2010年11月21日日曜日

米国国防総省が緊急対応した“Don’t Ask,Don’t Tell Act”差止命令と連邦憲法上の諸問題



 筆者の手元に10月12日にDODから初めは意味不明のプレス・リースが届いた。「1993年 同性愛公言禁止法(Don’t Ask,Don’t Tell Act)(DADT)」(筆者注1)に対するカリフォルニア中央地区連邦地方裁判所判決(判事:バージニア・A・フィリップ(Virginia A.Phillips))による連邦憲法違反判決および国防総省による同法執行の恒久的差止命令(injunction order)への対応に関するリリースである。米国など外交・軍事等海外通の読者であればある程度その意味が分かろう。

 その後、DODは連邦司法省等との協議を進め、10月15日には先の地裁判決に対し控訴の検討を行う一方で、12日の判決は遵守する旨を発表した。

 今回のブログは、米国オバマ政権の公約の1つである同性愛者やレスビアンと軍隊の問題であり、連邦議会をも巻き込んだ大きな社会問題となっているこの問題を巡る動向を取上げる。

 筆者は両分野につき専門家ではないし、コメントできる立場にはない。
 しかし、国家機能とりわけ国防機能に関する問題となると話は別である。とりわけ“Don’t Ask,Don’t Tell Act”そのものについて正確な理解と経緯、米国社会が現実にかかえる影の部分に正確に焦点を当てて検討すべき問題点を整理したいと考えた。

 米国の大学を含め関係機関の情報を独自に調べて見た。とりわけ同法の人権上や憲法上の問題については制定当初から米国の人権擁護団体だけでなくロー・スクールや大学におけるDODの大学内でのリクルート活動とスカラーシップに関する「人を金でつる問題(Solomon Amendment)」(筆者注2)に対する大学・研究機関の自治に関するフォーラム(Forum for Academic and Institutional Rights:FAIR)(筆者注3)等も問題視している点も明らかとなった。

 特に、筆者が関心を持ったのはジョージ・タウン大学ロー・スクールの抗議グループ“SolomonResponse .Org”のサイトである。(筆者注4) 大学の自治問題はわが国ではほとんど本格的な議論は現在は見ない。しかし、米国は現在戦争中の国である。米国軍の人材確保は政府・軍幹部の最重要課題であり、そのために連邦議会はリクルート活動支援強化策を議会と連携して進めている。この問題と「同性愛規制」は極めて密接に関係しているのが現状である。

 海で囲まれたわが国の国防問題について国民の理解なくして戦略や人材確保の問題は解決し得ないと考える。公的機関窓口等でのポスターの掲示だけでは優秀な人材は集まらない。現下の雇用対策問題と絡めるのは適切とはいえないが、日本の未来をまじめに考える機会として公開したかたちでの関係機関横断的な(interagency)取組みを期待する。「平和ボケ」といわれない日本を国際社会にアピールする良い機会と考えるべきである。

 また、今回のブログでは関連する同性愛問題として、同性婚の禁止を決めたカリフォルニア州の州憲法改正決議が米国合衆国憲法に違反するかどうかが争われていた裁判についても言及する。
 同州北部地区連邦地方裁判所(裁判長:ヴォーン・R・ ウォーカー(Vaughn R. Walker)は2010年8月4日、同性婚禁止は同性愛者にも同等の権利を認めた合衆国憲法に違反するとの判決を言い渡した。カリフォルニア州では2008年11月の住民投票で、結婚を男女間のものと定める州憲法改正の住民投票提案8号が52%の賛成多数で可決された。これに対して、同性婚を支持する側が決定の無効確認などを求めて提訴していたものである。・・・一方で、8月16日、第9巡回区控訴裁判所は同性婚禁止にかかる州憲法改正の憲法問題につき裁判所の検討中は郡書記官(county clerk)による「結婚許可証」の発行につき無期限での留保を命じた。 (筆者注5)(筆者注6)

 米国の同性愛問題の根の深さは単に宗教や信条ならびに性的指向の自由権の問題と言うだけでなく、軍隊の基本機能やその運営そのものにかかる重要な政治課題であることを理解しておく必要がある。

