2010年12月14日火曜日
欧州委員会は現下のセキュリティ脅威に対処すべく「EU域内緊急セキュリティ強化行動戦略目標」等を採択(第1回目)
2010年11月22日、欧州委員会(担当委員:セシリア・マルムストロム(Cecilia Malmstrom))はEU市民の保護強化のためのEUが直面する緊急的なセキュリティ脅威に対処すべく長期的な「EU域内セキュリティ強化のための行動戦略目標(EU Internal Security Strategy in Action)」(全41項目)(以下「戦略目標」という)を採択した旨公表した。
テロを含むサイバー・セキュリティ対策はこのところ世界的な傾向として強化されており、これに関するEUを中心とした取組みはこの戦略目標以外にも多くのEU機関の具体的な検討が始まっている。これら最新のEU機関の活動についてはわが国で具体的にかつ専門的に論じたものは極めて少ないことも事実であり、また、人権問題としての取組みについてのレポートも少ない。例えば、「乗客氏名等顧客記録(Passenger Name Records)」とわが国が2005年1月4日から米国、カナダ、豪州、ニュージーランド、メキシコと共に運用を開始した「事前旅客情報)システム(Advance Passenger Information System:APIS)(筆者注1)の具体的データ内容とプライバシー問題等への懸念等である。
このため本ブログではこれらのキーワードをとらえつつシリーズで取上げることとした(あくまで暫定訳であり、訳語の不統一等は後日整理したい)。
いずれにしても、EUの行動戦略目標はEUにおけるサイバー犯罪の中期的な取組み課題が網羅されており、米国等との協調関係を踏まえた今後の動きを予測する上で重要なキー情報といえる。
このような状況の中でEUの人権擁護団体である“statewatch”等から最新情報が届いたのであわせて紹介する。また、EU委員会の域内人権担当委員セシリア・マルムストロム(筆者注2)が自身のブログ(スェーデン語)でWikiLeaksへのサイバー攻撃に対する強い懸念を提起している。
また、欧州連合理事会のテロ対策調整・推進役(EU Counter-terrorism Coordinator)ジル・ドゥ・ケルコフ(Gilles de Kerchove)が欧州理事会に対し報告「EUテロ対策行動計画(EU Action Plan on combating terrorism)」を行っている。この“Coordinator”についてわが国ではほとんど言及されたものはない。この両者についてもあわせて連載の中で解説したい。
一方、11月28日以降、“WikiLeaks”による米国外交文書(筆者注3)の段階的な公開を巡る国務省や国防総省の反論等も紹介するつもりもあるが、実際には関係機関によるDOS攻撃やISP等への情報規制も行われており、十分な事実関係にかかる情報は筆者の手元にはない。
この点につきわが国メディアが独自にいかほどの正確な情報をもって解析しているかは知らないし、Wikileaksの運営理念は今一筆者には理解できない点が多い。断片的な機密情報である公電を取り出して、そこに現れた外交官や政府要人のコメントを網羅して米国政府の傲慢さをいくらたたいてもそこからどのような国際戦略的施策が出てくるのであろうか。それのみで国際法違反といえるような事実関係を明らかにし、国際平和に向けた協調のためのステップにつなげられるのか。(筆者注4)
国際的に見たイニシアティブをとるには常日頃から外交活動を地道に行い、そこで得られた外交成果を次の国際的な具体的活動に反映するのが外交のイロハであるはずである。その意味ではその取組み方や方針そのものの良し悪しは別にして、クリントン長官のこの数ヶ月のアジアへの精力的な外交努力を見ると年間のほとんどを国会や国内活動に当ててきたわが国の外務大臣とは大違いと考える。いずれにしても、この問題は改めてコメントするつもりである。
1.行動戦略目標策定の目的
欧州委員会の戦略目標策定には次のような背景がある。
組織化、国際化されたテロやサイバー犯罪、危機、災害問題は、市民、企業やEU社会全体のセキュリティの強化のためにともに努力、行動すべき分野といえる。本戦略はそれら脅威を先取りし、それらと戦うために行うべき行動について概説ものである。
自動車泥棒、強盗、麻薬取引、クレジットカード詐欺はしばしば国際化し、サイバー空間で組織的に活動する国際犯罪ネットワークの地域的現象といえる。犯罪者は軽犯罪や大規模な攻撃においてますますインターネットを使用している。EU域外との国境線は麻薬、模造品、兵器、および人間の取引に搾取されており、これら犯罪ネットワークは大規模なかたちで公的財政(public finances)から本来の収入を枯渇させている。国際通貨基金(IMF)は、金融犯罪が生み出した不法な利益は全世界のGNPの5%に上ると推定している。
危機や災害はそれらが地震、洪水、人為ミスあるいは悪意ある意図をもって引き起こされたか否かを問わず、人々に悲惨な状況(human misery)ならびに経および環境面の損失をもたらす。同時にテロは過激な教義(extremist propaganda)でもって影響をうけやすい個人を狙い、われわれ社会を傷つける新たな方法を見つけ出す。
欧州委員会は、これらの問題に向けた挑戦方法を提案するものである。
その1つは犯罪から得られた資産の押収に関する法案であり、またEUは過激主義やシンパの募集に対する加盟国の権限強化を支援し、陸上交通など運輸手段をテロから保護すべきであると考える。
また、サイバー犯罪の共同的調査の実行およびサイバー犯罪の阻止、国境管理におけるより的確な取組みのための一連の手段や基幹エネルギー・パイプラインの危機や災害からの備えと対処を目的とした「EUサイバー犯罪センター(EU cybercrime center)」構想をもっている。
2.2011年から2014年の間における5つの戦略目標およびその実現のための行動計画(Five Strategic Objectives and Specific Actions for 2011-2014)
