【4条】例外
規則案に基づきポリシーの策定および運用手続きを定める義務から適用除外される決済参加機関やシステムそのものを列挙している。
(a)ACH
(b)小切手取立てシステム
(C)電信送金システム
【5条】禁止される取引きの処理
すべての非例外的な指定された決済システムの参加者は、規制行為の特定および阻止について文書により策定すべきポリシーや手続きの設定および適用を行わねばならない。
ポリシーや手続きは合理的な観点から次のような要件を満たさねばならない。
(ⅰ)禁止取引きの特定かつ阻止に役立つこと。
(ⅱ)その他禁止取引きに関し指定されたシステムまたは禁止取引きの参加者の
商品やサービスの受け入れの阻止または禁止にかかるものであること。
【6条】定めるべきポリシーおよび手続きの策定内容および例示
(a)各決済システムごとに見た策定内容の例示は次のとおりである(詳細は省略)。
(b)ACHの場合の例示
以下の(b)(2)および(b)(3)に規定する場合を除き、仕向預金取扱金融機関(originating financial institution)およびACH決済の借方取引きの第三者仲介機関 (third-party sender in an ACH debit transaction)、ならびにACH貸方取引きの被仕向預金取扱機関において次の行為を取っていた場合は合理的の禁止行為を阻止または禁止していたとみなす。
(ⅰ)受け付けた顧客について顧客との関係に基づき、ACH借方取引きまたはACH貸方取引きとして禁止取引きを起こしていないと保証する顧客との関係を確立・維持すべく次にいうような適正な行動を意図的にとっていた場合
(A)顧客の事業内容の性質を解明するため潜在的な顧客についてスクリーニングを行っていた場合
(B)顧客との間で禁止行為に関与していないとする商業契約合意を取り交わてしる場合
(ⅱ)仕向け預金取扱機関または第三者仲介機関が、顧客がACH借方取引きに関し禁止取引きを起こしていたことに気付いていたとき、または受け手の預金取扱い機関が禁止取引きであることに気付いていたときは当該手続きについて次の定めを行っていたときを含む。
(A)罰金を課す時期
(B)顧客がACHシステムを通じACH貸し方取引きを起こすことを認めない時期
(C)当該状況下においては該当口座を閉鎖する
(2)外国の送信者(外国銀行、外国の第三者送金処理者、または外国の仕向けゲートウェイ運用者を含む)からの直接のACH借方を起こされた場合は一定の場合(中略)は合理的に阻止または禁止取引きを行ったものとみなす。
(3)略
(c)カードシステムの例(略)
(d)小切手取立て(略)
(e)資金送金ビジネスの例(略)
(f)電信送金の例(略)
【7条】連邦規制監督機関による排他的法執行要求要件
本規則の下における要求は、次の排他的法執行に従う。
(a)指定される決済システムおよびそこへの参加機関に関する連邦の機能面上の規制監督機関は次の法律に定める裁判権に従う。
(b)指定する決済システムおよび金融取引提供者に関し、連邦取引委員会(Federal Trade Commission)は、本条(a)項に記述するとおり他の連邦の機能規制監督機関には従わない。
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
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2008年1月6日日曜日
米国FRBと財務省がインターネット・賭博規制に関する規則案について関係機関からの意見を公募(その3)
【2条】定義
(a)ACH(Automated clearing house system)はACH規則に基づき定められたバッチ処理による電子登録を介する資金移動システムである。ACH規則には“originating depository financial institution ”“operator ”“originating gateway operator”“receiving depository financial institutions”等の用語が定義されており、本規則でも準用する。
(b)賭け(bet)および賭博(wager)
(1)ある人間が偶発的な出来事により一定の価値物を受け取るという合意または理解に基づき、成果価値を賭けたり、競技、スポーツ・イベント、機会に基づくゲームを行うことを意味する。
(2)宝籤やその他の懸賞を勝ち取るチャンスや機会を含む。
(3)合衆国法典(U.S.C.)28巻3702条に定めるプロおよびアマチュアスポーツの保護に関する法律(“PASPA”)に定める違法な賭け行為を含む。
(4)賭けや賭博のビジネス勘定(金融取引機関、双方行コンピュータサービスまたは電気通信サービスを除く)をもってその入出金用に賭け人または顧客によりファンドの設立や移動を行うための指示や情報を含む。
(5)次のものは除く。
(ⅰ) 証券取引法により規制される取引行為(具体的定義は1934年証券取引法3条(a)号(47)に定められている)
(ⅱ)商品取引法(7 U.S.C.1以下)12条(e)号に基づく取引行為、登録事業者の規則に従った行為または免除取引所の取引行為。
(ⅲ)あらゆる店頭登録金融派生商品(Any over-the-counter derivative instrument)
(ⅳ)その他の取引き
(A)商品取引法に基づき規則の例外とされる取引。
(B)商品取引法12条(e)号または証券取引法28条(a)号に基づく州ゲーム法または闇取引業者法(bucket shop law)の例外取引き。
(ⅴ)保証契約(Any contract of indemnity)または保証(guarantee)
(ⅵ)保険契約(Any contract for insurance)
(ⅶ)預金保険付預金取扱い機関の預金またはその他の取引き
(ⅷ)以下省略
(c)カード発行者
クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、価値保管型商品(stored value product)を発行する者またはその代理人
(d)カードシステム
(e)小切手交換所(check clearing house)
(f)小切手取立てシステム
(g)消費者:自然人のみをいう。
(h)指定する決済システム:規則案3条に掲げる。
(i)電子資金移動(Electronic fund transfer)
(j)金融機関:州法銀行または国法銀行、州また連邦貯蓄貸付組合、相互貯蓄銀行、州または連邦信用組合、その他顧客のために口座を保持する機関をいう。
(k)金融取引サービス提供業者:与信業者、クレジットカード発行業者、金融機関、その他電子資金移動、資金搬送業務、または信用取引、電子資金移動や価値保管商品取引、資金搬送サービスを利用するための端末取扱い業者、またはそれらのネットワークの参加者をいう。
(l)娯楽目的のコンピュータサービス
(m)インターネット
(n)州内取引き(intrastate transaction)
(o)部族内取引き
(p)資金搬送業務および資金搬送サービス:31 U.S.C.5330条(d)号に定める定義による。
(q)指定された決済システムの参加者
(r)禁止取引き
(s)州
(t)違法なインターネットギャンブル
(u)電信資金移動システム
共通規則部(案)
【1条】規則制定権、規則制定の目的および関係規則との結合
連邦準備制度理事会および財務長官(両者を併せ“Agencies”という)は、UIGEA802条にもとづき本条案を共同作成した。制定の目的は、①本規則部が求めるところに従い「指定する支払システム(designates payment systems)」、②特定の支払システム参加者中の適用例外、③合理的にみて違法な賭博行為の特定・阻止または禁止取引(restricted transactions)の阻止および禁止のための「ポリシー」や「手続き」の策定義務の免除を受けうる決済参加者(non-exempt participants)やその内容例についての必要な定義を定めること、および④Agenciesが排他的規則制定権にもとづき指定する決済システムおよびシステム参加者中免除を受けるものに関し、本規則に基づく取締権を定めることである。
関係規則とは、「2007年ACH規則(2007 ACH Rules :A complete Guide to Rule & Regulations Governing the ACH Network(“ACH Rules”))」に定める関連用語の定義をいう。
(i)電子資金移動(Electronic fund transfer)
(j)金融機関:州法銀行または国法銀行、州また連邦貯蓄貸付組合、相互貯蓄銀行、州または連邦信用組合、その他顧客のために口座を保持する機関をいう。
(k)金融取引サービス提供業者:与信業者、クレジットカード発行業者、金融機関、その他電子資金移動、資金搬送業務、または信用取引、電子資金移動や価値保管商品取引、資金搬送サービスを利用するための端末取扱い業者、またはそれらのネットワークの参加者をいう。
(l)娯楽目的のコンピュータサービス
(m)インターネット
(n)州内取引き(intrastate transaction)
(o)部族内取引き
(p)資金搬送業務および資金搬送サービス:31 U.S.C.5330条(d)号に定める定義による。
(q)指定された決済システムの参加者
(r)禁止取引き
(s)州
(t)違法なインターネットギャンブル
(u)電信資金移動システム
【3条】指定された決済システム
次の決済システムは、禁止取引きに関しまたは容易にする参加者により使用されるものとする。
(a)ACH
(b)カードシステム
(c)小切手取立てシステム
(d)資金搬送業務
(e)電信送金システム
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
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(a)ACH(Automated clearing house system)はACH規則に基づき定められたバッチ処理による電子登録を介する資金移動システムである。ACH規則には“originating depository financial institution ”“operator ”“originating gateway operator”“receiving depository financial institutions”等の用語が定義されており、本規則でも準用する。
(b)賭け(bet)および賭博(wager)
(1)ある人間が偶発的な出来事により一定の価値物を受け取るという合意または理解に基づき、成果価値を賭けたり、競技、スポーツ・イベント、機会に基づくゲームを行うことを意味する。
(2)宝籤やその他の懸賞を勝ち取るチャンスや機会を含む。
(3)合衆国法典(U.S.C.)28巻3702条に定めるプロおよびアマチュアスポーツの保護に関する法律(“PASPA”)に定める違法な賭け行為を含む。
(4)賭けや賭博のビジネス勘定(金融取引機関、双方行コンピュータサービスまたは電気通信サービスを除く)をもってその入出金用に賭け人または顧客によりファンドの設立や移動を行うための指示や情報を含む。
(5)次のものは除く。
(ⅰ) 証券取引法により規制される取引行為(具体的定義は1934年証券取引法3条(a)号(47)に定められている)
(ⅱ)商品取引法(7 U.S.C.1以下)12条(e)号に基づく取引行為、登録事業者の規則に従った行為または免除取引所の取引行為。