 わが国の自衛隊で同様の問題が起きた場合の関係機関の対応はいかなるものか。


1.2010年10月12日、 「1993年 同性愛公言禁止法(Don’t Ask,Don’t Tell Act)10 U.S.C.§654(DADT)」に対するカリフォルニア中央地区連邦地方裁判所(判事:バージニア・A・フィリップ)による連邦憲法違反判決および国防総省による同法執行の「恒久的差止命令」問題

(1)判決および恒久差止命令内容の要旨(事件番号:CV04-8425 VAP)
〔宣言:Declares〕
同法("Don't Ask, Don't Tell" Act)は米軍人(U.S.servicemembers)および軍人予定者の基本的権利を侵害し、また、(a)合衆国憲法修正第5で保障する実質的適正手続((デュー・プロセス)、(b) 合衆国憲法修正第1で定める言論・請求権保障に違反するものである。

〔恒久的禁止:(Permanently Enjoins)〕
被告たるアメリカ合衆国および国防長官(Secretary of Defense)、その将校(Agents)、公務員(Servants)、監督者(Officers)、被雇用者(Employees)は、いかなる者に対してもその法的権限および指揮命令権に基づき同法("Don't Ask, Don't Tell" Act)および同法に基づく規則等による法執行や適用行為を恒久的に差止めかつ禁止する。

〔裁判所命令:Orders〕
被告たるアメリカ合衆国および国防長官は、本判決時に直ちに同法("Don't Ask, Don't Tell" Act)および同法に基づく規則等によりすでに開始した調査(investigation)、除隊措置(discharge)、組織的隔離(separation)、その他の手続を一時中止(suspend)または中止(discontinue)しなければならない。

(2) 同裁判所における本判決にいたるまでの経緯の概要
ここでは概要のみ上げるが、本訴訟における原告・被告の詳細な申立経緯等は原告団である“Log Cabin Republicans”のウェブサイトで詳しく紹介されている。

①2004年に“Log Cabin Republican:LCR”グループがDADTおよびDODの施策(policy)は合衆国憲法修正第1(信教、言論、出版、集会の自由、請願権規定) および修正第5(適正な裁判手続:デュー・プロセス保障規定)に違反するとして同裁判所に合衆国を被告として告訴した。(LCR側は2003年6月26日連邦最高裁の判決:Lawrence v. Texas(02-102 539 U.S. 558 (2003))を根拠としている)(筆者注7)

②2010年5月27日、「連邦議会下院」および「同上院軍事委員会(Senate Armed Services Committee)」は同ポリシーの廃止による軍事の有効性、軍人の保持や家族にとっての準備等にいかなる効果があるかの調査結果が出るまで、その実施を保留するというより進んだ妥協案に投票した。

 下院の投票結果は賛成234,反対194でさらに同ポリシーの抜本的な改正法案である「性的性向に関する軍事準備強化法案(Military Readiness Enhancement Act of 2009)H.R.1283」(筆者注8)に修正を加えるという条件で5月28日に法案全体の投票が行われる予定であったが、まだ実施されていない。

 一方、上院委員会の投票結果は賛成16、反対12であった。(なお、上院でも同タイトルの「法案:S. 3065」が上程されている)

③フィリップ裁判官は、2010年7月5日の週に事実審理を開始したが、政府側から出されていた連邦民事訴訟規則56条に定める「略式判決の申立(Motion of Summary judgment)」を拒否した。その理由は、政府の従来の政策の廃止のための立法措置は本件の手続を進めたうえでも十分にとりうる可能性があるというものである。
フィリップ裁判官は7月13日~16日ならびに20~23日の間に陪審なしで審理を行った。

(3)2010年9月9日、フィリップ裁判官の予備判決(Memorandum Opinion:Filed Concurrently with Findings of Fact & Conclusions of Law)
この判決の意義は、事実および法解釈上で明らかになった点を包括的にまとめたもので全86頁にわたるものである。

 この原告への判決案の提示という裁判行為自体、筆者は良く理解できていなかったため混乱したが、結論部分を読んである程度理解できた。
 すなわち、予備判決第4章〔結論部〕は次のとおりまとめている。