第1目標:EU社会を脅かす国際犯罪ネットワークの分断(Disrupt international crime networks threatening our society)
行動1: 犯罪ネットワークを特定し、分断させる( Identify and dismantle criminal networks)
犯罪のネットワークを特定して、分断させるために、彼らの行動やそれらの資金源に関する彼らのメンバーの手段を理解することは不可欠である。
したがって、欧州委員会は2011年にEUの領土への航空機での入退出に関する「乗客氏名等顧客記録(Passenger Name Records)」(筆者注5)の収集に関するEUの立法措置案を提案する予定である。 これらの乗客データは、テロ犯罪およびと重大犯罪を防ぐ目的で加盟国の当局によって分析されることになる。
犯罪者の資金源やそれらの資金の動きを理解するためには、それら資金が通過する信頼関係と同様に会社の所有者に関する情報に依存する。実際、欧州詐欺対策局(d'Office européen de lutte antifraude:OLAF)等の法施行機関および司法機関さらに民間セキュリティ専門機関はそのような情報を得るのに大変苦労している。 したがって、EUは2013年までに金融活動作業部会の国際的なパートナーとの議論の観展から、法人と法的処置の透明性を高めるためにEU の反マネーローンダリングに関する立法内容を改定すべきであると考えている。 犯罪にかかる資金の流れをたどるのを支援するために、いくつかの加盟国数は国による銀行口座の中央登録システムを準備した。 法施行目的のためにそのような登録システムの有用性を最大にするため、欧州委員会は、2012年に「ガイドライン」を策定する予定である。
事実上犯罪にかかる金融取引を捜査するため、法施行機関や司法機関は、収集・分析し、適切と判断される場合は教育トレーニングがプログラムする犯罪の金融面の調査と国家による刑事犯罪捜査や欧州警察大学(CEPOL)の教育プログラムの完全利用により情報を共有するよう訓練すべきである。欧州委員会は、2012年にはこの領域での具体的戦略を提案する予定である。
さらに、犯罪のネットワークの国際的な性格は欧州検察機構(Eurojust)、欧州警察機構(Europol)および欧州詐欺対策局(OLAF)と並んで働く異なる加盟国の警察、税関、国境警備機関および司法機関にかかわるより多くの合同捜査チーム(Joint Investigation Teams)(筆者注6)を必要とする。 合同捜査チームを含むそのような捜査活動は、必要であれば緊急通知に基づき関連する脅威分析(筆者注7)に基づいて欧州理事会が確立した優先順位、戦略目標および計画にそった形で欧州委員会の全面的支援を受けて作動すべきである。
そのうえ、欧州委員会および加盟国は、基本的権利への効果をも含む「欧州逮捕令状(European Arrest Warrent)」(筆者注8)に関するレポートについて有効的な実現を確実にし続けるべきである。
行動2: 犯罪の浸入から経済を守る。
犯罪ネットワークは、合法的な経済におけるそれらの利益を投資するために腐食に依存し、かつ公的機関への信頼と経済体制への信頼を腐食させる。 腐食と戦うために政治的意思を維持することは重要なキーである。 したがって、EU全体としての行動と最も良い取組みを共有することが必要であり、欧州委員会は2011年中に「加盟国の反腐食の努力」をいかにモニターして、どう支援するかにつき具体案を提出する予定である。
政府や規制監督により免許を与えたり、承認、調達契約または補助金を与える原因となりうる政策は、犯罪のネットワークによる腐食から経済を保護するために開発されるべきである('行政的アプローチ'という)。 欧州委員会は、2011年に最善の実践を開発するために国家間の接点のネットワークを設立して、かつ実際的な問題につきパイロット計画を支援することによって、実務的な後援を加盟国に提供する予定である。
模倣品(counterfeit goods)は、組織化された犯罪グループのために大きな利益を生み出し、EUの単一市場の取引パターンを歪め、欧州産業をひそかに害するとともに、欧州市民の健康や安全衛生を危険な状態に導く。
したがって、委員会は模造品と著作権侵害に対する今回の行動計画の文脈においてより効果的な知的所有権の行使を伸ばすべく、あらゆる適切なイニシアティブを取るであろう。 一方で、インターネットによる模造品の違法販売と戦うため、加盟国の税関当局や欧州委員会は必要な法律を制定し、国家間の接触ポイントや最善の実務の交換制度を確立すべきである。
行動3: 犯罪活動から得られた資産の押収
加盟国が犯罪ネットワークの金銭的誘因と戦うために、加盟国が犯罪活動から得られた資産の捕獲(seize)、凍結(freeze)、管理および押収できるようにし、また犯罪者の手に戻らないことを確実にしなければならない。
このために、委員会は、2011年に押収でのEUの法的な枠組み(筆者注9)を強化するために「法案」を提案する予定である。とりわけより多くの第三者の押収(confiscation)(筆者注10)と拡張的な押収(confiscation)(筆者注11)を許容して、加盟国の間の非有罪の場合の基礎となる押収命令(筆者注12)の相互承認を容易にする予定である。
加盟国は2014年までに必要な資源、権限や教育機能ならびに関連情報の交換機能を備えた「犯罪資産回収局(Asset Recovery Offices)」(筆者注13)を設置しなければならない。 欧州委員会は2013年までに共通的な指標を開発する予定であり、加盟国はこれらの回終局の実効性を評価するべきである。 さらに加盟国は2014年までに例えば、犯罪物がそれらが結局押収される前に、凍結資産がそれらの価値を失わないようことを保証するために資産管理局を創設することなど必要な制度上の整備を行うべきである。 平行して、欧州委員会は、2013年に犯人グループが押収された資産を再び獲得するのをいかに防ぐかに関する最も良い実践ガイダンスを提供する予定である。
