家間における所得レベル、就業機会、健康状態の差はこの最近の歴史上見ないほど拡大している。我々の住む世界は均衡が取れていないし、特に健康の問題では最もこのことは顕著である。現在の経済の下降は豊かさや健康を低下させるが、とりわけ開発途上国ではその影響は最も大きいものとなるであろう。

人間社会は常に「不公平さ」で特徴づけられてきた。歴史は、「泥棒男爵」(筆者注4)とロビン・フッドといった相反する存在を持ってきた。しかし、今日における違いは、これらの不公平がとりわけ保健・医療分野の利用する権利に関し致命的になったことである。

世界は、2000年9月に189か国の代表者が国連総会において、その共同責任において「ミレニアム宣言」(筆者注5)とその「最終ゴール」を保証したことを感謝している。そのゴールの内容は、現実の世界がすばらしい公平さを導くため極めて重要な方法である。
世界中の人々が、健康推進に取組んでいる各国や国際機関の担当官が医療問題について優先させたことを感謝している。このことは、世界の医療問題についてより公正さの確保への最も確実な道につながる。

公衆衛生は、WHOの「『健康の社会的決定要因』委員会(the Commission on Social Determinants of Health)」で取り上げられたことに感謝されるべきである。私は同委員会の研究結果に全面的に賛成する。健康分野における成果に大きなギャップが不ぞろいであってはならない。

繰り返し言うが、健康問題はこの現実世界を形作る上でかならずしも重要な問題ではない。健康政策は経済利益の見通しと常に相対立し、健康問題は何度も経済的利益の切札にされてきた。何度も言うが、健康問題は近視眼的かつ他の分野の狭い焦点での政策から矛先を向けられてきた。
 
健康に関する平等性は、生きることと死ぬ方法の問題である。HIV/AIDSの大流行は最も可視的かつ測定可能な方法でこのことを教えてくれた。我々は危機が発生した時にまさに平等の意義を理解する。

世界は多くの危機や戦線に直面している。
2008年に我々の不完全な世界は、短期間に燃料危機、食糧危機や金融危機といった問題を提供してきた。気象変化の影響問題は強制的に軽視されすぎてきた。これらの危機は、国家、金融市場、経済や貿易システムにおいて急進的に相互依な形で起きた。

これらの危機は世界的規模で起き、開発途上国および弱い人々を最もひどく襲った。これらの貧しい世界を放置するすべての脅威は危機的にバランスを欠いている。

欠陥政策の結果は、フェアプレイの原則に基づき慈悲がなく例外を認めない。我々が見てきたように金融危機は急速にある国から他国に、また国内のある部門から他の多くの部門に感染した。経済運営がうまくいっており、不良資産を買わずに、また過度な金融リスクを引き受けなかった国でさえもそのような結果に悩まされている。同様に温室ガス排出権の貢献国は温暖化等気候の変化で第一にかつ最も強烈な打撃を受けている。

今、我々は、別の玄関先に極めて世界的な感染問題:21世紀の初めてインフルエンザの大流行の見通しを持つことになった。

5年間の長期にわたり家畜農場における高度の病原性鳥インフルエンザ(H5N1)(散発的に発生し人間においてしばしば命取りになる)の大流行を予期し、高い致死率を条件づけてきた。その結果、世界はよりよく準備を進めまた大きく脅えてきた。

今、我々は極めて高い大流行の可能性も持つ新型インフルエンザA(H1N1)ウィルス株が世界の端から端まで現れることを知った。鳥インフルエンザと異なり、新型インフルエンザ(H1N1)は人から人へと極めて簡単に感染し、1国内で一度感染すると急速に感染し、また新しい国へ感染が広がるのである。我々は引続きこの感染パターンを予期しなくてはならない。

鳥インフルエンザと異なり、H1N1は現時点ではメキシコを除き死者が極めて少なく、緩やかな疾患を見せている。我々はこの感染パターンが続くことを期待している。

定義上明らかなとおり、新たな疾患(diseases)は発病した時に十分理解されにくい、これは原因病原体がインフルエンザ・ウィルスの場合とりわけ正しい。インフルエンザ・ウィルスは最終的には“moving target” (筆者注6)である。その行動は不可解で予見が困難である。大流行の行動もウィルスが引き起こすがゆえに予見が難しい。現状どの程度ウィルスが進化しているかについて明言できる者はいない。

H1N1ウィルスの発生は政府、保健担当大臣、WHOにおいて正しい決定や極めて科学的に不確定な中で行動をとるよう圧力を生み出した。

4月29日、私はインフルエンザ大流行恩フェーズを「4」から「5」に引上げた。現在、なおフェーズは「5」である。

このウィルスはわれわれに猶予期間(grace period)をくれたが、この猶予期間がどのくらい続くのか知るすべがない。まさに今が嵐の前の静けさなのか誰も明言できない。

現在、南半球の数カ国(これらの国では季節性インフルエンザの流行が勢いづく)でウィルスの存在が確認された。我々は人間同士で感染しつつある新型インフルエンザと他のウィルスの相互作用について検討すべき個々の理由を持っている。

さらに我々は、「H5N1鳥インフルエンザ」が数カ国の家畜農場で明らかに確認されていることを忘れてはならない。この鳥インフルエンザ・ウィルスがH1N1とともに多くの人々にどのようなかたちで影響を与えるかにつき明言できない。

我々は「フェーズ5」への引上げに関し、多くの準備ステップを踏んだ。公衆衛生部門、研究所、WHOのスタッフや関係業界は24時間働いている。

大流行の特性の定義づけすることは、影響を受けるであろう世界人口の普遍的脆弱性を意味する。世界中すべての人に感染することはないであろうが、ほとんどすべてに人にリスクはある。

世界68億人の人々に行きわたるインフルエンザ抗薬やワクチンの製造能力は限りがあり、十分ではない。各国は近視眼的に不十分な方法を選択することでこの貴重な医療資源を無駄遣いすべきでない。

本日朝に聞かれたとおり、我々は新型ウィルスに関するリスク調査の強化に関するいくつかの質問に対する答えを得ようと努め、また各国政府に対する私のより正確な助言を行うべく試みている。

理想的に行けば、我々はハイリスクのグループに属する国に対する助言やこれらのグループの国々に支給すべき医療資源に関する推奨を行うための十分な知識を持つであろう。

私は本日の朝、総会参加国の主席医療技術担当官の意見を注意深く聞いたが、この内容は直ちに国際社会に警告をならすであろう。

今までのインフルエンザの大流行は調査や報告の能力を持った国々で起きていた。これらの国々の政府の調査努力、報告内容の透明性、ならびにウィルスに関する情報の共有に対する寛大さに感謝申し上げる。

インフルエンザの大流行は、脅威の共有以前に連帯の必要性に究極の表現である。大流行が早い段階では主に緩やかな疾病というかたちで現れたことは、まだ幸せである。

私は、国際社会に対しこの猶予期間を賢く利用することを強く主張する。また、あなた方が我々ができるすべてのことを一団となって正確に見極め、発展途上国への感染の阻止に矛先をむけて欲しい点を再度申し上げる。

私はインフルエンザ抗薬やワクチンメーカーを支援してきた。またWHO加盟国、援助国、国連機関、民間団体、NPOや国際基金を支援してきた。

そして、私は彼らに開発途上国に対する準備の拡大とその影響緩和手段の絶対的な必要性を主張してきた。
私が今まで述べたとおり、健康問題における公平性は生きることと死ぬ方法の問題である。危機のときこそとりわけ重要な問題である。

国際的な旅行のスピードと量はおどろくほどに増加している。まさに今H1N1で見たとおり、国際空港をもつ都市はウィルスを輸入するリスクを持つ。国家間の急激な相互依存性の増加は、経済の混乱の潜在性を増幅させる。

絶対的な同義的責任は別にして、国際社会において不均衡さにおいて被害を被る世界がないほど外部委託や看板方式(just-in-time production)を余儀なくさせてきた。我々は公平さについてきちんとかつフェアプレイの精神で面倒を見るべきである。
これらの輸入に伴い持ちこまれる脆弱性はすべての国に影響を与え、経済やビジネスを分裂させる。

今、手許にある証拠資料によると、メキシコ以外の国におけるH1N1ウィルスによる重度かつ致命的な感染による大規模発生は慢性的持病(chronic diseases)を持つ人に多く見られる。近年、持病の疾病が急速に増加するとともに豊かな国から貧しい国への移動している。

今日、慢性的持病で悩んでいる人の85%が低所得または中収入国の国民である。
この意味するところは明らかである。開発途上国は、あきらかに重度かつ致命的H1N1インフルエンザ感染リスクを持つ人々のまさにプールなのである。

現在の大発生のいくつかの特筆すべき特徴は、下痢(diarrhoea)または嘔吐(vomiting)であり、これらの症状がごく普通に見られる。
ウィルスが便から検出された場合は感染の追加ルートとして取り込まれたこととなろう。このことの重要性はウィルスが混雑する都市部のスラム街の不適切な公衆施設の場合に重大な意味を持つ。

次の大流行は、HIV/AIDSの緊急措置以来の初めてのケースで、薬物抵抗性をもつ結核(tuberculosis)の再来となる。今日の世界で数百万の人が薬を投与しており定期的に治療を受けて生活している。これらのほとんどの人々が住む国の健康管理システムは、負荷過剰、スタッフ不足かつ資金不足である。

金融危機は多くの人々が当然の結果として民間医療(private care)や公的資金医療サービスを求めることによる更なる困難な問題を生み出すと予想されている。
もし、世界がインフルエンザの終結を見た一方で、自ら直面する広範囲の薬物抵抗性をもつ結核の大流行が出てきたときどのようなことが起こるであろうか。

これらの不確実性の中心で1つのことだけは確実である。感染性因子(infectious agent)が世界的な健康に関する緊急事態を引きこした時、健康問題は枝葉の問題ではなくなるということである。この問題がステージの中央に一直線に進むのである。

世界はインフルエンザの大流行を懸念しており、このことは正しい。WHOの総会は相当に理由をもって開催期間を短縮してきた。各国の健康担当官は今、数日以上母国を離れることがきわめて重要である。

多くのことが我々の手にある。どのように我々が公衆衛生に関する投資を行うべきか。
世界は見るであろう、また1つの大きな疑問があきらかに起きてこよう。世界の公衆衛生サービスは、21世紀の挑戦の下で目的適合型であるべきか。もちろん答えは「否」である。私はその結果を迅速、高くかつ悲惨に見うる。
今第二の疑問がある。我々が最終的に行うべきことは何か。

同時に我々は大流行に関する懸念を曖昧にしたり、他の重要な健康プログラムを中断することはできないし、そのつもりもない。事実、今週も多くの取組課題が持ち上がっており、最近のWHOの会合でも取組んできた。

健康担当部門は洞察力を欠くことについて非難されるべきでない。我々は何が必要かについて長い期間知識をもってきた。

効果的な公衆衛生は包括的であり、まさに地域レベルまでもカバーする強力な健康管理システムに基づき対処するものである。それは適宜の教育を受け、動機付けされかつ均衡の取れた適切な人数の要員によることである。
それは、適切な医療製品や他の仲介物への公正なアクセスを意味する。これらのすべての項目は今回のあなた方の検討議題である。特に、私は公衆衛生、医療改革および知的財産に関する仕事を完全に行いうべき点を主張する。

これはあなた方のまさに議題であるが、WHO等国際保健規則(International Health Regulations)は健康管理部門に対し2008年金融危機以来優先的権能を与えてきた。しかし、誤った政策は世界的な経済財の減速を引き起こす。国際保健規則は早期警戒の強調的メカニズムと所与の関心でなく、科学により後押しされた通常のリスク管理を提供する。

私は次のことを促したい。現在継続中の独自調査により導かれたとおり、ポリオ撲滅キャンペーン(polio eradication)の仕事を終了させるべきである。またこの仕事はすでに世界を破壊的疾病からの回避にのせるという目標に達したといえる。

まさに今、特に“sub-Saharan Africa;SPA”(サハラ以南アフリカに対する特別援助プログラム)“Asian sub-continent”(アジア亜大陸国への支援)で行ってきたポリオ絶滅のための巨大な監視ネットワークとインフラを、H1N1感染阻止のために立ち上げなければならない。

提案されたプログラムに係る予算は皆さんの議題でもある。WHOは世界的な健康危機問題についての対応を準備すべくリード役である。WHOの提供するサービスはいくつかの地域では酷使されるが、しかし我々はうまく対応している。WHOが特に緊急事態が悪化したときに引続き十分な機能を行えるよう保証が必要である。

最後に次のコメントで締めくくりたい。

インフルエンザ・ウィルスはウィルスの世界で極めて驚くべき効果を持った。しかしウィルスは洗練されたものでない(not smart)、我々も同様である。

その対応への準備レベル、技術や科学的ノウハウは1968年以降大幅に進んだ。我々は国際保健規則(International Health Regulations)の見直しを行ってきた。

また、WHOは「世界的な集団発生事例に対する警戒と対応のためのネットワーク(Global Outbreak Alert and Response Network)」と同様なメカニズムを試験し、強固にしてきた。

私が今述べたとおり、インフルエンザの大流行は世界的な団結の究極の表現である。我々はすべて一緒である。この困難を一緒に乗り切ろうではありませんか。ご静聴ありがとうございました。

(筆者注1)国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)の説明によると“novel influenza virus”、“novel influenza strain” の正確な意味は「これまでにヒトで検出されていなかった亜型のウイルス 」である。 日本語の「新型インフルエンザ(pandemic strain)」という言葉があるが、これは通常は、ヒトからヒトへ効率よく感染する能力を持ち、「大流行(パンデミック)」を起こす能力のあるウイルスという意味で、通常WHOフェーズの6で用いられるとのことである。

(筆者注2)欧州委員会の「健康・消費者保護総局(the Directorate General(DG) for “Health and Consumers”)」サイトで組織・機能について参照すべきである。なお、欧州連合―駐日欧州委員会代表部のサイトでは「欧州委員会の部局」で“Health and Consumer Protection DG ”として紹介されているが当該項目をクリックすると総局サイトにつながるだけで説明不足である。また、わが国の外務省サイトの説明では「欧州委員は事務執行に関し事務局職員により補佐されている。事務局は各国の中央省庁に該当する36部局からなり、主なものは総局(Directorate General)と呼称される」とある。これも正確でなく説明不足である。

(筆者注3)5月13日のロイター通信は、WHOの見解として「H1N1が今後強毒性のものに変異する可能性につき、豚インフルエンザウイルスから変異した今回のH1N1型の新型インフルエンザウイルスは、季節性のインフルエンザウイルスよりも感染力が強く、この新型インフルエンザウイルスに対して免疫を持っている人はほとんどいない。・・・・・1918年にパンデミックを引き起こし、数千万人が死亡したインフルエンザウイルスは、感染拡大の初期は弱毒性だったが、半年後に強毒性のものに変異し、世界中で猛威を振るった。1968年に感染が拡大した新型インフルエンザウイルスも、感染拡大初期は弱毒性だった。」という警告を報道している

(筆者注4)「泥棒男爵(robber baron)」とは、19世紀のアメリカ合衆国で蘇った、寡占もしくは不公正な商習慣の追及の直接の結果として、それぞれの産業を支配して莫大な私財を蓄えた実業家と銀行家を指した、軽蔑的な意味合いの用語。この用語は現在、強力か裕福になるために疑わしい商習慣を使用したと見られる実業家や銀行家に関して使用されることもある。(Wikipediaから引用)

(筆者注5) 2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットにおいて、147人の国家元首を含む189の加盟国代表が参加して、ミレニアム宣言(Millennium Declaration)が採択された。ミレニアム(Millennium)とは千年紀のことで、ミレニアム宣言は、新しい千年紀に入ろうとする時期に、国際社会の目標として採択された。 ミレニアム宣言(15)は、平和と安全の確保、開発への貢献と貧困の撲滅、環境の保護、人権の尊重とグッド・ガバナンスの推進、アフリカの特別なニーズへの対応などを課題として掲げ、21世紀の国連の役割に関する明確な方向性を示した。 (「我が国ODAの課題―アジア及びアフリカに対する援助を中心として―」国立国会図書館「レファレンス 平成20年12月号」より抜粋)

(筆者注6)“moving target”とは、ウィルスが突然変異により絶え間なくゲノム情報を変化させることをいう。ゲノム情報(Wikipediaによると「ある生物をその生物たらしめるのに必須な遺伝情報」として定義される。遺伝子「gene」と、染色体「chromosome」あるいはgene(遺伝子(ジーン)の)+ -ome(総体(オーム))= genome (ジーノーム)をあわせた造語RNAやDNA研究における用語)の変化は,しばしばウイルスの免疫感受性,薬剤感受性,細胞指向性,宿主域の変化につながり,予防治療効果の低下や新興再興感染症の原因となる。
国立感染症研究所〔ウイルス 第55 巻 第2号,pp.221-230,2005〕から抜粋および加筆)

〔参照URL〕
http://www.who.int/dg/speeches/2009/62nd_assembly_address_20090518/en/index.html

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2009年5月14日木曜日

米国の連邦裁判所規則等の期限改正法案が成立、議会の審議のフォローアップ・データベース


 
2009年5月10日未明に米国連邦裁判所サイト“U.S.Courts”(筆者注1)からオバマ大統領が5月7日に標記法案(H.R.1626)(筆者注2)に署名し、成立したニュースが届いた。この法案は連邦裁判手続に関する29の連邦法の改正に関するもので、米国でも裁判官や弁護士という裁判実務家には関心が高い問題であるが、一般人には極めてなじみが薄い問題である。
 今回あえて取り上げた背景は法案内容の正確な理解とともに、このようなメディアもほとんど問題としない法案の内容について審議過程を調べようとしたら、わが国ではどれだけの時間がかかるであろうか、一方、米国ではどうかといった比較制度的な問題意識から取り上げるものである。筆者から見ると、本会議だけでなく委員会等における法案上程の背景や審議状況をリアルタイムかつ正確に把握できることは、民主主義国家では当然であり米国もその例外でない。
 今回のブログは、この2点を中心に解説する。

1.本法案提出の背景となる連邦司法会議(Judicial Conference of the United States)の「裁判過程における期間計算に関する規則」の改正および「2009年制定法上の期限計算に係る技術的修正に関する法律(the Statutory Time-Periods Technical Amendments Act of 2009)」(H.R.1626)の可決
(1)この法案提出の契機は、2008年9月16日連邦司法会議(Judicial Conference of the United States)(筆者注3) (筆者注4)において、連邦裁判手続における期間計算に関する以下の4つの裁判所規則(書式を含む)の改正案が採択されたことである。
 また、同会議は改正案につき1934年連邦最高裁判所規則制定権法(Rules Enabling Act of 1934)(筆者注5)に基づき、連邦最高裁に移送し、制定・公布するものである。
連邦控訴所規則(Federal Rules of Appellate Procedure;FRAP)
連邦破産裁判所規則(Federal Rules of Bankruptcy Procedure;FRBP)
連邦民事裁判所規則(Federal Rules of Civil Procedure)
連邦刑事裁判所規則(Federal Rules of Criminal Procedure)
 なお、同会議において同時に①から④の各規則について期間計算以外(non-time computation rules and forms)の改正案も採択された(2009年12月1日施行予定)。
(2)著名な連邦上院司法委員会委員長(Senate Judiciary Committee Chairman)パトリック・リーヒー議員(Patrick Leahy)(バーモント州選出:民主党)が4月28日の連邦議会で行った議会のスピーチ記録等に基づき本法案の提出経緯等をまとめるのが最も正確で効果的であろう。

「マダム・プレジデント(筆者注6)、私は4月27日に上院が「2009年制定法上の期限計算に係る技術的修正に関する法律(the Statutory Time-Periods Technical Amendments Act of 2009)」(H.R.1626)を可決したことをうれしく思う。この価値のある政府提出法案(good-government bill)は、弁護士および裁判官が裁判過程における手続の遵守期限を計算するにあたり、一貫性がありかつ標準となる方法を新たに作り上げるものである。すなわち、条文数は少ないが米国の司法制度の有効性を向上させるうえで重要な超党派(bipartisan bill)の法案である。先週(4月22日)、同法案は下院の継続審議で可決している。

 本法律は、裁判手続の期限(deadlines)に関し、最近行われた連邦期間計算規則に関する連邦司法会議(Judicial Conference of the United States)の勧告 を完全に組み込んだ法律である。裁判官や実務家にとって現在の締切期限の規定につき混乱や複雑さを減らす意味をもっており、かつ既存の期間の短縮をもたらさないことを保証するものである。
 多くの研究とパブリックコメントのもとに司法会議の裁判所規則に関する常任委員会(standing committee)および控訴、破産、民事、刑事に関する諮問委員会(advisory committee)において現在の手続の期間計算期限につき予見性と統一性を提供する目的で新しい規則案を提案することとなった。今回提案する法案では、司法会議が指摘する現行の期間計算は混乱する内容でかつ誤った期限や訴訟当事者の重要な権利を失わせるという指摘に部分的に対応するものである。
 現在の期間計算規則は、週末や休日は期間が30日未満の裁判所への期限計算上カウントしないが、30日以上の場合はカウントするという規定内容である。

 一方、本改正法案では、公判運営に影響する多くの民事および刑事手続法を改正して、司法会議の提案する規則改正案と整合性をとることになる。第一に、改正法案は「○○日は○○日」と言うカレンダーどおりに期間計算することによっては実質的に期間が短縮化される定め方を見直すべく制定法上の期間の定め方を変更する。例えば、裁判実務家が週末を含むすべての日数を計算することで期間が実質的に短縮化するのを防ぐため「5日間」を「7日間」に、また「10日間」を「14日間」に変更する。事実上、この改正は制定法上同一期間を維持する効果をもたらすであろう。さらに期末が休日や週末にかかるときは期限は翌営業日に延長されることになる。

 連邦司法省と司法会議は、2009年12月1日(司法会議の裁判所規則改正の施行日)以前における改正規則の施行を強くうながしており、今回連邦議会がこれに応じられたことをうれしく思う。
 本法案については支援してくれた連邦司法省、米国法廷弁護士会(American College of Trial Lawyers)、控訴弁護士協議会(Council of Appellate Lawyers)、米国弁護士会の訴訟、刑事裁判部を含む幅広い関係者に感謝する次第である。

 最後にオバマ大統領が適宜本法案に署名されることを楽しみにしている。」

2.米国連邦議会の法案審議過程の調査に関する代表的専門サイト
 本章の説明は、わが国の法学部学生や院生だけでなく、海外情報の紹介メディアや総研の調査スタッフ等においてもマスターすべき内容なのでその点を理解して欲しい。なお、言うまでもないが、これらの立法情報専門サイトが最も必要とされる「検索機能」等においてEUの主要国でも類を見ない充実度が見られる点である。(筆者注7)
(1)“Thomas”(連邦議会図書館Library of Congressのサイト)
 “Thomas”は1995年1月の第104連邦議会会期開始時に稼動を始めた。その目的は広く国民に無料で連邦の立法に関する最新情報を提供することであり、その後、特性や内容等を含む情報範囲の拡大を図り、現在は次の10項目について情報提供を行っている。なお、(2)以下で説明するとおり議会情報の多様化や世論形成の新たな挑戦サイトが出始めているが、その原データはいずれも“Thomas”であることと、それらは多くは“Beta 版”といえるものである。しかし、内容の良し悪しは別にして、多くの米国の若手層が政治に正面から取組む姿勢はわが国とは明らかに異なるといえる。