(ⅲ)あらゆる店頭登録金融派生商品(Any over-the-counter derivative instrument)
(ⅳ)その他の取引き
(A)商品取引法に基づき規則の例外とされる取引。
(B)商品取引法12条(e)号または証券取引法28条(a)号に基づく州ゲーム法または闇取引業者法(bucket shop law)の例外取引き。
(ⅴ)保証契約(Any contract of indemnity)または保証(guarantee)
(ⅵ)保険契約(Any contract for insurance)
(ⅶ)預金保険付預金取扱い機関の預金またはその他の取引き
(ⅷ)以下省略
(c)カード発行者
クレジットカード、デビットカード、プリペイドカード、価値保管型商品(stored value product)を発行する者またはその代理人
(d)カードシステム
(e)小切手交換所(check clearing house)
(f)小切手取立てシステム
(g)消費者:自然人のみをいう。
(h)指定する決済システム:規則案3条に掲げる。
(i)電子資金移動(Electronic fund transfer)
(j)金融機関:州法銀行または国法銀行、州また連邦貯蓄貸付組合、相互貯蓄銀行、州または連邦信用組合、その他顧客のために口座を保持する機関をいう。
(k)金融取引サービス提供業者:与信業者、クレジットカード発行業者、金融機関、その他電子資金移動、資金搬送業務、または信用取引、電子資金移動や価値保管商品取引、資金搬送サービスを利用するための端末取扱い業者、またはそれらのネットワークの参加者をいう。
(l)娯楽目的のコンピュータサービス
(m)インターネット
(n)州内取引き(intrastate transaction)
(o)部族内取引き
(p)資金搬送業務および資金搬送サービス:31 U.S.C.5330条(d)号に定める定義による。
(q)指定された決済システムの参加者
(r)禁止取引き
(s)州
(t)違法なインターネットギャンブル
(u)電信資金移動システム
共通規則部(案)
【1条】規則制定権、規則制定の目的および関係規則との結合
連邦準備制度理事会および財務長官(両者を併せ“Agencies”という)は、UIGEA802条にもとづき本条案を共同作成した。制定の目的は、①本規則部が求めるところに従い「指定する支払システム(designates payment systems)」、②特定の支払システム参加者中の適用例外、③合理的にみて違法な賭博行為の特定・阻止または禁止取引(restricted transactions)の阻止および禁止のための「ポリシー」や「手続き」の策定義務の免除を受けうる決済参加者(non-exempt participants)やその内容例についての必要な定義を定めること、および④Agenciesが排他的規則制定権にもとづき指定する決済システムおよびシステム参加者中免除を受けるものに関し、本規則に基づく取締権を定めることである。
関係規則とは、「2007年ACH規則(2007 ACH Rules :A complete Guide to Rule & Regulations Governing the ACH Network(“ACH Rules”))」に定める関連用語の定義をいう。
(i)電子資金移動(Electronic fund transfer)
(j)金融機関:州法銀行または国法銀行、州また連邦貯蓄貸付組合、相互貯蓄銀行、州または連邦信用組合、その他顧客のために口座を保持する機関をいう。
(k)金融取引サービス提供業者:与信業者、クレジットカード発行業者、金融機関、その他電子資金移動、資金搬送業務、または信用取引、電子資金移動や価値保管商品取引、資金搬送サービスを利用するための端末取扱い業者、またはそれらのネットワークの参加者をいう。
(l)娯楽目的のコンピュータサービス
(m)インターネット
(n)州内取引き(intrastate transaction)
(o)部族内取引き
(p)資金搬送業務および資金搬送サービス:31 U.S.C.5330条(d)号に定める定義による。
(q)指定された決済システムの参加者
(r)禁止取引き
(s)州
(t)違法なインターネットギャンブル
(u)電信資金移動システム
【3条】指定された決済システム
次の決済システムは、禁止取引きに関しまたは容易にする参加者により使用されるものとする。
(a)ACH
(b)カードシステム
(c)小切手取立てシステム
(d)資金搬送業務
(e)電信送金システム
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
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米国FRBと財務省がインターネット・賭博規制に関する規則案について関係機関からの意見を公募(その2)
3.FRBおよび財務省のUIGEAの適用に関する規則(案)の内容および各種決済形態の解説
本公募通達は全体で52ページもので、米国人でもその説明の重複、くどさにへきへきしているらしい。しかし、良く読んでみると結構その内容はかなり“practical”である。つまり、インターネットというグローバルかつヴァーチャルな世界で違法な賭け事を決済面で規制していくという視点である。特に各決済手段の特性を分析しながら、①1取引毎のキー・コードとして使えるものはないか(identifying information)、②送金依頼人や受取人の特定につながる情報はないかといった観点から分析・模索している点である。(筆者注7)
本ブログでは筆者なりに要点のみ説明するが、個人的に関心があったのは規則案の解釈の前提として必須といえる「第Ⅱ章 逐条分析」(6頁以下)で説明されている“UIGEA”で定める「ACH、カード、小切手取立等5つの決済システム」についてである。(筆者注8) (筆者注9)
特に“Western Union””MoneyGram”(筆者注10)“PayPal”は既存の銀行等による決済手段とは異なる「資金送金ビジネス(Money transmitting business)」である。これらの部分について興味のある読者は丁寧に読んで欲しいし、できたら図解化したら米国の最新の決済の仕組みが勉強できる(ただし、金融機関向けに作成されたものとしては、注書きの内容も含め説明内容の不足の感は否めない)。
(筆者注7)米国の議会の“practical ”な点はもう1つある。「米国では毎年の予算がすべて法律として審議され、制定される。米国憲法は第I条第1節で、「いっさいの立法権限は議会に与える」と定めている。したがって、予算編成の権限も立法の一部として大統領ではなく議会(立法府)にあり、財政関連法案は議員が細部にわたる決定権限も持つ(もちろん通常の法案と同様、大統領には拒否権がある)。大統領は毎年2月第1月曜日に予算教書(President's Budget)を議会に提出するが、これは議会に対するリクエストにすぎず、そのまま採用されるわけではない。議会は歳入・歳出に関する法案を独自に審議し、制定することができる。日本では予算編成は内閣(行政府)の仕事であり、ここが日米の予算編成プロセスの大きな違いだと言える。
では、実際に予算の立法化作業をどこが行うのかというと、上・下院の委員会である。連邦議会の上・下院には、それぞれ軍事・外交・通商科学・歳入・保健年金・司法・公共事業などといった専門分野別に委員会が設置されていて、歳出権限法を定める(予算以外についても、議員を通して持ち込まれるさまざまな法案をスクリーニングして公聴会にかけ、どの法案を本会議に送るのかを決めている)」
http://www.glocom.ac.jp/j/publications/2005/07/2006.htmlから引用。
ところで、“UIGEA” 法案(H.R.4411)における連邦予算局が下院司法委員会で行った報告では2007年から2011年の間に法施行による連邦、州等行政機関が新たに負う財政支出は200万ドル(約3億3,200万円)として連邦予算全体への大きな影響はないとしている。なお、民間の決済機関がFRB等の規則に遵守するためのコストについては明らかにしていない。
(筆者注8)ACHは、 米国の連邦準備銀行(FRB)等によって運用され、銀行間の資金決済を電子的に行う決済システムである。給与振込、公共料金の支払いの他、利息や配当金の自動振込や自動引落、財務省が依頼人となる社会保障給付金等の受給資格付与プログラムに基づく給付等に利用されている。さらに最近では、大量処理に向いていることから保険の掛け金、株式の購入や法人の現金残高の連結処理等に利用されている。ACHは、米国の銀行がネットワークで結ばれて一大決済システムを構築しており、銀行、証券会社等25,000以上の金融機関で構成されている。
ACHの民間部門の実務的な運用は、全米自動決済協会(National Automated Clearing Association(NACHA)) が策定した規則により、また財務省の支払いについてはNACHAの規則に適合する範囲で連邦政府規則によって管理される。
NACHAは、直接会員11,000以上の金融機関(商業銀行、貯蓄銀行、貯蓄貸付組合、外国銀行、エッジ法会社(1919 年のエッジ法(銀行法改正)により認められた金融会社。連邦政府の免許を受けて国際金融業務を行い、FRB の監督に服する。通常は銀行の子会社で、国際銀行業務を行うものと国際投資業務を行うものとの2つのタイプに大別される)および信用組合)、地方の40のACH協会および業界協議会を通じた585機関の代表からなる非営利協会である。
なお、これと対象的な米国の非現金小口決済システムは「小切手」である。2004年の連銀の調査では、紙ベースの小切手のシェアーは2000年の57%(取扱額は12兆ドル(約1,392兆円)、48億枚)から2003年には45%に低下している。もっとも連銀は手を拱いているわけではなく、小切手のイメージ処理を目的とした「21世紀の小切手決済法(Check Clearing for the 21th Century Act)」を2003年10月に成立し、2004年8月28日に施行している。
(筆者注9)米国におけるホールセールやリィテールの決済システムの図解はないのか、筆者がかねてから抱いてきた疑問は未だに解決できない。唯一の救いは連邦金融機関検査協議会(FFIEC)がまとめた「2004年3月Retail Payment System Booklet」である。実務面から見ると簡潔な図解ではあるが、小切手、クレジットカード、PIN型デビットカード、オンライン型P 2P、ACHの各決済ごとに取引stepの番号順に説明をしている。初心者にも理解しやすい内容であり、本規則案と併用して読むと用語が共通しており一層理解が深まろう。
また、ACHだけに限ればNACHAサイトの図解がより正確で詳しい。
これと比較するものとして既存米国銀行のシティバンクの「手数料一覧」を見おく必要があろう。
(筆者注10)外国送金の手段として邦銀を利用するより割安な方法として紹介されている例が多い、ただし、“Western Union”の場合、利用者は唯一の日本の代理店であるスルガ銀行と送金委託契約の締結が必要となる。また、Moneygram internationalを利用する場合は、東京にあるポルトガルの「イタウ銀行(Banco Itau S.A.)」に出向くことが必要になる。
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
Copyright (c)2007 -2008 福田平冶 All Rights Reserved.