目標2: テロおよび急進主義やシンパ勧誘活動(recruitment)を阻止する
テロの脅威は絶えず重大な課題のままであり、かつ増加している。(筆者注14)。 テロ組織は、2008年のムンバイ攻撃(筆者15)で示されるように、適合して、革新されており、2009年クリスマスのアムステルダムからデトロイトまでの飛行に対する試みられた攻撃は、最近いくつかの加盟国に影響しながら発見された陰謀を起こしている。 もう1つの脅威は、組織化されたテロリストと過激派プロパガンダに基づいて彼らの過激思想を開発し、インターネットで訓練資料を見つけたかもしれないいわゆる'一匹おおかみから来る。テロと戦うための我々の努力は、予防活動(筆者注15)を含む一貫性を持ったヨーロッパの取組みとともに脅威に有利な立場を保つために発展する必要がある。(筆者注16) さらにEUは、社会機能と経済(筆者注17)に不可欠な輸送サービス、エネルギー発生および搬送を含む重要インフラを指定して、それらの資産を保護する計画を適所に置き続けるべきである。
加盟国は、欧州委員会の全面的な支援ならびにEU テロ対策調整役により補強されたかたちでこの目的を実現する上で協調し、かつ効果的な努力で果たす上で第一義的役割を担う。
行動1: 地域共同体に急進主義者(radicalization)やシンパ勧誘を防ぐのに権限を与える。
テロ行為につながる急進主義は、レベルが最も影響を受けやすい共同体社会で最も影響されやすい個人を最も緊密に包み込むことが最も効率的な方法である。 それは地方公共団体、市民社会、および脆弱性のある共同体社会の主要なグループとの厳密な協力を必要とする。 急進主義者やシンパ勧誘活動がそのコアであり、また全国レベルの課題として残る。
いくつかの加盟国がこの領域に具体的な施策の流れを発生させている。そして、EUの特定の都市はローカルな地域密着型の取り組みと防止政策を開発した。 これらの率先的な活動はしばしば成功し、また欧州委員会はそのような成功体験.19の共有を容易にするのを支援し続けるであろう。(筆者注18)
まず第一に、2011年までに地域の委員会と協力して、欧州委員会はテロリストの成功談に挑戦すべく、急進派への認識と対話技術を高めるために経験、知識および良き実践例を蓄え、オンライン・フォーラムやEU全体会議によって支援されたEU 急進主義への認識強化ネットワークの創設を促進するであろう。 このネットワークは、政策立案者、法施行機関、セキュリティ担当官、検察官、地方公共団体、研究者、当該分野の専門家および犠牲者グループを含む市民社会団体から成るであろう。加盟国は、テロリストの成功談の代替手段を提供する公開討論において、確実な役割モデルとオピニオンリーダが積極的なメッセージを声にして出すよう奨励しながら、物理的またはバーチャルコミュニティ空間を創造するようネットワークを利用してアイデアを一般化すべきである。
また、欧州委員会は市民社会団体がインターネット上での暴力的な過激派プロパガンダを曝露させ、その本来の意味を翻訳させ、それらに挑戦する仕事を支援するであろう。
第二に、委員会は、2012年中に加盟国がうまくいっている行動の例を提示する機会を持っている急進派(radicalization)と新人募集の防止での閣僚会議が過激派イデオロギーを打ち返すのを構成するであろう。
三番目に、欧州委員会はこれらへのイニシアチブと議論の観点から、どのように新人募集の阻止や離脱ならびにリハビリテーションを可能にするかにつき急進主義の源にさかのぼって加盟国の努力を支持するために行動と経験のハンドブックを策定する予定である。
行動2: 基金と武器等のテロリストのアクセス手段を断ち切り、かつそれらの相互作用を続けること。
欧州委員会は、2011年中にテロや関連する活動を阻止するため資産の凍結に関するEU運用条約第75条の下での行政的手段の枠組みについて考え出すことを検討する予定である。 EUの行動計画は、2008年は爆薬物、また2009年は化学、生物学、放射性や原子力物質(CBRN)へのアクセスを阻止する計画につき優先的に実行するために必要な立法上および非法的措置を通して行うことが必要である。 これは2010年に委員会によって提案された一般的な爆薬を作るのに使用される原料となる化学物質に制限する規則案の採用を含む。 また、それは、加盟国がCBRN物質に関する事故の危険を国家計画を考慮に入れることを確実にするため欧州CBRN法施行専門部隊(European network of specialised CBRN law enforcement units)」の設立を意味し、また、その他の手段としてCBRNの物質に関係づけられた事故に関する欧州察機構の「早期警告システム(Early Warning System)」の法施行体制を確立することである。
これらの行動は加盟国との綿密な調整を必要として、適切である場合は官民協力により実施すべきである。 爆発物と大量破壊兵器(生物、化学または核)につながる物質にアクセスする手段を得るテロ組織や国家の活動家の危険性を最小とすべく、EUは二重用途輸出管理規制制度とその実施をEU境界および国際的に強化すべきである。
アメリカ合衆国とのTerrorist Financing Tracking Programme協定の署名に続いて、EUがおひざ元に保持された金融メッセージングデータを抜粋して、分析するよう欧州委員会は2011年に政策を立てるであろう。
行動3: 輸送体制の保護
欧州委員会は、脅威やリスクについて継続的評価に基づき航空・海事のセキュリティのためにEU体制をさらに発展させるであろう。 それは欧州の地球観測の先導役であるガリレオ(Galileo)や全地球的環境・安全モニタリング (Global Monitoring for Environment and Security:GMES) (筆者注19)などのEU計画を利用することによってセキュリティ研究のテクニックと技術で進歩させるであろう。 それは、可能な限り高いレベルのセキュリティや旅行の安全性、コスト管理、プライバシーの保護の間のより良いバランスを求める大衆に保証すべく働くであろう。すなわち、それは貨物運用のモニタリングを含む検査と法執行体制について継続的な強化を強調するであろう。 国際協力は本質的なものであり、セキュリティの世界的な標準の改善を助け、一方で支資源の効率的な使用を確実にし、またセキュリティチェックの不要な二重化を制限する。