A.法案(Bills)、決議(Resolutions)
(ⅰ)現議会の上程法案(1989年第101議会から現議会の全法案)の検索(用語および法案番号)
(ⅱ)法案およびその修正要旨の検索(1973年から現議会までの全法案)
(ⅲ)多角的な法案の検索(Search Multiple Congress)
(ⅳ)法成立後“Public Law”(筆者注8)番号に基づく検索
(ⅴ)議会下院における公式投票記録(筆者注9)
(ⅵ)議会上院における公式投票記録
(ⅶ)法案提案議員(上院・下院)のサイトの閲覧
B.議会の活動状況
(ⅰ)昨日の本議会
(ⅱ)今、下院では(新しい順で全法案の審議状況すなわち「動議」「投票」「審議」等が参照できる)
C.議会の記録
(ⅰ) 最新の日付の上院・下院の活動状況のダイジェスト版が閲覧でき、必要に応じ全文にリンクすることもできる。
(ⅱ)議会の公式記録の検索:言葉や語句(phrase)、議案番号、日付での検索が可能である(1989年以降)。
(ⅲ)議会記録のインデックス
D. 審議スケジュールとカレンダー
(ⅰ)会期中の審議スケジュールと毎日の議事目録(Calendar) が閲覧できる。
(ⅱ)今週の下院の審議日時(特に継続審議などで成立が間近な法案等)
E.委員会情報(Committee Information)(連邦印刷局(GPO)の印刷物により下院・上院の委員会の記録全文の検索が可能)
F.大統領候補指名
G.条約(条約番号、条約の伝達日、略称、正式名、条約のタイプ:軍事、航空、通商、領事)、国内法の法的措置(legislative actions)、索引用語)
H.政府機関の公式サイトへのリンク
I.学校の教師が議会について教育活動をするための情報
J.本サイトのヘルプ・デスク

(2)“GovTrack.us”
 “GovTrack.us”は、ジョシュア・タウベラー(Joshua Tauberer)(筆者注10) (筆者注11)が2004年9月に新たに立ち上げたサイトである。独立系、超党派、非営利、オープンソースサイト(筆者注12)で国民が毎日連邦議会の法案審議の状況を追跡することで議案、議員の活動をチェックできるというものであり、 “Webby Awards”(米国で最も権威あるWebサイト賞)の2006年政治部門で同賞を受賞している。
 今回、代表者が自らサイトの利用方法やその利用の限界について説明しているので参考までに紹介する(“About This Website”を読むと文書作成はあまり得意でないのか全体として言いたいことが分散されている)。筆者なりに同氏が主張したいであろうと思われる点を中心に再構成しておく。
A.閲覧可能情報
①連邦議会上程の法案、②上・下院の投票記録、③議員自身の情報(オフィシャルサイトへのリンク)、④委員会情報、⑤公式の議会記録である。

B.個別ユーザーに要求に合わせた法案追跡ツールの提供
 本サイトは調査ツールであるが同時に無料の追跡ツールでもある。 “Trackers”と言うツールに関心テーマ、議員名、法案番号、委員会名等を登録すると追跡結果が自動的に得られる。

C.データ入力結果の迅速性
 法案の審議状況や条文そのものについては約24時間遅れるが、氏名点呼投票(roll call vote)の場合は公式サイトが公表するのとほぼ同じ1時間以内にサイトに掲載される。統計数字はほとんど毎週更新するが、現会期の議会情報は初めの数週間は更新されない。

D.過去のデータの閲覧
 第103議会(1993-2000)までさかのぼっての検索が可能である。ただし、条文は106議会(1999-2000)までしかさかのぼれない。

E.利用者数
 1日当り約3万人が利用しており、毎晩数百から数千のメールを送信する。

F.サイト協力者
2008年7月以降、ダニエル・ガブリエル(Daniel Gabriels)、ケビン・ヘンリー(Kevin Henry)やマク・ドレッシャー(Mike Drescher)が加わった。

(3)“OpenCongress”
民間プロジェクト(Sunlight Foundation等NPOの1プロジェクト)でその内容は上記2つのサイトと比較するとより国民の関心の度合いを測りながら併せて審議状況をフォローしている。すなわち、法案、委員会、報告書等の議会情報に議会や議員に関するニュースやブログを集約して提供している。さらに特徴的な点は最もよく閲覧されている法案の閲覧数などのランキングも公表するのである。国民だけでなく議会の議員も無視しえない情報 が含まれている。

(4)“the Open House Project”
 “google”は世界中の言語やテーマ別に各種グループを組成しているが、上記Sunlight Foundation等が中心となって米国の連邦下院の活動とインターネットの機能的融合を目指すプロジェクトが“Open House Project”である。現在の参加者数は筆者も含む588人であり、政府や立法に関する情報の専門家、議会事務局、NPOやブロッガー等が下院の運用をいかにインターネットと統合するかという研究ならび一般国民が彼らの仕事の内容を理解しアクセスが達成できるよう参加型の改革を提言することが目的である。同プロジェクトは議会の手続を抜本的に改革するといったものではなく、その運用原則は処理手順の自動化(Paving the Cow paths)を目指すものである。
 すなわち、その具体的意見集約の方法としては、まず“list-serve”というディスカッションの場でトピックスを選ぶ。その情報が下院の機関に届くとブログやwikiに書き直すとともにオンラインで共有するかたちで報告書を書き上げるのである。これらの貢献者達の活動は2007年5月8日C-Span(筆者注13)のカメラが並ぶ記者会見の中でブラッド・ミラー(Brad Miller)下院議員(ノースカロライナ州選出:民主党)と共和党員院内総務ジョン・ボエナー(Minority leader John Boehner)(オハイオ州選出)との白熱した議論において議会で達成可能なアクセス改革のあり方についてみずからの意見の一致を表したのである。また、同報告書はペロシ下院議長やステニー・ホイヤー(メリーランド州選出:民主党)からその内容につき保証を得ており、マスコミから多くの報道面の評価を受けた。
 なお、現在上院の仕事やウェブに対する国民のアクセス権を確保するため超党派のプロジェクト“Open Senate project”を構築中である。

(筆者注1)“U.S.Courts”についてわが国で正確かつ最新データに基づき説明している市販文献を見たことがない。本ブログだけでなく米国の立法、裁判情報を理解する上で必須な情報であり、司法関係者でも理解不足の点もあるので、この機会に注記であらためて出来るだけ詳しく説明しておく。

(筆者注2)下院での法案(H.R.1626)と標題と同一内容の法案(S.630)が上院で上程されていたが(S.630の提案者はリーヒー上院議員他3名である)、下院法案の成立により実質的に審議の余地がなくなり(mooted)、廃案になったと“Govtrack U.S”等で説明されている。

(筆者注3)「連邦司法会議」は、1922年に連邦裁判所の裁判行政全般にわたる基本的裁判政策の策定組織として巡回裁判区の上級裁判官による「上級巡回区裁判官会議(the Conference of Senior Circuit Judges)」としてスタートした。1948年に連邦議会は新たな法律「連邦司法会議法(Judicial Conference of the United States :28 U.S.C 331 )」を制定し会議名を「連邦司法会議」に改称した。また、1957年から地方裁判所判事もそのメンバーに正式に加わった。2008年10月現在のメンバーは連邦最高裁判所長官(John G. Roberts,Jr.)と全米11巡回区、“District of Columbia裁判所”、“連邦巡回区裁判所(Federal Circuit)”、国際通商裁判所(Court of International Trade)
(筆者注4)の首席裁判官各1名および連邦控訴裁判所(D.C. Circuit)の主席裁判官15名の計16名である。
その任務(mission)すなわち連邦司法制度全体の運営は、合衆国裁判所事務局(Administrative Office of the United States Courts;AO)が担当している。司法会議の多数の裁判官に統計データを提供するだけでなく、同会議に提供される情報や提案の受け取り窓口と情報センターの機能も果たしている。AOは、連邦司法制度と司法会議の連絡役であり、連邦議会、大統領府、専門団体、一般国民との対応に際して、司法府側の立場を代弁する役割を務めている。とりわけ重要なのは、連邦議会で司法府の代表を務めることであり、関係する裁判官とともに、司法府の予算案、判事増員の要請、裁判規則の改定提案を連邦最高裁に行うなど、重要な案件について詳しい説明を行う。(“U.S.Courts”サイトの運用・管理もAOが行っている)(米国大使館サイトからの引用文にU.S.Courtsサイトの説明に基づき訳文を追加、適宜修正を加えた)

(筆者注4)国際通商裁判所(Court International Trade)について説明しておく。
「1980年関税裁判所法(the Customs Courts Act of 1980)」に基づき連邦議会は国際取引訴訟などから生じる増加・複雑化する紛争問題に効率的に対処するため連邦裁判制度を用意している。すなわち、同法に基づき実質的に従来の連邦関税裁判所(the United States Custom Court)の地位、裁判管轄および権限を明確化と拡大を行い、現在の「国際通商裁判所」に名称を変更したものである。

(筆者注5)1934年6月19日成立した「連邦最高裁判所規則制定権(授権)法(Rules Enabling Act of 1934)」に基づく、連邦最高裁の裁判所規則制定権能と連邦議会の立法権との委任関係は、元々は現状よりは簡単な構造であったとされている。しかし、裁判所の運用の実態は必ずしも簡単なものではなく判例や米国の専門論文でもこの問題がしばしば取り上げられている(本ブログはその解説を目的とするものではないので詳しくは“Find Law”カルフォルニア大学デービス校のローレヴュー等を参照されたい)。

(筆者注6)“Madam President”は誰を指すのか。大統領に対し“Mr.President”は誰でも分かるであろう。筆者も捜し当てるのに一応苦労した。実際、連邦議会の公式スピーチでも“Madam President”がしばしば登場する。“Google”で検索しても出て来ないし、ヒラリー・クリントンが大統領になっていたとしたらそう呼ばれるであろうかも知れない。
 答は、上院共和党議員の“Mrs Patty Murray”(ミセス・パティ・マリー)である。連邦下院の議長ナンシー・ペロシー(Nancy Patricia D'Alesandro Pelosi)を“Madam President”と呼ぶなら分からないでもないが、“Murray女史”がなぜ“President”なのか、それは民主党上院院内総務(Democratic Conference Secretary of the United States Senate)だからである。なお、同女史を含めの連邦議会委員の公式サイトは5月10日現在接続不可となり一切閲覧できない。その理由は不明である)。

(筆者注7) 松橋和夫「アメリカ連邦議会上院の権限および議事運営・立法補佐機構」国立国会図書館レファレンス平成15年4月号および同「アメリカ連邦議会上院における立法手続」同平成16年5月号が連邦議会における全体的立法手続の説明として有用である。

(筆者注8)米国では、連邦議会で法律が制定されるとまず"Public Law"として発行される。これは、議会に提出された法案の名称を踏襲している。その後、分野別に体系化された"United States Code"として編纂される(LexisNexis.jpサイトから引用)。

(筆者注9) 参議院では平成10年(1998年)1月に召集された第142回国会から押しボタン式投票が導入された。参議院における議案の採決は、記名投票を行う場合を除いて、押しボタン式投票により行うこととなっており、押しボタン式投票の導入により、議案に対する各議院の賛否を迅速に集計・記録できるようになった。投票結果は、「会議情報」の「本会議投票結果」(個別法案をクリックすると各議員別の賛成・反対結果が確認できる)から見ることができる(衆議院では同様のかたちで投票結果を見ることができない。その理由は不明である)。
 なお、参議院の投票結果は個別法案に対する投票結果であり、米国の専門サイトで見るように各議員の投票結果のトレンド見るには別途手作業が必要であり、そのようなことを行っている団体や機関(NGO)やメディアはないであろう。要するに主権者は「かやの外」なのである。

(筆者注10)Joshua Tauberer氏は大学院生でかつソフトウェアの開発者である。“GovTrack.us”を立ち上げたほか、RDF(筆者注11) 形式の米国国勢調査データを管理している人物でもある。

(筆者注11) Resource Description Framework (RDF) とは、ウェブ上にある「リソース」を記述するための統一された枠組みであり、W3Cにより規格化がなされている。RDFは特にメタデータについて記述することを目的としており、セマンティック・ウェブを実現するための技術的な構成要素の一つとなっている。RDFの応用例にはRSS (RDF Site Summary) やFOAF (Friend of a Friend) などがある。(Wikipediaから引用)

(筆者注12)「オープンソース」とは、ソフトウェアの設計図にあたるソースコードを、インターネットなどを通じて無償で公開し、誰でもそのソフトウェアの改良、再配布が行なえるようにすること。また、そのようなソフトウェア。(IT用語辞典より引用)

(筆者注13)C-SPAN(Cable-Satellite Public Affairs Network)は、1979年3月19日に開局したアメリカ合衆国のホワイトハウスや連邦議会を中心に、政治報道を専門とするケーブルチャンネルのことである。


〔参照URL〕
http://www.uscourts.gov/rules/index2.html#hr1626
http://www.govtrack.us/congress/record.xpd?id=111-s20090428-21
http://thomas.loc.gov/

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2009年5月12日火曜日

注目の新検索エンジン“WolframAlpha”データ版の客観的評価について

 
 最近わが国のブログで紹介され始めた話題(筆者注1)で、5月18日にサービス開始する“WolframAlpha”と“Google” はどちらが検索エンジンとして機能面等で優れているか、また“Google”の世界戦略はどのような影響を受けるのかといった問題につき各方面から解説が行われている。
 5月11日に筆者に届いたドイツのメディア“SIEGEL ONLINE”(国際版)を読んでみると、ドイツらしいロジカルかつ辛口の記事が目に留まったので紹介する。Google自体話題性の多い企業であること(米国型企業戦略でもある)は言うまでもないが、“SPIGEL”が比較において使用した項目は単にわが国等関係者が従来指摘している以上に重要な視点が含まれているという判断から専門外ではあるが、あえてとりあげるものである。
 なお、“SPIGEL”の記事では10項目に分けて比較等を行っているが、そのうち主要な7項目のみ取り上げる。

1.“WolframAlpha”の開発者の本当の開発目的は何か
米国の理論物理学者兼実業家Stephen Wolfram (筆者注2)が開発した検索エンジン“WolframAlpha”は、“ Google の 殺し屋”ではない。また検索エンジン機能だけでもない。「コンピュータ自身による知識エンジン(computational knowledge engine)」すなわち彼自身が自ら主張する「コンピュータの使用とウェブのための新しい理論的枠組み(a new paradigm for the use of computers and the Web)」である。その最終的な目標はコンピュータの先駆者が1950年代に指摘した約束(コンピュータ自身が質問し答えを出させる)の達成である。彼は数学パッケージソフトウェア“Mathematica”を開発した。同ソフトは、統計学者、科学者や数学者が課すあらゆる数学上の普遍的問題解決ツールである。同プログラムは膨大な処理能力を必要とするため、いくつかのコンピュータ雑誌がPCの容量と能力をテストするのに利用するほどである。
 “WolframAlpha”の「回答マシン」は理論上“Google”と同じかまたはより以上のことをなしうるのか、SPEAGELは①選挙結果、②会社の売上高、③テレビの視聴率、④オリンピックのメダル数等をテストしてどのくらいの事柄を導き出せるか確認を行った。

2.政冶特に選挙に関する検索結果
 “presidential election 2008 results”と質問してみた。答は「あなたの入力内容が理解できません」であった。次に“presidential election”で検索してみたが、失敗であった。さらに“election”で検索した結果、最終的に説明がなされた。なお、“Government”で検索したところ、答は「この話題は調査中です」と言う不可解なメッセージが出た。一方、“Google”で最初の質問をしたとこころCNNの選挙の概要ページにリンクした。またGoogleは全米および州単位の選挙結果も直接リンクできた。
 “WolframAlpha”の残念な検索結果として、次のようなものが見られた。
①”Democratic Party?”・・・まだ記録されていません。
②“CDU”(ドイツの中道右派党のキリスト教民主同盟)・・・Camden Airport in Australiaが答であった(それも地元の現在の天気情報付)(筆者注3)
③“New York crime rate?”・・・結果がありません。
④“Mew York mayor?”・・・・知りません。一方、“Google” は市長Michael Bloombergの公式サイトにリンクする。
ドイツ語での質問に答がないという点を差し引いても米国の州や世界の国々の選挙結果やデータベースへのアクセスは必要であろう。さらに“WolframAlpha”の欠点は詳細な国のプロフィールや誰が現在の政治の指導者等について答えを持たない点である。

3.うかがわし統計データ
 “WolframAlpha”は、個別国について非常に詳しい情報が提供できる。例えば「ドイツ」で検索するとキロで表示される隣国との国境線の距離や10大都市(人口統計も含む)が引き出される。
他方で疑わし統計の例もある。ドイツ語の文化圏に関する記述で次のような意味不明の記述がある。
①German 96% ②Upper Saxon(筆者注4) 2.6% ③Kölsh 0.31% ④Polish 0.31%
パーセントはなにを意味するのか、相互の関連について説明がない。また、ポーランド語はドイツの方言なのか。
 一方、“Google” で“Germany”を入力すると最初にWikipediaの記事にリンクする。
“WolframAlpha”の特徴的な点は、同時に2,3の異なる国を探せる能力である。「米国対中国」「米国対中国対ドイツ対ロシア」と入力すると独自に複数国間に関連するすべての有効データを独自につくりあげた結果ページを提供する。閲覧者は一目でどの国の失業率が最も高いか、市民の平均寿命が最も低いか等を知ることができる。“Google”にはそれに匹敵するものはない。
 さらに“WolframAlpha”は同様な方法で複数の都市を比較する。ハンブルグとサンフランシスコを入力すると単に人口統計の比較だけでなく、両都市間の飛行時間や現地時間の時差等を説明する。

4.“WolframAlpha”のとりわけ得意分野(経済比較、ただし情報源は疑問)
 明確に定義された変数の比較に関して、“WolframAlpha”は輝いて見える。「ノキアとモトローラ」の入力により収益や従業員数の比較が直接できる。“Google”で同じことを行ってみる。最初の答は2006年のブログで「誰がボスですか」である。
 “WolframAlpha”は様々な米国の新聞の循環統計(circulation statistics)を比較してみることは可能である。米国資本の日刊紙「ニューヨーク・ヨークタイムズ」「ウォールストリートジャーナル」「ワシントンポスト」「ロスアンゼルスタイムズ」等の比較データを見る限り最も低いランクといえる。時間枠のなかでの正確な情報がなくなっており、ジャ―ナリステックや科学的目的から見ると無用な内容である。また個々の刊行物に示された循環統計を表示することができるが、役にたつ時間的要素が放置されている。
 同様の比較に関しテレビチャンネルの視聴率の比較はできない。“CNN VS CBS(TV)”で検索してみた。“CNN”は英国の不動産会社“Caledonian Trust”とされた。
 経済問題についてさらに検索してみた。“Germany import value vs export value”と入力すると実際2つの結果が出て来た。しかし、輸出額は2007年推定値であり輸入の額は添付されていない。ちなみに米国の同様のデータを検索したが同じ結果であった。

5.コンピュータの比較結果(Macsは潤滑油(Lubricans)?)
 インターネットと技術に関する質問で“Google”と “WolframAlpha”の相違点がより明らかになる。
“WolframAlpha”で“Microsoft”と“Google”と入力すると両社の財務データの詳細を回答するとともに市場業績(market performance)を追跡する。“Google”の検索メカニズムは直接自社のホームページに質問を向ける。
 “Google”のPC市場おけるMacsの割合やアップル・コンピュータの販売台数の検索結果はテレビコマーシャルや顧客調査を含む娯楽面等の圧倒的豊富さを述べた。一方、“WolframAlpha”ではこれらについての確定的な情報が得られないし、さらに“Macs”について技術潤滑油の1タイプである「増殖アルキレート・シクロペタン(multiply alkylated cyclopetemtences)」の略語として、その要素に関する物理的データを提供するのである。この答自身は正しいが、質問に対する答としては誤りである。
 しかしながら、コンピュータ装置に関する”Bits”“Bytes”“Mebibytes”“Gibibytes”について、“WolframAlpha”はトップページにある。“Google”はまずWikipediaの記事をリストあげて各単位の要約にリンクしていく。

6.科学(アスピリンに関するすべて)
 “WolframAlpha”は科学的質問にはあざやかにかつ時間をかけずに答える。水の屈折率(refractive index:光学特性 )について正しい数値(1.333)を選択する。一方、“Google”は同じ用語について78万1,000以上のウェブサイトにリンクする。従って“Google”の場合は屈折率の要素の検索にあたり冒頭でユーザーは「水に関する数値」を求めていることを明確化する必要がある。水の濃度に関する検索について同様の表が表示される。“WolframAlpha”は数値(numerical value)だけでなく他のユニット-人体の水の濃度や相関図(phase diagram)と同様にいくつかの比較を踏まえ-のリストも提供する。この場合、“Google”はWikipediaを当てにしないが、最初の入力により英語の変換表に変わる。
 また、“WolframAlpha”のサイトは水の濃度だけでなくアンシュタインの有名な「質量・エネルギー等価方程式(Theory of mass-energy equivalence)e=mc²」も説明する。
 しかし、一方で“WolframAlpha”にも問題がある。薬品“aspirin”で検索すると十分な長い説明の後に、分子構造の空間モデル(Spatial model of the molecular structure)について科学的、構造的な公式にもとづきよく説明されている。しかし、唯一の問題はこの説明は一体何のためであろうかと言う疑問である。
 “Google”は、Wikipediaにリンクするだけでなく薬品製品の公式サイトに直接リンクできる。

7.結論(デザインには強いがデータベースとしては弱い)
 デモにおいて“WolframAlpha”は非常に印象的な方法で情報を提供する。検索エンジンは更なる情報を作るためにデータの増殖することができる。例えば複数の国の簡単な入力から統計的な比較データを作ることができるが、これは現在“Google”やその他の検索エンジンではできないことである。しかし、現行のベータ版はこの点をほとんど生かしきれていない。既存のデータベースに必要とするデータがあるときのみうまく行くのである。例えば、米国のテレビ局の視聴率について検索エンジン自体が正しく意味を理解していないのである。
  他方、“WolframAlp”は科学者に対し他の科学者のためのツールとなることが感じられる。実際、秘術面や科学に関する質問に対しすばらしい詳細な答が返ってくる。他方、前述したとおり政冶、経済や文化面の内容等多くの課題もあるが作成者は別の観点に重点を置いているようにも思える。
  いずれにせよ検索エンジンとして見た場合、“WolframAlp”は例えばドイツ語で入力された場合等なぜとんでもない答えを引き出してくるかについて説明ができないことは多くの点で課題でもある。非常によくできたソフトウェアではあるが、日常的に利用するものとしてはなお改善すべき方策があろう。


