2013年4月17日水曜日
フィンランドの国を挙げての世界的な産業ビジネス戦略の中身を解析する
筆者の手元には毎日、欧米やアジア等多くの国から政府、議会(議員)、各種産業団体、シンクタンク、NPO、大学等が発するメールが届く。
時間の関係でそれらの内容を逐一読むわけには行かないが、注目に値すると思われるテーマについては丁寧に解析するように努めている。
今回紹介するフィンランド政府からのニュースを詳細に解析し、また関連するとサイトを注意深く読むと、軽く読み飛ばすにはもったいないと思える内容である。すなわち、人口約550万に満たない小国がこれだけの経済力(GDPは49,350万ドル)と教育水準が維持できている本当の理由が垣間見えたと思えたからである。
わが国はなおGNPが世界第3位といっているが、中長期に見た場合、果たしていつまで過去の貯蓄を食いつないでいけるのであろうか。国際ビジネスだけでなく、教育を含めたわが国の更なる喫緊の検討課題を考えるヒントが見える気がした。
また、わが国のメディアや行政機関だけでなく研究機関を含めEUの小国の解析は極めて貧弱といえる。筆者なりに補足しながらフィンランドの初歩的研究を試みる。
1.フィンランド政府の大型中国ビジネス訪問団に関するリリースの概要仮訳(中国語版)
欧州外交・外国貿易大臣であるアレクサンデル・ストゥブ相(Alexander Stubb, Minister for European Affairs and Foreign Trade)は、フィンランドの会社の輸出と国際化の一層の促進を図る狙いで、中国への大規模チームによる訪問旅行を4月10~12日に実施する。
この旅行の間、代表団は江蘇省・上海や四川省・成都を訪問する。江蘇省・上海近郊では約200のフィンランドの会社が、また江蘇省では約40の会社が営業活動を行っている。急速に発展している成都は、特にITテクノロジー・セクターのための面白い市場エリアである。フィンランドのビジネス代表団(フィンランドの全国的な貿易および国際的な投資開発推進団体である“Finpro” (筆者注1)によって集合された)は、全部で31社からなる。これらは、クリーン化技術、電気通信、IT技術、造船、金融、都市計画、観光旅行や幸福増進部門等を代表する企業である。
中国は、アジアにおけるフィンランド最大の取引相手国である。わが国と間の貿易総額は、2012年には 72億ユーロ(約8,928億円)(筆者注2)に達した。今回の訪問目的は、フィンランドの会社の商機を進めることとともに、高度かつクリーンな技術を持つ国としてフィンランドのイメージを強化することにある。
上海を訪問するとき、ストゥブ大臣は中国の各地方自治体代表に会い、ビジネス・フォーラムに参加し、また上海の復旦大学(Fudan University)で講演を行う。江蘇では、大臣はコーン・エレベーター・エスカレーター設備会社(KONE Corporation)の工場開設式に参加予定である。成都の旅程では、ハイテク工業団地地域(ChengDu Hi-Tech Industrial Development Zone)、ビジネス・フォーラムや市当局との会議への参加訪問を含む。
ストゥブ大臣は、上海、江蘇および成都を訪問する前の4月8~9日に、北京でのファンランド共和国大統領サウリ・ニニースト(Sauli Niinistö)の公式訪問に参加する。
訪問に参加している会社名は、以下の通りである。(筆者注3)
ABB Oy(筆者注4)、AFT- Aikawa Fiber Technologies Oy、Caprice Ltd、Capricode Oy、DigiEcoCity Ltd、Enoro Oy、FIAC Invest Ltd、Finnish Onnovative Architecture and Consulting Ltd 、Finnair Plc/Finnair Cargo Oy、Finnish Tourist Board、FluidHouse Oy、GreenStream Network Oyj、Oy HacklinLtd 、Honkarakenne Oyj、Jyväskylä Regional Development Co.Jykes Ltd Oy 、Oy Lunawood Ltd、Machine Technology Center Turku Ltd、MPS China Management Consulting、Neste Oil Corporation、Nokia Siemens Networks、Normet Trading Ltd、Pohjola Bank Plc、Raute(Shanghai) Machinery Co.Ltd、Runtech Systems Oy、Santa’s Hotels、Takoma Oyj、TWS Shipping Line Ltd Oy、Shipbuilding、VaconPlc、Vahterus Oy ja Valkee Oy
2.フィンランドのグローバル戦略の中身
(1)経営者団体の取り組み
ここでは、上記以外で今回のブログ原稿を執筆時に気がついた点をまとめてあげておく。
①フィンランド産業会議(Elinkeinoelämän keskusliitto :EK)のサイトを見よう。ホームページ画面の左側を見ると、フィンランド産業界の主要取組み課題の3本柱が、(1)経済と貿易問題、(2)エネルギーと気候変動問題、(3)教育と改革能力問題が挙げられている。筆者はこのうち(3)の内容を詳しくチェックしてみた。
特に「全国教育委員会」のうち“PISA - Programme for International Students Assessment”、“Study in Finland”等 の内容は十分に研究に値するものといえよう。
②今回は時間の関係で詳しくは論じないが、機会を見て改めて解析したい。
(2)際立つ対中国戦略
前述したとおり、官民国を挙げての取り組みの活動が見られる。
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(筆者注1)“Finpro”の概要を、同サイトの仮訳文を筆者なりに補足のうえまとめる。
・Finproは、フィンランドの全国的な貿易、企業の国際化および開発支援団体である。Finproはクライアントの国際的な背長や競争的な概念や申し出をもって適時に正しい市場内で彼らが成功することを支援する。Finproネットワークは、地域内とグローバルの両面でクライアントやパートナーの利益を支援する。これら企業のための我々の任務と同様に、Finproは“Cleantech Finland”や“Future Learning Finland”などいくつかの国際的なプロジェクトを運営している。
・Finproは1919年にフィンランドの複数の会社により設立され、現在、フィンランド産業会議(フィンランド産業会議(Elinkeinoelämän keskusliitto :EK)は、フィンランドの最も主要な事業者団体で、その主要な任務はフィンランドで営業している会社ための国際的に魅力的で競争的ビジネス環境をつくることである会社法務、税金問題、貿易政策、革新的な環境つくり、中小企業の企業家精神や気候変動政策等のテーマに関し対話と協力に携わっている。加盟協会は27、全ビジネス界横断的な加盟会社数は16,000社、フィンランドのGDPの70%以上、また輸出の95%以上を稼ぎ、従業員数は95万人である。160人以上の各分野の専門家を擁しており、ヘルシンキが本部でブルュッセル等4つの地域事務所を設置している。欧州最大の経営者団体である「欧州経営者連盟(Business Europe)」に属すとともに、OECDやILOでも積極的な活動を行っている))、「フィンランド企業連合(Yrittäjät:会員116,000社以上)」、「フィンランド技術産業連合(Teknologiateollisuus:従業員数29万人)」等、約550がメンバー団体、会社である。
Finproは370人の各分野の専門家を擁し、また世界50カ国に69の事務所を設けている。
(筆者注2)日本の2012年の対中国の総貿易額は総額3,336億6,442万ドル(約32兆352億円)(前年比3.3%減)である。(2013年2月19日 ジェトロ発表)
(筆者注3)各企業名はあえて和訳していないが、企業等のサイトにリンクさせて事業内容が一目でわかるようにした。
(筆者注4)フィンランド語で株式会社は osakeyhtiö で、“Oy”と略す。公開有限責任会社は“Oyj”である。
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