ここに陸上交通のセキュリティのより広くかつ複雑な部門ならびに特に乗客輸送(筆者注20)の安全対策のより活発なヨーロッパの取組み範囲および正当化事由がある。欧州委員会は、関連するインフラストラクチャを含む、(a) ローカルおよび地方の鉄道、および(b) 高速鉄道をカバーするために都市交通セキュリティに対する既存の仕事を広げるつもりでいる。これまで、EUレベル活動は服従的な関心やヨーロッパが連帯してアプローチを必要とする「国際海事機関(International Maritime Organisation:IMO)」や「国際民間航空機関(International Civil Aviation Organisation:ICAO)」に相当する国際機関の不在を反映して情報と最も良い習慣を交換することに制限されてきた。
欧州委員会は、更なる行動に向けた第一歩として、輸送と法施行にかかる専門家を入れた委員会が議長となり、これまでの航空や海上運送にかかるセキュリティの経験を考慮に入れた「陸上交通セキュリティ常務委員会」および公的および個人的な利害関係者の意見交換を行う「フォーラム」の設立を探るのが役に立つと考えている。
第三国からの輸送をモニターしている航空貨物のための手続に磨きをかけ、強化する現在進行中の仕事は最近時の出来事の見地から加速された。
輸送安全保障問題は、2011年中に発行されるであろう「EU運輸安全政策(Transport Security Policy)」に関する欧州委員会の伝達(コミュニケーション)で詳細に記載される予定である。
目標3: 市民と企業のためにサイバースペースでのセキュリティのレベルの引き上げ
ITネットワークのセキュリティは、情報社会がよく機能するための1つの必須な要素である。これはネットワーク利用者のために信頼を築き上げて、セキュリティにおける主なコンポーネントとしてサイバー犯罪、サイバー・セキュリティ、より安全なインターネットおよびプライバシーに関連する問題を扱う最近発表した「EUデジタル化一元化によるインターネットの高速化や相互運用性による経済・社会的なメリット」(筆者注21)で認識されている。また、新しい情報技術の急速な開発と適用は、新種の犯罪活動を作り出した。 サイバー犯罪は、EU域内市場に重大な損失を引き起こす世界的な現象である。 インターネットのまさしくその構造自体は国境を全く意識しない一方で、サイバー犯罪を遂行するための裁判権管轄は国境にまだ止まっている。 加盟国は、EUレベルでそれらの取り組みを蓄積する必要がある。 欧州警察機構の“High Tech Crime Centre”はすでに法施行のために重要な調整役を果たしているが、更なる行動が必要である。
行動1: 法施行と司法部門の能力を引上げる。
2013年までにEUは現体制の中で「サイバー犯罪センター」を設置するであろう。そこでは、加盟国とEU機関は国際的な協力者(筆者注22)との調査と協力のために捜査・分析能力を構築するであろう。 同センターは、既存の犯罪予防や調査手法について評価とモニター方法を改良し、法施行と司法部門のために教育や認識の向上げの開発を支援して、「欧州ネットワークおよび情報セキュリティ機構(ENISA)」と共に協力を確立し、また国家や政府による「コンピュータ緊急対応チーム(Computer Emergency Response Teams:CERTs)」と連結するであろう。サイバー犯罪センターは、サイバー犯罪に対するヨーロッパの戦いにおける焦点になるべきものである。
国家レベルでは、EU加盟国はサイバー犯罪の捜査、起訴することにおける警察、裁判官、検察官および科学捜査官の中の共通基準を確保すべきである。
Eurojust、CEPOL(筆者注23)およびEuropolと連携して、加盟国は2013年までに国家としてのサイバー犯罪の認識とトレーニング能力を開発し、全国レベルにおいて他の加盟国と協力して優れたセンターを設置するよう奨励される。 これらのセンターは研究者と産業界が共に緊密に働くべきである。
行動2: 産業界と共に働いて、権限を与え市民を保護すべきである。
すべてのEU加盟国が、人々が容易にサイバー犯罪事故を報告できる体制を保証すべきである。この一度評価された情報は、国に給送され適切と判断されるときはサイバー犯罪のヨーロッパの警戒プラットホームに供給される。 「安全なインターネット計画」の下での評価作業の構築において、加盟国は市民がサイバー犯罪の脅威について容易にアクセスできるガイダンスを準備し、必要に応じ取るべき事前注意事項を保証すべきである。 このガイダンスは、オンラインで人々がどうオンラインのプライバシーを守ることができるかを含んでおり、調査や報告訓練、自身のコンピュータに基本的なウイルス除去ソフトとファイアーウォールを持たせること、パスワードの管理、フィッシング詐欺・なりすまし詐欺またはファーミング等の攻撃を検出できるようにすべきである。欧州委員会は、2013年に加盟国と産業間で共用的資源と最も良い実務に関するリアルタイムの中央データベースの蓄積センターを設置する予定である。
公的および民間部門との協力は、Resilience(EP3R)(訳者注6)を通じて欧州レベルを強化しなければならない。それは、重要インフラおよびネットワークと情報インフラストラクチャの弾力を含むセキュリティを向上させるためにさらに画期的な対策と手段を開発するべきである。また、EP3Rは、ITネットワークのグローバルなリスク管理を強化するため国際的なパートナーに取組むべきである。
