2008年1月5日土曜日

第3回米中戦略経済対話(SED)が共同文書を採択、閉幕(その3)

(4)行政許可に関する透明性について(筆者注9)
 米国と中国は行政ルールの策定時(in administrative rule-making )の透明性の拡大ならびに一般大衆の参加機会の強化について合意した。
両国はAPECおよびWTOにおける責任を含む透明性に関する国際的責務として次のことに取組むことにつき合意した。
① 極力(when possible)、(ⅰ)行政手続きの適用・採用に関しWTO協定に基づく責任において扱われる方法案について予め公表し、(ⅱ)提案方法についてコメントする合理的な機会を関係者に提供する。各国は、このWTO責務の遵守について指定した官報への掲載または公的ウェブサイト上での恒久的掲示を行う。
② 行政手続きの適用または執行の前に指定された官報においてWTO協定に基づく責任において扱われる最終的方法について公表する。

(5)米中のバランスの取れた経済成長のあり方について
 米国と中国は、米中合同経済委員会(U.S.-China Joint Economic Committee)の下での議論を含む対話と協議を通じた米中の経済の不均衡に関する方法について話し合う責任がある。両国は貿易および投資に関する保護主義に対し強く反対することに合意した。
  米国と中国は最近時の米国のサブプライム市場および世界的金融市場の混乱によって導かれた米国や国際的な取組みを歓迎する。両国は、引き続き構造的に重要な経済および金融の発展に関し、時宜に応じて話し合いと情報の共有を行うことに合意した。
  両国の金融監督機関は、監督方法について意見交換を行うことについて合意した。2007年12月13日、14日に中国税関局と米国税関国境警備局(CBP)
は2008年1月の早い時期に開始する予定の米国関税テロ対策プログラム(C-TPAT)(筆者注10)の中国における共同認定手続きのパイロットプログラムの技術的討議について合意した。

(6)官民一体の改革の促進について
 米国と中国は2007年12月10日に北京で改革会議を共催した。その中で①エコシステムのための改革を成功裡に収めるための要素、改革の育成のための適切な官民の役割および知的財産の創造、保護、普及についていかなる方法で促進させるか等について議論した。その結果、両国は引続き官民改革の議論を合同で開催するとともに第3回改革会議で概要取りまとめ文書に即した共同活動を行うことについて合意した。

5.両国の今後6か月間の優先的取組作業内容
両国は、次回SEDまでに次の優先課題に取組む。
(1)既存の両国間の共同検討メカニズムを通じて、食品、薬品、医療製品を含む製品および消費財分野における対話と意見交換を一層発展させる。
(2)エネルギーと環境改善に向けた10年以上の広範囲な共同活動に取組む。この10年以上にわたる共同活動において、①技術的改革、②高度に効率的、クリーンなエネルギー技術、③気象の変化、④天然資源の持続の促進をすすめる。このため可及的速やかに計画を進めるため作業部会を設置する。
(3)①2008年の早い時期に会合を開き環境問題が緊急の課題であるという認識の下で、WTOにおいて環境改善に向けた製品やサービスなど環境改善に向けた関税および非関税障壁の軽減また適切な場合は撤廃について共同交渉を推進する。
 ②中国の第12次5ヵ年計画に合わせ、硫黄含有量の50PPM以下への漸次削減とより進んだ自動車汚染の管理技術の共同化の開発のための詳細計画の開発についての共同活動を拡大する。
 ③国際エネルギー機関(IEA)との協調を含め、情報および技術交換を通じて戦略的石油備蓄施設の建設およびその管理に関し共同活動を強化する。
(4)①投資政策、実践および投資環境についてハイレベルの意見交換を開始する。二国間の投資条約(Bilateral Investment Treaty)の交渉見通しに関する現下の議論を活発化する。
 ②中国の市場経済化を成功裡に導くために共同的方法により協議を継続する。
③両国間のハイテク技術と戦略的貿易の拡大と促進に向け「米中ハイテク・戦略貿易開発に関するガイドライン(Guideline for U.S. High-Technology and Strategic Trade Development)」の積極的な適用、適切な建設的方法の採用ならびに行動計画を作りあげる。両国の関係政府機関は原産地規則(rule s of origin)の分野において会合またはデジタルビデオ会議を行うことに合意する。
(5)①行政の透明性に関する各国の国際的な責務の範囲の調査を行う。
 ②行政ルールの策定の間における受け取ったコメントに対する調査および対応につい情報交換を継続する。
 ③米国に対する中国市場の分野および中国に対する米国市場分野において、行政免許を与えることに関し、条件、手続き、時間枠について定期的に両国間で情報交換を行う仕組みを確立する。
 
(筆者注9)中国の行政手続きの透明性問題について、富山県貿易・投資アドバイザー梶田 幸雄氏の論文に基づき補足しておく。「透明度の問題とは、中国市場におけるコストやビジネス機会を評価す情報開示の問題である。60%から数年来進展がないと回答し、毎年の主要課題として指摘され続けている問題である。解答の12%は、規制などの情報開示が拒まれることがあり、悪化ないし新たな問題となっていると述べている。中国の行政許可法が2004年7月1日から施行された。この行政許可法は、行政許可の範囲、種類、手続を定め、および行政許可の検査監督、費用徴収などにつき明確な規定をし、政府の行政許可および行政管理人の業務を法制化、規範化するものである。中国国内における企業活動にとっても重要な意味を持つものであるといえる。」
 http://www.near21.jp/center/publication/journal/73/kajita.pdf

(筆者注10)米国C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)とは、米国関税テロ対策プログラムのことで、国土安全保障省傘下の米国税関国境警備局(CBP)が実施している一連のテロ対策の中核プログラムである。
①米国に輸入される全貨物に危険物が混入するのを防ぐため、そのサプライチェーンの安全性を確保する官民共同プログラムで米国の輸入品に関係する全企業が対象になる。
②参加企業は自社サプライチェーンの保安計画を提出し、税関の検査・認証を受ける。
③米国税関が国・業種を段階的に指定。任意参加であるが、不参加者には通関時のチェックの増加など不利益が出るので、実質強制参加に近い。
④CBPが示すサプライチェーン・セキュリティ管理ガイドラインに沿って社内セキュ
リティ管理を実施していると認定した企業に対して、輸入通関時での低い検査率の適用などのベネフィットを提供する。
⑤輸入者、船社、通関業者、倉庫管理者、海外の製造者(メキシコ・カナダ)が対象。 既に6,600社が参加認定されている。日系米国法人も多数参加。⑥認定(validation)後、海外サプライヤーの事業所にも米国税関検査官の実地調査が入る。⑦実地調査により、評価はTier3からTier1まで3段階に区分される。Tier3が最上位。
http://nexus-partners.org/ctpat.aspxより引用。


〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm

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