(筆者注1)ビジュアルかつ事業戦略面から紹介しているブログとしては、5月11日付“WIRED VISION”サイト“Internet Watch”があげられよう。なお、偶然にも“WIRED VISION”のサイトで紹介されているStephen Wolfram氏が米国ハーバード大学バークマン・センターで行った専門家向け講演「Computational Knowledge Engine」の内容は面白い(YouTube でデモ・質疑応答を含む講演内容(1時間45分)を見ることが可)。筆者は同センターのプロジェクト“The Center for Citizen Media”のディスカッション・メンバーであるが、同氏のスピーチの件は知らなかった。

(筆者注2)Stephen Wolfram氏は、日本語版Wikipedeia等でも紹介されているとおり米国Wolfram Researchの創設者(CEO)でありかつ天才的な理論物理学者である。数学パッケージソフト“Mathematica”の開発を1986年に行っている。

(筆者注3)筆者も自らGoogleで“CDU”を調べてみた。日本語のWikipediaの説明の少し後に“Christlich-Demokratische Union Deutschlands;CDU”のホームページが出てくる。

(筆者注4)“Upper Saxon”はドイツ語で北ザクセン語のことである。また“Kölsh”はケルン語である。

(筆者注5) SPEGELのサイトが引用しているアンシュタインの「質量・エネルギー保存則(E=mc²)」について関心の有る方はWikipediaで確認してほしい。


〔参照URL〕
http://www.spiegel.de/international/zeitgeist/0,1518,624065,00.html#ref=nlint

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2009年5月8日金曜日

米国の連邦議会行政監査局(GAO)が個人情報再販業者に対する機密情報安全性監督の強化策を勧告

〔再登録にあたり〕
 本ブログは2006年9月23日(水)にgoogleの“blogger”にアップしたものである。Googleブログではどういうわけか一定期間後のグログ原稿の編集は不可となる。このため法改正等による内容の更新・見直しと併せ、新たにリンクを張るなど読みやすさにも配意して改訂を行った。


 米国連邦議会行政監査局(United States Government Accountability Office;GAO)は、2006年6月26日に開催された連邦議会上院「銀行、住宅・都市問題委員会(Committee on Banking ,Housing and Urban Affaires ,U.S. Senate)」において、連邦や州の金融監督機関が行う“Gramm-Leach-Bliley Act;GLBA”等個人情報保護に関する重要な法律の運用に関し、最近急成長しつつある個人情報の再販事業者(Information Resellers)(筆者注1)が行うべき安全対策に関して、有効な監督機能を果たしていないとする勧告報告を行った。
 GAOの活動や権限について、本ブログでも数回取り上げたことがあるが、GAOの連邦議会への発言力すなわち上院・下院議員への影響力は極めて強く、また取扱う問題の範囲が広く米国の行政機関への横断的な影響度は大といえる。
 特にGAO報告の特徴は、関係企業、監督機関、消費者等からの情報収集が徹底されており、その説得力は他の連邦監督機関が無視し得ないものといえる。以下、紹介するとおり、法律の守備範囲と監督業界間の縦割りの弊害は米国でも現実の問題であり、この分析手法はわが国でも参考とすべき点といえよう。
 なお、わが国では個人情報保護法の全面施行後約1年を経過した2006年7月に、金融庁は金融機関における顧客情報の管理体制に係る一斉点検の結果(筆者注2)を、また内閣府は事業者の取組実態調査結果を公表している(筆者注3)。米国における金融機関の再販事業者の利用原因の1つが、「愛国者法(USA PATRIOT ACT)」(筆者注4)におけるマネロン阻止やなりすまし詐欺の防止に関する法令遵守の要請である。
 わが国ではマネロン阻止強化の観点から2007年9月22日に「本人確認法」施行令等が改正され、2007年1月4日以降10万円超の現金によるATM振込が原則不可となった。また、2008年3月1日以降、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)」(「犯罪収益移転防止法」)に基づき、金融機関に対し本人確認が義務づけられるとともに、「本人確認法」は廃止された(本人確認の内容は変更されていない)。これと関連し名義人へのなりすましチェックも強化されるなど、状況が類似しており、「他山の石」とすべきであろう。(筆者注5)


1.GAO勧告の内容
連邦議会は次の3点について具体的に検討すべきである。
(1)個人情報の再販事業者が保有する機微個人情報(sensitive personal information)の安全対策について情報提供を求める。
(2)現行の金融機関の個人情報保護法である“Gramm-Leach-Bliley Act;GLBA”(15 USC 6801)「公正信用報告法(the Fair Credit Reporting Act:FCRA)」の遵守監督機関である連邦取引委員会(FTC)について、法執行機関として有効な制裁手段といえる民事制裁権(civil penalty authority)(筆者注6)を付与するよう見直しを行う。
(3)保険会社を監督する州の監督官の全米規模の組織体である全米保険監督官協会(the National Association of Insurance Commissioners;NAIC)においてもGLBAの遵守監督を行う。

2.GAOの調査・研究の背景
 米国における個人情報再販事業者は、(1)公的な機関が保有する記録(生年月日、資産記録等)(Public records)、(2)一般に公表されている情報(電話帳等)(Public available information)、(3)個人信用情報報告書のキー情報であるcredit header data(筆者注7)や加入者リスト(subscription lists)を情報源としてこれらデータの統合を行う。その結果、成果物として「本人確認報告」、「保険金請求記録報告」、「潜在的顧客情報」、「信用情報報告」が作成され、最終的に金融機関等に提供されるのである。
米国のこれら企業は米国国民のほとんどすべてといえる膨大な消費者の個人情報を収集し、その結果、この数年明らかになっているとおり、ChoicePointLexisNexis等大規模な漏洩事件が生じている。

3.GAOが取組んだ調査内容
(1)GAOは銀行、クレジットカード会社、証券会社や保険会社が次のような理由から再販事業者からの個人情報を入手、利用していると見る。
A. 利用者の法適合性
B.愛国者法等の法令遵守
C.なりすましなど詐欺の予防
D.自社の商品の市場性

(2)GAOは、「公正信用報告法(FCRA)」および「グラム・リーチ・ブライリー法(GLBA)」の適用により再販事業者への情報提供は制限されていると解している。すなわち、FCRAは与信や保険契約時における法適合性判断のための第一次的情報の収集や使用時に適用され、またGLBAは同法に規定する金融機関によって取得される個人情報について適用される。
 これら2法には情報保護・セキュリティに関する規定があるにもかかわらず、消費者(再販事業者からの購入利用者のこと)は再販事業者からあらゆる機微情報の入手が可能という拡大解釈の恩典をうけている。

(3)すなわち、連邦取引委員会(FTC)はこれら2つの法律のプライバシーやセキュリティに関して再販事業者が行うべき遵守に関して第一義的な監督責任を持つ連邦機関である。1972年以降、FTCは全米規模の3大信用情報機関(EquifaxExperianTransUnion)を含め、FCRA違反を理由として再販事業者に対し、20件以上の正規の法執行行為を行っている。しかしながら、FTCは GLBAに基づくプライバシー保護に関する規定(これらの規定は、法律に基づき大量の漏洩事件 違反行為に対して有効な法執行を担保することになる)に基づく民事制裁権を持たない。

(4)米国のプライバシー保護法等の遵守状況を概観すると、銀行や証券会社の連邦規制監督機関は遵守ガイダンスを発布するとともに検査を行い、その他公式・非公式の法執行行為を行っている。最近時にNAICの協力により行われた調査では、保険会社においてGLBAの不遵守の事例がみられたが、州の監督機関はNAICとともにこれらの問題に対応する明確な計画を有していなかった。(筆者注8)

(筆者注1) GAO報告によると、再販事業者名として本ブログで紹介したほかに、eFund(預金取扱機関に対し預金取引の履歴情報を提供)、Thompson West and Regulatory DataCorp(企業に対し詐欺やその他のリスクの軽減情報を提供)、ISO(保険会社に対し保険契約履歴情報その多詐欺要望商品を販売:http://www.iso.com/)等が紹介されている。

(筆者注2)http://www.fsa.go.jp/news/newsj/17/f-20050722-4.pdf

(筆者注3)内閣府は、調査結果の詳細を2006年7月28日開催の「国民生活審議会個人情報保護部会」の資料として配布している(内閣府のHPで同資料を探すのに、無駄な時間がかかってしまった。特に従来から気になっている点であるが、わが国の電子政府の中核である内閣府のサイトには「検索」機能がない)。資料が全部で158頁と大部(要旨では企業の検討材料として不十分)のためか、5分冊となっており、企業にとって個人情報漏洩防止に関心の高い漏洩原因の分析は第3分冊の中にある。第3分冊のURLは以下の通り。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/shingikai/kojin/20th/20060728kojin3-2-3.pdf

(筆者注4) 正式名は“UNITING AND STRENGTHENING AMERICA BY
PROVIDING APPROPRIATE TOOLS REQUIRED TO INTERCEPT AND OBSTRUCT TERRORISM (USA PATRIOT ACT) ACT OF 2001”
( Pub. L. No. 107-56, 115 Stat. 272 (2001)) である。直訳すると「テロ行為阻止のための適切な手段の提供よる米国民の団結強化に関する法律」(なぜ「愛国者法」というかが理解できよう)となるが、2001年9月11日の連続テロ事件を背景に成立した法律である。しかし、テロ阻止を理由とする犯罪捜査や盗聴を一定の場合認めるなど人権制限法としての性格が強く、合衆国憲法修正やその他の法律等との関係で人権擁護団体等から多くの問題が指摘されている。具体例として本ブログでも取り上げてきた米国EPIC(Electronic Privacy Information Center;EPIC)は“The USA PATRIOT Act”と題する専門的解説コーナーを設けており、そこで同法の歴史的経緯、法的分析・問題点、最新の関連法の改正動向等を取り上げて解説している。

(筆者注5)本人確認法(正確には「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(平成14年法律第32号)」の施行令、施行規則の改正に伴う解説および「犯罪収益移転防止法」に基づく本人確認の内容が金融庁のサイトで確認できる。

(筆者注6)GAOの資料にある“civil penalty”とは正確には行政機関により行政手続を通じて行われる“Administrative civil penalty”であると思う。米国における法律・規則違反等の違反行為に課される罰金(Fine)であり、広義の意味ではこのほかに民事裁判手続を通じて裁判所によって算定・賦課されるCivil judiciary penaltyとがある。なお、内閣府大臣官房独占禁止法基本問題検討室が担当している「独占禁止法基本問題懇談会」の取組は、最近時、EUをはじめ海外でも民事制裁に関する研究・審議が進んでいる分野との整合性を意識したものといえよう。
「独占禁止法における違反抑制制度の在り方等に関する論点整理」参照。
http://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/
わが国の経済界もその動きに神経質になっており、経団連経済法規委員会は本年8月1日付けで『「独占禁止法基本問題」に関するコメント』を公表している。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/057.html

(筆者注7)“credit header data”とは、「姓名(姓名の変更を含む)、住所(旧住所を含む)、電話番号(知られている場合、非表示の番号も含む)、生年月日(通常生年月までに限定)、社会保障番号」をいう。この情報は、個人信用情報の生成過程で発生するが、FTCはそれが顧客の取引履歴の一部でないとして、FCRAでは規制されていない。この問題は1997年1月30日に人権擁護団体である「Privacy Rights Clearinghouse」でも取り上げられており、米国では従来から問題視されていたといえる。
http://www.privacyrights.org/ar/fedres.htm

(筆者注8)米国の保険監督上、「保険」は1944年以前において商業(commerce)とみなされず、連邦法の規制対象外であった。しかし、連邦最高裁判所が連邦議会に実質的に州際の保険事業についての立法権を認め、成立した法律が”McCarran-Ferguson Act(15 U.S.C. §1011)”である。しかし、同法はいくつかの州の保険業規制を定めているが、Sherman Act、Clayton Actおよび連邦取引委員会法(FTCA)では州法によって規制がなされない範囲で、連邦法が適用されるというかたちがとられている。http://www.law.cornell.edu/wex/index.php/

〔参照URL〕
http://www.gao.gov/new.items/d06674.pdf

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米国の全米気象サービス局(NWS)の非気象に関する「緊急情報通知システム」の運用開始

 
 5月6日に米国FEMA(連邦緊急事態管理庁)(筆者注1)から届いたニュースの中で2009年4月30日から運用開始し、5月、6月は段階的運用を拡大するとのニュースがあった。気象学や災害問題の専門家でない筆者は「何のこと」と思いつつ、「非気象」の緊急メッセージ(non-weather emergency messages)という言葉が気になり自分なりに調べてみた。
 そこで見られたのは国家としての自然災害以外に対する社会的な危機情報の安全、効率的な情報収集による危機管理情報ネットワーク拡大とインフラ整備である。商務省全米海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Admini stration;NOAA)(筆者注2)気象サービス局(National Weather Service:NWS)が中心となって取組んでいる新たな国家プロジェクトである。(筆者注3)
 また、5月6日にFEMAは大規模災害緊急事態通報システム・サイト “Disaster Management”ポータルに“HazCollect” を追加しており、当該“HazCollect”の運用州の拡大予定やQ&A等が詳しく説明されている。(筆者注4)
 今回のブログでは単に“HazCollect”の役割や目的だけでなく、情報化社会における大規模災害以外についても正確かつ迅速な緊急情報伝達のあり方について米国の取組みや問題点について解説を試みる。
 なお、当然であるがわが国でも電子政府や大規模災害、疾病等に対応するため関係機関で人為ミスを含むこれらの課題はすでに検討されている(内閣府が整備を進めている防災情報共有プラットフォームである「中央防災無線網」等)と信じたいが、2009年2月9日に開催された内閣官房「防災分野における地理空間情報の利活用推進のための基盤整備に係るワーキンググループ」第2回会合で(財)全国地域情報化推進委員会の説明資料のスライド29頁(自治体は現状、防災現場で紙や口頭で収集した情報を防災情報システムに手入力している場合が多く、現場(避難先や現地調査先)での直接入力が可能になれば効率化、迅速化が図れる)を見る限り、米国でなぜ“HazCollect”が必要なのかという課題が、わが国では今論じられているように思える。


1.HazCollectシステム導入の背景
 NOAA気象サービスの「現場システム運用センター(Field Systems Operations Center):試験・評価課(Test and Evaluation Branch:OPS24)」のサイトで詳しく説明している。
(1)現状の問題点
 従来のNWSシステムは、非気象に関する緊急情報(化学物質流失(chemical spill)、誘拐速報システム(AMBER alerts)(筆者注5)、放射性物質漏れ(radiological events)等)を取扱うが、そのスタッフは現場で手作業で転記しなくてはならない。その転記には時間がかかり、また人為ミスが生じる傾向にある。ある地域では非常時担当管理責任者(emergency manager)は手作業で原稿を作成のうえ、地域の気象予報局(WFO)に電話をする。受け取った予報局側でもタイプミス、文法的な誤り等が発生する。さらに手作業で、WFOの放送スケジュールや警告の原稿を作るのである。
(2)HazCollectシステムによる改善
 HazCollectシステムは、NWS基盤に対する「非気象に係る緊急情報メッセージ(Non-Weather Emergency Messages:NWEMs)の集中と効果的配分に関する包括的な問題解決である。緊急情報(EM)は、災害管理相互運用サービス(DMIS)専用PCを利用して、NWEMsを共通的警告プロトコル(Common Alerting Protocol:CAP)フォーマット(筆者注6)で作成のうえ、次の処理のためにDMISに送られる。
 DMISの利用者モードは「アクチュアル(終端間で実際伝播する)モード」と「テスト(HazCollectセンタのみに送信される)モード」が設定されている。アクチュアルモードでは、NOAAの気象無線の利用者から遠路はるばる放送や情報無線で伝播されてきた情報が集中的にDMISに取り込まれる。また、テストモードの場合は一般大衆には送られず同メッセージの運用試験のみ使用が許される。
 DMISは、新しいHazCollectサーバーにおいて承認・認証されたCAPフォーマット化されたNWEMメッセージをNWS世界気象機関(World Meteorogical Organization:WMO)(筆者注7)フォーマットに変換のうえ送信する。
 またHazCollectサーバーは、既存のネットワークコントロール施設(NCF)や全米気象サービス通信ゲートウェイ(NWSTG)、the Advanced Weather Interactive Processing System (AWIPS)(筆者注8)およびNOAAの全米気象サービス局(NWWS)にNWEMメッセージを送信する。AWIPSからのこれらメッセージはNWEMフォーマットにより処理のうえ、制御変換システム(the Console Replacement System(CRS))に送られ、最終的に広く一般大衆は気象ラジオ等で聴くことができる。

2.HazCollet の当面の運用開始州と今後の運用拡大予定
(1)2009年5月、6月の実施内容と運用開始州
 次の指定された州等で支援プログラム(outreach)、必要とされる教育訓練および登録手続が行われる。ウィスコン州、ケンタッキー州、アラスカ州、ハワイ州、フロリダ州、アイダホ州の一部、ワシントン州東部が5月中に開始する。
(2)5月26日に開始後、7月1日までの他州への運用拡大
 他の州においても順次運用開始する予定である。本ウェブサイトの「州や郡等地方政府が行うべき登録事務(For Governmernt)」を参照のうえ、第一に共同運用グループとしての災害管理相互運用サービスID登録を行う。第二に各担当地域においてHazCollectを使用することについての承認を受ける。

(筆者注1) 連邦国土安全保障省・緊急事態管理庁(FEMA)について筆者なりにFEMAサイト情報に基づき簡単に説明しておく。なお、わが国でFEMAについて消防庁の解説例を読んだ。筆者の解説と比較するとすぐ分かるであろうが、このような内容の不十分さが許されること自体が問題と思う。
(ⅰ)法律上の権限:1988年11月23日に署名された災害救助法(Robert T. Stafford Disaster Relief and Emergency Assistance Act:PL.100-707)(同法は1974年災害救済法:PL 93-288の改正法ある)は、FEMA およびFEMA プログラムに関し連邦政府の対応活動に関する根拠法である。正規職員数は約2,600人である。また災害時に緊急支援に当る約4,000人の予備従業員がいる。
(ⅱ)FEMAの歴史
 1803年議会法(Congressional Act 1803)からFEMAの源をたどることができる。大規模災害対策法としてニューハンプシャーの大火の支援法として成立した。続く100年間にハリケーン、洪水、その他の天災に対応して約100以上の臨時法が成立した。1960年代から1970年代にかけて連邦住宅・都市開発省(Department of Housing and Urban Developmemt:HUD)の中に設置された連邦災害援助局(Federal Disaster Assistance Administration)が連邦の主たる大規模災害対応・復旧に当った(1962年ハリケーン・カーラ(Hurricane Carla))、1965年ハリケーン・ベッツィ(Hurricane Betsy)、1969年ハリケーン・カミール(Hurricane Camille)、1972年ハリケーン・アグネス(Hurricane Agnes)であり、また1962年アラスカ大地震、1971年サンフェルナンド大地震が起きている。これらの一連の災害は新たな保護立法をもたらした。1968年の「全米洪水保険法(National Flood Insurance Act)」は家の所有者に対する新たな保護を設け、1974年「大規模災害救済法」は大統領宣言の手続を確立した。連邦政府の災害援助の努力の複雑さもあり州や地方には多くの並列的救済プログラムや立案をかかえ全米州知事会は州政府の負担の削減をジミー・カーター大統領に求めた。
 同大統領は1979年大統領行政命令(Executive order)により、異なる連邦機関による災害関連責任をFEMAに統合した。すなわち、連邦保険局、連邦消防局、全米災害気象局、一般調達局の災害準備部や住宅・都市開発省の連邦災害救援局の機能を統合した。また、民間の災害防衛責任を国防省の民間防衛準備局から新FEMAに移管した。
 新FEMAはただちに多くの難局に直面した。1979年スリーマイル島の原子力発電所事故、1978年に米国ナイアガラ滝近くのラブキャナル運河(ニューヨーク州)で起きた有害化学物質による汚染事件、キューバ難民危機等である。2001年に新FEMA長官(director of FEMA)を任命後数か月で9.11テロが発生した。これを受けて新たに設置された国土安全保障省との権限調整が行われ、FEMAの全米準備局(Office of National Preparedness)は大量破壊兵器に関する最優先責任機関が与えられた。2006年10月4日にブッシュ大統領は「ポストカトリーナ緊急事態改善法(Post-Katrina Emergency Management Reform Act)」に調印した(FEMAのウェブサイトの同法の正式名称では“Management”がぬけている)が、2005年8月のカトリーナの反省等からFEMAの機能強化を図っている。

(筆者注2) “NOAA”および下部の部局の使命・役割等について説明しておく。
 NOAAは科学的機能を基本とする連邦商務省の下部機関で、規制監督、運用および情報提供サービスに責任を負う機関である。2008年度予算は38億ドル(約3,822億円)、本部・州の全従業員数は約12,800人である。
(使命)全地球環境の理解と米国経済、社会や環境が必要とすることに合致すべく予測、海岸線、海洋、五大湖の資源の保護、維持や管理を行うことである。NOAAの監視が求められる包括的システムは衛星から船舶やレーダーといった監視が求められる方法による日々の安全な生活や基本的な現代経済機能に関する高品質かつ重要な情報を提供することにある。
 米国人はNOAAの極めて多様なサービスー地方の気象予報、沿岸の水の安全性や活力の維持、高品質の海産物の提供持続性、安全な海上運送の保証―をNOAAに依存している。
(組織)6つの局から構成される。①全米海洋漁業局(National Marine Fisheries Service)、②全米海洋資源局(national Ocean Service)、③全米気象局(National Weather Service)、④船舶および航空安全局(Office of Marine and Aviation Operations)、⑤海洋大気調査局(Office of Ocean and Atmospheric Research)および⑥NOAAの各機関の統合的計画策定および統合局(Office of Program Planning and Integration)である。