テロに煽動を含める違法なインターネットの内容の取扱いは認可通知および廃棄手続に基づいて協力に関するガイドラインを通じて取り組まれるべきである。欧州委員会は、インターネット・サービス・プロバイダー、法執行当局および非営利団体とともに2011年までに手順を開発する予定である。これらの利害関係者との接触や相互作用を奨励するために、欧州委員会は「産業界と法執行機関のためのサイバー犯罪に関する接触主導(取組み)」(Contact Initiative against Cybercrime for Industry and Law Enforcement)」と呼ぶインターネットベースのプラットフォームの使用を促進するであろう。
行動3: サイバー攻撃に対処するために能力を改善
サイバー攻撃かサイバー破壊の場合、その阻止、検出および迅速な対応を改良するために多くの手段を採らなければならない。まず第一に全加盟国およびEU機関自体は2012年までに、十人分に機能するCERTを持たなければならない。 それらがいったん設置されるとすべてのCERTsと法執行当局が阻止や対処に協力することが重要である。第二に、加盟国は2012年までにヨーロッパの準備を機能アップするためにそれらの国家または政府のCERTsをネットワーク化すべきである。また、この行動は2013年までに委員会とENISAの支援により「欧州の企業のセキュリティ情報の共有および警報システム(a European Information Sharing and Alert System(EISAS)SharingとAlert System(EISAS)の開発および関連団体と加盟国の間に接点のネットワークを設立する際の手段となるものである。第三番目に、ENISAとともに加盟国は事故対応と災害復旧に関する国家緊急時計画を開発ならびに定期的な国家や欧州ベーその実践を引き受けるべきである。全体的に見て、ENISAはヨーロッパのCERTsの水準を引き上げる目的でこれらの活動への支援を提供することになる。
目標4: 国境管理を通じ安全を強化する。
リスボン条約が施行され、EUは結束や責任の共有の精神(筆者注24)にもとづき人や物に関する国境間管理政策の相乗作用によりより良い功績をおいてきた。人の動きと関連して、EUは統合的国境管理戦略の2つの目的として、移動管理と犯罪に対する戦いと取組んできた。 それは次の3つの戦略の座礁に基づいている。
① 国境管理における新技術(第2次シェンゲン情報システム(SIS II)、ビザ情報システム(VIS)、入国/出国システム(entry/exit system)、および登録された旅行者プログラム:registered traveler programme)による強化された国境管理チェック。(筆者注25)
②新技術のGMESセキュリティー・サービスの支援による欧州国境監視システム(European Border Surveillance System:EUROSUR)の強制使用および欧州の海域のために環境を共有する共通情報の段階的作成(筆者注26)。
③ Frontexを通じた加盟国の調整の高度化。
物の移動と関連して、「2005年EU税関規則(Community Custom Code)のセキュリティに関する改正(筆者注27)により国境において信頼性の高い商品の取引につき、より安全でよりオープンかたちになるよう基礎を定めた。 EUに入る貨物はすべてが共通のリスク基準と規格に基づくセキュリティと安全目的のための分析検査に従う。 潜在的に危険な船積貨物にさらに焦点を合わせるためリソースの使用はより効率的である。 このシステムは、EU領域を出入りするすべての商品に適用する認定通関業者制度(Authorised Economic Operators scheme)方式と同様に、輸入業者から事前に取引の動きに関する情報に依存するシステムである。 これらの手段は、補完的であり、包括的な構造を作り上げるもので、それは、加盟国が一国で取り組むことができないますます先鋭化する犯罪組織に対処するためのさらなる守備範囲を拡大する。
行動1: 欧州国境監視システム(EUROSUR)の最大限の可能性を利用する。
欧州委員会は、2011年中に域内の安全と犯罪に対する戦いに関する「欧州国境監視システム」に関する立法案を提案する予定である。”EUROSUR”は加盟国の当局が国境監視に関する運用情報の相互の共有および戦術面、運用および戦略レベル(筆者注28)で「欧州域外諸国間境界協力管理機関(Frontex )」(筆者注29)とともに協調するメカニズムを確立する予定である。EUROSURはEU受託研究プロジェクトや活動を通して開発された、海岸線の国境の捜査や、例えばEUに薬を輸送する高速船の追跡等に関する衛星画像等のような新技術を利用するであろう。
近年、EU領海での運用上の協力の2つの主要な先導が立ち上げられた。すなわち1つ目は「欧州域外諸国間境界協力管理機関(Frontex)」の傘の下で「人身売買( human trafficking )」と「密入国斡旋(human smuggling )」に関する先導であり、2つ目は枠組みを麻薬の密輸入(drugs smuggling )に関するEU海事麻薬分析および運用センター(MAOC-N28)(筆者注30)と反麻薬仲介対策共同センター(CeCLADM29)(筆者注31)である。 EUの領海での統合された運用活動の開発の一部として、EUは2011年中に南部または南西地区の境界線で前記2つのセンター、欧州委員会、FrontexおよびEuropolがかかわるかたちでパイロット計画を開始する予定である。 このパイロット計画(筆者注32) (筆者注33) (筆者注34)は麻薬密輸や密入国など異なったタイプの脅威に関する共通領域でのリスク分析と監視データでの相乗作用を明らかにするであろう。
行動2: EU域外の国境でFRONTEXの寄与度を機能アップする。
Frontex はその運用の途中で交通ネットワークにかかわる犯罪者の重要な情報と交叉する。 しかしながら、現在ではリスク分析や将来の共同運用をよりよく狙う目的でさらにこの情報を使用することは出来ない。 そのうえ、犯罪容疑者に関する関連データは 将来の捜査に備えて管轄権を持つ国内捜査当局や欧州警察機構に連絡は出来ない。さらに、欧州警察機構はリスク分析作業ファイルからの情報を共有ができない。 経験に基づいたかつEUの情報管理への総合的なアプローチ(筆者注35)の文脈において、欧州委員会は限られた範囲と明確に定義された個人的なデータ管理規則により、Frontex がこの情報を処理し、使用するのを可能にするのが犯罪組織を解体することへ重要な貢献をすると考えている。しかしながら、これはFrontex とEuropolの間で任務のわずかな複製も作るべきでないことも事実である。