本公募通達は全体で52ページもので、米国人でもその説明の重複、くどさにへきへきしているらしい。しかし、良く読んでみると結構その内容はかなり“practical”である。つまり、インターネットというグローバルかつヴァーチャルな世界で違法な賭け事を決済面で規制していくという視点である。特に各決済手段の特性を分析しながら、①1取引毎のキー・コードとして使えるものはないか(identifying information)、②送金依頼人や受取人の特定につながる情報はないかといった観点から分析・模索している点である。(筆者注7)
本ブログでは筆者なりに要点のみ説明するが、個人的に関心があったのは規則案の解釈の前提として必須といえる「第Ⅱ章 逐条分析」(6頁以下)で説明されている“UIGEA”で定める「ACH、カード、小切手取立等5つの決済システム」についてである。(筆者注8) (筆者注9)
特に“Western Union””MoneyGram”(筆者注10)“PayPal”は既存の銀行等による決済手段とは異なる「資金送金ビジネス(Money transmitting business)」である。これらの部分について興味のある読者は丁寧に読んで欲しいし、できたら図解化したら米国の最新の決済の仕組みが勉強できる(ただし、金融機関向けに作成されたものとしては、注書きの内容も含め説明内容の不足の感は否めない)。
(筆者注7)米国の議会の“practical ”な点はもう1つある。「米国では毎年の予算がすべて法律として審議され、制定される。米国憲法は第I条第1節で、「いっさいの立法権限は議会に与える」と定めている。したがって、予算編成の権限も立法の一部として大統領ではなく議会(立法府)にあり、財政関連法案は議員が細部にわたる決定権限も持つ(もちろん通常の法案と同様、大統領には拒否権がある)。大統領は毎年2月第1月曜日に予算教書(President's Budget)を議会に提出するが、これは議会に対するリクエストにすぎず、そのまま採用されるわけではない。議会は歳入・歳出に関する法案を独自に審議し、制定することができる。日本では予算編成は内閣(行政府)の仕事であり、ここが日米の予算編成プロセスの大きな違いだと言える。
では、実際に予算の立法化作業をどこが行うのかというと、上・下院の委員会である。連邦議会の上・下院には、それぞれ軍事・外交・通商科学・歳入・保健年金・司法・公共事業などといった専門分野別に委員会が設置されていて、歳出権限法を定める(予算以外についても、議員を通して持ち込まれるさまざまな法案をスクリーニングして公聴会にかけ、どの法案を本会議に送るのかを決めている)」
http://www.glocom.ac.jp/j/publications/2005/07/2006.htmlから引用。
ところで、“UIGEA” 法案(H.R.4411)における連邦予算局が下院司法委員会で行った報告では2007年から2011年の間に法施行による連邦、州等行政機関が新たに負う財政支出は200万ドル(約3億3,200万円)として連邦予算全体への大きな影響はないとしている。なお、民間の決済機関がFRB等の規則に遵守するためのコストについては明らかにしていない。
(筆者注8)ACHは、 米国の連邦準備銀行(FRB)等によって運用され、銀行間の資金決済を電子的に行う決済システムである。給与振込、公共料金の支払いの他、利息や配当金の自動振込や自動引落、財務省が依頼人となる社会保障給付金等の受給資格付与プログラムに基づく給付等に利用されている。さらに最近では、大量処理に向いていることから保険の掛け金、株式の購入や法人の現金残高の連結処理等に利用されている。ACHは、米国の銀行がネットワークで結ばれて一大決済システムを構築しており、銀行、証券会社等25,000以上の金融機関で構成されている。
ACHの民間部門の実務的な運用は、全米自動決済協会(National Automated Clearing Association(NACHA)) が策定した規則により、また財務省の支払いについてはNACHAの規則に適合する範囲で連邦政府規則によって管理される。
NACHAは、直接会員11,000以上の金融機関(商業銀行、貯蓄銀行、貯蓄貸付組合、外国銀行、エッジ法会社(1919 年のエッジ法(銀行法改正)により認められた金融会社。連邦政府の免許を受けて国際金融業務を行い、FRB の監督に服する。通常は銀行の子会社で、国際銀行業務を行うものと国際投資業務を行うものとの2つのタイプに大別される)および信用組合)、地方の40のACH協会および業界協議会を通じた585機関の代表からなる非営利協会である。
なお、これと対象的な米国の非現金小口決済システムは「小切手」である。2004年の連銀の調査では、紙ベースの小切手のシェアーは2000年の57%(取扱額は12兆ドル(約1,392兆円)、48億枚)から2003年には45%に低下している。もっとも連銀は手を拱いているわけではなく、小切手のイメージ処理を目的とした「21世紀の小切手決済法(Check Clearing for the 21th Century Act)」を2003年10月に成立し、2004年8月28日に施行している。
(筆者注9)米国におけるホールセールやリィテールの決済システムの図解はないのか、筆者がかねてから抱いてきた疑問は未だに解決できない。唯一の救いは連邦金融機関検査協議会(FFIEC)がまとめた「2004年3月Retail Payment System Booklet」である。実務面から見ると簡潔な図解ではあるが、小切手、クレジットカード、PIN型デビットカード、オンライン型P 2P、ACHの各決済ごとに取引stepの番号順に説明をしている。初心者にも理解しやすい内容であり、本規則案と併用して読むと用語が共通しており一層理解が深まろう。
また、ACHだけに限ればNACHAサイトの図解がより正確で詳しい。
これと比較するものとして既存米国銀行のシティバンクの「手数料一覧」を見おく必要があろう。
(筆者注10)外国送金の手段として邦銀を利用するより割安な方法として紹介されている例が多い、ただし、“Western Union”の場合、利用者は唯一の日本の代理店であるスルガ銀行と送金委託契約の締結が必要となる。また、Moneygram internationalを利用する場合は、東京にあるポルトガルの「イタウ銀行(Banco Itau S.A.)」に出向くことが必要になる。
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
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米国FRBと財務省がインターネット・賭博規制に関する規則案について関係機関からの意見を公募(その1)
米国の中央銀行である連邦準備銀行制度理事会(FRB)と財務省(DOT)は、2007年10月1日付けで「2006年違法なインターネット・賭博の取締りに関する法律(Unlawful Internet Gambling Enforcement Act(以下”UIGEA”))」にもとづく法適用に関する規則(案)について、関係機関から来る12月12日を期限とするパブリック・コメントを公募している。
UIGEAは独立した法案ではなく、「2006年港湾安全および行政責任法(Security and Accountability For Every Port Act of 2006t(以下“SAEPA”))」(下院法案H.R.4954)の第Ⅷ編の5361条から5367条を指す。(筆者注1)
ところで、わが国内でPC等の端末を使って海外の合法的カジノにアクセスするオンライン・カジノについて現行刑法(185条(単純賭博罪)、186条(常習賭博罪))の適用については困難とする論調が多い。(筆者注2)(筆者注3)
一方では地方財政の逼迫対策として公営ギャンブル(カジノ)の旗振りをしているのが東京都や大阪府であることも情けない。(筆者注4)
ネット・カジノ・カフェ(オンライン・ゲーム・カフェ)の法的違法性について法務省や警察庁の見解が不透明な中で若者の間で広がっている現実(筆者注5)、特にこの問題について一番勉強しているのが「オンライン・カジノ・ファン」という現実を見るにつけ、司法・捜査当局および刑法研究者の迅速な解釈の明確化の検討や立法措置の検討が求められよう。
そういう意味で、米国の規制立法の背景や決済機関の対応をめぐる動きは、わが国としても極めて重要な研究材料といえる。また、アメリカ人の賭け事への誘惑を満たすものとされる“Second Life”のギャンブル・セクターはUIGEAに違反するのかという問題も絡んでくる。(筆者注6)
なお、“UIGEA”の立法により大きな経済的影響を受けているとされる英国の「賭博委員会(Gambling Commission)」の規制・監督の現状については別途解説する。
本テーマについて、1回では収まらないので4回に分けて解説する。
1.米国UIGEAの要旨
(1)銀行やクレジットカード会社などの金融機関(Financial Transaction Providerがオンライン・ギャンブル・サイトとの出入金・決済の取扱いを原則禁止する。
(2)ISP等のインターネット事業者(Interactive Computer Service)がオンライン・ギャンブル・サイトを運営・リンクおよびユーザーをギャンブル・サイトへ誘導したりすることを禁止する。
(3)禁止する対象には例外がある(州内または部族内で完結するギャンブル、州内競 馬取引法(Interstate Horseracing Act of 1978)が認める競馬、米国内の証券・商品先物取引等) 。
(4)同法違反の場合、5年以下の禁固刑または罰金刑(または両者を併科)を科す。(5366条)
2.同規則案策定の法的背景および関係する各種決済手段の明確な定義付け
“UIGEA”は、連邦監督機関であるAgenciesに対し次の内容を盛り込んだ規則について司法省と協議のうえ策定することを義務付けている。また“違法な賭け行為”等その定義や運用は連邦、州および部族(tribal)法の解釈の変更、制限や拡大を行うものではない。
規則案のポイントとなる項目は次の内容である。
(1) 本規則において使用する用語の定義を定める。
(2) “UIGEA”が定める禁止取引きと関連しまたは容易にするため決済システム参加者が使用しうる支払いシステムを指定する。
(3)本規則に基づき、一定の参加者をその適用除外とする例外規定を定める。
(4)決済システム参加者に禁止取引きを特定したり阻止するため指定する合理的ポリシーや手続きの作成およびその適用すること支払いシステムの非例外機能の遂行を要求する。
(5)各決済システムにおいて非例外参加者のためにポリシーや手続きの非例外例の内容を提供する。
(6)違法行為に対する法執行の枠組みを定める。
(筆者注1)第109連邦議会には“UIGEA”と標題が似た法案“H.R.4411 Internet Gambling Prohibition and Enforcement Act”および“H.R.4777 Internet Gambling Prohibition Act”が上程されていたが、いずれも成立せず廃案になっている。なお、両法案はUIGEAとは内容的に重要な点で異なる法案である。