(筆者注3)わが国の大学やビジネススクールでは絶対教えられない(と言うよりも教える方が知らないのである)日頃筆者が実践する米国の公的機関(立法、行政機関、独立法執行等)を正確に理解する方法を筆者流に説明しておく(この実務的方法は、欧米の大学、ビジネススクールやロースクールで学んだ先生方から伺う限りある程度実践されているように聞く)。
 本ブログの読者も出来るだけこの点を学んで欲しいが、その前提として一定の語学力と公式ウェブサイトからニュースの入手登録(RSSでも可である)が必須である。組織改変や根拠法が変わったりするため、新規登録先数がやたら多くなるので筆者のような暇人?でないと情報管理が難しいと思う(その一方で「世界の変化」が先取りでき、「変化の風」が見えるということでもある)。なお、これに関して特にわが国のメディアや民間「総研」の海外情報の解説記事のレベルが低すぎる。その具体例は“Foreign Media Analyst in Japan”を見ていただきたい(先達の「誤訳」を疑いもなく次々と引き継いでいる)。
①ウェブサイトで、まず“What is XXX”、“About XXX”等のアイテムを探す。
②同機関の根拠法・規則、連邦機関・州の機関・委員会名がつく独立法執行機関(SEC等)・連邦機関でありながら独立の権能をもつEPA等を分類する。特に連邦制度をとる米国では立法、司法、行政機関について連邦機関と州や郡の機関の峻別は重要である(例:司法長官は連邦と各州におり、いずれも“Attorney General”である。“U.S.Attorney”は連邦地方検事である)。
③使命(mission)、目標(vision)や戦略(strategy)等の内容を確認するとももに、機関の歴史をチェックする。
④組織図(organization chart)で組織の規模や下部機関を確認(下部機関の名称を決定する上で重要な点である)
⑤連邦、州等の関係機関を確認する(リンク先)。
⑥機関・各部門の主な業務を確認する。

(筆者注4)FEMAの“Disaster Management”サイトで「オープンプラットフォーム・フー・緊急情報ネットワーク(Open Platform for Emergency Networks:OPEN)」に関し”OASIS Standard”と言う用語が出てくる。参考までに“OASIS”について日経BPnetの解説を引用しておく。
「XML関連の標準化団体Organization for the Advancement of Structured Information Standards(OASIS)のメンバーは、危機管理や緊急事態への準備/対応に関するXMLベースの標準仕様を開発する技術委員会「OASIS Emergency Management Technical Committee(TC)を発足させた。米国時間2003年2月10日に明らかにしたもの。
 Emergency Management TCの目的について、OASISでは「米国の地方/州/連邦政府の司法当局や医療専門家、企業が自然災害や人的災害、緊急事態に対応する際に使う、情報交換用の標準仕様を策定する」と説明している。同TCの活動は、事件認識方法の統合、非常用地理情報システム(GIS)データのアクセス/利用、通知手段とメッセージ送信、状況報告、資産/リソース管理、監視/データ取得システム、組織の調整――などを対象にする。
http://www.oasis-open.org/news/oasis_news_02_10_03.php参照。」

(筆者注5)“AMBER ALERTS”とは、米国内で子供の誘拐事件が発生した場合に、その子供をいち早く救出できるように、テレビ、ラジオ、インターネットのポータルサイト(America Onlineなど)、ハイウェイの電光掲示板などを使って緊急速報を流すシステムである。“AmberAmerica’s Missing: Broadcast Emergency Response”の略語である。

(筆者注6)国土安全保障省等を中心に緊急時のコミュニケーションやより幅広い情報共有のための情報ネットワークが構築される一方、連邦・州・地方など縦の連携が重要となるテロ対策においては、コミュニケーション技術に相互運用性を持たせることが大きな課題となっている。
 緊急医療関係者をはじめとする危機管理関係者に警報を送信するためのXML標準「Common Alerting Protocol」を開発、現在は人材・車両・食料やサプライなどの災害リソースに関するデータ交換フォーマットEDXL(Emergency Data Exchange Language)の設定などに取り組んでいる。(NTTデータの「米国マンスリーニュース2005年7月号:米国のテロ対策とIT」より引用。)

(筆者注7)“WMO”は国際気象機関(International Meteorological Organization、1873年設立)を前身として、1950年より国連の機関としての運営を開始した。WMOの目的は、気象、水文およびその他の観測所の国際的なネットワーク構築に協力すること、気象情報の迅速な交換を促進すること、気象観測の標準化を促進すること、一定のフォーマットで観測結果および統計結果を公表すること、航空、海運、水問題、農業およびそのほかの人間活動に対する気象学の応用を推進すること、水文学の発展を促進すること、気象学における調査および教育を奨励することである。(国際研究計画・機関情報データベースから引用)

(筆者注8) 全米の天気予報士に使用される“AWIPS”は、2003年にOSをそれまでのUnixベースのプロプリエタリー・プラットフォームからLinuxへ変更した。

〔参照URL〕
http://www.weather.gov/os/hazcollect/
http://www.weather.gov/ops2/ops24/hazcollect.htm
http://www.fema.gov/
http://www.disasterhelp.gov/disastermanagement/index.shtm

Copyright ©2006-2009福田平冶 All Rights reserved.

2009年5月5日火曜日

米国FRB、OTS等によるクレジットカード取引規制の厳格化等に係るレギュレーション等改正の動き

〔前書き〕
 本ブログの原稿は、2008年12月20日に一部書き上げていた。しかし、仕事の関係で棚上げになっていたが、2009年4月30日に連邦議会下院でクレジットカード・ユーザー保護法案(H.R. 627)が通過、近々上院も通過する旨のニュースが入ってきた。

 約半年遅れでありニュース価値としてはいかがかと思うが、念のため同時期のブログを検索してみた。やはり米国のクレジットカードの金利に関する専門的なものは見当たらなかった。筆者はHR 627をめぐる原稿を書き始めていたが、FRB等のレギュレーションを正確に理解していないと今回の法案そのものの意義が理解できないであろうから、あらためて取りまとめることとした。


〔本文〕
 2008年12月18日に米国連邦準備制度理事会(FRB)、財務省貯蓄金融機関監督局(OTS)および信用組合管理庁(NCUA)は、「サブプライム・クレジットカード」等の被害拡大阻止や金利内容の表示等透明性確保について、クレジットカード利用者保護強化の観点から関係行政規則の最終案を承認、公表した(筆者注1)。各最終案は連邦取引委員会法(Federal Trade Commission Act:FTC Act)に基づくもので、ほぼ同様の項目・内容である。したがって、今回はFRBの4つのレギュレーションについて規則改正の経緯および内容について説明する(4つのレギュレーションの施行日はいずれも2010年7月1日である)。(筆者注2)(筆者注3)
 特に12月18日のFRBのプレス・リリースや最終案を丁寧に読むと理解いただけると思うが、消費者がいかに複雑な取引スキームを理解できるか、「消費者テスト」や「実証研究」の結果や顧客への各種通知文書様式やサンプルモデル例(連邦官報5426頁以下)を同時に公表している。関係規則(レギュレーション)の改正だけでないこのような実践的対応が、今後わが国の金融監督行政のあり方にも影響が出てくることを期待したい。

 また、これと時期を同じくして、12月19日付で連邦預金保険公社(FDIC)および連邦取引委員会(FTC)は今回取り上げた「サブプライム・クレジットカード」の取扱い業者である“CompuCredit Corporation(アトランタ本部)”、と他2行に対し、240万ドル(約2億3,520万円)の連邦財務省に支払う民事制裁金(civil money penalty))を含む1億1,400万ドル(111億7,200万円)(欺まん的マーケティング行為を行った企業に対する被害顧客への資金返還による原状回復(restitution)(筆者注4))で和解(settlement)した旨発表した(筆者注5)。この問題は2008年6月10日にFTCがCompuCredit Corporation(その100%子会社の債権回収会社を含む)、また連邦預金保険公社(FDIC)とが同社と他2銀行(“First Bank of Deraware(デラウエア本部)”および“First Bank & Trust(ブルッキング本部)”)を同時期に監督機関としての法執行行為を起こした結果である。米国流の「一罰百戒」主義の結果という見方もあろうが、与信金利のあり方をめぐり不動産融資(サブプライム・ローン)だけでなく、クレジットカードという消費者にとって極めて重要かつ日々の生活に影響する問題が放置されてきた米国の金融の実態が垣間見える。この問題についても併せて解説する。

 いずれにしても、今回制定されたレギュレーションは従来の米国のクレジットの業界ルール・常識を根本から変更する内容が含まれており、わが国の監督機関や関係業界においても十分かつ慎重な検討が必要となろう。


Ⅰ.FRB等によるクレジットカード取引の不公正な実務や無理な口座貸越サービスから消費者を保護するための政策方針策定および行政規則改正案の提案

(1)FRB、OTSおよびNCUAによるレギュレーション(行政規則)改正案の公表およびパブリックコメントの徴求
 FRB、OTSおよびNCUAは2008年5月2日付で連邦取引委員会法5条(a)および同法18条(f)(1)に基づき、レギュレーションの改正案を発表した。その社会的背景については(筆者注2)に概要を述べたが、抜き差しならぬところに行き着く前に手を打つ考えが強く打ち出されていた。

 改正の対象となるレギュレーションはこの時点では次の「3つ」である。今回の改正の中心は“Regulation AA(12 CFR 227)(FTC Actが根拠法)”および“Regulation Z(12 CFR 226)( Truth in Lending Actが根拠法)”で、“ Regulation DD(12 CFR 230)( Truth in Saving Actが根拠法)”はその補完的な改正であり、また2008年12月の最終案ではRegulation E(12 CFR 205)( Electronic Fund Transfer Actが根拠法)の改正案が追加され、連邦官報(Federal Register)発行後60日間のパブリックコメントに付されている。

(2)Regulation AA (不公正・欺瞞的な行為(unfair deceptive act)またはその実践(Practices))の禁止にかかる最終規則(2010年7月1日施行)
 その主な内容は次のとおりである。

(A)カードユーザーの支払にかかる時間的猶予提供の義務化(Time to Make Payments)
金融機関が、ユーザーに支払準備のための合理的な時間を与えずして支払遅延扱いとすることを禁止する。

(B)異なる残高に適用される場合に高い利率の優先適用または比例配分適用の義務化(Allocation of payments)
 通常金利(APR)と異なる年利(APRs)が異なる残高に対し適用される場合(すなわち、キャッシング(cash advances)、買物(purchases)、別口座からの資金振替(balance transfers)(筆者注6))、金融機関は次の3つのいずれかの方法によるかまたはユーザーにとって同様に有利な方法により最小支払額を越える金額を支払いに当てなくてはならない(従来のカード実務は最も低い金利を適用するのが通例であった)。

(i)初めに最高金利を全残高に対し適用する。
(ⅱ)各残高に対し同等額を支払に当てる。
(ⅲ)残高間において比例割合で支払に当てる。
 仮に、当該口座が営業推進的な金利割引残高または金利の支払が延期されていた場合、金融機関は一定の例外の場合を除き、まず初めに割引でないか延期されていない最小支払額を超える金額を支払に当てなければならない。
 金融機関は、割引金利または延期でない支払と言う理由のみでユーザーからの延滞金利がかからない支払猶予期間(grace period)の申出を拒否してはならない。

(C)金融機関は、次の場合を除き口座開設時にすべての適用金利を開示しなければならず、未払残高に対するこれらの金利の引上げ変更は禁止される(Increasing Interest Rates)。
(ⅰ) 推進的優遇金利期間が満了した場合
(ⅱ) 金利変更がLIBOR等インデックスの運用(変動金利)に従った場合
(ⅲ) レギュレーションZが求める45日前の通知後のみの新取引の場合
(ⅳ) 最小支払額を支払期限後30日以内に受領できなかった場合

(D)金融機関は、現行の通常の支払方法である1か月支払から2か月または3か月にまたがる期間に対しても前月の金利を適用する上乗せ支払すなわち2サイクル請求(筆者注7)や3サイクル請求という支払い方法を禁止する(Two-cycle Billing or Three-cycle Billing)。

(E)最終規則は、サブプライム・クレジット・カード(筆者注8)といった高手数料と低貸出枠のカード・ビジネスに対する懸念を示している。金融機関は最初の12か月の費用請求額が最初に設定した信用枠の50%を超えるような口座開設手数料やメンバー会員手数料といった決済担保預金や高額手数料(Financing of Security Deposits and Fee)(筆者注9)を課すことが禁じられる。また、カードの信用枠に最初に設定した信用枠の25%~50%という決済担保預金や手数料を課すとともに追加的に少なくとも次の5回の請求時期の間に拡げるような要求は禁止される。

(3)Regulation Z (貸付真実法の徹底)
 本規則はクレジットカード口座およびその他のリボルビング利用計画(自宅を担保としない)に関し効果的な情報開示が受けられるよう見直しを行うものである。

(A)申込と提案書文言(Applications and solicitations) G-10(B)
最終規則は消費者にとってより意義がありかつ使い勝手が良いクレジットカードの申込や提案書の様式(シューマー・ボックス:Schumer Box)(筆者注10)や内容を定めるべく改正を行ったものである。
(ⅰ)様式の改訂(format revisions):新様式は金融機関に対し、文字の大きさ、重要事項の太字体表示、当該情報の表示箇所等に関する簡易表の準備を要求する。
(ⅱ)内容の改訂(content revisions):金融機関は罰則的金利が適用される場合、変動金利に関する簡易な開示内容および買物に関する支払猶予がどのような場合に認められまたは認められないかについて内容の改訂が義務付けられる。

(B)口座開設時に係る費用の開示(Account-opening disclosures)
 最終規則は、口座開設時の費用についてより目立ちかつ読みやすい情報提供を行えるようすることは義務付けられる。一定の重要な条件は、口座開設時に申込と提案書文言と実質的に同様の簡易表形式で表示するものとする。

(c)定期的通知文書における開示の改善(Periodic statement disclosures)
 最終規則は定期的通知文書においてより理解しやすく手数料や金利負担に関する説明のグループ化行うべく様式の変更に関する規定を設けた。主な変更点は次のとおりである。
(ⅰ)金利費用と諸手数料(Interest Charges and Fees)
 金利費用と諸手数料は月ごとに別々にグループ化して表示しなければならない。金利費用は買物、キャッシングと言うタイプに分けて項目化しなくてはならない。
 過去1年間の手数料と金利費用は別々に表示する必要がある。
(ⅱ)実質年利(Effective APR)
 開示の要件として同条件に関する消費者の理解を欠くため廃止する。新たな要件としては、与信総額として月別および過去1年間の手数料と金利費用が効果的に表示されなければならない。
(ⅲ)最小支払額の開示(Minimum Payment Disclosure)
「2005年破産濫用防止および消費者保護法(the Bankruptcy Abuse)Prevention and Consumer Protection Act of 2005」が定めるとおり、現時点の返済残高にとって必要な最小支払金額が開示されなければならない。

(D)消費者の金利やそのた口座の利用条件の変更
 最終規則は金利の引上げ等口座の利用条件に関する書面による通知を受け取る環境を拡大するとともに、変更が実施される前に通知されるべき回数を増やした。
(ⅰ)利用条件の変更にかかる事前通知の増加(Increase inAdvance Notice for Change in Terms)
 最終規則は消費者が代替的資金手当てや口座の使用方法を変更するなど対策が撮りやすくするため従来の15日前から45日前に変更した。
(ⅱ)罰則的金利引上げに関する事前通知(Requiring Prior Notice for Penalty Rate Increase)
 与信者は支払延滞(delinquency)、支払不能(default)または罰則としての金利引上げの45日前に事前通知を行わなければならない。
(ⅲ)簡易表(Summary Table)
最終規則は定期的通知に添えて条件変更または罰則的金利適用通知を行うときは、重要な条件が変更される旨定期通知の表面に一覧形式で開示内容を表示することを求める。

(E)追加的消費者保護(Additional protections)
 最終規則は次の追加的保護規定を定める。
(ⅰ)固定金利(Fixed Rates)
 広告において固定金利と表示する場合は、金利が固定される期間を明記しかつその期間中においていかなる理由でも金利変更は行わないことを明記しなくてはならない。
(ⅱ)受付時間や郵便為替の締め切り時間(Cut-off Times and Due Dates for Mailed Payments)
 貸付者は締切日のタイミングを考慮し合理的な郵便為替の締め切り時間を設定しなければならない。最終規則では同時刻を午後5時とみなす。週末や休日にあたり、仮に郵便為替が締め切り期日の受け付けられなかったときは貸付者は翌営業日に受け付けたものとしなくてはならない。

(4)Regulation DD (貯蓄真実法の徹底)
最終規則は貸越に関する開示内容を定める。

(A)合算した貸越手数料の開示(Disclosure of Aggregate Overdraft Fees)
 最終規則は全金融機関に対し定期的通知文書において通知期間および過去1年間の貸越手数料(overdraft fees)および残高不足手数料(returned item fees)の合計額をドル表示で開示しなくてはならない。現状は、貸越やその推進・広告中の金融機関のみ表示が義務化されている。

(B)残高情報の開示(Disclosure of Balance Information)
 最終規則は金融機関に対し自動通知システムによる貸越限度額という追加的資金を除く口座残高情報の提供を義務付ける。

(5)Regulation E (電子資金振替)
 本規則は消費者に対して課す貸越手数料について次のとおり一定の保護を定める。
(A)貸越サービスに係る消費者の選択の機会(Consumer Choice Regarding Overdraft Services)
 改正案は取引金融機関によるATMやオンラインデビットカード利用時の貸越について2つの選択についてコメントを求める。
(ⅰ)オプト・アウト:第一のアプローチとして、金融機関は消費者が初めの通知で貸越手数料について説明されていないでまた消費者が当該金融機関の貸越サービスを受けることをオプト・アウトする合理的な機会があり、かつ消費者がオプトアウ権を行使しなかった場合は手数料の徴求は禁じられる。
(ⅱ)オプト・イン:第二のアプローチとして、消費者が金融機関に対し明らかに貸越手数料につき同意している場合を除き手数料の徴求が禁止される。

(B)債務額の保持による貸越手数料を課すことの制限(Debit Holds)
 改正案は、実施のカード利用金額を越える口座残高がある場合は貸越手数料を課すことを禁ずるものである。この改正案は取引承認後短時間に取引額が確定するデビット・カード取引の場合に限定される。

Ⅱ.連邦預金保険公社と連邦取引委員会によるサブプライム・クレジット・カード推進金融機関に対する法執行行為および連邦地方裁判所への提訴とその和解結果

(1)FDICによる行政法執行行為(enforcement action)の発動
(A)2008年6月10日連邦預金保険公社は“CompuCredit Corporation”に対し連邦取引法違反となる問題とされるサブプライ・クレジット・カードの営業推進活動について監督機関としての法執行行為を取ることを公表した。

 法執行行為の内容は、FTC法違反の是正および欺罔的マーケティング活動から生じた消費者の支払った手数料や費用の原状回復を求めるもので、その総額は約2億ドル以上になると推定される。またFDICはCompuCredit に対しては6,200万ドル(約60億8千万円)、“First Bank of Delaware”と“First Bank of Delaware”に対しては総額431,000ドル(約4,200万円)の現状回復を求めたのである。
 その欺罔的クレジットカードのマーケティングとはどのようなものであろうか(問題となる点はFTCのリリースとほぼ同様であり、FDICのリリースに基づき説明する)。

①カード利用計画書において重要な前払い手数料(upfront fee)に関する適切な開示を怠るとともに当初の与信限度額について事実を偽った。すなわち、計画書では与信限度額は300ドル(約29,000円)とされているのもかかわらず、消費者は直ちに不適切に開示された185ドルの費用を請求され、実質的な与信限度額は115ドルに据え置かれた。

②わずかにクレジットスコアが高い消費者に対し、3,250ドル(約319,000円)を上限とする与信限度額は実は最初の90日間のみという点の開示を怠り、さらにユーザーの買物の状況をモニタリングするなどして潜在的に与信限度を引き下げた。

③あらかじめの費用差引額は、新カード口座にただちに振り替えられ信用情報機関には完全に支払がなされた旨報告がなされると計画書に表記されており、実際ユーザーは25%~50%を支払ったにもかかわらず費用差引き額を12か月以上支払っていないとしてVisaカードが入手できなかった。

(B)FDICは2008年12月19日、欺罔的カードのマーケティング行為を行った“CompuCredit Corporation”、“First Bank of Delaware”、“First Bank & Trust”に対し240万ドル(約2億3,500万円)の財務省に払う民事制裁金(civil money penalty:CMP))を含む被害顧客への資金返還による原状回復(restitution)を和解(settlement)した。また、被害を受けた顧客のうち適格者には総額370万ドル(約3億6,300万円)の現金がCompuCreditから返還される。(筆者注11)

なお、FDICは今回和解した3社以外に“Columbus Bank and Trust Company:CBT”に対しても法執行行為を行っているが、CBTは行政手続訴訟(litigation)に入る前に当初の与信限度に関するすべての手数料や制限について開示するという業務停止命令(Cease and Desist Order)と240万ドル(約2億3,500万円)の民事制裁金に合意している。また、CBTはCompuCreditが仮に現状回復に応じなった場合でも750万ドル(7億3,500万円)のバックアップの現状回復(back-up restitution)に同意している。

(2)FTCによる連邦地方裁判所への提訴と和解結果
(A) 連邦取引委員会は、2008年6月10日に“CompuCredit Corporation”およびその100%子会社の債権回収会社である“Jefferson Capital Systems,LLC”に対し、比較的所得の低い(クレジットスコアが低い)サブプライム利用者層に向け欺罔的クレジットカードの販売を行った行為は、連邦取引法および子会社の行為は「公正債権回収実施法(the Fair Debt Collection Practices Act:FDCPA)」に違反とするとの苦情申立を4-0で採択後、ジョージア州北部地区連邦地方裁判所に提訴した旨公表した。

(B) FTCは、2008年12月19日“CompuCredit社”および“Jefferson Capital Systems,LLC”との間でFDICの説明で述べたとおりの連邦法違反に基づく現状回復と民事制裁金について合意した。

(筆者注1)FRB等3機関の規則改正の背景、検討経緯、パブコメの分析、GAO(連邦議会行政監察局)等政府関係機関の分析結果等内容はすべて12月18日付の連邦官報(Federal Register)に掲載されているので、関係者はぜひ正確に読んで分析してみて欲しい。

(筆者注2)今回のFRBやOTSの措置については、2008年12月19日の日経新聞朝刊が報じている。しかし、同社が2008年2月18日「NBonline」で報じた記事は米国のクレジットカード業界へのサブプライムの波及という問題を正面からは取り上げていない。さらに言えば、朝刊記事では「米連邦準備制度理事会(FRB)と貯蓄金融機関監督局(OTS)は18日、クレジットカードに関する規制を強化することで合意した。」とある。しかし法的な説明としては曖昧な内容である。

 すなわち、第一に本ブログでも紹介したとおり、FRB、OTSおよびNCUAが金融機関監督権限にもとづき、連邦取引委員会法18条(f)(1)[15 U.S.C.§57(a)]および5条(a)[15 U.S.C.§45(a)](筆者注3)を根拠として所管の行政規則改正を行った点について言及していない。また当然であるが、本文に述べたとおり2008年5月2日にパブコメに付しており行政手続に則ったものである。単なる監督機関の合同緊急対策ではない。第二に、米国の住宅ローンに始まるクレジット・クランチ(信用収縮・金融収縮による金融システム機能の危機的状況)が、最大の融資市場である米国のカード業界まで巻き込んできた危機的な状況を正確に伝えていない。米国の個人の借り手は先般の日経新聞も報じられているとおり、年金や保険を取り崩したり、ペイデー・ローン(米国で行われている給料を担保に金を借りることができる短期のローン。ペイデーは、給料日のこと。米国の給料の支払いが原則2週間周期のため、返済期限は2週間がメインとなっており、低所得者層が生活のために利用するケースが多い。それぞれの州で規定している上限金利に違反して高金利で貸し付けたり、違法な取立てなどで訴訟が発生しているため、州によっては利用が規制されている。)や質屋といった高金利への避難が極めて目立ち始めているのである。

