2013年4月16日火曜日

オランダで急速に広がるウィルスや寄生虫を媒介するヒトスジシマカ問題





中国の「鳥インフルエンザH7N9型」問題が騒がれる一方で、筆者の手元にオランダの主要都市で急速に拡大する東南アジアで収穫した竹(bamboo plant)や車のタイヤを介してオランダに移ってきたといわれる「タイガー・モスキート(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)」がオランダのアムステルダム、ロッテルダムやユトレヒト等で見つかった。ただし、コロニー(筆者注1)は見つかっていないとのニュースが届いた。

 この問題は米国やヨーロッパだけでなく、起源をたどるとわが国とのかかわりが深い問題でもある。筆者はこの分野ではまったくの門外漢であるにもかかわらず、あえてレポートするのは生態学と感染症問題に対する理解を改めて訴えることが目的である。

 さらに、この問題はわが国でも従来から国立感染症研究所感染症情報センター等が取り上げ、警告を鳴らしている問題であることも再認識した。今回のブログはオランダのメディア記事(Dutch News .nl) をもとに、欧州感染症研究センター(ECDC)の解説やわが国の国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)のレポート等を適宜引用、補足説明を加えながら、ここでまとめて紹介するものである。

 なお、門外漢ついでに引用すると筆者は本ブログで2009年4月30日から同年11月24日まで計16回にわたり「海外における新型インフルエンザ感染拡大の最新動向と新たな研究・開発への取組み」を書いた。自分なりに独学で勉強したり、海外の主要疫学専門サイト等をつぶさに読んだことは現在でも意義のあることと考える。誤解や正確性を欠く点については専門家の指摘を期待する。

1.オランダのメディアの記事概要

 ECDCによれば、この攻撃的かつ日中に刺す蚊は約20のウィルスや寄生虫(parasites)を運ぶ「ヒトスジシマカ」がオランダでも居を構えた(筆者注2)。タイガー・モスキートは東南アジア固有のもので中国の観賞竹材や中古タイヤ(筆者注2)等を介してオランダに到達し、その範囲が拡大している。すなわち、アムステルダム南北部、ロッテルダム近くのウェストランドやさらにユトレヒト州、北ブラバント州の一部やリンブルグ州で検出されているが、コロニーはまだ特定されていない。

 RTL Nethrtland(筆者注3)ニュースの取材に対し、ECDCのスポークスマンであるウィルフリード・ラインホルド(Wilfried Reinhold)(筆者注4)は、「オランダの保健・福祉・スポーツ相であるエディス・スヒッペルス(Edith Schippers)は中国からの輸入品でのヒトスジシマカの自由な浸入はなく、スポット検査で十分であるとしたが、その取組みは失敗に終わった」と述べた。

2.ECDCのヒトスジシマカ(Aedes albopictus)解説部分の仮訳(筆者注5)

Aedes albopictus:

蚊の一種である「ヒトスジシマカ」 は東南アジアを起源とし、 北アメリカ・中央アメリカ・南アメリカ、アフリカの一部、北オーストラリア、その他ヨーロッパの数ヵ国で 継続して30~40 年の間に広がった。1979 年の アルバニア、また 1990 年の イタリア での 初めての出現以来、ヒトスジシマカ は15ヵ国以上のヨーロッパ諸国で報告されている 。それは侵略的外来種専門家グループ(Invasive Species Specialist Group:ISSG、2009)によると、トップ100の侵入性の高い種の1つと指定され、世界で最も侵入性の高い蚊の一種であると考えられている。 

ヨーロッパ 諸国への 浸入 は、域内の道路車両網の 更なる分散により「万年竹・開運竹(Lucky Bamboo)」の流行や 使い古した タイヤ 取引 と 輸入 を通して 主に 起こった。異なる気候 にも適応出来る能力 のため、ヒトスジシマカは新しい地理的な位置 であるより 北の 緯度 でも 寒い冬 を通して 生き残ることが できることから 、この蚊の変種は、冷さに抵抗力を持つ 卵 を生みだした。ヨーロッパに侵入する 蚊 種 の 多くと同様に 、タイヤ のような 容器の生息場所と家屋周辺での 花瓶等の 選択拡大は人間 との 接触が 高まる可能性をもたらした 。

ヒトスジシマカ は、チクングンヤ熱 ウイルス の重要な 既知の 媒介生物である。それ は、2005~2007年 のフランスのレユニオン島(La Reunion)、 2007年の イタリア と 2010 年の フランス の 「チクングンヤ熱(Chikungunya)」の 媒介生物であった 。

ヒトスジシマカ は、レユニオン島R1977~1978年 (2009 年6月 の モーリシャスも同様 )の大発生をもたらしたものとして 、「デング熱」 の媒介生物 で も ありえる。それ は、2010年のフランスやクロアチアの デング熱 ウイルスの媒介生物でもある。


(筆者注1)「コロニー」とは、生態学にて同一種の生物が形成する集団。繁殖のための群れである。

(筆者注2) 「国立感染症研究所感染症情報センター(IDSC)レポート(Vol. 32 p. 167-168: 2011年6月号) 「ヒトスジシマカの生態と東北地方における分布域の拡大」から一部抜粋「ヒトスジシマカの生態と東北地方における分布域の拡大」からの一部抜粋。「この蚊は古タイヤの国際的な流通で、オーストラリア、北米、中南米、ヨーロッパの国々へ輸出され、イタリアのヒトスジシマカは、米国から輸入された古タイ ヤによって運び込まれたことが確認されている。米国の系統は日本から古タイヤによって輸出されたことから、ヨーロッパと日本のヒトスジシマカは同じ系統で あることが強く示唆される。」

(筆者注3) RTL NederlandはRTLグループの子会社の商業放送で、ルクセンブルグに本拠を有し、4系統のチャンネル(RTL4,RTL5,RTL7,RTL8)を保有、オランダ市場を視聴目標としている。

(筆者注4) ウィルフリード・ラインホルド氏は 、オランダNPOで異国からの動植物の生物種の侵略阻止活動団体である「platform Stop invasive exoten」 (Dutch organisation to stop the introduction and spread of invasive alien species)の議長である。

(筆者注5) “Aedes albopictus”に関する解説としては、(1)米国疾病対策センター(CDC):Information on Aedes albopictus、(2) 欧州感染症研究センター(ECDC)2012年作成 Technical Report「Guidelines for the surveillance of invasive mosquitoes in Europe」(PDF 全100頁)、 (3)ECDC:2009年5月公表「Technical Report:Development of Aedes albopictus risk maps」(ECDChttp://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/TER-Mosquito-surveillance-guidelines.pdfサイトからリンク可) 、(4)厚生労働省検疫所最新ニュース2012.11.20 「チェコでヒトスジシマカが発見されました:2012年10月25日日付けEurosurveillanceの訳文」等を参照されたい。

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