(筆者注2)Japan Casino Newsサイトの解説が複数の弁護士の意見を取りまとめており、そのまま引用する。「オンラインカジノに関して、明確に規定した法律はなく、判例もまだでていません。現行の法律で適否が問題となるのは、刑法185条(単純賭博罪)または同法186条1項(常習賭博罪)ですがこれが適用されるかを検討してみました。
まず、賭博罪には国外犯処罰規定がないので(刑法2条・3条)、国外のカジノや国外のサーバーがその国の営業許可を得ているか否かに関わらず、日本の刑法によって処罰されることはありません。つまり、日本人が国外のカジノで賭博行為をしたり、パソコンを操作してオンラインカジノに参加しても、刑法によって処罰されることはないということです。問題は日本国内からパソコンを操作し、国外のオンラインカジノに参加する場合です。
【考えられる問題点】賭博罪は必要的共犯ないし対向犯とされており、相手方のない賭博行為というものは観念されず、いわば相手方と(賭け参加者とカジノ開帳側の)セットで違法とされる犯罪です。(カジノ経営者と参加者の双方を立件できなければ原則賭博罪の適用は困難です。)しかしながら、オンラインカジノの場合、上記のように国外のカジノや国外のサーバーは、その国で営業許可を得ているか否かに関わらず日本の刑法(賭博罪)の適用を受けることはありません。したがって、日本国内からの国外へのオンラインカジノへの参加は違法とはならないというのが大方の見解です。また、必要的共犯ないし対向犯の一方が、国外犯処罰規定がないことにより処罰されない場合、もう一方の扱いについて論述した文献は見当たりません。つまり、海外のカジノ運営会社やサーバーなどは、現行の日本の法律では処罰できないということになります。
日本国内でオンラインカジノが取り締まられた事例はまだありません。取り締まるべき法律自体がないからなのです。」
(筆者注3)平成18年2月23日に海外(フィリピン)のオンラインカジノへアクセスさせたゲームカフェの店員およびその客が京都府警に常習賭博容疑で現行犯逮捕された。客の負け分をフィリピンのカジノ開設者と折半していたとされている。 あるカジノ専門サイトの解説では今回の摘発の要因は、①現金の支払い受取りが同一場所で行われている点、②カフェの経営者と客であるプレイヤーが同一個所にいる点、③国内のサーバーを経由している点をあげて、刑法186条に基づく摘発を行ったのではないかと指摘している。
参考までに常習賭博罪に関するキーワードを簡単に述べておく。
「賭博」当事者の任意に左右しえない偶然の事情にかかる勝敗によって財物の得喪を争うこと。博戯(当事者の行為によって勝敗が決まるとき)と賭事(当事者の行為に関係ないことで勝敗が決まるとき)がある。
「刑法186条」常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
「利益を図る」賭博開帳の対価としての不法な財産的利益をあげようとする意思で行為すること。
今回の容疑者はネットカフェ形式のオンライン・カジノであるが、英国のゲームソフトメーカーであるPlaytech社製のソフトを利用していた。
法律論としては、仮に個人が自宅のPCから海外の合法カジノにアクセスして「無料ボーナス」を受け取った後に引き出すためにチップを購入し、「賭け」行為を行った場合はどうなるのであろうか。また、自分の自宅に友人等を集めて手数料を取って行ったら186条違反は間違いなかろう。
(筆者注4) 具体的には平成12年5月に設置した「地方自治体カジノ研究会」と16年8月に設置した「同協議会」のことである。この研究会の構成都府県は、東京都、神奈川県、静岡県、大阪府、和歌山県、宮崎県の実務担当者である。ここでいう「実務担当者」とはどのような部署を指すのかが明らかでなく、当初拡大を考えていた他道府県の正式参加もままならないようである。
協議会に参加する各府県の公式サイトで見る限り、具体的な「カジノ特別法」について言及しているのは大阪府と静岡県であり、非公開の協議会(自民党カジノ議連・カジノ・エンターテイメント検討小委員会が法案や基本方針を公表・作成済み)について開催状況をサイトで報じているのは大阪府、和歌山県情報館のみである。
(筆者注5)わが国の司法・検察関係者は当然承知の情報であろうが、カジノ・オンラインの国際的なネットワークの広がりは国際的ビジネスとなっている。例えば「casinoking.com」サイトを見て欲しい。自宅のPC等から言語の障害なしに多国語で高額の賞金獲得をいとも容易に誘う手口は決して無視しえない内容である。「無料ゲーム」としても楽しめるといいながら、無料のボーナスを餌にチップ購入(最低11万6千円等)を交換条件として「賭け」行為をすすめ、多いところでは12倍の賭けを行うかたちを取っている。同サイトの印刷は不可である。
(筆者注6)ワシントン・ロー・スクールのラマサウトリー助教授がSecond Lifeのギャンブル・セクターは“UIGEA”に違反するかという問題指摘を行っている。わが国ではここまでの検討はなされていないのではないか。
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
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UIGEAは独立した法案ではなく、「2006年港湾安全および行政責任法(Security and Accountability For Every Port Act of 2006t(以下“SAEPA”))」(下院法案H.R.4954)の第Ⅷ編の5361条から5367条を指す。(筆者注1)
ところで、わが国内でPC等の端末を使って海外の合法的カジノにアクセスするオンライン・カジノについて現行刑法(185条(単純賭博罪)、186条(常習賭博罪))の適用については困難とする論調が多い。(筆者注2)(筆者注3)
一方では地方財政の逼迫対策として公営ギャンブル(カジノ)の旗振りをしているのが東京都や大阪府であることも情けない。(筆者注4)
ネット・カジノ・カフェ(オンライン・ゲーム・カフェ)の法的違法性について法務省や警察庁の見解が不透明な中で若者の間で広がっている現実(筆者注5)、特にこの問題について一番勉強しているのが「オンライン・カジノ・ファン」という現実を見るにつけ、司法・捜査当局および刑法研究者の迅速な解釈の明確化の検討や立法措置の検討が求められよう。
そういう意味で、米国の規制立法の背景や決済機関の対応をめぐる動きは、わが国としても極めて重要な研究材料といえる。また、アメリカ人の賭け事への誘惑を満たすものとされる“Second Life”のギャンブル・セクターはUIGEAに違反するのかという問題も絡んでくる。(筆者注6)
なお、“UIGEA”の立法により大きな経済的影響を受けているとされる英国の「賭博委員会(Gambling Commission)」の規制・監督の現状については別途解説する。
本テーマについて、1回では収まらないので4回に分けて解説する。
1.米国UIGEAの要旨
(1)銀行やクレジットカード会社などの金融機関(Financial Transaction Providerがオンライン・ギャンブル・サイトとの出入金・決済の取扱いを原則禁止する。
(2)ISP等のインターネット事業者(Interactive Computer Service)がオンライン・ギャンブル・サイトを運営・リンクおよびユーザーをギャンブル・サイトへ誘導したりすることを禁止する。
(3)禁止する対象には例外がある(州内または部族内で完結するギャンブル、州内競 馬取引法(Interstate Horseracing Act of 1978)が認める競馬、米国内の証券・商品先物取引等) 。
(4)同法違反の場合、5年以下の禁固刑または罰金刑(または両者を併科)を科す。(5366条)
2.同規則案策定の法的背景および関係する各種決済手段の明確な定義付け
“UIGEA”は、連邦監督機関であるAgenciesに対し次の内容を盛り込んだ規則について司法省と協議のうえ策定することを義務付けている。また“違法な賭け行為”等その定義や運用は連邦、州および部族(tribal)法の解釈の変更、制限や拡大を行うものではない。
規則案のポイントとなる項目は次の内容である。
(1) 本規則において使用する用語の定義を定める。
(2) “UIGEA”が定める禁止取引きと関連しまたは容易にするため決済システム参加者が使用しうる支払いシステムを指定する。
(3)本規則に基づき、一定の参加者をその適用除外とする例外規定を定める。
(4)決済システム参加者に禁止取引きを特定したり阻止するため指定する合理的ポリシーや手続きの作成およびその適用すること支払いシステムの非例外機能の遂行を要求する。
(5)各決済システムにおいて非例外参加者のためにポリシーや手続きの非例外例の内容を提供する。
(6)違法行為に対する法執行の枠組みを定める。
(筆者注1)第109連邦議会には“UIGEA”と標題が似た法案“H.R.4411 Internet Gambling Prohibition and Enforcement Act”および“H.R.4777 Internet Gambling Prohibition Act”が上程されていたが、いずれも成立せず廃案になっている。なお、両法案はUIGEAとは内容的に重要な点で異なる法案である。
(筆者注2)Japan Casino Newsサイトの解説が複数の弁護士の意見を取りまとめており、そのまま引用する。「オンラインカジノに関して、明確に規定した法律はなく、判例もまだでていません。現行の法律で適否が問題となるのは、刑法185条(単純賭博罪)または同法186条1項(常習賭博罪)ですがこれが適用されるかを検討してみました。
まず、賭博罪には国外犯処罰規定がないので(刑法2条・3条)、国外のカジノや国外のサーバーがその国の営業許可を得ているか否かに関わらず、日本の刑法によって処罰されることはありません。つまり、日本人が国外のカジノで賭博行為をしたり、パソコンを操作してオンラインカジノに参加しても、刑法によって処罰されることはないということです。問題は日本国内からパソコンを操作し、国外のオンラインカジノに参加する場合です。
【考えられる問題点】賭博罪は必要的共犯ないし対向犯とされており、相手方のない賭博行為というものは観念されず、いわば相手方と(賭け参加者とカジノ開帳側の)セットで違法とされる犯罪です。(カジノ経営者と参加者の双方を立件できなければ原則賭博罪の適用は困難です。)しかしながら、オンラインカジノの場合、上記のように国外のカジノや国外のサーバーは、その国で営業許可を得ているか否かに関わらず日本の刑法(賭博罪)の適用を受けることはありません。したがって、日本国内からの国外へのオンラインカジノへの参加は違法とはならないというのが大方の見解です。また、必要的共犯ないし対向犯の一方が、国外犯処罰規定がないことにより処罰されない場合、もう一方の扱いについて論述した文献は見当たりません。つまり、海外のカジノ運営会社やサーバーなどは、現行の日本の法律では処罰できないということになります。