2011年から先に向けては、FrontexとEuropolの共同データ入力で、欧州委員会は毎年年末までに人身売買、や非合法移民や違法な商品の密輸等の特定の国境をまたぐ犯罪報告を提示する予定である。 この年次報告は2012年以降はFRONTEX やその共同運営ならびに警察、税関と他の専門的な法執行当局の間の共同運用において必要性を評価する基礎として機能するであろう。
行動3: EU域外の越境的な物の動きを管理するための共通のリスク管理
重要な法的かつ造的な開発は、近年国際的なサプライ・チェーンのセキュリティと安全とEUを越境する物の動きを改善するために行われた。 税関当局によって実装された「共通的リスク管理の枠組み(Common Risk Management Framework:CRMF)」は、セキュリティのリスクとEUおよび住民の安全の脅威と適切にこれら危険に対処するため到着前電子選別処理(および到着後処理)データの継続的連続して行う。 また、CRMFは貿易政策や金融的な危険を含むよりを狙うべく徹底的なコントロールが必要な特定した重点地域アプリケーションを用意する。さらに、それはEUレベルでリスク情報の系統的な交換を必要とする。
2011年の挑戦課題は、すべての加盟国でリスク管理の統一的、高品質な性能の実施、関連する危険度分析およびリスクベースの管理を確実にすることでアル。前記で述べた違法な商品の密輸に関する年次報告に加えて、欧州委員会は一般的な危険を扱うためにEUレベル税関査定方法を開発する予定である。 EUレベルでこれら情報をプールして、国境のセキュリティを補強するのに使用すべきである。域外の国境に要求される水準に関税のセキュリティを強化のため欧州委員会は、2011年にEUレベルのリスク分析の選択肢について作業を行い、適宜の提案に前向きに取組む予定である。
行動4: 国家レベルで関係省庁間協力を改善する。
EU加盟国は、2011年末までに一般的なリスク分析を開発し始めるべきである。これは、域外の国境、例えば、同じ国境検問所ポイントで同じ領域からの人や麻薬が繰り返される密輸のときに良く利用される場所(hot spots)や分野横断的な脅威を特定する、警察、国境警備員や税関を含んですべての関連機関や当局がセキュリティの役割にかかわる問題である。これらの分析は、国境をまたぐ犯罪のときにFrontexやEuropolの共同介在により欧州委員会による年1回の報告書の補足となるべきものである。欧州委員会は2010年末までには、EUの域外の境界で働く国境警備や税関体制の間の協力内容として最も良い実務内容を特定して、それらを広める最も良い方法を考えるために研究を完成させる予定である。
2012年中に、欧州委員会は異なる国内当局(警察、国境警備および税関)によって行われた国境チェックの調整内容をいかに改善するかに関する提案を行う予定である。それに加えて、2014年までには欧州委員会はFrontex、Europolや欧州難民支援局(Europol and the European Asylum Support Office:EASO)(筆者注36)とともに、省庁間協力のための最低基準、および最も良い実施慣行に発展させるであろう。 これらは特に共同的なリスク分析と、共同捜査および共同運用と諜報を交換するのに適用される。
目標5: 危機と災害に対するヨーロッパの弾力性を増加させる。
EUは気候変動、テロや基幹インフラに対するサイバー攻撃、さらには病原体の敵対的または偶然の感染によるインフルエンザの大流行やインフラの失敗等の潜在的リスクや災害にさらされる。これらの分野横断的な脅威は、その効率性と一貫性に関して長年の危機と災害管理の練習について改善を求める。彼らはすべての潜在的な危険のEUレベルで、より良いリスクアセスメントとリスク管理を強調した対応における阻止のための連帯感と準備における責任の両方を必要とする。
行動1: EU連帯条項を完全に利用する。
リスボン条約(筆者注37)の連帯条項は、加盟国は相互にテロ攻撃、自然や人的災害において、相互に補助しあうためにEUとその加盟国で法律上の義務を取り入れた。 この条項の実現において、EUは防止と応答の両方に関して危機を管理する上で組織化と効率的を目指す。 2011年に提示される欧州委員会と高官代表による分野横断的な提案に基づき、EUの集合的な作業部会はこの連帯条項を実施に移すことになろう。
行動2: 脅威とリスク調査へのすべての危険を捉える取組み
2010年末までには、欧州委員会は加盟国とともに、①災害管理のためのリスク調査やマッピングガイドラインの作成、②原則として人災、自然災害という多様なリスクをカバーする取組みを作り上げる。 2011年末までには、加盟国はリスク分析を含むリスク管理への国家的アプローチを開発するべきである。このベースに基づき、欧州委員会は2012年末までにEUが将来直面する(筆者注38)であろう主要な自然・人工的なリスクの分野横断的な概観を準備する予定である。さらに、2011年に計画されている委員会主導によるEUリスク管理の協調の補強ならびに公衆衛生における既存の制度やメカニズムの強化が求められよう。
脅威のレベルのおいて、欧州委員会は脅威レベルの各種定義を相互の理解を改善し、また変化に伴うこれらのレベルの交換についての対話方法の改善に努力を支援するつもりである。 2012年末までには加盟国はテロやその他の悪意を持った脅威のときにそれら自身の脅威の評価を起こすよう要請される。 2013年からは、欧州委員会は「欧州テロ対策調整役(EU Counter-Terrorism Coordinator)」と連携して国家レベルの評価に基づく定期的な見直しを行う予定である。