 この点は、米国弁護士山本寿賀氏のサイトでも「給料日ローン」として具体的に紹介されている。
わが国で景気低迷がこのまま進んだら、個人レベルで同様に大きな社会問題化することは間違いないといえる。

(筆者注3)アメリカの連邦制定法を検索する場合、「法律名」と「合衆国法典」の2つの検索方法があり、専門外の人は混乱している例が多い。簡単に両者の相違を説明しておく(本文中ではあえて両者を併記した)。なお、より米国以外の国も含め法律や判例その他裁判制度等について本格的に勉強されるのであれば、東京大学法学部研究室図書室外国法令判例資料室(旧外国法文献センター)京都大学大学院法学研究科附属国際法政文献資料センター、東北大学大学院法学研究科・法学部(国際法サイト)などを散策すると理解度が高まろう。

「米国では、連邦議会で法律が制定されるとまず"Public Law(例えばPub.L.108-159と表示)"として発行されます。これは、議会に提出された法案の名称(例えば、the Fair and Accurate Credit Transactions Act of 2003)を踏襲しています。その後、分野別に体系化された「合衆国法典“United States Code(U.S.C)”」として編纂されます。U.S.C.は、合衆国憲法及び連邦議会が制定した法律で現在有効であるものを系統的に編集した法律集。50の編(Title)で構成され、さらに章、節に分かれています(同法の場合は、15 U.S.C. 1601)。

従って、名称で検索する場合、Public Law ファイルを利用します。一方、修正や変更を経た現在有効である法律を参照する場合は、“United States Code”を利用します。」(LexisNexisサイトから引用。筆者が一部補足的に変更した。)

 なお、米国の法律名は上記のとおり法案の名称をそのまま引き継いでいることから内容を正確に反映していない場合がある。例えば“Bank Secrecy Act”は、内容に即して言うと 「銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務に関する法律」である。直訳的な「銀行秘密法」で引用される例が多いが、これでは読者には法律の内容はかいもく理解できない。ただし、これに類似する例がわが国でもある。「電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成13年法律第95号)」を経済産業省や地方自治体等多くの説明が同法の略称を「電子契約法」とする例が目立つ。

 しかしながら、同法は正式名のとおり、(1)電子消費者契約における顧客の操作ミスによる要素の錯誤無効制度に関する民法95条の特例  (2)電子契約の成立時期の明確化(発信主義から到達主義に転換)に関する民法97条1項および同527条1項の特例を定めた法律である。

(筆者注4)欺罔的マーケティング行為を行った企業に対する被害顧客への現状回復(restitution)という民事的制裁方法については、わが国でも研究が行われているが専門的なものは少ない(あえて言えば「独占禁止法における違反抑止制度の在り方等に関する論点整理」平成18年7月21日内閣府大臣官房独占禁止法基本問題検討室取りまとめ等であろう)。なお、“restitution”を「不当利得返還」と訳しているレポートがあるが、そうであるなら“restitution of unjust enrichment”が正しい原語であろう。

(筆者注5)連邦預金保険公社の3行に対する提訴や和解の記事はわが国でほとんど報じられていない。その理由の1つ米国のクレジットカードの利用の実態について解説できる関係業界も含め専門家が極めて少ない点があげられ、また消費保護面から取組んでいるメディアも少ないことがあげられよう。
“First Bank of Deraware”および“First Bank & Trust”はすでにFDICと和解済である。

(筆者注6)“Balance Transfer”について解説しておく。クレジットカードを作る際に、他のクレジットカードの口座残高をそのまま新しいカードに振り替えることができる。この際、キャンペーン等で0%金利などが適用されるので、有利だと思ってしまう場合がある。しかし、実際にSchumer’s Boxで詳細を読むとそうでないことが分かる。まず、残高を振替る際に手数料(transaction fee for balance transfer)が取られる。Citi Simplicityの場合でみると振替金額の3%と決まっているが、金額が決まっている場合もある。いずれにせよ、手数料が取られては0%金利でも有利にならない。また、振り替えた残高に対する金利は0%であるが、そのカードを使って新しくできた残高に対しては通常の金利(10.49%)が適用される。そして一番大きな問題点であるが、毎月の支払いは金利の低い分から先に返済されるため次のような問題が生じる。例えば$1,000の残高を別のカード残高から振替し、0%金利が適用されたとする。しかし、新たに$500の買い物をして、通常金利が10.49%だったとすると、その月に$1,000を返済しても、それは0%金利の分として返済され、残った$500は金利10.49%が適用される債務残高ということになる。つまり、0%だと思って移しても、そのメリットはほとんどないということになる。なお、この説明は今回のレギュレーションAAの改正により、解決されたといえる。

(筆者注7) 通常1か月ごとに決済するカード決済が2か月や3か月にわたる返済になるもので、最終的な定期月額金利(Periodic Interest Charge)が高くなるためこれを禁止する。興味のある方は“Single –cycle billing”と“Two-Cycle billing”との比較ウェブサイトで実際比較計算してみよう。なお、”Periodic Interest Charge”とは何を言うのか。通常金利の表示は「年利(APR)」であるがクレジットカードの金利は頻繁に変動することもあり、1か月あたりに換算した金利表示のことを言う。すなわち、APRが8%であるならば“Periodic Interest rate” は0.08/12=0.666%となる。

(筆者注8)サブプライム・クレジット・カードとは不動産担保ローンより社会的影響が大きい問題である。ボストン連銀が“Communities & Banking” 2008年秋号で“Subprime Credit Card Business Model”として紹介している。住宅担保による借入や差押さえが懸念される「サブプライム」利用者層だがそれでも消費資金が必要という人を対象とするPredatoryなクレジット・カードが売られているというものである。どこがPredatory(暴利を貪る)かというと、250ドルの信用枠(credit availability)を設定すると、初期費用(1回のみ)として124ドル、年間の使用料等として132ドルをとられる。また250ドルの枠を設定すると、カード会社は利用者から初年度に256ドルを徴収する。この違法性の高いビジネスの特徴は、他の借入の返済は劣後されても、クレジット・カードの返済は生活資金枠確保のために優先される、したがってとりっぱぐれも少ないという点であり、まさに大きな社会問題といえる。

(筆者注9)“security deposit” とは、カード請求時に決済用に使用できないクレジットカード決済用担保預金である。与信限度額を悪用する顧客対策として一般的に設定されており、スイスの銀行の例でみると毎月の与信限度額の最大1.5~2倍を同預金として口座開設銀行に預けることが義務付けられ、同資金は別口座で管理され投資会社にファンドとして運用される。

(筆者注10)いわゆるクレジットカード利用に関する「シューマー・ボックス」とはいかなるものか。実は貸付真実法に基づきクレジットカード利用者に向けた表形式の表示の義務に関する規則化(レギュレーションZ:2000年施行)を働きかけたニューヨーク選出の上院議員の名前(Chuck Schumer)を取ったものである。
わが国では、米国生活をする日本人が多い割にはクレジットカードの利用方法を正確に説明しているウェブサイトが皆無である。本ブログの目的の1つに「消費者保護」を掲げている以上、多少詳しく解説しておく。

 参考にした逐条的な情報は約3年前のものであり、そこで引用しているシティバンクのクレジットカード“Citi Simplicity”は現在利用できないが、「シューマー・ボックス」の説明自体には影響がないのでそのまま引用する。今回のレギュレーション改正に伴い「シューマー・ボックス」の表示方法も変更されるはずである。

 なお、クレジットカードの利用に関する一般人向けの用語解説がFRBサイトで閲覧できる。
(1)年利(Annual percentage rate:APR):口座開設から12か月の導入期間は0%で、以降は10.49%(変動)である。

(2)その他の年利(Other APRs):他のカード口座からの残高の振替やキャッシングに係る金利である。前者については最初の残高が口座開設後12か月以内に行われた場合は12か月間は0%で以降は10.49%(変動)である。後者については、22.49%(変動)である。その他遅延損害および与信限度額超過金利(default rate)は、31.49%である。

(3)変動金利に関する情報(Variable rate information):
あなたのAPRは各請求期間ごとに変更される。買物や資金振替(balance transfer(筆者注6参照)については、プライム・レートプラス2.99%、キャッシングの場合はプライムレートプラス14.99%等となる。

(4) 延滞金利がかからない支払猶予期間(grace period):
支払期日までに各請求期間に完全に新残高を支払ったときは少なくとも20日間とする。

(5)新しく買物できる平均残高の自動計算結果(method for computing balances):
この方法はカード発行人がユーザーのファイナンス・チャージを計算する最も一般的な方法であり、あなたが毎月クレジット残高を全額支払わない場合に適用される。

(6)年会費(annual fee):
適用がなければ”None”と表示される。

(7)最小ファイナンス費用(minimum finance charge)

(8)外国通貨による買物を行う場合の取引手数料(Transaction Fee for Purchase ,ade in a Foreign Currency):
 米国ドルに変換後外国通貨で買物をしたときは3%の交換手数料がかかる。

(9)キャッシングの場合の手数料は各キャッシングにつき3%(最小5ドル)、資金振替額の3%(最小5ドル、最大75ドル)である。

(筆者注11)FDICのリリースによると適用されるべき現在残高が与信金額を下回る適格ユーザーは具体的な請求行為は不要であり、CompuCredit社からの通知に基づき、現金の返却を受けることになる。その他の適格ユーザーは正当な与信額が通知される。なお、これらの通知や現金の返還内容はFDICが認めた独立会計事務所により検証される。

〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20081218a1.pdf
http://www.fdic.gov/news/news/press/2008/pr08142.html
http://www.ftc.gov/opa/2008/12/compucredit.shtm

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2009年4月30日木曜日

緊急リリース(豚インフルエンザの最初の犠牲者はチフス・メアリーか)

「鳥インフルエンザ問題(bird flu)」から「豚インフルンザ問題(swine flu)に変わって1週間もたたない内にメキシコを中心に世界中にその死者が広がっている。
 未知のかつ極めて危険な伝染病の危機管理に関し、その兆候に鈍感であった初動調査のミスや情報開示の不徹底の問題が問われる例として、いずれ日本の新聞等でも記事になるであろう。なお、5月1日NHKの「クローズアップ現代」でこの情報を紹介している。
「英国インディペンデント紙」が引用しているAP通信の記事を紹介する。


 4月29日AP通信
 メキシコ南部観光都市のオアハカ(Oaxaca)の税務調査官(tax inspector)マリア・アデラ・グレティエス(Maria Gutierrez)39歳が病院外で死んだ。彼女の仕事は個別訪問が任務であり、メキシコの医療関係者の話のよると特定できないが少なくとも300人と接触している時に、彼女は最も伝染力の強い状態であったとされている。

 彼女は4月8日に地元の病院で豚インフルエンザ発病が認められ、その5日後に死亡した。彼女は糖尿病(diabetes)と激しい下痢(severe diarrhoea)によって悪化した急性呼吸障害(acute respiratory)で、数十人に感染したと信じられている。

 豚インフルエンザをメキシコの公的機関が特定する3週間前に彼女は死亡していたという今回の彼女に関する情報は、学校、官庁や多くの職場が非常警戒態勢の中から出てきた。2,000人以上が感染している状態でメキシコの豚インフルエンザの疑いのある死亡者数は4月28日夜の時点で152人に達している。米国では確認されたケースが64件、1ダース以上の感染者が出ているカルフォルニア州は健康緊急事態宣言を行っており、WHOは世界中で79例の確認事例を通知している。

 グレティエスの最後は、メキシコにおける混沌と秘密主義によるインフルエンザの大流行であるとして論争を呼ぶ可能性がある。彼女の治療にあたったオアハカの“Hospital Civil Aurelio Valdivieso”病院当局は、4月21日まで伝染病で死亡したことを十分確認せず、その時点でさらに1人の患者が死亡したのである。

 担当医は、当初グレティエスは肺炎(pneumonia)で苦しんでいると考えた。しかし、さらに16人の患者が重症呼吸器感染(severe respiratory infection)の兆候を示した時、緊急治療室の周りに隔離領域を設置した。その後まもなく同州の保健当局は彼女が最近時に接触したすべての人を捜し出し、健康診断を行い始めた。

 その極めて慎重な姿勢は、グレティエスが現代のチフス・メアリー(Typhoid Mary) (筆者注1)であったかも知れないということを示唆した。当局が捜し出した300人には、彼女は3月下旬から4月前半に家庭等を訪問し面談した人々が含まれていたのである。地元筋の情報では死者はいないが、33人から61人の面談相手はインフルエンザに似た病気の「兆候」を示していたと米国医療危機管理会社(Veratect)に述べていた。(筆者注2)

 オアハカはオアハカ州の歴史的な首都でメキシコの南太平洋岸の山岳地帯に位置する。この地理は豚インフルエンザの猛威に関し重要な点である。エドガー・フェルナンデス少年(4月2日に感染したがその後完全に回復 )は4月27日に患者ゼロ宣言を続けてきたメキシコ保健相ホセ・アンジェロ・コルドバ(Mexico’s Health Secretary Jose Angel Cordova)が公式に患者を認めた第1号である。少年はベラクルス地方のラ・グロリア(La Gloria)の小さな町に住んでおり、今回の爆発的広がりの潜在的源とされる広大な養豚場の5マイル風下に住んでいた。この農場は米国の農業会社であるスミス・フィールド(Smithfield Foods)が所有しており、メキシコの同子会社では1年間に100頭以上の子豚が生まれている(筆者注3)

 2009年2月に何十人も地元住民が奇妙なインフルエンザに似た病気にかかり始めた。2009年4月6日にラ・グロリア市(人口3,000人)は「警戒宣言」を発し400人が治療を要し1,800人が呼吸困難を示していた。保健所員は町を封鎖したが家の中を飛ぶ巨大な数のハエの撲滅を開始した。しかしながら、彼らはこの大発生が豚インフルエンザとは認識しておらず、町に集まった報道陣は結論を急がないよう促された。

 しかし、地元住民はそのことを信じていなかった。ホセ・ルイス・マルチネス(ラ・グロリアに住む34歳)は4月25日にレポーターに対し、高熱(fever)、咳(coughing)、関節痛(joint aches)、激しい頭痛(severe headache)、嘔吐(vomiting)や下痢(dirrhoea)が症状として出ると言うテレビを見てすぐに自分の周りの人々の症状であると理解したと述べている。

 4月25日首都であるメキシコシティに非常警戒宣言が出された。大規模集会が禁止され人々は公然とマスクをつけレストランはテイクアウトのみでバーは午後6時には閉めるという状況である。豚インフルエンザの猛威は、4月のはじめの2週間で首都に到着すると見られていた。メキシコの聖週間(Semana Santa:Holy Week)では全国から首都に100万人が集まる時期であったからである。

(筆者注1) チフス・メアリーの本名は、メアリー・マローン(Mary Mallon)である。Wikipediaほかによると「世界で初めて臨床報告されたチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi)の健康保菌者(発病はしないが病原体に感染していて感染源となる人)。ニューヨークに移住したアイルランド系移民のシェフで、1900年代初頭にニューヨーク市周辺で散発した腸チフス(Typhoid fever)の原因になり、53人に感染させうち3人が死亡、彼女自身1938年に死亡、「腸チフスのメアリー」あるいは「チフスのメリー(Typhoid Mary、タイフォイド・メアリー))という通称で知られる。」

(筆者注2)Veractect社のCEOの説明によると、今回の豚インフルエンザ問題で世界的伝染病予防危機管理機関である「米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)」に対し、2009年3月末にメキシコでのインフルエンザの流行の兆候を初めて行っており、またコロラド州、ネバダ州、ワシントン州の厚生関係機関にこの情報を提供していた。同者の特徴は人工知能や多言語アナリストの世界的ネットワークを駆使して24時間365日体制で疾病の追跡情報をカークランドとアーリントンの運用センター(30人体制)で監視を行っている。同CEOの説明では世界中のブログを見たり情報提供を行いながら迅速な情報収集を行っているとのことである。

(筆者注3)この関係について、わが国のブログがメキシコの人権擁護グループ“LA VOZ DE AZTLAN”の報告を紹介している。
「豚フルー感染爆発の“グラウンド・ゼロ”は米国畜産大手スミスフィールド・フーズの子会社グランハス・キャロルで、昨年末から感染が始まっていたことが判明。
《ラ・ボス・デ・アストラン》はメキシコの非抑圧状況を鋭く分析する情報サイトとして定評があるが、今回のレポートによると、米国系大手畜産企業の子会社が、メキシコシティから100マイルほど離れた場所で運営している養豚場が、豚フルー感染爆発の“発生源”とのこと。この養豚場は衛生管理がズサンで、屎尿の沼ができており、大量のウイルス媒介昆虫が“涌いていた”という。すでに昨年12月には感染が始まっており、今や周辺住民の6割が感染症状を呈しているという。だが養豚企業側がワイロを使ってこのスキャンダルの露呈を阻止しており、地元ベラクルス州当局が、この問題を暴露した村民を「虚偽風説流布」の罪状で逮捕するという状況になっているという。
このレポートの内容が事実なら、米国とメキシコからの豚肉は感染リスクが高いので、輸入禁止措置も検討されるべきであろう。」
http://www.asyura2.com/09/buta01/msg/146.html

〔参照URL〕
http://www.independent.co.uk/life-style/health-and-wellbeing/health-news/swine-flu-was-first-victim-a-modern-typhoid-mary-1675807.html

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2009年4月17日金曜日

米国IC3やFinCEN等によるインターネット犯罪や不動産担保ローン詐欺の最新動向報告



 わが国を含め、コンピュータ犯罪の情報収集の中心的機能を担っている米国インターネット犯罪苦情センター(Internet Crime Complaint Center:IC3(筆者注1)が、米国における2008年版調査結果”2008 Internet Crime Report”を発表した。

 IC3が公表した最新コンピュータ犯罪報告の2007年版については、KDDI総研の藤崎太郎氏が詳細に報告しており(筆者注2)、2008年報告も共通的な項目分析が行われていることから、本ブログでは2008年版における特徴点を中心に述べることとする。

 また、本ブログでも過去に紹介してきた米国のマネーローンダリングの取締機関である連邦財務省金融犯罪法執行ネットワーク(Financial Crime Enforcement Network:FinCEN)は金融機関に対する不動産担保ローン詐欺(Mortgage Fraud Report)に関する第4次報告を行っている。
 Mortgage Fraudについて、サブプライムローンの損失や差押(foreclosure)拡大と時期を会わせ2006年からFinCENによる報告が行われており、第4次ということからその傾向を追いながら解説を試みる。

 いずれにしても「振り込め詐欺」やマネーローンダリングの例に見るとおり、筆者が従来から追い求めている「進化し続ける詐欺社会」から庶民を守るには、あらゆるメディアを活用した「迅速な警告体制」と被害予防のための情報提供であろう。その意味で、法執行機関である警察庁サイバー犯罪対策プロジェクトの最新予防策のための“Cyber Warning” による最新の警告が、2006年7月ということはサイバー犯罪の範囲をIT技術を駆使した犯罪面だけに狭く解しすぎているのではないか。(筆者注3)

 一方、米国では、例えば前記「 2008 Internet Crime Report」付属資料2(Appendix-2)において犯罪阻止のための犯罪類型別留意事項と具体的な相談・苦情届出先(Best Practice to Prevent Internet Crime)をまとめている。きわめて簡単な内容ながら一般消費者向けの効果的な情報提供例といえる。(筆者注4)

実際、連邦司法省やFBIサイトを見ていると1週間に1~2回は詐欺裁判の有罪判決のリリースが出てくる。こんなに詐欺が多いのかと感心しているわけにはいかない。改めて本ブログでも詐欺特集が必要になるであろう。

 他方、先般本ブログで紹介したオーストラリアのSCAMwatchも詐欺の範疇を広くとらえたうえで詐欺手口の解説を行っており、消費者にとっては極めて有益と考える。

 さらに、わが国では一般的に知られていないが、2002年に国土安全保障省(DHS)の一部門(筆者注5)となったU.S.シークレット・サービス(United States Secret Service:USSS)(筆者注6)は優先的重要任務として、金融システム基盤と決済システムの保護を上げ、そのためコンピュータ犯罪やインターネット詐欺等に対する捜査、逮捕や予防対策への責任を担っており、他に機関では見られない独自の専門家による捜査機能・活動について今回のブログで概要を紹介する。


1.IC3「 2008 年Internet Crime Report」の特徴点
(1)犯罪類型別苦情件数・被害額割合・1件あたり被害額(中央値)
①商品未送や代金未払い詐欺(Non-delivered merchandise and /or payment):苦情件数は全体の31.9%と最も多く、被害額の割合で見ると28.6%、1件あたり被害額は800ドル(約7,800円)である。
②オークション詐欺(Auction fraud):苦情件数割合は25.5%、被害額の割合は16.3%、1件あたり被害額は610ドル(約6万円)である。
③クレジット・デビットカード詐欺:同9.0%、同4.7%、同223ドル(約22,000円)である。
④その他信用詐欺(Confidence fraud:相手を信用させて財産的被害をもたらすもの、前記①、②やナイジェリアン手紙詐欺もこの類型に属す)、コンピュータ詐欺、小切手詐欺(check fraud:小切手の偽造・変造や残高不足を知りながら振り出すもの)、ナイジェリアン手紙詐欺が件数割合として上位7類型となった。(筆者注7)

(2)被害額の多いもので見ると、小切手詐欺(3,000ドル)、信用詐欺(2,000ドル)、ナイジェリアン手紙詐欺(1,650ドル)である。

(3)加害者(perpetrators)の居住地域的特徴で見ると、比較的人口が多い次の州が多く、2007年の調査結果と同様の傾向を示している。()内は2007年の順位。
①カリフォルニア(1)
②ニューヨーク(3)
③フロリダ(2)
④テキサス(4)
⑤ワシントンD.C.(上位10位に」はいっていない)
 なお、米国以外の国でみると英国、ナイジェリア、カナダ、中国、南アフリカが多い。

(4)詐欺による被害者への接触ルートは、Eメール(74.0%)、ウェブサイト(28.0%)が上位2つを占める。

2.米国FinCENの「不動産担保ローン詐欺(Mortgage Fraud Report)に関する第4次報告」
(1)過去4回のFinCENによる不動産担保ローンに関する詐欺報告の公表年月は、次のとおりである。
・第1次2006年11月:FinCEN Mortgage Loan Fraud Assessnent
・第2次2008年4月:Mortgage Loan Fraud:An Update of Trends based Upon an Analysis of Suspicious Activity Reports
・第3次2009年2月:Filing Trends in Mortgage Loan Fraud
・第4次2009年3月:Mortgage Loan Fraud Connection with Other Financial Crime