日本国内でオンラインカジノが取り締まられた事例はまだありません。取り締まるべき法律自体がないからなのです。」
(筆者注3)平成18年2月23日に海外(フィリピン)のオンラインカジノへアクセスさせたゲームカフェの店員およびその客が京都府警に常習賭博容疑で現行犯逮捕された。客の負け分をフィリピンのカジノ開設者と折半していたとされている。 あるカジノ専門サイトの解説では今回の摘発の要因は、①現金の支払い受取りが同一場所で行われている点、②カフェの経営者と客であるプレイヤーが同一個所にいる点、③国内のサーバーを経由している点をあげて、刑法186条に基づく摘発を行ったのではないかと指摘している。
参考までに常習賭博罪に関するキーワードを簡単に述べておく。
「賭博」当事者の任意に左右しえない偶然の事情にかかる勝敗によって財物の得喪を争うこと。博戯(当事者の行為によって勝敗が決まるとき)と賭事(当事者の行為に関係ないことで勝敗が決まるとき)がある。
「刑法186条」常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
「利益を図る」賭博開帳の対価としての不法な財産的利益をあげようとする意思で行為すること。
今回の容疑者はネットカフェ形式のオンライン・カジノであるが、英国のゲームソフトメーカーであるPlaytech社製のソフトを利用していた。
法律論としては、仮に個人が自宅のPCから海外の合法カジノにアクセスして「無料ボーナス」を受け取った後に引き出すためにチップを購入し、「賭け」行為を行った場合はどうなるのであろうか。また、自分の自宅に友人等を集めて手数料を取って行ったら186条違反は間違いなかろう。
(筆者注4) 具体的には平成12年5月に設置した「地方自治体カジノ研究会」と16年8月に設置した「同協議会」のことである。この研究会の構成都府県は、東京都、神奈川県、静岡県、大阪府、和歌山県、宮崎県の実務担当者である。ここでいう「実務担当者」とはどのような部署を指すのかが明らかでなく、当初拡大を考えていた他道府県の正式参加もままならないようである。
協議会に参加する各府県の公式サイトで見る限り、具体的な「カジノ特別法」について言及しているのは大阪府と静岡県であり、非公開の協議会(自民党カジノ議連・カジノ・エンターテイメント検討小委員会が法案や基本方針を公表・作成済み)について開催状況をサイトで報じているのは大阪府、和歌山県情報館のみである。
(筆者注5)わが国の司法・検察関係者は当然承知の情報であろうが、カジノ・オンラインの国際的なネットワークの広がりは国際的ビジネスとなっている。例えば「casinoking.com」サイトを見て欲しい。自宅のPC等から言語の障害なしに多国語で高額の賞金獲得をいとも容易に誘う手口は決して無視しえない内容である。「無料ゲーム」としても楽しめるといいながら、無料のボーナスを餌にチップ購入(最低11万6千円等)を交換条件として「賭け」行為をすすめ、多いところでは12倍の賭けを行うかたちを取っている。同サイトの印刷は不可である。
(筆者注6)ワシントン・ロー・スクールのラマサウトリー助教授がSecond Lifeのギャンブル・セクターは“UIGEA”に違反するかという問題指摘を行っている。わが国ではここまでの検討はなされていないのではないか。
〔参照URL〕
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/20071001a.htm
および
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/bcreg/bcreg20071001a1.pdf
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2008年1月5日土曜日
第3回米中戦略経済対話(SED)が共同文書を採択、閉幕(その3)
(4)行政許可に関する透明性について(筆者注9)
米国と中国は行政ルールの策定時(in administrative rule-making )の透明性の拡大ならびに一般大衆の参加機会の強化について合意した。
両国はAPECおよびWTOにおける責任を含む透明性に関する国際的責務として次のことに取組むことにつき合意した。
① 極力(when possible)、(ⅰ)行政手続きの適用・採用に関しWTO協定に基づく責任において扱われる方法案について予め公表し、(ⅱ)提案方法についてコメントする合理的な機会を関係者に提供する。各国は、このWTO責務の遵守について指定した官報への掲載または公的ウェブサイト上での恒久的掲示を行う。
② 行政手続きの適用または執行の前に指定された官報においてWTO協定に基づく責任において扱われる最終的方法について公表する。
(5)米中のバランスの取れた経済成長のあり方について
米国と中国は、米中合同経済委員会(U.S.-China Joint Economic Committee)の下での議論を含む対話と協議を通じた米中の経済の不均衡に関する方法について話し合う責任がある。両国は貿易および投資に関する保護主義に対し強く反対することに合意した。
米国と中国は最近時の米国のサブプライム市場および世界的金融市場の混乱によって導かれた米国や国際的な取組みを歓迎する。両国は、引き続き構造的に重要な経済および金融の発展に関し、時宜に応じて話し合いと情報の共有を行うことに合意した。
両国の金融監督機関は、監督方法について意見交換を行うことについて合意した。2007年12月13日、14日に中国税関局と米国税関国境警備局(CBP)
は2008年1月の早い時期に開始する予定の米国関税テロ対策プログラム(C-TPAT)(筆者注10)の中国における共同認定手続きのパイロットプログラムの技術的討議について合意した。
(6)官民一体の改革の促進について
米国と中国は2007年12月10日に北京で改革会議を共催した。その中で①エコシステムのための改革を成功裡に収めるための要素、改革の育成のための適切な官民の役割および知的財産の創造、保護、普及についていかなる方法で促進させるか等について議論した。その結果、両国は引続き官民改革の議論を合同で開催するとともに第3回改革会議で概要取りまとめ文書に即した共同活動を行うことについて合意した。
5.両国の今後6か月間の優先的取組作業内容
両国は、次回SEDまでに次の優先課題に取組む。
(1)既存の両国間の共同検討メカニズムを通じて、食品、薬品、医療製品を含む製品および消費財分野における対話と意見交換を一層発展させる。
(2)エネルギーと環境改善に向けた10年以上の広範囲な共同活動に取組む。この10年以上にわたる共同活動において、①技術的改革、②高度に効率的、クリーンなエネルギー技術、③気象の変化、④天然資源の持続の促進をすすめる。このため可及的速やかに計画を進めるため作業部会を設置する。
(3)①2008年の早い時期に会合を開き環境問題が緊急の課題であるという認識の下で、WTOにおいて環境改善に向けた製品やサービスなど環境改善に向けた関税および非関税障壁の軽減また適切な場合は撤廃について共同交渉を推進する。
②中国の第12次5ヵ年計画に合わせ、硫黄含有量の50PPM以下への漸次削減とより進んだ自動車汚染の管理技術の共同化の開発のための詳細計画の開発についての共同活動を拡大する。
③国際エネルギー機関(IEA)との協調を含め、情報および技術交換を通じて戦略的石油備蓄施設の建設およびその管理に関し共同活動を強化する。
(4)①投資政策、実践および投資環境についてハイレベルの意見交換を開始する。二国間の投資条約(Bilateral Investment Treaty)の交渉見通しに関する現下の議論を活発化する。
②中国の市場経済化を成功裡に導くために共同的方法により協議を継続する。
③両国間のハイテク技術と戦略的貿易の拡大と促進に向け「米中ハイテク・戦略貿易開発に関するガイドライン(Guideline for U.S. High-Technology and Strategic Trade Development)」の積極的な適用、適切な建設的方法の採用ならびに行動計画を作りあげる。両国の関係政府機関は原産地規則(rule s of origin)の分野において会合またはデジタルビデオ会議を行うことに合意する。
(5)①行政の透明性に関する各国の国際的な責務の範囲の調査を行う。
②行政ルールの策定の間における受け取ったコメントに対する調査および対応につい情報交換を継続する。
③米国に対する中国市場の分野および中国に対する米国市場分野において、行政免許を与えることに関し、条件、手続き、時間枠について定期的に両国間で情報交換を行う仕組みを確立する。
(筆者注9)中国の行政手続きの透明性問題について、富山県貿易・投資アドバイザー梶田 幸雄氏の論文に基づき補足しておく。「透明度の問題とは、中国市場におけるコストやビジネス機会を評価す情報開示の問題である。60%から数年来進展がないと回答し、毎年の主要課題として指摘され続けている問題である。解答の12%は、規制などの情報開示が拒まれることがあり、悪化ないし新たな問題となっていると述べている。中国の行政許可法が2004年7月1日から施行された。この行政許可法は、行政許可の範囲、種類、手続を定め、および行政許可の検査監督、費用徴収などにつき明確な規定をし、政府の行政許可および行政管理人の業務を法制化、規範化するものである。中国国内における企業活動にとっても重要な意味を持つものであるといえる。」
http://www.near21.jp/center/publication/journal/73/kajita.pdf
(筆者注10)米国C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)とは、米国関税テロ対策プログラムのことで、国土安全保障省傘下の米国税関国境警備局(CBP)が実施している一連のテロ対策の中核プログラムである。
①米国に輸入される全貨物に危険物が混入するのを防ぐため、そのサプライチェーンの安全性を確保する官民共同プログラムで米国の輸入品に関係する全企業が対象になる。
②参加企業は自社サプライチェーンの保安計画を提出し、税関の検査・認証を受ける。
③米国税関が国・業種を段階的に指定。任意参加であるが、不参加者には通関時のチェックの増加など不利益が出るので、実質強制参加に近い。
④CBPが示すサプライチェーン・セキュリティ管理ガイドラインに沿って社内セキュ
リティ管理を実施していると認定した企業に対して、輸入通関時での低い検査率の適用などのベネフィットを提供する。
⑤輸入者、船社、通関業者、倉庫管理者、海外の製造者(メキシコ・カナダ)が対象。 既に6,600社が参加認定されている。日系米国法人も多数参加。⑥認定(validation)後、海外サプライヤーの事業所にも米国税関検査官の実地調査が入る。⑦実地調査により、評価はTier3からTier1まで3段階に区分される。Tier3が最上位。
http://nexus-partners.org/ctpat.aspxより引用。
〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm
Copyright (c)2006-2008 福田平冶 All Rights Reserved.
