2010年10月30日土曜日

米国史上最大規模の原油流出事故を巡る連邦規制・監督機関やEU関係機関等の対応(第8回)



〔米国全米海洋大気局と食品医薬品局がメキシコ湾石油分散剤の魚介類への化学的影響検査結果を公表〕
                                               
 10月29日、米国商務省全米海洋大気局(NOAA)と米国連邦保健福祉省・食品医薬品局(FDA)が「メキシコ湾石油分散剤の魚介類への化学的影響検査結果:安全閾値にかかる全サンプル調査結果」を公表した。

 メキシコ湾の原油流出事故の魚介類への影響については本ブログでも報告してきたが、流出が完全に停止したとされた後である9月28日にもオバマ大統領は長期的な取組が必要と宣言(筆者注1)している。

オバマ大統領の声明の根拠となったのは海軍省のレイ・バマス長官の報告書「America’s Gulf Coast:A Long Term Recovery Plan after the Deepwater Horizon Oil Spill」(全130頁)である。

 今回発表されたNOAAとFDAの報告内容はEPAとの関係は明確でないが、今まで本ブログで解説してきたこれら機関の取組み内容から見て当然の活動であると思う。
環境保護団体や研究機関のこの報告に対する反応についてはこれからであるといえるが、「安全閾値(safety threshold)」(筆者注2)に関する全サンプル調査と断り書きがある今回の報告を、とりあえず現時点での最新情報として紹介する。

***********************

 すでに行われてきた連邦、州や地方の官吏による膨大な量の試験や手順を足がかりとしてNOAAとFDAは魚、牡蠣、カニおよびエビについてデープウォーター・ホライズン海域で使用された石油分散剤を調査するため化学試験の開発のならびに使用して検査を行ってきた。

 厳格な官能分析手順(rigorous sensory analysis process)につき教育を受けた専門家がメキシコ湾の魚について汚染物質の存在および魚介類の各サンプル原油や分散剤が付着した検査をパスして再開した海域の水について検査を行った。

 それにもかかわらず、なおメキシコ湾で収穫される魚介類の安全性を完全な形で保証するため、NOAAとFDAはメキシコ湾での漁業の再開時期を決定するため第2番目の検査を追加した。

 この新たな第2次検査を使い、メキシコ湾岸の科学者達はメキシコ湾の連邦管理海域の再開のため集められた半分以上の細胞組織見本1,735を試験した。

 極めてわずかな量(1,735のうち13)に残留物があったが、魚類(finfish)については100万につき100、またエビ゙、カニおよび牡蠣については100万分の500という安全閾値(safety threshold)以下であった。

 このようなことから、人体への影響を与えることはない。

 この新しい検査では、分散剤の主要成分である「ジオクチル・ソジウム・スルホサクシネート (Dioctyl Sodium Sulfosuccinate:DOSS)(筆者注3)が検出されたが、これは家庭用用品や市販薬で使用されているもので、その毒性はきわめて低くFDAが承認している。
 今までの検査で得られた最も優れた科学データは、DOSSは魚肉細胞組織では蓄積しないことである。

今 まで試験された1,735のサンプルは2010年6月から9月の間に連邦や州が管理するメキシコ湾全域の公開海域から集められたもので、連邦の海産物分析専門家の要請に応じてドックに集めた漁夫が持ち込んだものである。

 サンプルは様々な種類の見本からなる。ハタ(grouper)、マグロ(tuna)、サワラ(wahoo)、アオチビキ(gray snapper)、マナガツオ(butterfish)、サケ(red drum)、グチ(croaker)ならびにエビ、カニ、牡蠣である。
 以前の研究では魚類がどのようにDOSSを代謝するかにつき情報を提供した。FDAのドルフィン・アイランド、アラバマ実験室において科学者が魚、牡蠣、カニにつき更なる汚染試験を行っている。またエビに関する検査はNOAAのガルベスト( テキサス州)研究室に移されている。

 現在、約9,444平方マイル(連邦管理海域全体の4%にあたる)、なお商業やレジャー目的の釣りが禁止されている。」

(筆者注1) オバマ大統領の声明の要旨(仮訳)は次のとおりである。
「私はメキシコ湾の復旧および復元計画を策定した海軍省のレイ・マバス長官の信頼できる仕事に感謝する。BP社の原油流出は同地域での重大な環境面と経済面の課題を作り上げた。オバマ政権は、メキシコ湾に住む人々とともに支援する生態系を保持し、また健康で安全な生活や安全対策の再構築を支援すべくその作業に取組んでいる。
マバス報告は、方針の策定に関しては非営利団体や民間部門の提言と同様に、地域、州、先住民(tribal)および連邦レベルでのアイデアや協調といった常識的な提言である。私は、連邦議会に回復に向けた打ち込むべき資源の提供を働きかけるつもりであるが、議会の回復に向けた行動のみを許すわけには行かない。
私は、米国の景気回復問題と長期の保健制度を推し進める一方で、より健康的で回復力のある生態系を作るよう連邦環境保護庁(EPA)のリサ・ジャクソン長官(Administrator Lisa P.Jackson)に命じた。
我々は、復旧の努力は新しい考え、協調および創造性を取り込むべきであると理解している。しかし、とりわけ時間がかかる問題である。」

(筆者注2) 「安全閾値(しきいち)(safety threshold)」とは、最小有効量(minimum effective dose)ともいう。刺激が効果を発揮し、生体反応を誘発するためには、ある値以上の強さを有する必要があり、その境界の値を閾値という。原則として、刺激に対する生理反応には、全か無かの法則(恣無律ともいう。all-or-none law)がある。閾値以下の刺激では反応は現れず、それを超えると一定の大きさの反応が現れる。(出典:小野宏・小島康平・斎藤行生・林裕造監修「食品安全性辞典」共立出版)

(筆者注3) 白色のろう状又は樹脂状物質で、オクチルアルコールようの特異なにおいがある。エーテルに極めて溶けやすく、エタノール又はクロロホルムに溶けやすく、水又はメタノールにやや溶けにくい。吸湿性である。便軟化・腸運動促進緩下剤の成分として一般に利用されている。(ゲノムネット医薬品データベースから引用)。

[参照URL]
・全米海洋大気局(NOAA)と米国連邦保健福祉省・食品医薬品局(FDA)がメキシコ湾石油分散剤の魚介類への化学的影響検査結果
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm231653.htm

〔メキシコ湾原油流出事故に関する連邦機関の専門ウェブサイト〕
・FDA〔Gulf of Mexico Oil Spill Update〕http://www.fda.gov/Food/FoodSafety/Product-SpecificInformation/Seafood/ucm210970.htm
・連邦政府のメキシコ湾Oil Spill復元専門サイト
http://www.restorethegulf.gov/
・NOAAのOil Spill専門サイト
http://www.noaa.gov/sciencemissions/bpoilspill.html
・EPAのOil Spill専門サイト
http://www.epa.gov/bpspill/index.html

*******************************
Copyright © 2006-2010 福田平冶. All Rights Reserved.

0 件のコメント: