3.FRBおよび財務省のUIGEAの適用に関する規則(案)の内容および各種決済形態の解説
本公募通達は全体で52ページもので、米国人でもその説明の重複、くどさにへきへきしているらしい。しかし、良く読んでみると結構その内容はかなり“practical”である。つまり、インターネットというグローバルかつヴァーチャルな世界で違法な賭け事を決済面で規制していくという視点である。特に各決済手段の特性を分析しながら、①1取引毎のキー・コードとして使えるものはないか(identifying information)、②送金依頼人や受取人の特定につながる情報はないかといった観点から分析・模索している点である。(筆者注7)
本ブログでは筆者なりに要点のみ説明するが、個人的に関心があったのは規則案の解釈の前提として必須といえる「第Ⅱ章 逐条分析」(6頁以下)で説明されている“UIGEA”で定める「ACH、カード、小切手取立等5つの決済システム」についてである。(筆者注8) (筆者注9)
特に“Western Union””MoneyGram”(筆者注10)“PayPal”は既存の銀行等による決済手段とは異なる「資金送金ビジネス(Money transmitting business)」である。これらの部分について興味のある読者は丁寧に読んで欲しいし、できたら図解化したら米国の最新の決済の仕組みが勉強できる(ただし、金融機関向けに作成されたものとしては、注書きの内容も含め説明内容の不足の感は否めない)。
(筆者注7)米国の議会の“practical ”な点はもう1つある。「米国では毎年の予算がすべて法律として審議され、制定される。米国憲法は第I条第1節で、「いっさいの立法権限は議会に与える」と定めている。したがって、予算編成の権限も立法の一部として大統領ではなく議会(立法府)にあり、財政関連法案は議員が細部にわたる決定権限も持つ(もちろん通常の法案と同様、大統領には拒否権がある)。大統領は毎年2月第1月曜日に予算教書(President's Budget)を議会に提出するが、これは議会に対するリクエストにすぎず、そのまま採用されるわけではない。議会は歳入・歳出に関する法案を独自に審議し、制定することができる。日本では予算編成は内閣(行政府)の仕事であり、ここが日米の予算編成プロセスの大きな違いだと言える。
では、実際に予算の立法化作業をどこが行うのかというと、上・下院の委員会である。連邦議会の上・下院には、それぞれ軍事・外交・通商科学・歳入・保健年金・司法・公共事業などといった専門分野別に委員会が設置されていて、歳出権限法を定める(予算以外についても、議員を通して持ち込まれるさまざまな法案をスクリーニングして公聴会にかけ、どの法案を本会議に送るのかを決めている)」
http://www.glocom.ac.jp/j/publications/2005/07/2006.htmlから引用。
ところで、“UIGEA” 法案(H.R.4411)における連邦予算局が下院司法委員会で行った報告では2007年から2011年の間に法施行による連邦、州等行政機関が新たに負う財政支出は200万ドル(約3億3,200万円)として連邦予算全体への大きな影響はないとしている。なお、民間の決済機関がFRB等の規則に遵守するためのコストについては明らかにしていない。
(筆者注8)ACHは、 米国の連邦準備銀行(FRB)等によって運用され、銀行間の資金決済を電子的に行う決済システムである。給与振込、公共料金の支払いの他、利息や配当金の自動振込や自動引落、財務省が依頼人となる社会保障給付金等の受給資格付与プログラムに基づく給付等に利用されている。さらに最近では、大量処理に向いていることから保険の掛け金、株式の購入や法人の現金残高の連結処理等に利用されている。ACHは、米国の銀行がネットワークで結ばれて一大決済システムを構築しており、銀行、証券会社等25,000以上の金融機関で構成されている。
ACHの民間部門の実務的な運用は、全米自動決済協会(National Automated Clearing Association(NACHA)) が策定した規則により、また財務省の支払いについてはNACHAの規則に適合する範囲で連邦政府規則によって管理される。
NACHAは、直接会員11,000以上の金融機関(商業銀行、貯蓄銀行、貯蓄貸付組合、外国銀行、エッジ法会社(1919 年のエッジ法(銀行法改正)により認められた金融会社。連邦政府の免許を受けて国際金融業務を行い、FRB の監督に服する。通常は銀行の子会社で、国際銀行業務を行うものと国際投資業務を行うものとの2つのタイプに大別される)および信用組合)、地方の40のACH協会および業界協議会を通じた585機関の代表からなる非営利協会である。
なお、これと対象的な米国の非現金小口決済システムは「小切手」である。2004年の連銀の調査では、紙ベースの小切手のシェアーは2000年の57%(取扱額は12兆ドル(約1,392兆円)、48億枚)から2003年には45%に低下している。もっとも連銀は手を拱いているわけではなく、小切手のイメージ処理を目的とした「21世紀の小切手決済法(Check Clearing for the 21th Century Act)」を2003年10月に成立し、2004年8月28日に施行している。
(筆者注9)米国におけるホールセールやリィテールの決済システムの図解はないのか、筆者がかねてから抱いてきた疑問は未だに解決できない。唯一の救いは連邦金融機関検査協議会(FFIEC)がまとめた「2004年3月Retail Payment System Booklet」である。実務面から見ると簡潔な図解ではあるが、小切手、クレジットカード、PIN型デビットカード、オンライン型P 2P、ACHの各決済ごとに取引stepの番号順に説明をしている。初心者にも理解しやすい内容であり、本規則案と併用して読むと用語が共通しており一層理解が深まろう。
また、ACHだけに限ればNACHAサイトの図解がより正確で詳しい。
これと比較するものとして既存米国銀行のシティバンクの「手数料一覧」を見おく必要があろう。
(筆者注10)外国送金の手段として邦銀を利用するより割安な方法として紹介されている例が多い、ただし、“Western Union”の場合、利用者は唯一の日本の代理店であるスルガ銀行と送金委託契約の締結が必要となる。また、Moneygram internationalを利用する場合は、東京にあるポルトガルの「イタウ銀行(Banco Itau S.A.)」に出向くことが必要になる。
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
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