EUは、2014年までに政策決定にあたりリスク管理政策および脅威とリスクアセスメント政策を確立するべきである。
行動3: 異なる状況認識センターとのリンクを構築する。
EUの域外の危機への迅速な効果的かつ協調した対応には、EU加盟国やEU機関の運用政策部署において分析されたすべての関連情報、分析・調査されたデータを検索できることかどうかに依存する。完全にネットワークでつながれた安全な施設、正しい設備および適切に訓練されたスタッフと共にEUは危機的状況における一般的に共有された評価に基づく統合的取組みが行える。
既存の能力と専門的技術に基づいて、欧州委員会は2012年までに健康、市民の保護、原子力のリスクモニタリングおよびテロのための部門特有の早期警戒と危機時の協力34の間のリンクを補強し、またEU主導による運用プログラムを利用する予定である。 これらの調整は、「現状分析センター(Situation Centre:SitCen)」(筆者注39)およびを含むEU機関と欧州対外行動庁(EEAS)(筆者注40)とのリンクを改善するのを助け、必要なときはより良い情報共有や共同のEUの脅威およびリスクアセスメント報告を可能にするであろう。
機密情報を保護するために論理的な一般的な枠組みを必要とするEU機関や団体の間の有効な調整を行う。 したがって、欧州委員会は2011年中にこれを記述するという提案を申し出る予定である。
行動4: 各種災害に取り組むために「欧州緊急時対応収容力(European Emergency Response Capacity)」を開発する。
E UはEUの内外の災害に対処することが出来なくてはならない。最近時に世界で発生している出来事から学んだことは、災害へのEUの対応の迅速な展開の行動の適切さ、運用面や政治上の調整および目に見えることに関して更なる改良の余地が外部的と同様内部的にもあることを示す。
最近欧州委員会が採択した「災害対応戦略(European Emergency Response Capacity)」(筆者注41)に沿って、EUはあらかじめ遂行された加盟国のEUの運用策としていつでも呼び出せる資産とあらかじめ同意された事業継続計画に基づく「欧州緊急対応収容能力」を設立するべきである。 効率性と費用対効果は、合同のために共有された事業計画(logistics)および輸送資産を共同融資に関するより簡単でより強い調整を向上させるべきである。 立法化に関する立案は、2011年に主要な提案を実行するため用意されるであろう。
3. 戦略を実行する。
EUの域内安全化行動戦略(Internal Security Strategy in Action)の現実化は、EU公的機関(institution)、加盟国およびEU専門機関(agency)の共同責任である。これは明確な役割と責任で戦略を実行するための合意された過程を必要とする。このためには欧州連合理事会や委員会と共に、欧州対外行動庁()との緊密な連携により、明確な役割や責任を伴った戦略目標に合致すべく駆動的進歩が求められる。 特に、欧州委員会は運用面の協力が適切に促進・強化され、また加盟国の所管官庁の行動の協同化が容易になることを保証するため、「域内セキュリティ運用共同化にかかる常設委員会(Standing Committee on Operational Cooperation on Internal Security(COSI)」(筆者注42)の活動を支援する。
実現(Applecation)
目標の実行の優先順位は国家レベルではEU専門機関の業務計画と欧州委員会の作業計画の両者に反映される。 欧州委員会は、EUの域内セキュリティ関連資金計画の下でセキュリティの研究、産業政策を含むセキュリティ関連の活動が、戦略目標において一貫性を持っていることを保証する。セキュリティの研究は、「複数年次」研究開発フレームワークプログラムにより資金を供給され続けるであろう。 欧州委員会は成功実現を確実にするため内部のワーキンググループを設立するであろう。 欧州域外行動庁が、より広くEUのセキュリティ戦略と共に一貫性があることを保証し、域内および域外の政策の間の相乗作用を利用するために参加するよう誘われるであろうリスクと脅威の評価を含む。これらと同一目的のために、COSIと欧州安全保障委員会(Political Security Committee)は、共に働き定期的に会合すべきである。
2011年から2013年の間に必要となるEUの基金は、現在の「複数年次」の財政的枠組の天井の中で、利用可能となるであろう。 2013年以降の期間では、域内の安全化基金(internal security fund)はその期間、作られているというすべての提案に関する委員会全体の討論の文脈で調べられるであろう。 その討論の一部として、欧州委員会はInternal Security Fundをセットアップすることに関する実現の可能性を考えるであろう。
計画のモニタリングと評価方法(Monitoring and evaluation)
欧州委員会は、欧州連合理事会とともに「域内安全化戦略行動計画(Internal Security Strategy in Action)」の進捗状況をモニタリングする。加盟国とEU専門機関の寄与と既存の報告メカニズムをできるだけ使用する方針に基づいて委員会は戦略に関し欧州議会および理事会に年次報告を作成する。 この年次報告では、EUでの行動および加盟国の対応のレベルが有効であるかまた委員会の勧告内容が的確かどうかを評価し、それぞれの戦略目標のための主な開発状況のハイライトを記す。 また、年次報告は域内の安全化の状況について説明する付属資料を含む。 それは、関連政府機関からの寄与でサポートされ欧州委員会によって作成される予定である。同報告は、毎年域内安全化に関する欧州議会と理事会での討議用情報を提供することになる。
付属資料:目標と行動の概要一覧
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(筆者注1) 財務省、法務省および警察庁の3省庁が共同でAPI(事前旅客情報)システム