「本裁判での論議の考察および解決を通じ、裁判所は議会の執行権限と司法の役割の相違は議会の権限に基づく軍隊を強化しかつ支援する立法および政府ら行う規則等の制定という取組により頂点に達するという原則を無効視すべきものとして十分に留意してきた。連邦最高裁の1981年6月25日判決「ロストカー対ゴールドバーグ(Rostker v. Goldberg,453 U.S.57 (1981))」(筆者注9)が述べているとおり、この相違は放棄されるべきでない。原告はメンバーに代り憲法修正第1および第5に基づき、"Don't Ask, Don't Tell" Actの憲法違反ならびにDODなどの執行行為につき恒久的な差止命令といった法的な救済を求める権利が認められる。
原告は、2010年9月16日にまでにこの本裁判所の理由メモ(Memorandum Opinion)に合致するかたちで恒久的差止命令にかかる判決案(Proposed Judgment)を受け入れることが出来る。また、被告は原告が本判決案を認めた後7日以内に判決案に意義を申し立てることが出来る。」

(4)2010年9月23日、国防総省および司法省民事局が「原告が裁判所に要請した判決の適用範囲に関する異議申立」を裁判所に提出
 同申立書の趣旨は次のとおりである。
「過去の最高裁判所が明らかにしたように、合衆国は典型的な被告ではない。そして、裁判所は注文を引き受ける前の政府が議会によって正当に制定された法を実施するうえで政府の能力を制限するか、または他の裁判所で合憲性を防御する能力を制限する場合は警告と実行せねばならない。 本事件のように全国いたる所の他の多数の法廷で問題と法律が本質的であることがわかっている場合はこれは特に重要な点である。
当該警告は、法律がわが国の軍の規律にかかる問題として最高裁判所が軍事の判断に実質的な服従を行うよう裁判所に命じた領域では一層適切である。
 このような背景にもかかわらず、原告(LCR)は支持できない差止め命令提案を裁判所に求めた。この場合、いかなる差止命令はそれが原告(LCR)およびそのメンバーを代表して行う請求に制限されなければならず、非訴訟当事者に達することができないので、原告は、当該法律につき世界中で差止命令を求めており、入口の時点で問題がある請求を行っている。
 さらに、軍全体にかかわる広い範囲にかかる裁判所命令自体、他の裁判所での同様の訴えへの考慮を禁止することとなり、最高裁判所の明確な指示すなわち合衆国が被告である場合、それらが特定の巡回区裁判所で拒絶された後でも、法律で認められた主張を進め続けることが認められなければならないという法律上の重要な問題への対処を凍らせるという問題を引き起こす。(以下略す)」

(5)司法省による裁判判決の差止命令請求に関するメモの提出
この問題は、連邦議会やホワイトハウスを巻き込んだ極めて政治色が強まっていることは間違いない。(筆者注10)
 なお、1993年以来、約13,000人の軍人や女性がDADTに基づき除隊処分を受けている。

 被告は10月14日、同裁判所に対し判決の緊急執行停止等を求める書面を提出した。

 また連邦司法省民事局は、10月14日に同裁判所に対し「本訴訟の争点および法的権限に関するメモ(Memorandum of Points and Authorities:Case 2:04-cv-08425-VAP-E Document 253-1 Filed 10/14/10 )を提出した。
その結論部分を引用する。
「以上の理由から裁判所は、2010年9月9日判決(10月12日修正判決)、および10月12日の判決と恒久的差止命令に関し被告の控訴権を保障するため差止の停止措置を行うべきである。また、被告は通常の訴訟における控訴裁判所への控訴猶予期間と同様に10月12日判決の緊急行政措置に基づく判決執行停止を求めるものである。被告は問題の重要性に基づき、本決定については10月18日までの一方当事者審理(ex parte)の適用を求める。(以下略)」

 これと並行して、10月14日に原告は第9巡回区連邦控訴裁判所に対し正式の控訴申立通知を提出した。(10月15日の国防総省の控訴のプレス・リリース)

2.DADTに基づく除隊処分裁判例としての「マーガレット・ウィッツ裁判」
 2010年9月24日、ワシントン西部地区連邦地方裁判所は「空軍予備役軍団(Air Force Reserves)による原告空軍少佐(major)で“flight nurse”(筆者注11)であるマーガレット・ウィッツ(Margaret Witt)のレスビアンであるとの理由で除隊処分を行ったことは合衆国憲法修正第5に定める適正手続に違反する」とする裁判所命令の理由書(memorandum opinion)で述べ、ウィッツの復職を命じた。