(2) 2009年3月Mortgage Loan Fraud Connection with Other Financial Crime調査報告の概要
A.そもそも“Mortgage Loan Fraud”とはいかなる手口の詐欺であろうか。筆者はFBIやFinCENの2006年以降の不動産担保ローン詐欺(Mortgage Fraud)年次報告等を参考に調べてみた。2つのカテゴリーがある。 すなわち、(1)詐欺的行為による不動産資産や家の取得を目的とするもの(ローンの申込購入者(applicant)が、買った物件に実際に居住する場合が実住、実需案件(primary residence)であるが、applicant本人が不動産購入ローンについて収入や負債額等細かな点でごまかすものである。もともと返済するつもりで、たまたまごまかしを行うものである)、(2)第2のカテゴリーが法執行機関や不動産業界が最も懸念している詐欺行為である。すなわち、不動産査定評価とローン申込文書の全体としての不実記載詐欺は、関係者の違法な利益を生むだけでなく、申込者は頻繁に詐欺師に金銭の支払等を行うというリスクや経済的負担を負うことになる (筆者注8)
 この詐欺スキームの例示(違法な不動産転売スキーム:Illegal Property Flipping Scheme)がFBIサイトの図1で紹介されており、参考までに記しておく。(筆者注9)。(筆者注10)
①不動産転売業者(property flipper)は中古の家を2万ドルで購入する。
②property flipperは同物件を意図的に高くして8万ドルと査定する。
③property flipperは共犯の不動産の売り手兼ローンを仕組む役(straw buyer)に査定価格の80%の64,000ドルで売却(property flipperは64,000-20,000=44,000ドルの利益を得る)
④当該家は返済不能により一般的に差押(foreclosure)にあい、銀行には64,000ドルのローン債権が残るが、もともと2万ドルの家であり44,000ドルの損失である。さらに当該ローンが連邦住宅局の保証付住宅ローン(FHA-insured Loan:連邦住宅局の認可した金融機関のみで取り扱われる ローン。連邦住宅局は貸付額に対して抵当権設定者(債務者)から保険料を徴収し、債務不履行があった場合、抵当権者(金融機関)を保護する)であった場合は、FHAの損失負担となる。(2009年4月2日に司法省はカリフォルニア州ヘスペリアの不動産担保ローン会社“Mortgage One”の元社長(John Richard Varner 55歳)が連邦住宅都市開発省(United States Department of Housing and Urban Development:HUD)および民間銀行を騙して不動産融資を受けたとして、①HUD(実際はその1機関である連邦住宅局(Federal Housing Administration))を騙して不正な保証を受けた罪、②銀行詐欺および③偽の所得税申告(false tax returns)の計4訴因に基づき起訴され、同日連邦地方裁判所の有罪判決が下された旨公表している。最高41年の禁錮刑が科されるが、本件はHUD保証にかかわる第15番目の有罪判決例となる。)
 同詐欺の被害者は、融資者たる金融機関、不動産業界だけでなく、近隣住民も価格高騰による固定資産税の増加に悩まされるのである。

B.2008年財政年度における不動産担保ローン詐欺の傾向の要旨
 今回の報告は、不動産担保ローンに関する疑わしい取引(MLF subjects)に関する預金取扱金融機関の当局宛報告(Suspicious Activity Reports in Depository Institution:SARs-DIs)の検証と次の3つのタイプの詐欺報告をまとめた。(1)マネー・サービス・ビジネス(Money Services Businesses:わが国ではまだ定訳がない。FinCENの資料によると連邦規則集第31編第パート13サブパート103.11(uu) に定義されている )(筆者注11) とは、両替商や送金業、旅行小切手・為替・プリペイドカードの発行、販売、換金業務等がこれに該当する。米国では、個人経営のごく小規模な雑貨店、酒小売店でも為替サービスの取扱いがしばしばみられ、こうした個人事業者から大規模企業まで、多様な規模、業態の事業体がSAR-MSBsのカテゴリーを構成する。(2)証券ブローカー(securities Brokers)、証券ディーラー(securities dealers)または保険会社(insurance companies)(SAR-SFs)、(3)カジノまたはカードクラブ(card club:会員制クラブ)(SAR-Cs)である。
 2003年から2008年にわたる5年間の報告を分析した結果、次のような傾向が見られた。
(1)預金取扱機関から約156,000件の不動産担保ローンに関する疑わしい取引のSARs-DIsを確認したが、そのうち他のSARタイプの3,680件の報告が含まれていた。これはマネロンなどに関する通貨取引報告申告(currency transaction reporting requirements)を再検査した結果、不動産担保ローンに関する疑わしい取引に該当するものがSAR-MSBsでは85%、SAR-Cs では47%、SAR-SFsでは47%という数字になっていたからである。

(2)分析結果で SAR-MSBsは疑わしい取引の約70%が電子送金(wire transfer)によるものとして報告し、それらの申告の34%が米国外への送金として記述されていた。

(3) FinCENはSAR-SFsについて、異常に高い割合の疑わしい文書、詐欺的IDや偽IDの存在を確認した。

(4) SAR-Csの不動産担保ローンに係る疑わしい取引報告における小切手詐欺の割合は17%と、SAR-Csの同5年間平均が3%であったのと比べ異常に高かった。
 2009年度FinCENは、不動産担保ローンおよび他の金融詐欺の関係について追加分析を行い、報告された違法な活動、場所および主体者についてさらなる調査研究を行う。

3.米国U.S.シークレット・サービスの金融犯罪、コンピュータ犯罪捜査の概要
(1)シークレット・サービス(USSS)の捜査権および逮捕権の法的根拠
 合衆国法典第18編第2部第203章第3056条(U.S.Code: title 18 part Ⅱchapter 203 §3056)である。同法に基づく USSSの権限・機能の2本柱の1つが政府の要人警護であり(同条(a)項)、もう1つが全米的な金融基盤(financial infrastructure)と支払システムの維持と完全性(同条(b)項)の責任を負っている。特に金融機関や金融犯罪捜査を専門に担当する金融犯罪部(Financial Crimes Division)は、前述したとおりFBI、DOJやFinCEN等とともに重要な機能を担っているといえる。

(2)金融犯罪部のサイトの内容
 USSSは、1982年および1984年にクレジットカードやデビットカードなどアクセス・デバイスに関する捜査権と他のID犯罪に関しても他の捜査機関と並行した捜査権限が与えられ、また匿名性の高いインターネット利用の拡大とともにコンピュータ犯罪に関する詐欺の捜査権も与えられた。2001年10月26日、ブッシュ大統領が愛国者法(USA PATRIOT Act:H.R.3162)に署名し成立したことを受けて、USSSは全米規模の電子犯罪特別対策本部および作業グループ(Electronic Crime Task Forces and Working Groups)の設置が義務付けられ、当初8主要都市であったが、その後拡大し、2007年以降現在の24都市に特別対策本部が設置されている。
 USSSの金融犯罪部のサイトから金融犯罪に関していかに関与が拡大しているか、USSSの使命に関する主たる記載内容について解説する。なお、各詐欺類型の詳細は前述の藤崎論文を参照されたい。

①銀行等金融機関に対する詐欺(Bank Fraud)

②アクセス・デバイス詐欺(Access Device Fraud):金融業界の推定では、毎年クレジットカード等の詐欺被害額は数十億ドル(数千億円)に達する。USSSは合衆国法典18編1029条(アクセス・デバイスに関する詐欺および関連行為の取締法:一般的に「クレジットカード法」といわれている)に基づき連邦機関の中で優先的捜査権を有している。
 アクセス・デバイスとは、デビットカード、キャシュカード、コンピュータ用パスワード、個人識別番号、クレジットカードやデビットカードの口座番号、Long-Distance Access Code (LDAC)(筆者注12)、SIM(Subscriber Identity Module :GSMやW-CDMAなどの方式の携帯電話で使われている請求時などに電話番号を特定するための固有のID番号)である。USSSは1996財政年度のおいて同詐欺に関し2,467件の捜査を開始、一方2,963件の捜査を終了し、2,429人を逮捕した。

③コンピュータ詐欺(Computer Fraud): 無権限アクセス、なりすまし詐欺、DoS攻撃、電子商取引の強要(extortion)や途絶(disruption)、金銭的な利益を目的とする違法なソフトウェアの介在等の取締法である「コンピュー詐欺及び不正利用防止法(the Computer Fraud and Abuse Act(CFAA)18 U.S.C.§1030)」に基づき、USSSは特にインターネットの拡大による州や国境を越えたサイバー犯罪、コンピュータ詐欺の捜査体制強化のため米国中に電子犯罪専門捜査官プログラム(Electronic Crime Special Agent Program:ECSAP)を設立した。ここに任命された捜査官はコンピュータ関連捜査の専門家であり、コンピュータ、携帯情報端末(personal data assistants:PDA)、通信機器(telecommunications devices)、電子手帳(electronic organizers)、その他のメディアに関する多くの電子証拠の検査行動の適格者である。ECSAPは全米中に分布する重要基盤を守る利害関係者とともに横断的パートナーシップを構築する唯一のプログラムである。

④偽造詐欺(Forgery):毎年、数億枚の政府小切手や政府証券が発行される中、この莫大な枚数は、犯罪者をして被害者の住むアパートや自宅の郵便ボックスから小切手等の盗取やその偽造行為に導く。詐欺的取引において通常受取人の署名や偽の身分証明者を提示する。

⑤マネー・ローンダリング:米国法典第18編第1961条(不正な金儲け、ゆすりでいわゆる組織犯罪)の定義規定であるが、金融機関改革救済執行法(Financial Institutions Reform, Recovery, and Enforcement Act of 1989)第968条により金融機関詐欺もその対象となった) と同様、18編第1956条および同1957条に定める特定の犯罪行為である。

⑥電子政府栄養支援給付詐欺(Electrocic Benefits Transfer Fraud):従来のフードスタンプ制度は、政府が生活保護者等低所得の家族に発行する食品割引券、食料配給券で1977年配給法(the Food Stamp Act of 1977 (7 U.S.C. 2011 et seq.)に基づく生活支援プログラムであった。(筆者注13)2008年10月1日施行された補完的栄養プログラム(Supplemental Nutrition Assistance Program:SNAP)において一定の受給適格者は自宅にいながらにして適格性の確認オンラインでの登録、電子認証に基づく加盟小売店での一定の食料品の購入というプロセスが利用できる。しかし、そこになりすまし詐欺が入り込む危険性があったのである。SNAPサイトでは加盟店向けに電子援助(Electronic Benefits Transfer System(EBTS)に関し詐欺被害の警告を鳴らしている。

⑦費用前払い詐欺(Advance Fee Fraud:ナイジェリアン詐欺);
スパムメールで届くこの種のメールには絶対に返事をしないことである。一回返事をすると詐欺師はあなたをいじめたり威圧し始めるのである。最も効果的な手立てはすぐ当該メールを削除することである。仮に前払いにより高額な金銭的損失を被ったときはUSSSの専用デレクトリー(Field Office Directory)にメールを送ることである。

(筆者注1)わが国でIC3に該当する公的機関は、警察庁サイバー犯罪対策プロジェクトおよび都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口等のみであろうか。

(筆者注2)藤崎氏のレポートは、丁寧かつ原資料に忠実に解説されていると思う。ただし1か所気になったのは13頁のコンピュータ詐欺(Computer Fraud)の定義に関し「米国会計検査院」と引用されている。原語はGAO(U.S. Government Accountability Office)であるが、わが国では確かに「会計検査院」と訳されるのが一般的であり、筆者もかつてはそのように訳していた。しかし、連邦議会に対する権能や権限等について再度見直し、2007年9月の本ブログ以降は「連邦議会行政監査局」という訳語を使用している。

(筆者注3)IC3の報告書の要旨を読むと、コンピュータ犯罪にかかわりそうなあらゆる苦情をまず連邦、州、地方の関係機関が広く収集し、その中から関連重要犯罪を絞り込んでゆく分析過程が浮かび上がる。2008年1月1日から同年12月31日の間にIC3が受け付けた苦情275,284件(前年比33.1%増)の中には非詐欺にあたるスパムメールやチャイルド・ポルノ等も含まれている。

(筆者注4)わが国の関係省庁や機関がサイバー犯罪とくに「ボット(コンピュータを悪用することを目的に作られた悪性プログラムで、コンピュータに感染すると、インターネットを通じて悪意を持った攻撃者が、コンピュータを外部から遠隔操作する)」に対処するため共同運運営体制をとった例として、2006年12月1日に経済産業省と総務省が20010年3月31日までの期間限定で設置したサイバークリーンセンター運営委員会(CCC-SC)による「サイバークリーンセンター」があげられる。総務省や経済産業省を中心にISPの協力をえながらボット駆除や再感染防止の中心プロジェクトと担うとしている。ウェブサイトの説明も一般的に分かりやすく工夫の跡が伺える。
 しかし、一方でサイバー犯罪の範囲の拡大はとどまるところを知らない。海外の動向を見ても、米国がインターネットにかかわる苦情情報を情報源としながら、連邦捜査局(FBI)を中心として全米ホワイトカラー犯罪センター(NW3C)、主要民間企業、学術研究機関の協力のもとで極めて専門性の高い専門家集団を集めたサイバー犯罪捜査専門部門(全米サイバーフォレンジックス&教育連盟(National Cyber-Forensics & Training Alliance)や苦情収集に特化したIC3等)を構成して、最終的に連邦司法省や法執行機関を支援し、常に変化するサイバー犯罪の定義に苦慮しながらも可能な範囲でIT社会の脆弱性に取組んでいる姿を見ると、わが国のような限定型の取組みで十分なのか疑問に思える。

(筆者注5)2002年第107連邦議会を通過し成立した“Homeland Security Act of 2002”(Public Law 107-296)に基づき国土安全保障省(DHS)が設置され、同時にUSSSが財務省からDHSに移管された。このことはDHSの組織図やUSSSの歴史説明で明記されている。

(筆者注6)本ブログでしばしば紹介するとおり、米国の公的機関の法的根拠や重要任務に関するわが国の解説は、最新の法律情報等を確認していないものや不正確な内容のものが目につく。例えば、いまだにUSSSを「財務省検察局」(情報処理推進機構(IPA)の2004年8月「電力重要インフラ防護演習に関する調査 報告書」16ページ等)と訳している例が多く(わが国で一般的に利用されている翻訳サイト“Excite”や“ALC”も同様の訳語を使用している)、また「財務省秘密検察局」と言うものもある。昔のテレビの見すぎか。ビジネス用語だけでなく政治組織に関する訳語の正確性は重要であり、迅速に見直すべきであろう。
 “Secret Service”の基本的組織構成は3部門からなり、要人(大統領、副大統領、次期大統領、次期副大統領、これらの家族、元大統領およびその配偶者(再婚した場合を除く)、16歳までの大統領の子供、米国訪問中の外国政府の代表者や配偶者等である)の警備に当る特別捜査官(Special Agent:約3,500人)、対狙撃支援部(Countersniper Support Unit)、犬を使った爆発物探知部隊(Canine Explosives Detection Unit)、緊急対策部隊、金属探知支援部隊(Magnetometers)からなる制服部隊(Uniformed Division:約1,300人)、および法科学・法廷証拠(forensic)専門科学者、心理学者、法執行に関する教官、人事専門家、予算アナリスト、火器に関する教官、会計士、研究者、物理的セキュリティやコンピュータの専門家、グラフィックデザイナー、作家や弁護士を含む個人的支援高度専門家グループ(Support Personnel:約2,000人)からなる。
 なお、USSSは2008年から5年間の戦略計画“United States Secret Service Strategic Plan-FY2008-FY2013”を公表している。写真入りで分かりやすく説明されている。関係者や興味のある方は是非読まれたい。

(筆者注7)IC3の2007年報告にあって2008年版にないものに「投資詐欺(Investment Fraud)」がある(付属資料2の「詐欺にあわないための留意事項」では盛り込まれているが)。犯罪統計の連続性や被害規模からいっても無視し得ない重大犯罪であると考えるが、IC3に確認する時間的余裕がないので機会を改める。ただし、2009年3月31日にフロリダ連邦地方裁判所は投資詐欺(Ponzi aschemeの由来についてはWikipedia参照)の犯人であるマニュー・オガル(44歳)に対し禁錮10年に加え、損害賠償金12,744.349.50ドル(約12億4,900万円)および3年の監視付き釈放(supervised release)判決を下している。

(筆者注8)このような説明を読むにつけ、米国の不動産ビジネスの専門性や多様性が感じられる一方で、わが国の現状の不動産会社におまかせの不動産販売の仕組みそのものが、はたして購入者の保護や情報提供と言う点で十分なのか、融資を行う金融機関の立場からも別途考える必要があろう。

(筆者注9)不動産転売をめぐるこのような手口は、わが国でもごく一般的である。ただし、米国の場合がもう少し手が込んでいる。FBIの報告書を補完する意味で、対米不動産投資コンサルタントの中山道子氏のブログから買手が絡む不動産融資詐欺の手口の要旨を紹介する(筆者が一部加筆した)。「不動産の買主が、ローン・オフィサー(一般の商業銀行等で住宅ローンの相談、仲介などを行う専門家)やアプレイザー(appraiser:物件の査定業者)などと組んで、購入物件の査定額を吊り上げ、銀行から不当に高い融資額を引き出すのである。被害者は、一般投資家ではなく銀行である。ローン・オフィサーやインスペクター(inspector:物件の状態・修繕必要箇所などを鑑定する検査業者)(筆者注9)と並んで、不動産投資の際のパートナーとなるのがこのアプレイザーで、(1)市場価格(今、売りに出したら、最高いくら取れるか)、(2)再建築価格(今、この建物がだめになって土地だけになったら、いくらあれば、同じ間取りとパーツが再現できるか)、(3)収益還元法的価格(今、賃貸に出すとしたら家賃収入がいくらであるかを計算し、これくらいの資産価値がある、と判断する方法。州や地方によって方程式が違う)そうした詐害行為を働く買主は、大金をつかんだ後は、「ローンの支払いは放棄、物件も放置」というのが多数だそうである。」

(筆者注10) インスペクターの検査の対象箇所について、カリフォルニア州不動産インスペクター協会(California Real Estate Inspection Association:CREIA)が定める検査実施基準(CREIA Standard of Practice)を見ておく。①基礎、地下室、床下領域、②屋外部(ドア、窓、外壁等)、③屋根周り、④屋根裏部分(Attic Areas)や屋根の枠組み(Roof Framing)、⑤配管系統(Plumbing)、⑥電気工事部、⑦暖房や冷房機能、⑧暖炉や煙突、⑨内装である。詳しくはCREIAサイトで確認されたい。

(筆者注11) 税務大学校研究部 岡﨑正江氏「 米国内国歳入庁におけるマネー・ローンダリングへの取組」から引用したが「マネー・ローンダリング」関係者に対し、ここで連邦規則集(CFR)の定義(31 CFR 103.11(uu))を正確に説明しておく。これは、マネー・ローンダリングとインターネット賭博とは切っても切れない関係にあるからである。2008年1月6日の本ブログを読んで欲しい。
なお、「マネー・サービス・ビジネス」には、銀行および証券取引委員会(SEC)および商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission:CFTC)に登録、規制、監督を受ける業者は除かれる旨明記されている。
①通貨ディーラー(currency dealer)または両替商(exchanger):1日あたり1以上の取引において1,000ドル以上の金額の両替等を行わない場合は適用除外となる。
②小切手換金業(Check Casher): 1日あたり1以上の取引において1,000ドル以上の金額の換金を行わない場合は適用除外となる。
③トラベラーズチェック、国際為替(Money Order)およびプリペイド式通貨(プリペイドカード等)の発行者:1日あたり1以上の取引において1,000ドル以上の金額の小切手や送金を行わない場合は適用除外となる。
④トラベラーズチェック、国際為替(Money Order)およびプリペイド式通貨の売り手または買い手(redeemer):1日あたり1以上の取引において1,000ドル以上の金額のトラベラーズチェック等を扱わない場合は適用除外となる。
⑤為替業務取扱業者(money transmitter):金融機関、または連邦準備銀行や連邦準備制度理事会(双方を含む)の機関として、電子資金移動ネットワークを通じて通貨や通貨建て(funds denominated currency)の資金を免許に基づき、その受入れおよび送金を業として取扱うものをいう。

(筆者注12)“LDAC”とは、米国の大学の教授会メンバーや事務局員が、大学から承認を得た上で一般的に利用できる国内、国際の長距離電話利用サービスにアクセスする場合の個人識別コードである。各大学のサイトではそのコードを含め、利用申込方法や利用方法について説明いる。例えばアラスカ・アンカレッジ大学のサイトを見ると長距離電話サービスとして「アクセスコード方式」と「アクセスカード方式」の2方法を用意している。なお、筆者が疑問に思ったのはコード管理の厳格さについて警告を鳴らしている大学が見あたらなかった点である。

(筆者注13)米国の低所得者家族向け補助栄養支援制度に関してわが国では詳しく説明しているものは見たことがない。本プログラムは農務省の所管する食料・栄養サービスの一環として1977年配給法の基づく制度で、前述の通り従来は「食料配給券(Food Coupon)」といってまさに紙の券であった。2008年食料・保全・エネルギー法(Food, Conservation and Energy Act of 2008:H.R.2419)(わが国では「2008年農業法」と説明している例が多いのは同法の内容のミスリードを招く点からもこのような訳語は問題である。)により同プログラムの名称を「補完的栄養プログラム(Supplemental Nutrition Assistance Program:SNAP)」に改称した(2009年6月17日以降は紙のクーポンは無効になる)。では、なぜこれが電子詐欺と関係するのか。農務省のSNAPサイトに基づき手順に即して解説する。なお、わが国では電子政府サービスであるSNAPに該当する制度はない。あるとすれば自治体が窓口で行っている「生活保護制度」に基づく生活扶助額の中でまかなうしかないであろう。
(1)まず同援助プログラムの適格者かどうかFNSサイトでオンラインにより居住州、家族構成等個別に入力しながら確認する。
(2)利用のためのオンライン購入用に電子認証(Eauthentication)アカウントの開設手続を行う。(アクセスには2種類あり、限定されたセキュリティの「アクセス1」とインターネットを通じたより一般的な電子商取引が行える「アクセス2」がある)
(3)登録時に姓名や住所やパスワードの入力し、約15分後に本人のメールアドレス宛に新設アカウントの有効化手続の説明メールが届く。以降は通常のサイン・インを行う。


〔参照URL〕
http://www.nw3c.org/downloads/2008_IC3_Annual%20Report_3_27_09_small.pdf
http://www.fincen.gov/news_room/rp/files/mortgage_fraud.pdf

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2009年4月12日日曜日

2004年秋の三井住友銀行ロンドン支店のハッカー詐欺裁判の有罪判決と米国キーロガー裁判の動向について

 
 2009年3月7日付の朝日新聞は、2004年に英国の三井住友銀行(英語名:Sumitomo Mitsui Bank)ロンドン支店を舞台として犯行が行われ、未遂に終わったハッカー犯罪の判決公判が3月5日に開かれ、主犯に禁錮8年、共犯4人に3年から4年4か月の実刑判決が言い渡された旨報じている。

