2012年3月27日火曜日

米国連邦金融監督機関が連名でレバレッジ・ファイナンスの改正ガイダンスを11年ぶりに発布



 3月26日、連邦準備制度理事会(FRB)、預金保険公社(FDIC)および財務省通貨監督庁(OCC)は各種債務比率、キャッシュ・フロー倍率(注1)やその他の比率により計算される業界の標準を大幅に超える財務レバレッジ(筆者注2)ならびにキャッシュ・フロー・レバレッジ(筆者注3)に基づく融資先の融資判断取引をカバーすべく改正草案を連名でリリースした。

 今回の改正の背景には、これら監督機関が金融危機の引き金となったレバレッジに基づく与信取引量および規制監督の対象外の投資家の市場参加の急増に注目したことが上げられる。

 今回のブログは本通達内容を仮訳することにある。時間の関係で十二分に吟味した翻訳作業とは言えないが、わが国の関係者に対する問題提起として読んでいただきたい。


1.要旨
 米国における金融危機の間、レバレッジ融資を手控えることがあった一方で、良識ある引受け実務は退化してきた。金融市場が発展段階にあるとき、債務契約は比較的限られた貸し手保護に関する特性、すなわち重要な維持特約の欠落や貸し手の融資実行力の弱体化したときの頼みの綱に影響を与えるその他の特性を包含するなどをしばしば含んでいた。
 さらに、いくつかの取引において資本構成と返済見通しは契約の新規創設の場合や分配方式かにかかわらずきわめて攻撃的であった。いくつかの金融機関では経営情報システム(management information system:MIS)はタイムリーなベースでみた正確に実際の情報開示を実現していたかという点で不十分であることが証明された。また、多くの金融機関ではリスクのある資産の重大な減少に関する買い手の要求が行われたとき、彼らは自分がハイリスクの取組みパイプラインを握っていることを認識した。

 レバレッジ・ファイナンスは経済にとって重要な形態であり、銀行の経営において与信を可能とし、その与信活動における投資家を組織化する統合的な役割を担う。銀行が、五体満足に安全かつ健全な方法で信用にたる借り手に融資手段を提供することは重要である。

 市場の発展の観点から、連邦金融監督機関は2001年に策定した「レバレッジ・ファイナンス・ガイダンス」に置き換わる次の項目からなる改正ガイダンスをこのたび提案するものである。

①健全なリスク管理の枠組みの構築
 連邦監督機関は、経営者や取締役会が当該金融機関のレバレッジ・ファイナンスに関するリスク選好を特定し、適切な与信限度を確立のうえ信頼にたる監視と承認手続きを確実にすることを期待する。

②引受け条件の標準化
 本ガイダンスは、キャッシュ・フローの限度容量、分割償還(amortization)、契約の保護、担保管理および各取引に関するビジネス契約書(business premise)は健全な内容でなければならず、資本構成は融資契約が新規創設の場合か分配方式を問わず持続可能でなければならない点を強調した。

③評価基準
 本ガイダンスは、意思決定時の健全な方法論確立の重要性と企業価値の定期的な再評価問題に集中する。

④パイプライン管理
 時宜に即した適切な開示の必要性、融資取引が失敗したとき、一般的な金融市場の破綻時の政策や手続きの準備することの重要性およびパイプラインに関する定期的なストレス・テストの実施を強調している。

⑤報告と分析
 本ガイダンスは、主要な債務者特性に関するMISの必要性を強調するとともに時宜の応じた形でのビジネスラインおよび法人全体にわたり横断的に統合する点を強調する。また、報告と分析方法に関し、定期的なポートフォリオに関するストレス・テストの実施をもって補強する。

2.コメント期限
 本ガイダンスに関する関係者の意見は、2012年6月8日までに連邦金融監督機関に提出しなければならない。

3.添付資料
「Proposed Guidance on Leveraged Lending」(全文25頁)


(筆者注1)「キャッシュ・フロー倍率(cash flow ratio)」とは、「株価キャッシュフロー倍率(PCFR=Price Cash Flow Ratio)ともいわれ、株価収益率(PER=Price Earnings Ratio)とともに株式市場平均や収益力の同業他社との比較をする際に用いられる。
キャッシュ・フローは利益から税を引いた額から配当金や役員賞与などの社外流出分を除いた額に、減価償却費をくわえたもののことをいう。株価を一株あたりキャッシュ・フローで割ることで「キャッシュ・フロー倍率」が算出される。企業によっては、有税償却し内部保留を行ったり、設備投資で減価償却費が増加している場合もあるので、キャッシュ・フロー倍率(cash flow ratio)は、その企業の収益力を判断する際の尺度になる。(「資産運用まるわかり辞典」から引用)

(筆者注2)負債がまったくない企業の財務レバレッジ(financial leverage ratio)比は1であり、その比率数値が高まるにつれ、負債が多いということになる。

(筆者注3)レバレッジは、一部の金融資産の契約上のキャッシュ・フローの特性である。レバレッジは、契約上のキャッシュ・フローの変動性を増大させ、レバレッジ効果を含む契約上のキャッシュ・フローは、利息としての経済的特徴がなくなる。このため、契約上のキャッシュ・フロー特性テストをパスできない可能性がある。
 なお、企業分析におけるフリーキャッシュ・フロー特性分析に関し、企業の本源的価値(実態価値)を計算するときには、その企業が将来に亘って生み出すであろうフリーキャッシュ・フローを推定することが必要となる。最も単純なケースでは、当期利益に非資金項目である減価償却費や引当金計上などの費用項目を足し戻し、最後にビジネスを継続していくうえで必要となる設備投資(資本的支出)を差し引いたものが該当する(企業が稼いだ利益のうち最終的に手元に現金として残る部分)。(マネックスラウンジから引用)


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