2008年10月13日月曜日

“EU加盟国におけるソーシャル・ネットワークキング(SNS)の成功と挑戦”等EUの取組み(その2)

3.SNSの企業内利用の現状
 ある企業は、自社の従業員のために従業員が物理的にどこにいようとコミュニケーションが図れるよう特別なSNSを開設した。その結果、関与意識や生産性向上にかかわる企業の決定に関与していると感じさせる機会を与えることになった。
 広告の分野では、特に潤沢な予算を持たない中小企業にとってSNSはまったく新しい文脈をもたらした。中小企業の40%はウェブサイトの運営は金がかかり過ぎるためウェブサイトを持っていない。しかしながら、ウェブ2.0はわずかな資金でオンライン・コミュニティの参加者することで顧客を楽しませ、かつ自らのビジネスの推進を図る効果的手段となった。

4.人材開発分野
 人材募集と人材開発の専門家は、面談の相手探しを「オンライン接続型」から「ビジネスネットワークやそこでの自己推薦型」へと変えつつある。これは必要とするポストを埋めるのにメディア介在型人材募集より効率的であるといえよう。ドイツのXING(筆者注6)やBritish Ecademy はこの分野で急速に伸びている。

5.研究機関の啓蒙活動
 SNSを通じて研究機関はどこにいても情報と経験を共有化できる。彼らは簡単でかつ直接的な方法で自らの活動内容の説明するために、SNSにより提供される機会を利用する。最近の例では、欧州原子核研究機構(CERN)(筆者注7)の研究関係者が「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」(筆者注8)の機能と目的について説明するのにラップソングを作曲し、Youtube に載せたところ200万以上の閲覧数を上げたのである(筆者注9)。

6.芸術創造活動分野での利用
 SNSはオンラインの内容が創造的な分野で繁盛している。内容を作成し共有することは今や簡単なこととなり、ユーザーに新しい形の情報を形作る機会を与えることとなった。ビデオ共有会社が好例である。多くのミュージシャンは自らのビデオをMyspaceに置くことで有名になった。また、Daily motionは、創造的なビデオプロデューサーを奨励して短編映画のような文化的行事にリンクする特別なサービス“motionmakers”を新たに設けた。

7.モバイル型SNS
SNSはモバイル・ウェブを成功させることにも貢献できる。新しい研究では、モバイル・ウェブのユーザーが現在の5億7,700万人から2013年には17億人に増加するという予想を述べている。英国のジュニパー・リサーチ(筆者注10)は、SNS、wikis、オンライン・チャット、インスタント・メッセージといった協調的適用の要求の急増がこのような成長の原因であると分析している。

8.SNS運用会社の規模拡大
SNSはユーザー数の増加に伴い、より多くの従業員を雇用し始めている。ベルギーの本部を置くNetlogはSNSの運用の開発費用として500万ユーロ(約7億500万円)投資を誘致した。フィンランドのSulake 社は、同社の主要サービス“Habbo Hotel”(筆者注11)の強固な成長を維持するため1,800万ユーロ(約25億3,800万円)の増資を行った。同社は2000年に設立されフィンランドのヘルシンキに本部と世界中の14の事務所を持つ。世界中の従業員数は約300人以上で世界のデジタル・コンテンツ企業のトップ25に評価されている。(筆者注12)(続く)


(筆者注6)XINGのサイトでは16カ国語で利用できる。ただし日本語の「利用規約」を読んでみたが、いかにも直訳的な内容である。

(筆者注7)ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機構(CERN)が建設中の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)がいよいよ2008年夏に完成し、史上最高エネルギーの素粒子実験が開始される。これまで建設に14年の歳月を費やしたこの加速器は、現在の最高エネルギーを一挙に7倍(14 TeV)にまで高める性能を有する。LHCでの高エネルギー陽子・陽子衝突の反応を記録する巨大なアトラス測定器も完成に近づいており、実験開始に向けて調整を行っているところである。今後数年のうちに、素粒子の質量の起源ともいわれる未知の素粒子であるヒッグス粒子や、宇宙の暗黒物質の解明にもつながる超対称性粒子などの新発見が期待されている。(東京大学 大学院理学系研究科サイトから引用・一部表現を追加)

(筆者注8)CERNはヨーロッパ諸国により設立された素粒子物理学のための国際研究機関。設立は1954年。所在地はスイスジュネーブ郊外。加盟国はヨーロッパの20カ国。 日本は、米国、ロシア等と共に、オブザーバー国として参加している。世界の素粒子物理学研究者の半数以上(約7,000人)が施設を利用している。(東京大学 大学院理学系研究科サイトから引用)

(筆者注9)ラップソングを作曲したのはミシガン州のサイエンスライターのKate McAlpine さんである。この話は関係者の間では大きな話題となっている。本ブログの読者も一度閲覧してみてはいかがか。

(筆者注10)Juniper Researchは、英国に本社を置く、コンテンツ専門の調査会社で、特に、成長著しいモバイル分野としては、ゲーム、着信メロディ、ギャンブルなど多岐にわたるレポートを出版している。

(筆者注11)Habbo Communitesは世界32カ国の子供等が利用している。もちろん日本語のサイトがあり、自由に利用しているようである。筆者が閲覧している時点でもオンライン利用者が371人、過去30日間の訪問者数は延べ239,102人と表示されていた(フィンランドのサイトを見たがオンライン接続中が1,612人、過去30日間の延べ訪問者数は1,238,744人であった(フィンランドの人口は約530万人)。このSNSサイトは「Habbo ジャパン株式会社」が事業主体であり、当然ながら商品の購入などに関しては「特定商取引法に基づく表示」が行われているとあり、同法11条に基づく要件は一応満たしていると思われるが、相手が未成年であることを前提するとこのままでよいのか大いに疑問である。
ある通信販売業者の表示例では、「未成年者の場合は、親権者の同意を得た後ご購入下さい。そうでない場合、 弊社の商品は未成年には販売できかねますので、ご了承下さい。尚、未成年者が成人と偽って購入された場合は、民法により成人者と同様の扱いになりますので、ご注意下さい。」とある。これも言葉足らずであるが、少なくとも言及している。
より正確には、「民法4条の規定では、例外を除き未成年者から注文があった場合、その未成年者は注文を取り消すことができるとされている。これを回避する方法としては、注文画面に年齢を確認するためのフォームを用意することが考えられる。これにより、Webサイト運営者が未成年者を誤って成人と判断した場合には、民法20条にもとづき未成年者側は取消権を失う可能性がある。(経済産業省「電子商取引等に関する準則(平成18年2月)」29~30頁参照)」であろう。

(筆者注12)Silicon Alley Insider社は世界的デジタル・コンテンツ格付け企業である。
そのHPを見ると“SAI 25”と言う項目があり、最新のデジタルコンテンツ企業上位25社がリストアップされている(Facebook(評価額90億ドル(約8,820億円))、Wikipedia(同70億ドル) 、Craigslist(同50億ドル)、Mozila Corp(同40億ドル)等があり、Habboは12億5千万ドル(約1,225億円)と上位グループに入っている。なお、Habbo の企画運営会社であるSulake 社のHPを見るとヴァーチャル世界およびSNSに特化したオンライン型娯楽企業であるとしている。

〔参照URL〕
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=SPEECH/08/465&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/08/587&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en

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