米国と中国は行政ルールの策定時(in administrative rule-making )の透明性の拡大ならびに一般大衆の参加機会の強化について合意した。
両国はAPECおよびWTOにおける責任を含む透明性に関する国際的責務として次のことに取組むことにつき合意した。
① 極力(when possible)、(ⅰ)行政手続きの適用・採用に関しWTO協定に基づく責任において扱われる方法案について予め公表し、(ⅱ)提案方法についてコメントする合理的な機会を関係者に提供する。各国は、このWTO責務の遵守について指定した官報への掲載または公的ウェブサイト上での恒久的掲示を行う。
② 行政手続きの適用または執行の前に指定された官報においてWTO協定に基づく責任において扱われる最終的方法について公表する。
(5)米中のバランスの取れた経済成長のあり方について
米国と中国は、米中合同経済委員会(U.S.-China Joint Economic Committee)の下での議論を含む対話と協議を通じた米中の経済の不均衡に関する方法について話し合う責任がある。両国は貿易および投資に関する保護主義に対し強く反対することに合意した。
米国と中国は最近時の米国のサブプライム市場および世界的金融市場の混乱によって導かれた米国や国際的な取組みを歓迎する。両国は、引き続き構造的に重要な経済および金融の発展に関し、時宜に応じて話し合いと情報の共有を行うことに合意した。
両国の金融監督機関は、監督方法について意見交換を行うことについて合意した。2007年12月13日、14日に中国税関局と米国税関国境警備局(CBP)
は2008年1月の早い時期に開始する予定の米国関税テロ対策プログラム(C-TPAT)(筆者注10)の中国における共同認定手続きのパイロットプログラムの技術的討議について合意した。
(6)官民一体の改革の促進について
米国と中国は2007年12月10日に北京で改革会議を共催した。その中で①エコシステムのための改革を成功裡に収めるための要素、改革の育成のための適切な官民の役割および知的財産の創造、保護、普及についていかなる方法で促進させるか等について議論した。その結果、両国は引続き官民改革の議論を合同で開催するとともに第3回改革会議で概要取りまとめ文書に即した共同活動を行うことについて合意した。
5.両国の今後6か月間の優先的取組作業内容
両国は、次回SEDまでに次の優先課題に取組む。
(1)既存の両国間の共同検討メカニズムを通じて、食品、薬品、医療製品を含む製品および消費財分野における対話と意見交換を一層発展させる。
(2)エネルギーと環境改善に向けた10年以上の広範囲な共同活動に取組む。この10年以上にわたる共同活動において、①技術的改革、②高度に効率的、クリーンなエネルギー技術、③気象の変化、④天然資源の持続の促進をすすめる。このため可及的速やかに計画を進めるため作業部会を設置する。
(3)①2008年の早い時期に会合を開き環境問題が緊急の課題であるという認識の下で、WTOにおいて環境改善に向けた製品やサービスなど環境改善に向けた関税および非関税障壁の軽減また適切な場合は撤廃について共同交渉を推進する。
②中国の第12次5ヵ年計画に合わせ、硫黄含有量の50PPM以下への漸次削減とより進んだ自動車汚染の管理技術の共同化の開発のための詳細計画の開発についての共同活動を拡大する。
③国際エネルギー機関(IEA)との協調を含め、情報および技術交換を通じて戦略的石油備蓄施設の建設およびその管理に関し共同活動を強化する。
(4)①投資政策、実践および投資環境についてハイレベルの意見交換を開始する。二国間の投資条約(Bilateral Investment Treaty)の交渉見通しに関する現下の議論を活発化する。
②中国の市場経済化を成功裡に導くために共同的方法により協議を継続する。
③両国間のハイテク技術と戦略的貿易の拡大と促進に向け「米中ハイテク・戦略貿易開発に関するガイドライン(Guideline for U.S. High-Technology and Strategic Trade Development)」の積極的な適用、適切な建設的方法の採用ならびに行動計画を作りあげる。両国の関係政府機関は原産地規則(rule s of origin)の分野において会合またはデジタルビデオ会議を行うことに合意する。
(5)①行政の透明性に関する各国の国際的な責務の範囲の調査を行う。
②行政ルールの策定の間における受け取ったコメントに対する調査および対応につい情報交換を継続する。
③米国に対する中国市場の分野および中国に対する米国市場分野において、行政免許を与えることに関し、条件、手続き、時間枠について定期的に両国間で情報交換を行う仕組みを確立する。
(筆者注9)中国の行政手続きの透明性問題について、富山県貿易・投資アドバイザー梶田 幸雄氏の論文に基づき補足しておく。「透明度の問題とは、中国市場におけるコストやビジネス機会を評価す情報開示の問題である。60%から数年来進展がないと回答し、毎年の主要課題として指摘され続けている問題である。解答の12%は、規制などの情報開示が拒まれることがあり、悪化ないし新たな問題となっていると述べている。中国の行政許可法が2004年7月1日から施行された。この行政許可法は、行政許可の範囲、種類、手続を定め、および行政許可の検査監督、費用徴収などにつき明確な規定をし、政府の行政許可および行政管理人の業務を法制化、規範化するものである。中国国内における企業活動にとっても重要な意味を持つものであるといえる。」
http://www.near21.jp/center/publication/journal/73/kajita.pdf
(筆者注10)米国C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)とは、米国関税テロ対策プログラムのことで、国土安全保障省傘下の米国税関国境警備局(CBP)が実施している一連のテロ対策の中核プログラムである。
①米国に輸入される全貨物に危険物が混入するのを防ぐため、そのサプライチェーンの安全性を確保する官民共同プログラムで米国の輸入品に関係する全企業が対象になる。
②参加企業は自社サプライチェーンの保安計画を提出し、税関の検査・認証を受ける。
③米国税関が国・業種を段階的に指定。任意参加であるが、不参加者には通関時のチェックの増加など不利益が出るので、実質強制参加に近い。
④CBPが示すサプライチェーン・セキュリティ管理ガイドラインに沿って社内セキュ
リティ管理を実施していると認定した企業に対して、輸入通関時での低い検査率の適用などのベネフィットを提供する。
⑤輸入者、船社、通関業者、倉庫管理者、海外の製造者(メキシコ・カナダ)が対象。 既に6,600社が参加認定されている。日系米国法人も多数参加。⑥認定(validation)後、海外サプライヤーの事業所にも米国税関検査官の実地調査が入る。⑦実地調査により、評価はTier3からTier1まで3段階に区分される。Tier3が最上位。
http://nexus-partners.org/ctpat.aspxより引用。
〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm
Copyright (c)2006-2008 福田平冶 All Rights Reserved.
第3回米中戦略経済対話(SED)が共同文書を採択、閉幕(その2)
4.連邦政府の対応と今回の成果に関する財務省の公表内容
2007年12月13日の声明発表でポールソン長官は「米国は経済ナショナリズムや保護貿易主義に反対する」と明言し、中国との対話路線の継続を表明している。しかし、議会との軋轢は残されており、今後の舵取りはさらに困難を増すであろう。
今回、第3回SEDの結果について財務省の公表内容を詳しく紹介するのは、わが国のメディアではほとんど紹介されていない両国の実務レベルの協議や今後のロードマップが意外と計画的に進んでいる点(中国の経済・社会・文化等のアメリカ化はわが国の比でない点)を見逃すと、わが国自体の対米戦略をも誤ると思えるからである。
(1)製品の品質および食品の安全性について
米国と中国は、(ⅰ)両国の対話の拡大、(ⅱ)食品、薬品および消費財の輸出の政府による効果的監視を認めるため、法律・方針・プログラムおよび動機付けといったインフラ強化のための情報の共有について責任を持つ。これらの目的を達成するため、両国は輸出の安全性に関し、次の8分野についての覚書文書(Memorandum of Agreement:MOA またはMemorandum of understanding:MOU)に署名した。(筆者注7)
①食品(food and feed):米国保健社会福祉省(U.S.Department of Health and Human Services (DHHS))と中国国家品質監督検査検疫総局(General Administration of Quality Supervision,Inspection, and Quarantine:AQSIQ) は、2007年12月11日付けの同意覚書(MOA)
②薬品および医療製品(Drugs and Medical products):米国HSSと中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)は、2007年12月11日付けの共通理解に関する覚書(MOU)
③環境面に適合した輸出入(Environmentally compliant exports/imports):
米国環境保護局(U.S.Environmental Protection Agency:EPA)と中国AQSIQ
間の共通理解に関する覚書(MOU)
④食品の安全性(Food safety):米国農務省(U.S.Department of Agriculture)と中国AQSIQ間の食品の安全上の共同活動に関する閣僚級の合意による改善内容についての合意
⑤アルコールとタバコ製品:米国財務省と中国AQSIQは、2007年12月11日付けの共通理解に関する覚書(MOU)
その他署名した分野:⑥おもちゃ・花火・ライターおよび電化製品、⑦自動車の安全性、⑧殺虫剤使用の寛容度と貿易問題
(2)金融分野について
中国は、第4回SEDまでに次の行動を行うことについて合意した。
①中國證券監督管理委員會(China Securities Regulatory Commission:CSRC)は、(ⅰ)中国の證券会社に外国の投資家が参入することによる中国の証券市場への影響について慎重な調査を行い、また(ⅱ)その調査結果に基づき中国の証券会社に対する外国株を適用する問題について政策勧告(policy recommendation)を行う。
②中國銀行業督管理委員會(China Banking Regulatory Commission:CBRC)は、現在取組んでいる外国の金融部門の中国銀行部門への参入に関する科学的研究を2008年12月31日までに完成させる。また、CBRCはその時までに政策評価結果に基づき外国資本の銀行業務への参入問題について政策勧告を行う。
③中国は関係する監督諸規則に即して、(ⅰ)人民元建の株式(A株)のについて銀行を含む指定を受けた海外の投資家(qualified foreign-invested companies)(筆者注8)の参入、(ⅱ)指定を受けた上場会社による人民元建社債の発行、(ⅲ)指定を受けた合弁設立外国銀行(incorporated foreign bank)による人民元建金融債の発行を認めることに同意する。
④米国政府は、中国の銀行について内国民待遇の適用を引続き維持し、その適用が優れて内国民待遇の原則に合致することを確認する。また米国政府は同様に外国の銀行が(ⅰ)支店や子会社の設立、(ⅱ)既存の米国銀行へ出資することについて監督基準を適用する。
⑤米国は、金融監督に関する規則や手続きを迅速に中国の銀行に対して適用すべきとする中国側の要請を記した(note)。
⑥米国政府は、米国内における中国のブローカー・ディラーや投資アドバイザーの登録や運用について内国民待遇を適用することについても引続き責任を持つ。
⑦中国CBRCと米国証券取引員会(SEC)は、これら監督機関から免許を受けた金融機関が越境的活動に関し情報の共有を行うことについて近い将来文書を取り交わし署名することについて合意する。
(3)エネルギー・環境問題について
米国と中国は、(ⅰ)燃料に替わるバイオマス資源分野への切替、(ⅱ)違法な森林伐採に共同して戦うことおよび適切な森林管理を適切に推進させことについてMOUに署名した。中国は、今後エネルギー部門の全国的SO2排出権取引プログラム(nationwide program on SO2 emission trading )の開発を行い、また米国は同プログラムに関し、基本的水質環境管理や環境にやさしい燃料および車の排出ガス規制と同様に中国に技術的支援を行う。米国と中国はWTOにおける「環境改善に向けた関税および非関税障壁の軽減また適切な場合は撤廃」における両国の責任を再確認した。
(筆者注7)今回のブログの最大の課題は国家間における“MOA”や“MOU”の法的効果である。すでに述べたとおり、筆者は国際公法の専門家ではないが自分なりに海外のサイト情報を集めてみた。
一般契約法上の用語として用語集では契約(contract)と同様の「書面による合意」として法的拘束力(binding)を持つ場合と必ずしも持たない場合があり、またMOUとMOAは用語の違いにかかわらず互換性があり同一の法的効果があるというのが一般的である。
しかし、より正確な定義について解説したサイトにあたったところ、結構理解しにくい点があった。すなわち、契約と同様の法的効果が得られる場合の要件としては、標準的な契約条件(contract’s terms and conditions)が盛り込まれていなければならない点である(本文5.の内容が国際法上契約上の具体的条件にあたるかどうかは筆者には自信がない)。
一方、しばしばMOAは二者間の単なる共同活動や相互理解や相互の役割や責任の明確化を目的としたものがあるのである。今回の米中の合意文書が後者であるとするなら、米国内の世論に十分応えたものとならないであろう。
(筆者注8) Qualified Foreign Institutional Investors(適格国外機関投資家制度:QFII)とは、2003年5月ごろから試験的に導入され、認定を受けた機関投資家がA株(中国本土には上海、深圳(しんせん)に株式市場があり、A株は中国国内投資家限定で、通貨は人民元での取引をいう。徐々に開放されつつあるが、今のところ中国国内投資家向である)を買える制度。QFIIには機関投資家が認定されるのに厳しい条件があり、QFIIが執行されても認定を受けた機関が少なく影響はほとんどなかったが、機関投資家の認定は徐々に枠が広がり、日本では野村證券、第一生命、日興アセットマネージメント、大和証券が認定されている。2006年3月時点では世界で35社が認められている。
〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm
Copyright (c)2006-2008 福田平冶 All Rights Reserved.