 この裁判(事件番号:06-5195-RBL)は2004年から軍に対応が始まっている長期にわたる裁判である。訴訟内容の概要と裁判の経緯についてまとめておく。(筆者注12)
 6日間にわたる公判の後にロバート・レイトン裁判官はウィッツの性的指向が部隊の士気やまとまりにマイナスの影響を与えていないことが理解できた。
 この裁判の突破口が見えてきたのは2008年12月4日、第9巡回区控訴裁判所が被告たる空軍はウィッツを除隊処分する場合、軍の準備の目的上必要であることを証明しなければならないと裁決(Order:Witt v. Department of the Air Force, 527 F.3d 806, 813 (9th Cir. 2008))したことである。同判決では、政策に基づいて軍人を除隊処分するときは当該個人の行為が実施に部隊の士気やまとまりに害を与えることを証明しなければならないとすると判示し、公判廷に差し戻した。この基準は「ウィッツ基準」と呼ばれている。

 実際に彼女は19年間軍のフライト・ナースとして米軍に貢献し、彼女の上司は常に高い評価を行って来ており、多くの勲章や賞賛を得ている。

 ACLUの説明では、除隊処分や告訴にいたる事実関係は次のとおりである。
「ウィッツ少佐は1997年から2003年の間、民間の女性との性的関係を持った。2004年夏にウィッツは空軍が同性愛関係をもっているという訴えに基づき調査を開始した旨の通知を受けた。2004年11月にウィッツは無給休暇が与えられ、正式な隔離手続中はこれ以上の軍務は行えないという通知を受けた。

 2006年3月、空軍はウィッツに対し「同性愛行動」を行っていたことを理由として人事監督上の除隊処分を行うことをウィッツに通知した。ACLUはこの処分に対しウィッツの復職を求めて裁判所に告訴した。」

2010年8月31日、ACLUは裁判所に対し17頁にわたる意見書を提出している。

3.同性婚の禁止を決めたカリフォルニア州民の州憲法改正決議(vote 8)が合衆国憲法に違反するかどうかが争われていた裁判内容と今後の取組み課題
 2010年8月4日、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所(裁判長:ヴォーン・ウォーカー) は「同性愛者間の結婚を禁止するカリフォルニア州民投票に基づく規則案8を憲法違反として破棄する判決」を下した。(筆者13)

 判決文(事件番号:C-09-2292-VRW)の要旨は次のとおりである。
「原告は合衆国憲法修正第5の適正手続と第14の法の下での平等に違反したとして規則案8に挑戦した。規則案8は結婚に関する違憲なことを実践させるものでかつ性的指向を理由として不合理な差別を行わせるものである。原告はカリフォルニア州に対し2人の関係構築の努力を認めさせるよう努め、また原告の関係は合衆国の結婚の歴史、伝統および結婚の実践結果と合致する。規則案8は結婚許可書に作成拒否のための同性愛者のゲイ男性やレスビアンを選び抜く合理的な根拠をより進めることに失敗した。」

 一方、8月16日、第9巡回区控訴裁判所(3人の裁判官合議(three judge panel)はカリフォルニア州が本裁判の結果を受けて同性愛者の結婚の連邦憲法の合憲性について検討している間は同州の同性者間の結婚は無期限に受付けない旨決定(Case: 10-16696)した。

 実はカリフォルニア州最高裁判所は2009年5月26日、州憲法改正決議(vote 8)は合憲とする判決を行っている。この裁判は同性愛者カップルの結婚の憲法判断を求めるため、連邦最高裁判所に持ち込まれることは間違いないと言われている裁判である。

 原告はウォーカー判決につき控訴しないとしているが、控訴裁判所の問題視してる点ははたして州の官吏でない「修正決議vote 8」の支持者が、同控訴裁判所に控訴権を行使できるかどうかと言う点である。

 いずれにしても、第9巡回区控訴裁判所は2010年12月6日に控訴審の審問を開く旨決定で明記しており、連邦最高裁の憲法判断・対応を含め、今後の展開が注目されるところである。(筆者注14)

 なお、米国で同性の結婚が法的に認められている州はマサチューセッツ、アイオワ、コネチカット、ニューハンプシャー、バーモント、ワシントンD.C.のみである。


(筆者注1) わが国で「1993年“Don’t Ask ,Don’t Tell Act”」について論じているのはサイト上で読めるものとして「みやきち日記」が2009年10月12日に取り上げている。
「オバマ大統領が10月10日、ワシントンD.C.(Washington D.C.)で開かれた国内最大の同性愛者の権利擁護団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(Human Rights Campaign:HRC)」のイベントで演説し、米軍による同性愛者の入隊規制政策を撤廃することを約束した。」という内容である。