 2004年9月から10月にかけて実行行為が行われ、当時2.29億ポンド(約318億3千万円)の詐欺未遂事件として話題になったが、今回の同紙の記事だけ読んでもこのような高額な詐欺事件がどのような手口で行われ、また内部要員や関係者が絡んだ事件だけに本当に金融システムの安全対策はとられているのかといった点が明確にされない限り、同様の犯罪が今度は成功するかもしれない。

 筆者は英国のBBC、GuardianおよびIT専門サイト等の情報に基づき、これらの問題点を独自に分析してみた。その結果、明らかになった点は、世界的に見て専門的なIT技術を持った国際的金融犯罪組織の存在とその手口の巧妙さである。それらの点をわが国の犯罪捜査機関だけでなく金融機関のセキュリティ担当者や担当役員が理解していないと金融機関の安全神話は広く世間から支持されないであろう。

 もう一点は、今回問題となったキーロガー専用端末や同ソフトウェアの販売をめぐるニュー・ビジネスと人権侵害問題である。本ブログでも紹介している米国の人権擁護NPO団体であるElectronic Privacy Information Center(EPIC)は、「個人向け監視技術(Personal Surveillance Technologies)」と題する問題提起に基づき2008年11月に連邦地方裁判所の緊急差止命令(Temporary Restraining Order)や仮差止命令Preliminary Injunctive Order)が発布されており、この問題も併せ論じる。 (筆者注1)(筆者注2)(筆者注3)


1.事件の経緯の概要
(1)2004年9月16日夕方の早い時間に2人のベルギー男性(Jan Van Osselaer(32歳)とGilles Poelvoorde(35歳))が三井住友銀行ロンドン支店の受付に到着し、その1人が警備主任のケヴィン・オドナヒュー(Kevin O’Donoghue(34歳))に面会を求めて来た。受付の女性はこの2人が専門のハッカーであり、歴史的犯罪の第一段階を実行しに来たことはつゆ知らなかった。

 (2)同支店の監視カメラ(CCTV)は、この2人が談笑しながら同支店のオペレーションルームの端末に導いたことを記録していた。彼らは数台のワークステーションに持参したUSBメモリー・スティックを使い「キーロガー」ソフトウエアをインストール後、帰っていった。(記事はメモリー・ステック型と記述しているため忠実に紹介した。これと異なる手法としてはキーロガー・デバイスをキーボードとPCのコネクターの間に挿入するハードウェア型という方法もある。今回の犯人はソフトウェア型であり同デバイスは使用しなかったようである)

(3)数日後、再度同支店を訪れた2人はキーロガー・プログラムデータから銀行の行員のユーザー名とパスワードをダウンロードして帰っていった。

(4)しかし、ケヴィン・オドナヒューはいくつかのミスを犯した。1点目は仲間の犯行記録を残さないためCCTVの回線を一部切断したこと、2点目は特別なオペレーションルームへの特別なアクセス・バッジの発行について質問したことについて他の従業員が疑問に思ったことである。

(5)数週間後の10月1日(金)に2人が同支店に戻ってきた。第二段階でいよいよ違法な海外送金の実行行為である。行員IDとパスワードを使いスペイン、香港、トルコ、イスラエルの他銀行へのSWIFT(スウィフトは「Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication(国際銀行間通信協会)」の略称で、国際送金に使用する金融機関識別コード「SWIFTコード」(SWIFTアドレスやBICコードとも呼ばれる)を管理している)を経由した10件の送金操作を試みた。送金の原資は、三井住友銀行に預入されていた東芝インターナショナル、野村アセットマネイジメント、住友化学工業イギリスなど大企業の資金であった。最大の送金金額は4,100万ポンド(約55億7,600万円)であった。

 (6)しかし、この違法なオペレーションは失敗した。銀行休業日の10月2日(土)に、2人は同支店に再度侵入して同様のオペレーションを行ったがやはり失敗した。その原因は、SWIFTの送金情報の記入に基本的なミスを犯したのである。彼らの計画未遂は週明けの10月4日(月)に行員が来てログインして明らかとなった。ありえない取引記録が残され、数台のコンピュータ・ケーブルが切断されていたのである。銀行は直ちに警察に通報し、捜査官は事件の内容から見てケヴィン・オドナヒューの関与を疑い本格的捜査が始まった。CCTVの解析で深夜に2人が支店に侵入していう事実も判明した。

(7) Poelvoordeはベルギーでの前科があり、詐欺で5年の有罪判決をうけており、逮捕された際、偽造パスポートを所持していた。その後問題となったOsselaerはコンピュータサイエンスの学位をもっていた。
(8)英国の重大犯罪対策捜査機関であるSOCA(筆者注4)を中心としたベルギーなどに出向く長期にわたる捜査の結果、主犯はヒュー・ロドリー(Hugh Rodely(61歳))およびその長期にわたるビジネス・パートナーであるベルナード・ディビス(Bernard Davies(71歳)2009年1月16日に自殺)は、窃盗、詐欺および違法な犯罪資金の国際送金や英国外への移動(マネー・ローンダリング)の共謀(conspiracy)の罪で起訴された。

2.刑事裁判所の判決 
 グロースターシア刑事法院(Snaresbrook Crown Court)(筆者注5)は2009年3月5日に主犯Hugh Rodely、ケヴィン・オドナヒュー、Poelvoorde、Osselaer、ベルナード・ディビスの被告5人に対し上記有罪判決を宣告した。

3.今回の事件から見た金融機関等のセキュリティ対策の見直し課題
(1)内部に犯罪協力者がいる場合、各種の安全対策の脆弱性は極端に強まる。また、一概には言えないが休日や夜間に作業を行う派遣従業員、警備員、清掃業者などの業務管理面の強化が必要である。

(2)最も重要な点はキーロガー(Keylogger:もともとPCの操作者に入力データのキーストロークをとらえる診断ツールとしてソフトウェア開発技術で用いられてきたもので、その利用形態はハードウェア型(筆者注6)とソフトウェア型の2種がある)を悪用したハッキング行為対策の重要性である。例えば、金融庁の「システムリスク管理態勢の確認検査用チェックリスト」Ⅴ.(3)データ管理体制」で記されているとおり「データ保護、データ不正使用、不正プログラム防止策について適切かつ十分な管理体制を整備しているか」の具体的対応が的確に行われているかという点ある。
 では、キーロガーの被害防止策とは具体的にどのような対策が現時点で考えられるのか、内外で紹介されている内容も含め整理して見る。
A.マシン内のプログラムのモニタリングや違法デバイスの検出
 恒常的なマシン内のプログラムのモニタリングやハード面ではマシン本体のPS/2キーボードコネクター(青紫色) やUSBコネクターにハードウェア型のキーロガーが装填されていないか確認する。ただし、ハードウェア型ではキーロガー・モジュールが直接キーボード本体に取り付けられるため検出が困難な場合もある。なお、ハードウェア型のキーロガーは①価格が比較的安価(50米ドル(約5,000円)くらいからある)であること、②専門技術なくても簡単に取り付けられること、③メモリーなどに記録が残らないこと、④スパイウェア対策ソフトでは検出できない点である。
B.ウィルス対策ソフトによるキーロガーの検出
 ウィルス対策ソフトやスパイウェア対策ソフトを使用する。ただし、犯罪捜査など合法的に販売されているものや自作のものの場合は検出が困難である。
C.キーロガー専用検出ツールの利用
 ①マルウェアのパターンマッチング検出、②キー入力をフックしての検出、③ファイル・スキャン検出が一般的である。
D.コード署名(Code signing)
 マイクロソフト社のOSであるWindows VistaやServer2008の64ビットバージョンはカーネルモードデバイスドライバが強制的なデジタル署名を実装されており、解除しない限り、主要なキーロガー・ルートキットのインストールを制限する。
E.ファイアウォール
 ファイアウォールを可能にするとキーロガーそのものは阻止できないが、適切に構成されるとネットワーク上でロギングされた情報の伝達が阻止される。
F.ネットワーク・モニター
 ネットワーク・モニターは、ネットワークに対し外部から接続が行われるとユーザーに警告を鳴らすものである。これはキーロガーがリモートで自分の機器にログイン情報を伝送するのを阻止する。
G.ワインタイム・パスワードおよび2段階認証
 パスワードの組成は、USBトークンやカード型計算機により行うもので、キーロガー対策として効果や有効は評価されており、わが国でも大手銀行のインターネットバンキングですでに利用されている。ただし、トークン等の経費負担、本人の管理責任やユーザーの使い勝手からみるとなお課題もある。
H.スマートカードの使用
 スマートICカードの中にある集積回路を通じてログイン情報のやり取りを行うため同じ情報が伝達されない。
I.ヴァーチャル・キーボード(On-screen keyboard)
 わが国のインターネットバンキング(Web-based keyboards)でも使用されている。ただし、その巨額なコスト負担が問題となっている。また、ヴァーチャル・キーボードは新しい技術ではなくWindowsのOSプログラム中のアクセサリーから選択できる。(筆者注7)ただし、四肢に傷害があるユーザー向けでありサイバー犯罪対策として開発されたものでないため、更なる課題もある。


4.キーロガー・ビジネスやキーロガー詐欺の差止命令や刑事告発をめぐる米国の動向
 (1)連邦取引委員会によるキーロガー・ソフト販売業者に対する差止命令請求
 米国人権擁護団体であるEPICは2008年3月6日に連邦の業界監督機関である連邦取引委員会(FTC)に対し、CyberSpy Software,LLC(フロリダ州に本部)の違法ビジネスの差止め(injunction)および補償請求を行った。これを受けてFTCはその請求の採択を4-0で行った後、2008年11月5日に連邦取引委員会法(FTC Act)(合衆国法典第15編第2章第Ⅰ副章第53条(b))の13条b項他(筆者注8)に基づきフロリダ中央区連邦地方裁判所オーランド部(District Court for the middle District of Florida Orlando Division)に対し行ったCyberSpy Software,LLCおよび同社CEOのTracer R.Spenceへの違法ソフトなどの販売差止めおよび衡平法上の救済(仮差止命令)を請求したが、その請求理由および措置の内容は次のとおりである。

〔FTCの差止請求事由〕
(1)法定証拠書類による被告のキーロガーソフトによる違法性の高い手口
①被告は自社の顧客に対し、いかにスパイウェア(商品名:RemoteSpy)を写真のように無害とみせてEメールに添付するか詳細な説明を行った。
②犠牲者が変装したスパイウェアをクリックすると、キーロガーソフトは犠牲者のPCのHDに無言のまま静かにインストールされる。
③このスパイウェアは犠牲者のパスワードを含む取込画像、閲覧したWEBサイトなどすべてのキーストロークを記録し、そこで集められた情報の収集と組織化を行うため、RemoteSpyの顧客は被告の運営するウェブサイトにログインした。
④被告は、RemoteSpyは100%検出されないと誇大な宣伝していた。

(2)FTCの裁判所への申立事由は次のとおりである。
①不公正な宣伝行為および販売行為は連邦取引法違反(筆者注9)
②コンピュータの所有者または権限を持つもの以外による遠隔地操作を実行させた。
③ひそかに個人情報を収集しかつその個人情報を公開させた。
〔裁判所の緊急差止命令および仮差止め命令の発布〕
 2008年11月6日に同裁判所は緊急差止命令を発し、また11月25日に仮差止命令を発布した。

(3)米国連邦司法省(DOJ)の起訴例
〔配偶者や恋人の監視ソフト(Loverspy)の開発・販売会社に対するDOJの告訴〕
 2005年8月26日にDOJのカリフォルニア州南部地区検事Carol C.Lamおよび刑事部副検事John C. Richterがリモート型スパイウェアの“Loverspy”を告発した。同省のリリースによると次のようなソフトウェアの開発などが行われており、同省は通信傍受法(Wiretap Act)(筆者注10)および「コンピュー詐欺及び不正利用防止法(the Computer Fraud and Abuse Act(CFAA):18 U.S.C.§1030)」違反を理由として告訴したものである。なお、開発販売に関与した被告カルロス・エンリケ・ペレス・メララ(Carlos Enrique Perez-Melara)に計35訴因(counts)の基づく起訴を行った。1訴因につき最高5年の禁錮刑および最高25万ドル(約2,500万円)(併科もある)であることから当時のメデイアは最高175年の禁錮刑裁判として話題となった。
 またDOJは、同ソフトを使用してハッキング行為や盗聴行為を行ったことを理由に4人に対し、2つの訴因(counts)に基づき起訴を行っている。
 なお、起訴状によると当時のウィルス対策ソフトはLoverspyの危険性を認識できず、米国以外も含む1000人以上の購入者は2000人以上の被害者の電子メール、パスワード、チャットセッション、インスタントメッセージウェブサイトの閲覧内容のモニター、記録および報告を行ったのである。

(4)キーロガー詐欺をめぐる告訴例
2003年2月6日にマサチューセッツ州ミドルセックス郡の大陪審(grand jury)はロードアイランドに住む元大学生ダグラス・ブードロー(Douglas Boudreau)21歳に対し、①電気通信の妨害行為に関する6つの訴因、②無権限のコンピュータシステムへのアクセスに関する8つの訴因、③250ドルの窃盗(larceny)と身分詐称詐欺(identity fraud)に関する2つの訴因につき有罪評決した。被告は数千人の大学のコンピュータ利用者の個人情報を収集する目的でボストン大学の数10台のコンピュータにキーストロークをモニタリングする不正ソフトをインストールしていた。その結果、被告は約4,800人の教授、学生、事務局員などのパスワード、大学のビル内へのアクセスコード、クレジットカード情報や社会保障番号などを不正に収集した。
http://news.zdnet.co.uk/itmanagement/0,1000000308,2130064,00.htm


(筆者注1)EPICがキーロガー問題サイトで解説しているとおり、サイバー犯罪という面だけでなく、個人の行動のリモート監視支援技術としても注目されている。

(筆者注2)米国の裁判上、原告が損害賠償の請求に加えて、被害の拡大など被告が継続的営業を止めたい場合は、訴訟の係属中(つまり本案に対する判断がなされる前に)回復不能の損害が生ずるのを予防すべく「仮差止命令(preliminary injunction order:PIO)」を求めることになる。仮差止命令が求められた場合、裁判所は、原告による仮差止命令を求める申立につき審尋(hearing)を行う。この場合、原告は正当な理由があること、すなわち、差止命令がないと訴訟の係属中(本案に対する判断がなされる前に)に切迫しており、かつ、回復不能な損害をもたらしうる権利侵害が行われることを示す必要がある。仮差止命令を発すべきかを裁判所が決める審尋に先立って回復不能の損害が生ずることを原告が示し得た場合、審尋までの間の現状を維持することを目的とする「緊急差止命令(temporary restraining order:TRO)」が短期的なものとして発されることがある。裁判が最終的に判決されるときの差止めを“Permanent Injunction ”という。
前者は、相手方に対する通知と審尋がなされた後で出され、通常は訴訟の最終的解決までの暫定的な措置を定めるものであり、後者は、相手方に対する通知もなく一方的な申立に基いて出される緊急的性格のものである。
http://www.lectlaw.com/def/i046.htm、http://legal-dictionary.thefreedictionary.com/Injunction
 この“Injunction order”は、一定の行為を禁止する裁判所の命令で、「禁止命令」ともいう。日本の法律には直接「差止め」を規定したものはないが、公害裁判等でその現実的な必要性を理由に判例・学説上認められている。
 なお、わが国の法律では、権利を保全するために、その権利を確定または実現させるまでの間、裁判所から命ぜられる民事保全法上の暫定的処分を「保全命令」といい、金銭債権を保全する目的の「仮差押命令」と金銭債権以外の保全を目的とする「仮処分命令」の2種がある。

(筆者注3)次の事例は、スパイウェア被害に関するスパイ対策啓発WGサイトからの引用したものである。
①2005年8月、米国でスパイウェアを使った大規模な個人情報盗難が発覚しました。攻撃者はPC上のキーボード入力を記録して外部に送信するスパイウェア(キーロガー)を使って多数のパソコンからクレジットカード番号、社会保障番号、ユーザー名、パスワード、インスタントメッセージのチャット内容、検索のために入力したキーワードなどの個人情報を収集しました。関係した銀行は50にもおよび、現在、連邦捜査局(FBI)がこの事件について調査を進めています。
②2005年7月4日、国内のネット銀行でパソコンの情報が盗まれ預金が引き出される事件
が起こりました。攻撃者はPC上のキーボード入力して外部に送信するスパイウェア(キーロガー)を使ってインターネットバンキングの利用者のPCから口座の支店名や口座番号、パスワードを盗み、預金13万円を無断で引き出していました。
③2005年7月9日、国内のネット銀行でパソコンの情報が盗まれ貯金が別の口座に転送さ
れる事件が2件起こりました。預金が不正に振り込まれる事件が2件発生しました。攻撃者はPC上のキーボード入力を記録して外部に送信するスパイウェア(キーロガー)を使って利用者のPCからネットバンキング用のIDやパスワードを盗み、利用者の口座から、別の口座に総額500万円を無断で転送しました。

(筆者注4) 英国政府は「2005年重大組織犯罪および警察法(Serious Organised Crime and Police Act 2005)」に基づき、2006年4月に全英ハイテク犯罪機構(The National Hi Tech Crime Unit:NHTCU)を廃止し、重大組織犯罪対策機構(Serious Organised Crome Agency:SOCA)の稼動を開始した。SOCAは米国連邦捜査局(FBI)にならって英国FBI(Britisch FBI)と呼ばれているが、テロや殺人事件機能、権限は有しておらず必ずしも正確な名称ではない。SOCAは独立の公共独立機構(Non-Departmental Public Body)である。


(筆者注5) 2006年5月27日の本ブログでも英国刑事法院について言及している。英国は陪審制度を導入しており、わが国の裁判員制度との関連もあるのでここで「英国の裁判制度」および「刑事裁判制度」について簡単に説明しておく。なお、英国の裁判制度全体についての図解を探したところ、米国の連邦議会図書館(Library of Congress)サイトで見つけた。もともとは英国法務省(Minister of Justice)のサイトにイングランドとウェールズ他の裁判機構の概要図(Outline of court structure in England & Wales)が掲載されている。わが国の最高裁判所に当たるのが「貴族院(House of Lords)」である。議会が司法の最高機関を兼ねるのは三権分立に反するといった指摘もあろうが、そもそも英国ではそのような矛盾は従来からあり、2004年から2009年にかけての司法改革の結果、2007年に生まれた法務省が裁判所、刑務所および執行猶予サービスの最高責任すなわち刑事、民事や家庭内の裁判問題ならびに民主主義や国民の憲法上の各種権利の実行責任を持つとした背景も理解しやすいであろう。

(筆者注6)国際的な情報セキュリティ専門会社(Kaspersky Lab)サイトの説明では、一般人にも分かりやすくまたキーロガー犯による被害の急増の実態や具体的な防止策について写真入りで解説されている例英文で紹介している。なお、ここで紹介されている防止策はわが国の大手銀行のインターネットバンキングにおいてすでに導入されているが、今後の新たなハッカー対策として更なる研究が必要であろう。(Wikipediaではハードウェア型のキーロガーについてワイヤレス型も紹介されている)

(筆者注7)
Windowsのスクリーンキーボードの設定方法について説明しておく。「すべてのプログラム」→「アクセサリー」→「ユーザー補助」→「スクリーンキーボード」の順である。

(筆者注8)FTCの裁判所への請求の根拠条文は15 U.S.C.53(b)および45条(a)であるが、正確に記すと“U.S.Code Title 15>CHAPTER 2>SUBCHAPTER Ⅰ>§53(b)であり、 FTCの偽広告(false advertisement)に係る緊急差止命令および仮差止命令請求の根拠条文である。なお、45条(a)はFTCが不公正な競争や通商および欺瞞を違法と宣言し裁判所にその差止めを請求する根拠条文である。
 なお、わが国の現行法制の中で被告の誇大広告を取締ったり排除命令を行なう方法として公正取引委員会サイトでは「景品表示法第4条第1項第1号(優良誤認表示規制)は,商品・サービスの品質,規格その他の内容(以下「商品・サービスの内容」という。)について,一般消費者に対して実際のものよりも著しく優良であると示すこと,又は一般消費者に対して事実に相違して当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示を不当表示として禁止している。」とある。また、同委員会は「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項(不実証広告規制)の運用指針 」に基づく具体的運用を行っている。
 景品表示法に違反する不当な表示や,過大な景品類の提供が行われている疑いがある場合,公正取引委員会は,関連資料の収集,事業者への事情聴取などの調査を実施する。調査の結果,違反行為が認められた場合は,公正取引委員会は,当該行為を行っている事業者に対し,不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除,再発防止策の実施,今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる排除命令を行う。 また,違反の事実が認められない場合であっても,違反のおそれのある行為がみられた場合は「警告」,違反につながるおそれのある行為がみられた場合は「注意」の措置がとられる。
 なお、同法第11条の2は、「消費者契約法(平成12年法律第61号)第2条第4項に規定する適格消費者団体は、事業者が、不特定かつ多数の一般消費者に対して次の各号に掲げる行為を現に行い又は行うおそれがあるときは、当該事業者に対し、当該行為の停止若しくは予防又は当該行為が当該各号に規定する表示をしたものである旨の周知その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。」と適格消費者団体による差止請求権を定めている。

(筆者注9)FTCは2003年4月15日に53条(b)および45条(a)に基づきイリノイ州北部区連邦地方裁判所東部(District Court for the Northern District of Illinois Eastern Division)裁判所に対しに基づきスパマーに対しスパムメールの緊急差止め、仮差止めおよび差止命令の請求を行っている。

(筆者注10)米国における「1994年通信傍受支援法(Communication Assistance for Law Enforcement Act:CALEA)」をめぐる人権問題について2006年5月27日の本ブログで紹介している。

〔参照URL〕
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7909595.stm
http://www.guardian.co.uk/uk/2009/mar/04/sumitomo-bank-fraud-attempt
http://www.ftc.gov/opa/2008/11/cyberspy.shtm

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2009年4月5日日曜日

オーストラリア政府の生活支援ボーナス支給とフィッシング詐欺警告について

 
  2009年4月に給付されるオーストラリア政府の生活支援ボーナスについては3月2日付の本ブログで取り上げた。
 これに関し、筆者も懸念していたとおりボーナ給付をめぐる詐欺集団の行動が同国で問題となり、政府税収局(Australian Taxation Office:ATO)や、SCAMwatchおよび給付事務の中心となるCentrelink等関係機関が広く消費者にフィッシング詐欺の警告を行っている。その情報は筆者が参加している同国のディスカッショングループから入手したのであるが、今回のボーナス給付に関する政府税当局の情報フォローの実態も併せて紹介しておく。
 また、同国の詐欺専門サイトSCAMwatch は詐欺問題の各被害者からの報告に基づき各種詐欺の手口を簡潔に公開している。その内容を見ると主たるパターンは以下の2.のようになるが、類似のパターンも併せて説明されている。なお、各類型の解説は別途米国のインターネット犯罪苦情センター(Internet Crime Complaint Center:IC3)の2008年中の苦情受付に基づくインタ-ネット詐欺に関するブログ原稿を別途作成中であり、重複しない範囲で解説を試みたので、その内容も併せて読んで欲しい。
 なお、わが国の定額給付金にかかる詐欺の手口に関し警視庁が警告を鳴らしている(筆者注1)。詐欺社会の変化についていくことがIT社会で生きていくことなのか。