2007年12月13日の声明発表でポールソン長官は「米国は経済ナショナリズムや保護貿易主義に反対する」と明言し、中国との対話路線の継続を表明している。しかし、議会との軋轢は残されており、今後の舵取りはさらに困難を増すであろう。
今回、第3回SEDの結果について財務省の公表内容を詳しく紹介するのは、わが国のメディアではほとんど紹介されていない両国の実務レベルの協議や今後のロードマップが意外と計画的に進んでいる点(中国の経済・社会・文化等のアメリカ化はわが国の比でない点)を見逃すと、わが国自体の対米戦略をも誤ると思えるからである。
(1)製品の品質および食品の安全性について
米国と中国は、(ⅰ)両国の対話の拡大、(ⅱ)食品、薬品および消費財の輸出の政府による効果的監視を認めるため、法律・方針・プログラムおよび動機付けといったインフラ強化のための情報の共有について責任を持つ。これらの目的を達成するため、両国は輸出の安全性に関し、次の8分野についての覚書文書(Memorandum of Agreement:MOA またはMemorandum of understanding:MOU)に署名した。(筆者注7)
①食品(food and feed):米国保健社会福祉省(U.S.Department of Health and Human Services (DHHS))と中国国家品質監督検査検疫総局(General Administration of Quality Supervision,Inspection, and Quarantine:AQSIQ) は、2007年12月11日付けの同意覚書(MOA)
②薬品および医療製品(Drugs and Medical products):米国HSSと中国国家食品薬品監督管理局(SFDA)は、2007年12月11日付けの共通理解に関する覚書(MOU)
③環境面に適合した輸出入(Environmentally compliant exports/imports):
米国環境保護局(U.S.Environmental Protection Agency:EPA)と中国AQSIQ
間の共通理解に関する覚書(MOU)
④食品の安全性(Food safety):米国農務省(U.S.Department of Agriculture)と中国AQSIQ間の食品の安全上の共同活動に関する閣僚級の合意による改善内容についての合意
⑤アルコールとタバコ製品:米国財務省と中国AQSIQは、2007年12月11日付けの共通理解に関する覚書(MOU)
その他署名した分野:⑥おもちゃ・花火・ライターおよび電化製品、⑦自動車の安全性、⑧殺虫剤使用の寛容度と貿易問題
(2)金融分野について
中国は、第4回SEDまでに次の行動を行うことについて合意した。
①中國證券監督管理委員會(China Securities Regulatory Commission:CSRC)は、(ⅰ)中国の證券会社に外国の投資家が参入することによる中国の証券市場への影響について慎重な調査を行い、また(ⅱ)その調査結果に基づき中国の証券会社に対する外国株を適用する問題について政策勧告(policy recommendation)を行う。
②中國銀行業督管理委員會(China Banking Regulatory Commission:CBRC)は、現在取組んでいる外国の金融部門の中国銀行部門への参入に関する科学的研究を2008年12月31日までに完成させる。また、CBRCはその時までに政策評価結果に基づき外国資本の銀行業務への参入問題について政策勧告を行う。
③中国は関係する監督諸規則に即して、(ⅰ)人民元建の株式(A株)のについて銀行を含む指定を受けた海外の投資家(qualified foreign-invested companies)(筆者注8)の参入、(ⅱ)指定を受けた上場会社による人民元建社債の発行、(ⅲ)指定を受けた合弁設立外国銀行(incorporated foreign bank)による人民元建金融債の発行を認めることに同意する。
④米国政府は、中国の銀行について内国民待遇の適用を引続き維持し、その適用が優れて内国民待遇の原則に合致することを確認する。また米国政府は同様に外国の銀行が(ⅰ)支店や子会社の設立、(ⅱ)既存の米国銀行へ出資することについて監督基準を適用する。
⑤米国は、金融監督に関する規則や手続きを迅速に中国の銀行に対して適用すべきとする中国側の要請を記した(note)。
⑥米国政府は、米国内における中国のブローカー・ディラーや投資アドバイザーの登録や運用について内国民待遇を適用することについても引続き責任を持つ。
⑦中国CBRCと米国証券取引員会(SEC)は、これら監督機関から免許を受けた金融機関が越境的活動に関し情報の共有を行うことについて近い将来文書を取り交わし署名することについて合意する。
(3)エネルギー・環境問題について
米国と中国は、(ⅰ)燃料に替わるバイオマス資源分野への切替、(ⅱ)違法な森林伐採に共同して戦うことおよび適切な森林管理を適切に推進させことについてMOUに署名した。中国は、今後エネルギー部門の全国的SO2排出権取引プログラム(nationwide program on SO2 emission trading )の開発を行い、また米国は同プログラムに関し、基本的水質環境管理や環境にやさしい燃料および車の排出ガス規制と同様に中国に技術的支援を行う。米国と中国はWTOにおける「環境改善に向けた関税および非関税障壁の軽減また適切な場合は撤廃」における両国の責任を再確認した。
(筆者注7)今回のブログの最大の課題は国家間における“MOA”や“MOU”の法的効果である。すでに述べたとおり、筆者は国際公法の専門家ではないが自分なりに海外のサイト情報を集めてみた。
一般契約法上の用語として用語集では契約(contract)と同様の「書面による合意」として法的拘束力(binding)を持つ場合と必ずしも持たない場合があり、またMOUとMOAは用語の違いにかかわらず互換性があり同一の法的効果があるというのが一般的である。
しかし、より正確な定義について解説したサイトにあたったところ、結構理解しにくい点があった。すなわち、契約と同様の法的効果が得られる場合の要件としては、標準的な契約条件(contract’s terms and conditions)が盛り込まれていなければならない点である(本文5.の内容が国際法上契約上の具体的条件にあたるかどうかは筆者には自信がない)。
一方、しばしばMOAは二者間の単なる共同活動や相互理解や相互の役割や責任の明確化を目的としたものがあるのである。今回の米中の合意文書が後者であるとするなら、米国内の世論に十分応えたものとならないであろう。
(筆者注8) Qualified Foreign Institutional Investors(適格国外機関投資家制度:QFII)とは、2003年5月ごろから試験的に導入され、認定を受けた機関投資家がA株(中国本土には上海、深圳(しんせん)に株式市場があり、A株は中国国内投資家限定で、通貨は人民元での取引をいう。徐々に開放されつつあるが、今のところ中国国内投資家向である)を買える制度。QFIIには機関投資家が認定されるのに厳しい条件があり、QFIIが執行されても認定を受けた機関が少なく影響はほとんどなかったが、機関投資家の認定は徐々に枠が広がり、日本では野村證券、第一生命、日興アセットマネージメント、大和証券が認定されている。2006年3月時点では世界で35社が認められている。
〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm
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第3回米中戦略経済対話(SED)が共同文書を採択、閉幕(その1)
北京郊外中信国安第一城(Grand Epoch City)で12月12日、13日の2日間米国(美国)と中国の政府代表が共同議長を務める第3回米中戦略経済対話(The Third U.S.-China Strategic Economic Dialogue:SED Ⅲ、第三次中美战略经济对话)が開催され、13日に共同文書を採択して閉幕した。
SED自体は2006年にブッシュ大統領と胡錦濤国家主席が創設したもので、財政、金融、貿易、環境、厚生、農業等の閣僚級が一堂に会する経済協議の枠組みであり、半年に1度のペースで米中交互で開催され、今回が3回目。ポールソン(長鮑爾森)財務長官と呉儀国務院副總理(Vice Premier Wu Yi)が共同議長を務める。短期的成果を目指す交渉とは異なり、長期的視野に立って中国の貿易黒字の元凶である輸出主導の経済構造を内需主導に転換することを目指す。ただし、米議会の関心が高い人民元(RMB)の柔軟化等は遅れており、米国内では戦略経済対話を基軸とするポールソン長官の対話路線は目に見える成果を上げていないとの批判は根強い(筆者注1)。
一般的にわが国の経済専門家・メディアの見方は、今回の対話は中国ベースで進んだとの評価が多い(筆者注2)。その理由には、米国が従来から強調してきた①人民元改革(米国の対中貿易の赤字解消)、②知的財産権保護強化、③繊維製品をめぐる輸入摩擦問題、④中国の金融市場開放、⑤エネルギー・環境分野の協力、⑤航空の自由化といった重要課題において著しい成果があったとはいえないからである(筆者注3)。国際政治の世界において2国間の間では公表されない具体的な交渉内容があるとは予想されるが、本文で述べるとおり米国民の期待(=議会)に応えるものになっていないといえよう。
米国内の議会等の論調は保護主義強化を求めており、次回(2008年6月)ワシントンで開かれる第4回SEDまでの間にこれら未解決の課題について進展が見られないとブッシュ政権自体の支持率等にも大きな影響が出ることは間違いなかろう。
今回のブログは、財務省の米中共同記者発表資料(Joint Fact Sheet)、通商代表部(U.S. Trade Representative)や商務省(U.S. Department of Commerce)および中国政府の発表等を中心として議会やステーク・ホルダーを中心とする国際経済や外交問題の取組み情報に弱いわが国のメディアの情報を、米国や中国の具体的なオリジナル情報に基づき補完するという目的でまとめたものである。
今回の米国政府のファクト・シートの両国の署名や合意に関する公表内容は国際公法の観点からも、微妙な内容を含んでいる。法解釈上、正確な訳に努めたつもりであるが専門家による補完を期待したい。
1.保護主義化をすすめる米国連邦議会の動き
米国上院財政委員会(Senate Finance Committee:Max Baucus委員長(民主党モンタナ州))では2007年7月26日、中国を念頭に置いたと思われる「通貨為替監視改革法案(Currency Exchange Rate Oversight Reform Act of 2007)(S.1607)」を、20対1の圧倒的賛成多数で可決した。内容は不当に為替操作を行う国を財務省が指定し、IMF(国際通貨基金)やWTO(世界貿易機関)への提訴、介入による是正、反ダンピング(不当廉売)関税の適用などの是正措置を米政府に求めるというものである。さらに8月1日には上院銀行・住宅および都市問題委員会(Banking,Housing,and Urban Affaires Committee:Chris Dodd委員長(民主党コネチカット州))がさらに相殺関税の導入を盛り込んだ「通貨改革および金融市場法案(Currency Reform and Financial Markets Act of 2007)(S.1677)」を可決した。(筆者注4) (筆者注5)
2.米国商工会議所(U.S.Chamber of Commerce)の保護法案反対の主張
同会議所は2007年9月24日に連邦議会下院議員に対し、上院の前記2法案(S.1607,S.1677)について提案の趣旨自体は評価するもののこれらの法律は輸入問題だけでなく、米国にとって急激に伸びている輸出相手国である中国の経済・金融制度改革を遅らせ、ひいては米国自体の経済的地位を弱めるとの懸念を示している。
そういう意味で、市場決定型為替レートへの移行の必要性は強く認識するものの政府のポールソン長官を中心とするSEDの継続的活動を支持し、また米国の貿易関係法やWTOルールとの整合性の取れた二国間の相互的かつ多面的な手段を用いるべきであると述べている。(筆者注6)