 その指摘している点は大統領のスピーチとしては落第という米国内のメディアの評価について論じているのみである。本文で述べたとおり、この問題は単にHRCなど人権擁護団体に対する大統領の声明の紹介で済む話ではないと考える。

 なお、わが国では似非軍事評論が多い。筆者は本ブログの執筆にあたり情報源はあくまでDOD,DHSやDOS、NATO等や派遣国から直接毎日届く多数のニュース解析や関連裁判の判決文等の検索作業から始めた。さらに言えば世界の軍事情勢の分析は米国だけの情報では不十分であり、「北大西洋条約機構軍(NATO)」や「国際治安支援部隊(ISAF)」ならびにこれらに軍隊を派遣している各国の軍事情報までカバーしないと正確な情報は把握できないと考えるがいかがであろうか。

(筆者注2)“Solomon Amendment” について補足しておく。元々米国の大学やロー・スクールは性的指向に基づく学生の差別を行わないとする施策を取ってきた。
 1995年、連邦議会は国防総省の新兵募集活動をキャンパスから締め出した大学にはいかなる基金の交付も禁止するという「Solomon Amendment 法」 (法案提出者が下院議員Gerald Solomon)を可決した。1996年に議会は対象連邦機関を教育省、労働省、保健福祉省に広げた。1999年にバーニー・フランク下院議員(現下院金融サービス委員会委員長で「2009年ドッド・フランク・ウォールストリート改革・消費者保護法」の提案者である)とキャンベル議員は、連邦機関による学生財政支援基金への同法の適用除外を働きかけソロモン法の改正を行った。
 その後、2002年にはDOD規則において1つの大学において一学部のみ徴兵活動に対する反対があった場合でもロー・スクールを含む全大学に対する基金交付を取り消すという改正を行った。これらの経緯の詳細については“SolomonResponse org”サイトのほかスタンフォードロースクール大学のサイト等が詳しい。政府側の法的見解については軍法律顧問によるレポートもあり、併せて読むべきであろう。

(筆者注3)“FAIR”は“Forum for Academic & Institutional Rights”の略で、36 の大学やロー・スクールからなる協議会である。学問の自由の推進し社会的差別を反対すべく活動している。

(筆者注4) “SolomonResponse. Org”の具体的活動はアカデミックの観点からの単なる意見表明のみではなく、国防総省に対し告訴(Litigaion)まで行いかつ勝訴していることである。“Don’t Ask,Don’t Tell ACT”の議会での制定経緯や条文の内容等その詳細は同グループのHPを参照して欲しい。

(筆者注5) 本原稿は、2010年8月5日付けCNN.JPやAP通信ニュースから引用の上、筆者がピッッバーグ大学ロー・スクールの“JURIST”サイト等独自に調べた判決原文の内容等に基づき加筆した。

(筆者注6)原告の弁護士は、控訴裁判所が12月6日に口頭弁論予定を明示し規定の迅速な審理を約束したことから原告は連邦最高裁に上告しない旨の発表を行っている。(8月17日AP通信記事)

(筆者注7)2008年5月21日、第9巡回区控訴裁判所は米国軍が性的性向のみに基づいて除隊させることは出来ないという判決を下している。

(筆者注8) 過去に本ブログでも取上げた米国連邦議会法案の監視民間プロジェクト(Sunlight Foundation等NPOの1プロジェクト)である”OpenCongress”も、筆者の今回のブログを「H.R.1283」関連で取上げている。