1.SCAMwatchのオーストリアにおける1回限りのボーナス支給に関する詐欺被害の危険性に警告
 4月上旬にオーストラリア政府機関であるATOとCentrelinkは緊急総合経済対策の一環としてボーナス支給を行うが、SCAMwatchが集めた苦情によると詐欺師が政府機関(ATOやCentrelink)のふりをしてボーナス支給を受けるため(受給者適格)には特定の様式を持った請求書の完全な作成が必要であると説明する偽の電話、Eメール等を送りつけている。その様式の内容は受給者の姓名、住所および銀行取引の詳細情報である。
 今回の給付手続において、Centrelinkは受給対象者の2007年・2008年度の給付税額控除指定口座に一定の計算方式に基づき振込むため、そのような手続は一切不要なのである。大多数のオーストラリア人はその事実を知っているはずであるが、まだ銀行口座の変更中のため税還付手続を行っていない人などのために警告を鳴らしたものといえる。
 自分自身を守るために何をなすべきか、次のような注意事項を記載している。
(1)自分から要求していないEメールに対しクレジットカード情報や銀行取引の明細情報を返信したり、相手が真に確認できない場合は決してウェブサイト上でそれらの個人情報を送信してはならない。
(2)あなたがATO、Centrelinkや取引銀行からEメールを受け取ったときは、直ちに削除すること。
(3)それらのEメールに添付された文書等を開いたり、リンクを張らないこと。
(4)電話番号やアドレスは銀行の取引明細書や電話帳といった公式に認められたものに記載されたもののみを使用すること。自らが要求していないEメールに対し、これら機微情報を回答してはならない。

2.SCAMwatchの詐欺手口・犯罪類型分析
 ” SCAMwatch”は、オーストラリア競争・消費者委員会(Australian Competition & Consumer Commission:ACCC)が運営している詐欺・悪徳商法に関する情報ウェブサイトである。連邦の各州や海外の被害の場合はACCC、また金融や投資に関する詐欺の場合はオーストラリア証券投資委員会(Australian Securities & Investments Commission:ASIC)、銀行やクレジットカード詐欺の場合は取引金融機関というようにいろいろな報告先とリンクを張り、また被害に会わないための関連記事等を検索できる。(筆者注2)
 さらに興味深いのは詐欺の手口・類型を具体的に列挙し、それぞれに対し前記報告の重要性の説きながら、自身の被害拡大を阻止するための相談機関等の情報を具体的に説明している点である。
詐欺の類型分類は欧米各国で工夫されている。SCAMwatchサイトでは、一部米国のIC3では解説されていない詐欺類型があるので、その項目についてのみ簡単に説明する。
なお、これらの被害防止の解説を読めばすぐに理解されると思うが、共通的な答は自分自身常識的に判断し、人間欲を出さないことのようである。「うまい話の裏には詐欺がある」という昔からの言い伝えは正しかろう。

①宝くじや勝ち抜き詐欺(Lottery and competition scams)

②マルチ商法やねずみ講(Chain letters and pyramid scams)

③投資詐欺(一攫千金詐欺)(Investment scams :get-rich- quick)
(ⅰ)売込み電話(Cold calling investment telemarketing)
時として海外市場における高収益とハイリスク投資を強引に働きかける押し売り電話セールスである。電話のかけ手は、一見投資のプロのように聞こえるがオーストラリアでの取扱免許をもっていない詐欺者である。
(ⅱ)株式の販売促進と「トビキリいい情報(hot tips)」
スパムメールや胡散臭い電話によりほとんど流通していない株式の購入をせかす。詐欺師は犠牲者が同株に投資するまで株式の売却を待つのである
(ⅲ)投資セミナーと不動産詐欺(real estate scams)
ハイリスク商品販売戦略による高圧的販売セールスを行う詐欺。詐欺師は一方でセミナー参加手数料(attendance fee)で儲け、また他方で暴騰的価格(inflated prices)で不動産を被害者に売却する。
(ⅳ)コンピュータ予測ソフト(賭けソフト)の販売詐欺
 スポーツ・イベントや株式市場の結果を予想するソフトウェアー・パッケージを売り込む。そのソフトは期待通り機能せず配当はありえない。
(ⅴ)退職年金詐欺(superannuation scams)
特に自己管理型年金ファンド(self-managed super fund:SMSF)の加入者に退職前に繰り上げ給付(release)をすすめる申出詐欺が大きな社会問題となっている。(筆者注3) (筆者注4) (筆者注5) (筆者注6) (筆者注7)

なお、投資詐欺に類似するものとして次のものが例示されている。
(ⅵ)ビジネスチャンス詐欺
(ⅶ)雇用や収入保証を誘いつつ前払いの謝礼や教材費を要求する詐欺

④送金・金融取引情報要求詐欺(ナイジェリアからの手紙詐欺(Nigerian’ scams))(筆者注8)

⑤銀行取引情報入手詐欺(banking & online account scams)
なりすまし詐欺の手口と共通性がある。フィッシング詐欺が典型であるが
その偽メールでは被害者の口座に不具合があり確認ために口座番号や暗証番号等正確な取引情報の提供を求めるのである。また、キャッシュカードやクレジットカードの磁気ストライプ情報等を違法にコピーするスキミング詐欺も類似の詐欺である。その他、オンライン・バンキングのキーボードの入力内容を違法なソフトウェアーを使って盗取する「キー・ロガー(Key-loggers)」も同種の詐欺行為である。

⑥なりすまし詐欺(Identity theft scams)

⑦インターネット詐欺(Internet scams)
(ⅰ)オンライン・オークション詐欺
(ⅱ)偽ドメイン名更新詐欺(Domain name renewal scams)
被害者の真のドメインに関し偽の更新ドメイン名を通知してきたり、または請求明細書(invoice)で極めて紛らわしいドメイン名を送りつけてくる詐欺である。
(ⅲ)一般にスパムメールは極めて安いおまけ品や冨を約束するが、これに回答することは消費者のPCや銀行口座の安全性に問題を引き起こす結果となる。
(ⅳ)無料のウェブサイトへのアクセス、ダウンロード、休暇提供、株式、および試供品―被害者はその対価としてクレジットカード情報や個人情報を提供することになる。
(ⅴ)モデムのハイジャッキング(modem hijacking)(インターネットでユーザーに接触し、閲覧ソフトをダウンロードさせ、ユーザーがこの閲覧ソフトを使用すると、ユーザーが知らないうちにダイヤルアップの設定を勝手に変更してしまうプログラムを利用して、従来使用していたローカルのインターネットプロバイダーに接続する代わりに、非常に使用料の高い0900番号(premium rate phone number)や国際電話番号に接続させてしまう詐欺行為である。被害者は膨大な料金請求を受けて初めて被害に気づく。)

⑧携帯電話詐欺(Mobile phone scams)
 詐欺者は被害者を以前から知っていたような電話(テキスト・メッセージ)をかけてきたり、不在着信コール(missed call)で被害者からのリダイヤルを待っていたりする。無料の着信音を提供したり、夢のような商品の提供を約することで前払いを促すが隠れた費用請求があるのが一般である。被害者がこの呼び出しに答えるとがっかりする商品やまったく欲しくない商品やサービスが提供され、取消できないようサインしてしまうことがある。最後に巨額な電話代の請求が届くのである。
 この種の詐欺にはSMS(携帯電話同士で短い文字メッセージを送受信できるサービス。国内のSMSとしてはNTTドコモの「ショートメール」や、auの「Cメール」などがある)を利用したコンテストや簡単なクイズですばらしい商品が当たるというものがあり、しかし参加費がいくらかかるかは知らされないである。

⑨健康や医学に関する詐欺(Health & medical scams)
 健康に不安をもっている人々を搾取する詐欺である。詐欺師はありえない対処策や複雑な健康治療を簡素化できると約束するが、これらの詐欺にかかると被害者は重大な健康被害を受ける。
(ⅰ)妙薬(Miracle cures)
この妙薬詐欺は、病気にかかったり荒治療を要する者をえさにまったく機能しないか、かえって危険なものである。
(ⅱ)減量詐欺(Weight loss scams)
 詐欺師の不当な要求は「革命的やせ薬」、「クリーム」、「食事のアドバイス」、「健康機器」に基づき行われる。
(ⅲ)偽のオンライン薬局(Fake online pharmacies)
 非常に安価の薬や処方箋なしで薬を提供するが、重大な健康障害や不当に高額な請求を伴う。(筆者注9)

⑩仕事や雇用斡旋詐欺(Job & employment scams)

⑪中小企業経営者向け詐欺(Small business scams)
この種の詐欺は、数種類の書式すなわち一度も注文したことがない広告代の請求書、ありえない事務所内の事務用品代および政府からのにせの送金要求書等で行われる。被害に会わないための防御策は、購入や注文する際の責任者を限定し、すべての注文書・購入書を保存するとともにそれらの権限を信頼に足る人物のみ行わせることである。

(筆者注1)4月2日付の警視庁生活安全総務課の警告内容は次のとおりである。このような早期の被害防止の姿勢が詐欺師には最も効果的であることは過去の例に見られる。
「大阪府や宮城県において、市職員や代行業者を装い現金を騙し取る「給付金詐欺」が発生したほか、全国で給付金の支給開始にあわせた不審電話等が多発しています。
 都内でも、3月に入り、市や区の職員を名乗り
  ・高齢者宅へ「給付金のことで」と言って、個人情報を尋ねる
  ・携帯電話に「給付方法はどれを希望しますか」等の確認をしてくる
  ・「郵政省です。定額給付金のお知らせです」等のガイダンスを流す
  ・口座番号が誤っていないかどうか確認に行きたい
等の不審な電話や、
  ・定額給付金の申請書を持っている人に対する「手続きを代行します」
という声掛け、また、
  ・手続きが面倒なので区役所から手伝うよう言われて回っています
  ・定額給付金はいくらもらえるか知っていますか
等代行業者やアンケート調査を装う訪問事案等が発生しています。
 ○予想される事案
 ・手数料の支払いを求められたり、個人情報・口座番号を聞かれる
 ・訪問し、通帳・カードの確認を要求される
 ・窓口で現金の給付を受けた人を狙う「ひったくり」
 ○防犯対策
 不審な訪問・電話には、相手の連絡先、氏名、部署を尋ね、自治体に必ず確認するとともに110番通報をお願いします。また、「ひったくり」も多発していますので十分気をつけてください。」

(筆者注2) SCAMwatchのサイトを見てすぐ気が付くのは詐欺被害者へ詐欺の類型別に報告方法・報告先について詳細な説明を行っている点である。要するに迅速な関係機関への報告が新たな被害者の増加を阻止する最も有効な手段であるからである。もう1点は消費者が自分自身被害に会わないために以下に行動すべきかについて懇切丁寧に解説を加えていることである。その中でわが国でも共通的に使える教訓は次の2つであろう。
①黄金律(Golden rules)要するにうまい話には裏がある。冷静に常識に従って判断することの重要性である。一攫千金で儲けるのは詐欺師のみである。
②圧力がかかった状態で決定を行わないこと。金銭や投資に関するものであれば独立系の金融アドバイザーの支援を受けるべきである。

(筆者注3)オーストラリアの連邦金融監督機関である証券・投資委員会(Australian Securities & Investment Commission:ASIC)のサイトでは概要次のとおりの警告が行われ、併せて年金受給権の早期譲渡に関する犠牲者実話例(true story from victims of early release schemes)が紹介されている。
「自己管理型年金(self-managed super fund:SMSF)における年金受給資格者が給付金(benefit)につき早期繰上げ給付(early release)を受けたり、代行業者により有料で入手するよう説得する者がいたら直ちにASICまたはATOに報告してください。住宅ローンの返済が滞るなど世帯の財政危機を経験したときにそのような行動に出ることは一応理解できるが、その行為は明らかに違法なものであり最後の切札である。繰上げ給付の違法な実行は金融監督機関が定める規則に基づき重大な法的および金銭的刑罰を受けることになります。」

(筆者注4)ASICサイトで見ると、2004年10月27日クィーンズランド連邦裁判所は退職年金の早期繰上げ給付を消費者に勧めていた同州の業者2人に対し恒久差止め命令(permanent injunction)を全裁判官一致の決定として得た例を紹介している。わが国でも経済不安が広がる中、同様の詐欺行為が広がらないよう関係機関の早期の取組が期待される。

(筆者注5)連邦政府の監督下で責任投資原則(PRI)に基づき退職年金を厳格運用している産業ファンドとして代表的なのが、オーストラリア退職金投資連盟(Australian Reward Investment Alliance:ARIA)である。連盟の意味は、公的年金と公職年金の双方をカバーする産業ファンドであるからある。
 なお、2008年5月に内閣府が公表した「安全・安心で持続可能な未来のための社会的責任に関する研究会報告書」はPRIやESG投資(Environmental ,Social,Corporate governance)について内外の状況を含めよく整理されている。

(筆者注6)わが国では、貸金業者における違法年金担保問題が社会問題化し、弁護士会や司法書士連合会等からの強い要請決議に基づき2004年(平成16年)12月28日施行されたいわゆる「違法年金担保融資対策法(貸金業の規制等に関する法律の一部を改正する法律(法律第158号(平成16年12月8日公布)」は次の規制強化を定めた。(金融庁サイトから引用)
1.広告・勧誘に当たって禁止される行為の追加
貸金業者は、年金等の公的給付の受給者の借入意欲をそそるような表示又は説明をしてはならないこととされた。
2.公的給付に係る預金通帳等の保管等の制限
貸金業を営む者は、貸付けの契約について、その貸付金の弁済を公的給付を原資とする資金から受ける目的で、法令の規定により譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないこととされている公的給付が振り込まれる銀行口座等の預金通帳やキャッシュカード、あるいは年金証書などの引渡しを求め、又は保管する行為を行ってはならないこととされた。
3.罰則等
上記2に違反した者について、1年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされました。また、上記1及び2に違反した者は、行政処分の対象とされた。

(筆者注7)類型②、③、④は基本的にかなり類似のものといえる。

(筆者注8)ナイジェリアからの手紙詐欺はわが国でも有名は詐欺である(ナイジェリア刑法419条)。筆者もかつて警察庁の幹部との勉強会で同詐欺が話題となったが、幸いかな日本向けに英文で送られてくるためほとんど理解されないまま削除されてしまうので被害届もまずないそうである。筆者は1日あたり海外からの各種メールが平均200通くらい来るのであるが、ナイジェリアからの手紙は1年間に数えるくらいである(あまりにもスペルミスが多くまたパターンが同じなので笑ってしまう)。しかし、米国の場合は笑っていられないのが実情のようである。2008年1年間の被害報告の基づく「2008 Internet Crime Report」4/1②によると、全報告件数のうち同犯罪類型に分類される件数は2.8%、被害金額中の割合では5.2%、平均被害額は1,650ドル(約16万5千円)と比較的高額である。なお、上記米国の統計(IC3)を見ると、投資詐欺の場合でも平均被害金額は3,548ドル(約35万5千円)である。わが国でよく問題となる投資詐欺に比べると被害額が極めて少ない気がするが、個人の貯蓄額の差であろうか。

(筆者注9) 4月7日に筆者に届いたメールに“World famous medical products at discount. http://lpmuz.zwefopcyn.com/と言うメッセージのみのものがあった。開きはしなかったが、この種のものであろう。

〔参照URL〕
http://www.scamwatch.gov.au/content/index.phtml/itemId/757362
http://www.scamwatch.gov.au/content/index.phtml/itemId/694085

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2009年4月3日金曜日

米国連邦金融機関検査協議会(FFIEC)、FinCEN等が銀行秘密情報報告法等に関する改訂マネロン銀行検査マニュアルを公表(2006年9月3日掲載の補追版)

 
 米国連邦金融機関検査協議会(Federal Financial Institutions Examination Council:FFIEC)(筆者注1)、金融犯罪法執行ネットワーク(Financial Crime Enforcement Network:FinCEN)(筆者注2)ならびに外国資産管理局(Office of Foreign Assets Control:OFAC)(筆者注3)が、2006年7月28日に「銀行秘密取引の報告等に関する法律(Bank Secrecy Act)」(筆者注4)等マネロン防止に関する検査マニュアル2006年改訂版(筆者注5)を公表した。また、2007年8月24日にさらに2007年改訂マニュアルを公表している。
 以下において2006年版の概要を紹介する。なお、これらの行動の背景には世界的規模のマネーローンダリング対策の責任組織であるFATF(金融活動作業部会)40の勧告に基づく対応があるのであるが、最近のわが国の対応としては、2006年8月30日に公表された「郵便受取および電話受付」代行業の追加を始め(筆者注6)、金融庁も、具体的対応が進んでいる。米国では、実は前記監督機関連名で、金融機関の協力強化の観点から9月13日、14日の2日間にわたり(両日とも内容は同じである)1時間という短時間ではあるものの全米ベースの金融機関等を対象とするインターネット会議(電話会議も併用されている)を開催し、改訂マニュアルの主な改正内容につき説明がなされる。登録期限は9月6日であり、筆者はすでに登録手続きを終えたが、関心のある向きはチャレンジされたい。(筆者注7)


1.2006年改訂マニュアルの構成
全体で6章および付属資料で367頁(PDF版)にわたるものである。
(1)序論
(2)BSA/AML遵守プログラムの調査に関する検査概観および手続
(3)関係法令に基づく要求内容および関連のテーマに関する基幹(core)となる検査概
 観
(4)遵守対象企業の範囲拡大および外国銀行の支店等に関する検査概観
(5)米国内外における遵守対象商品・サービスについての検査範囲拡大に関する検査概 
 観
(6)人や企業についての検査範囲拡大の概観
(7)附属資料(関係法令、指令、参照資料等)

2.2006年改訂マニュアルを読むうえのポイント
(1)前記(2)章、(3)章の大部分は検査官におけるBSA/AML遵守検査プログラムの基盤となる部分で「検査範囲および検査計画」(PDFバージョンの15~17頁参照)および「BSA/AMLリスク査定」(同27頁)等が中心となる。両章に共通する用語、例えば「funds transfers」「foreign correspondent banking」等であり、これらの明確化が検査官等の改訂内容の理解向上につながる。
(2)検査官は、最小限次のような手続を踏まえ検査対象の金融機関のリスク査定を均一
的に行う。
 ①検査範囲および検査計画(15~17頁参照)
 ②BSA/AMLリスク査定(27頁参照)
 ③BSA/AML遵守プログラム(34~39頁参照)
 ④検査総括および検査の終了(41~44頁参照)
(3)OFAC規則は、BSAの一部ではないが、OFACによる制裁処分の遵守確認に関し、検査
対象機関の遵守方針や検査手続に関する基幹となる各章に関するものである。このた
め、検査官は検査範囲ならびに検査計画の策定に当り、銀行のOFACのリスク査定内
容を確認するとともに、銀行のOFAC対応プログラムが検査期間中に行動を伴って行
われているか否かをチェックする(マニュアルの144~146頁にわたるOFAC基幹検査
手続参照)。
(4) 金融機関が的確な管理を欠く場合、企業・商品、顧客、企業はBSA/AMLに関する
リスクを負うと評価される。加えて、今回拡大された章は、それに応じたリスク管理責任を負うことになる。これらの基幹となる検査手続は、すべての金融機関にとって適用可能なことではないが、独立したこれらのテストによる遵守内容の品質、数量の確認が求められることは間違いない。

(筆者注1)FFIECは、米国の連邦金融監督機関である連邦準備制度理事会(FRB)、連邦預金保険公社(FDIC)、全米信用組合管理局(NCUA)、通貨監督庁(OCC)、貯蓄金融機関監督局(OTS)からなる協議会である。監督機関の共通の取組み課題についての指導的機能を有しており、最近ではインターネット・バンキング取引の安全対策の観点から2006年12月末までに各金融機関に多要素認証(multi- factor authentication)の遵守を義務付けており(http://www.fdic.gov/news/news/financial/2005/fil10305.html)、わが国の都市銀行でも始まっている「トークン型ワンタイム・パスワード」もその対応例に当る。

(筆者注2)わが国の監督窓口は、金融庁総務企画局特定金融情報管理官である。

(筆者注3)外国資産管理局の内容について参考となるURLは、http://www.jetro.go.jp/biz/world/n_america/us/invest_02/

(筆者注4)わが国では「Bank Secrecy Act」を「銀行秘密法」と直訳されるケースが未だに多い。
これでは何が秘密なのか、誰の秘密なのかが分からない。同法は、現在では「愛国者法」に基づく改正も行われており、テロ資金防止法(BSA/AML)と引用されることが多いが、1970年に制定された当時は脱税のための資金洗浄阻止も重要な目的であったようであり、企業に対する同法の報告義務に関し、連邦財務省内国歳入庁(IRS)が多く関与している。分かりやすく言うと「銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法」である。つまり、報告義務を課されるのは、狭義の金融機関(規制内容や罰則は金融機関の場合が厳しいが)だけでなく、現在は外国の銀行に金融資産を有する企業、さらに貴金属・宝石取扱業者もFinCENへの報告義務が課されるなど範囲が広がっている。IRSのサイトでは企業向けにBSAについて報告義務の内容や罰則規定についてQ&A等で詳しく説明している。
http://www.irs.gov/businesses/small/article/0,,id=152532,00.html

(筆者注5)わが国と同様、「検査マニュアル」は当然のことながら頻繁に改訂されるので、原本に当
る際には注意が必要である。2006年7月28日に改訂された版のURLは次の通りである。FDIC等も
同時に改訂のポイントを公表している。
http://www.ffiec.gov/bsa_aml_infobase/pages_manual/manual_online.htm
pdfバージョンのURL
http://www.ffiec.gov/bsa_aml_infobase/pages_manual/manual_print.htm

(筆者注6)わが国の金融監督機関のマネロン対策の政府機関は、金融庁総務企画局総務課特定金融情報室である。FTAF40の対応に関して、最近では金融庁が2006年6月13日に「カナダ金融部門との疑わしい取引に関する情報交換枠組の署名について」を公表している。現行の金融機関監督規制の下では本人確認法や組織的犯罪処罰法により届出が義務化されているが、今後はより包括的な法規制が行われる可能性が高い。

(筆者注7)登録方法は、米国の金融機関向けに説明されているが、それ以外の場合でも可能ではあ
る。登録サイトの標題は、「FFIEC BSA/AML Examination Manual Outreach Fact Sheet」である。

〔参照URL〕
http://www.bankinfosecurity.com/regulations.php?reg_id=298&PHPSESSID=97c3860d339c70e6d50368b0e0747873

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