しかし、一方で米国の小売事業者経営者団体であるRILA(Retail Industry Leaders Assiociation)は、中国元とドルとの為替レートの不均衡や両国の貿易にかかわる諸問題に対する強い姿勢を議会や政府に求めている。
3.第18回米中商業・貿易に関する共同委員会の合意内容
SEDに先立って12月11日に北京で第18回「米中商業・貿易に関する共同委員会(The U.S.-China Joint Commission on Commerce and Trade:JCCT)」が開かれた。同委員会のメンバーは米国側がスーザンC.シュワブ(Susan C. Schwab)通商代表部代表、グティエレス(Carlos M. Gutierrez)商務長官、中国側が呉儀国務院副總理である。米国側の発表内容はJETRO が詳しくまとめているので参照されたい。
また、通商代表部は両政府間の署名内容(MUAやMOU)のファクト・シートを公表している。SEDのファクト・シートよりは具体性があり、またMOAとMOUの区分が明確であるので、併せて参照する必要があろう。
なお、同ファクト・シートに記されている今回米中間で同意された「米中ハイテク・戦略貿易開発に関するガイドライン(Guideline for U.S. High-Technology and Strategic Trade Development)に基づき両国間の民間レベルの障壁撤廃に向けた作業部会が今後進む。技術立国のわが国としては重要な研究課題であろう。
(筆者注1)わが国でSEDについて、第1回からの交渉経緯について詳しく紹介している論文は以外に少ない。その中で参考となるのは、みずほ総合研究所「みずほアジアインサイト」2007年8月3日発行であろう。
(筆者注2)このような論調が明確なのはFujiSankei –Business i(2007.12.13) 等であろう。
(筆者注3)前記「みずほアジアインサイト」の解説も、これらの課題について米国国内の主張が十分交渉に生かされていないといった指摘が目立つ。
(筆者注4)「美中貿易全国委員会(US-China Business Council:USCBC)」は、米国と中国と取引関係の強い米国企業250社以上が集まった民間のNPO(理事会理事長はボーイング社の会長兼CEOであるW.James McNerney氏、USCBC事務局代表はJohn Frisbie氏)ある。1973年に設立され、30年以上にわたりメンバー企業に対し、貿易障壁の特定とその除去などに努め、また規則に基づく貿易、投資や競争に関し優れた情報、助言、擁護およびプログラム・サービスを行っている。
同委員会が取りまとめた現連邦議会(第110連邦議会)において提出されている中国関係の法案は下院計61本、上院計41本である。
その中で注目されている法案が、上院財務委員会が7月26日に可決したS.1607「為替相場監視法案(Currency Exchange Rate Oversight Reform Act of 2007)」(経済実勢と乖離した為替レートを放置している外国に対抗措置を取ることが中心)と上院銀行委員会が8月1日に可決したS.1677「通貨改革および金融市場介入法案(Currency Reform and Financial Markets Access Act of 2007)」(相殺関税などより強硬な法案)である。
(筆者注5)今回のSEDのホスト役である中国の呉儀国務院副總理は、開会の辞の中で両国の友好関係を尊重しつつも米国の保護貿易主義の立法の動きには厳しい指摘を行っている。
(筆者注6)http://www.uschamber.com/issues/letters/2007/070924_china_house.htm
〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm
Copyright (c)2006-2008 福田平冶 All Rights Reserved.
SED自体は2006年にブッシュ大統領と胡錦濤国家主席が創設したもので、財政、金融、貿易、環境、厚生、農業等の閣僚級が一堂に会する経済協議の枠組みであり、半年に1度のペースで米中交互で開催され、今回が3回目。ポールソン(長鮑爾森)財務長官と呉儀国務院副總理(Vice Premier Wu Yi)が共同議長を務める。短期的成果を目指す交渉とは異なり、長期的視野に立って中国の貿易黒字の元凶である輸出主導の経済構造を内需主導に転換することを目指す。ただし、米議会の関心が高い人民元(RMB)の柔軟化等は遅れており、米国内では戦略経済対話を基軸とするポールソン長官の対話路線は目に見える成果を上げていないとの批判は根強い(筆者注1)。
一般的にわが国の経済専門家・メディアの見方は、今回の対話は中国ベースで進んだとの評価が多い(筆者注2)。その理由には、米国が従来から強調してきた①人民元改革(米国の対中貿易の赤字解消)、②知的財産権保護強化、③繊維製品をめぐる輸入摩擦問題、④中国の金融市場開放、⑤エネルギー・環境分野の協力、⑤航空の自由化といった重要課題において著しい成果があったとはいえないからである(筆者注3)。国際政治の世界において2国間の間では公表されない具体的な交渉内容があるとは予想されるが、本文で述べるとおり米国民の期待(=議会)に応えるものになっていないといえよう。
米国内の議会等の論調は保護主義強化を求めており、次回(2008年6月)ワシントンで開かれる第4回SEDまでの間にこれら未解決の課題について進展が見られないとブッシュ政権自体の支持率等にも大きな影響が出ることは間違いなかろう。
今回のブログは、財務省の米中共同記者発表資料(Joint Fact Sheet)、通商代表部(U.S. Trade Representative)や商務省(U.S. Department of Commerce)および中国政府の発表等を中心として議会やステーク・ホルダーを中心とする国際経済や外交問題の取組み情報に弱いわが国のメディアの情報を、米国や中国の具体的なオリジナル情報に基づき補完するという目的でまとめたものである。
今回の米国政府のファクト・シートの両国の署名や合意に関する公表内容は国際公法の観点からも、微妙な内容を含んでいる。法解釈上、正確な訳に努めたつもりであるが専門家による補完を期待したい。
1.保護主義化をすすめる米国連邦議会の動き
米国上院財政委員会(Senate Finance Committee:Max Baucus委員長(民主党モンタナ州))では2007年7月26日、中国を念頭に置いたと思われる「通貨為替監視改革法案(Currency Exchange Rate Oversight Reform Act of 2007)(S.1607)」を、20対1の圧倒的賛成多数で可決した。内容は不当に為替操作を行う国を財務省が指定し、IMF(国際通貨基金)やWTO(世界貿易機関)への提訴、介入による是正、反ダンピング(不当廉売)関税の適用などの是正措置を米政府に求めるというものである。さらに8月1日には上院銀行・住宅および都市問題委員会(Banking,Housing,and Urban Affaires Committee:Chris Dodd委員長(民主党コネチカット州))がさらに相殺関税の導入を盛り込んだ「通貨改革および金融市場法案(Currency Reform and Financial Markets Act of 2007)(S.1677)」を可決した。(筆者注4) (筆者注5)
2.米国商工会議所(U.S.Chamber of Commerce)の保護法案反対の主張
同会議所は2007年9月24日に連邦議会下院議員に対し、上院の前記2法案(S.1607,S.1677)について提案の趣旨自体は評価するもののこれらの法律は輸入問題だけでなく、米国にとって急激に伸びている輸出相手国である中国の経済・金融制度改革を遅らせ、ひいては米国自体の経済的地位を弱めるとの懸念を示している。
そういう意味で、市場決定型為替レートへの移行の必要性は強く認識するものの政府のポールソン長官を中心とするSEDの継続的活動を支持し、また米国の貿易関係法やWTOルールとの整合性の取れた二国間の相互的かつ多面的な手段を用いるべきであると述べている。(筆者注6)
しかし、一方で米国の小売事業者経営者団体であるRILA(Retail Industry Leaders Assiociation)は、中国元とドルとの為替レートの不均衡や両国の貿易にかかわる諸問題に対する強い姿勢を議会や政府に求めている。
3.第18回米中商業・貿易に関する共同委員会の合意内容
SEDに先立って12月11日に北京で第18回「米中商業・貿易に関する共同委員会(The U.S.-China Joint Commission on Commerce and Trade:JCCT)」が開かれた。同委員会のメンバーは米国側がスーザンC.シュワブ(Susan C. Schwab)通商代表部代表、グティエレス(Carlos M. Gutierrez)商務長官、中国側が呉儀国務院副總理である。米国側の発表内容はJETRO が詳しくまとめているので参照されたい。
また、通商代表部は両政府間の署名内容(MUAやMOU)のファクト・シートを公表している。SEDのファクト・シートよりは具体性があり、またMOAとMOUの区分が明確であるので、併せて参照する必要があろう。
なお、同ファクト・シートに記されている今回米中間で同意された「米中ハイテク・戦略貿易開発に関するガイドライン(Guideline for U.S. High-Technology and Strategic Trade Development)に基づき両国間の民間レベルの障壁撤廃に向けた作業部会が今後進む。技術立国のわが国としては重要な研究課題であろう。
(筆者注1)わが国でSEDについて、第1回からの交渉経緯について詳しく紹介している論文は以外に少ない。その中で参考となるのは、みずほ総合研究所「みずほアジアインサイト」2007年8月3日発行であろう。
(筆者注2)このような論調が明確なのはFujiSankei –Business i(2007.12.13) 等であろう。
(筆者注3)前記「みずほアジアインサイト」の解説も、これらの課題について米国国内の主張が十分交渉に生かされていないといった指摘が目立つ。
(筆者注4)「美中貿易全国委員会(US-China Business Council:USCBC)」は、米国と中国と取引関係の強い米国企業250社以上が集まった民間のNPO(理事会理事長はボーイング社の会長兼CEOであるW.James McNerney氏、USCBC事務局代表はJohn Frisbie氏)ある。1973年に設立され、30年以上にわたりメンバー企業に対し、貿易障壁の特定とその除去などに努め、また規則に基づく貿易、投資や競争に関し優れた情報、助言、擁護およびプログラム・サービスを行っている。
同委員会が取りまとめた現連邦議会(第110連邦議会)において提出されている中国関係の法案は下院計61本、上院計41本である。
その中で注目されている法案が、上院財務委員会が7月26日に可決したS.1607「為替相場監視法案(Currency Exchange Rate Oversight Reform Act of 2007)」(経済実勢と乖離した為替レートを放置している外国に対抗措置を取ることが中心)と上院銀行委員会が8月1日に可決したS.1677「通貨改革および金融市場介入法案(Currency Reform and Financial Markets Access Act of 2007)」(相殺関税などより強硬な法案)である。
(筆者注5)今回のSEDのホスト役である中国の呉儀国務院副總理は、開会の辞の中で両国の友好関係を尊重しつつも米国の保護貿易主義の立法の動きには厳しい指摘を行っている。
(筆者注6)http://www.uschamber.com/issues/letters/2007/070924_china_house.htm
〔参照URL〕
http://www.ustreas.gov/press/releases/hp732.htm
Copyright (c)2006-2008 福田平冶 All Rights Reserved.
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