(筆者注9) 「ロストカー対ゴールドベルグ」連邦最高裁判決についてはわが国では上原正夫「アメリカにおける男女平等-男だけの徴兵登録合憲判決に寄せて-」(判例タイムズ446号1981年10月1日号)が詳しく紹介している。筆者なりに連邦最高裁の判決要旨等の基づき簡単に事実関係と法廷意見等をまとめておく。
「1948年選抜徴兵法(Military Selective Service Act of 1948, 50 U.S.C.App. § 451 seq.
)は大統領が女性ではなく、男性のみ可能な兵役のための登録を必要とすることを認めており、徴兵登録の目的は同法に基づきいかなる徴兵も容易にすることであった。徴兵召集のための登録(Registration for the draft)は1975年に大統領告示(Presidential Proclamation)によって中止されたが(同法は、1973年に徴兵制を排除するために改正された)、南アジアの政治危機の結果として、カーター大統領は1980年に徴兵登録手続を再度有効化することが必要であると決め、そのために連邦議会に基金の配分を求めた。
また、大統領は議会が男性と同様に女性の登録と徴兵を可能にするために法改正を進めた。連邦議会は、登録手続を有効化することの必要性については同意したが、男性を登録するのに必要なそれらの資金だけを割り当てて、女性の登録を可能にするために法律を改正するのは否定した。その後、大統領は指定された青年グループの登録を命令した。 条例の合憲性に挑戦する数人の男性によって起こされた訴訟では、3人の裁判官で構成する連邦地方裁判所は、結局、法律の性別による差別は米国憲法修正第5の「デュー・プロセス規定」に違反するとして法律に基づく登録を命じた。
この裁判が最終的に最高裁に上告され、同裁判所は共同防衛・軍事については議会の判断を尊重するという法廷意見に大筋で同意し同法を合憲とした。ただし、レーンキスト(William H.Rehnquist)判事の法廷意見やマーシャル(Thugood Marshall)、ホワイト(Byron R. White)判事の反対意見等意見が分かれた判決であった。
 米国では徴兵問題は常に国際的な政治不安(第一次世界大戦、第二次世界大戦、東西冷戦、朝鮮戦争など)による議論が高まっている。
 なお、米国の選別徴兵制度に関する法解釈問題についてはコーネル大学ロー・スクールのサイト“law and legal reference library”が詳しく解説している。

(筆者注10)米国メディアの“CNN”は、2010年5月に行った世論調査結果では米国成人では78%が同性愛者がオープンな形で軍務に服すことは認められるべきであると投じた旨報じている。

(筆者注11) 米軍における「フライト・ナース」の重要性や活動の実態について実際にDODの解説文を読んでみた。1つ目はアフガンやキルギスタンの戦地での24時間体制で「Alpha alert(1時間以内の重傷者向け対応)」、「Bravo alert(2時間以内で即時の非難を要しない対応)」、およびより緊急性の薄い患者に1週間に2回看護するといった任務内容である。戦地での看護作業は悪条件の下での活動であり、兵隊の効率的な戦時活動に欠かせないものである。また、もう1つの記事は航空医療活動のためのフライト・ナースの合同訓練についてである。その専門性もさることながら「飛ぶ病院」としての重要性が詳しく解説されている。

(筆者注12) 本裁判は、米国の人権擁護団体ACLU(Americans Civil Liberties Union)が全面的に支援した訴訟である。

(筆者注13) 国立国会図書館「外国の立法 (2009.7)」は2009年5月26日、カリフォルニア州最高裁の判決につき簡単に解説している。

(筆者注14)カリフォルニア大学法学部憲法専門のビクラム・ディビッド・アマル(Vikram David Amar)教授がウォーカー判決の意義につき憲法解釈上の論点を整理して“Find Law”に発表しており、わが国の関係者にとっても参考になる。

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[参照URL]
〔2010年10月12日、「1993年 同性愛公言禁止法(Don’t Ask,Don’t Tell ACT)」に対するカリフォルニア中央地区連邦地方裁判所(フィリップ裁判官)判決〕
・http://sblog.s3.amazonaws.com/wp-content/uploads/2010/10/DADT-final-injunction-Philllips10-12-10.pdf
〔2010年9月9日、フィリップ裁判官の予備判決〕
・http://www.cacd.uscourts.gov/CACD/RecentPubOp.nsf/bb61c530eab0911c882567cf005ac6f9/4f03e468a737002e8825779a00040406/$FILE/CV04-08425-VAP(Ex)-Opinion.pdf
〔2010年9月24日、ワシントン西部地区連邦地方裁判所(レイトン裁判官)の除隊処分の憲法違反判決〕
・http://www.aclu-wa.org/sites/default/files/attachments/Witt-MEMORANDUM%20OPINION.pdf
〔2010年8月4日、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所(ウォーカー裁判官) の同性愛者間の結婚を禁止するカリフォルニア州民投票に基づく規則案8に関する判決」〕
・http://sblog.s3.amazonaws.com/wp-content/uploads/2010/10/DADT-final-injunction-Philllips10-12-10.pdf

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