(Advance Passenger Information System)を2005年1月4日から導入済である。
(筆者注2) セシリア・マルムストロム氏(Cecilia Malmstrom)については筆者のブログでもしばしば紹介してきた。最近では2010年7月15日「欧州議会がSWIFTを介したテロ資金追跡プログラムにかかる暫定合意の改定協定を承認 」で取上げている。なお、欧州の多くのメディアが取り上げているマルムストロム氏の個人ブログを読みたいと考え、ブログそのものは見つけたが「スェーデン語」であり、googleの翻訳機能を使って仮訳で読んでみた。
(筆者注3) 「外交文書」とは正確に言うと「外交公電(diplomatic cables)」を指す。
(筆者注4)本ブログでしばしば登場するドイツ連邦個人情報・情報自由化委員(BfDI)のペーター・シャール氏(Peter Schaar)は“Wkikileaks ”を例に取上げ、膨大な個人情報が野放図に収集される点に注目し、人権擁護やセキュリティの視点から極めて批判的なスタンスを取っている。この点は他のEU加盟国の保護委員も同様の見方をしていると考えて間違いなかろう。シャール氏が2009年7月13日に自身のブログでまとめた意見を公表している。標題は「膨大な個人データが自身を食い物にする危険性(Die Datenkraken fressen sich selbst)」である。
(筆者注5) EU は、米国から「航空・運輸保安法」に基づく旅客名記録(Passenger Name Record:PNR) の提供を要請されているが、PNR はクレジットカード情報や機内食の選択などの情報も含んでおり、プライバシー保護の観点から懸念が寄せられた。欧州委員会はこの情報提供がEU の「データ保護指令」に違反するとして米国とデータ保護措置に関する交渉を要求し、2004年5月に米国との間で合意が成立したが、欧州議会はこの合意に反対し、欧州裁判所に合意の無効について提訴した。(100頁以下)。
2004年10月30日、EUのルクセンブ ルグにある欧州司法裁判所(European Court of Justice)は2004年10月30日に、EUと米国の間で航空乗客の情報を交換する「EU-USA PNR(passenger name record)」を拒絶する判決を下したと報告した。判決文はフランス語のPDFでURL(http://www.statewatch.org/news/2004/oct/ecj-pnr-orders.pdf)にある。また、Statewatchが公開しているEUとPNRの流れはURL(http://www.statewatch.org/pnrobservatory.htm)で知ることができる。
(筆者注6)特にテロと越境犯罪と戦うための越境的な共同活動の強化に関する「EU運営条約(TFEU)」第88条(2)(b)および2008年6月理事会決定(Council Decision2008/615/JHA)基づく。
(筆者注7)「組織化かつ重大な国際犯罪についてのEU政策立案サイクルの創設と実現に関する欧州連合理事会結語文書(Conclusions15358/10)」参照。
(筆者注8)「欧州逮捕令状(European Arrest Warrant)」は、全加盟国が2003年12月末までに批准することに合意し、2004年1月1日から全面施行された。今回のWikileaksの代表アサンジ氏逮捕もこのロンドン警視庁に対するスェーデン検察当局からの同令状により行われたものである。
(筆者注9) 「マネーローンダリング、手段の発見、追跡、凍結、押収および没収ならびに犯罪収益に関するEU枠組み決定(2001/500/JHA)(2001年6 月26日)。なお、決定の原本参照。
(筆者注10)「第三者押収」には捜査を受けたり有罪となった人から第三者に移送された資産の押収を含む。
(筆者注11)「拡張された資産押収権限」とは、犯罪容疑にかかる資産と特定の犯罪行為の間に関係を証明する必要が全くないように犯罪捜査手続の範囲を直接超えて資産を押収する権限をいう。
(筆者注12) 刑事裁判において所有者の前科にかかわらず非有罪手続は刑事裁判所で資産の凍結および押収を許容する。
(筆者注13) 欧州連合理事会決定(Decision2007/845/JHA)は、各加盟国が自国領土内に少なくとも1つの犯罪資産回復局を設置することを必要と定める。同決定の正式名は”Council Decision 2007/845/JHA of 6 December 2007 concerning cooperation between Asset Recovery Offices of the Member States in the field of tracing and identification of proceeds from, or other property related to, crime”である。
(筆者注14)最新調査結果については、欧州警察機構の「2010年テロ状況および傾向に関する調査報告(2010 Terrorism Situation and Trend (TE-SAT 2010) Report)」を参照。
(筆者注15)「ムンバイテロ攻撃」は、2008年11月26日夜から11月29日朝にかけて、インドのムンバイで外国人向けのホテルや鉄道駅など複数の場所が、イスラム過激派と見られる勢力に銃撃、爆破され多数の人質がとられまた殺害されたテロ事件である。(Wikipediaから引用)
(筆者注16)2005年11月30日に欧州理事会で採択された「EUのテロ対策戦略(Doc.14469/4/05)」は、「阻止(prevent)」、「保護(protect)」、「追跡(persue)」、「対応(respond)」の4つの取組みを設定した。なお、さらに詳細は「EU テロ対策政策:主要な成果および今後の挑戦課題(The EU Counter-Terrorism Policy: main achievements and future challenges' - COM(2010) 386)」を参照。
(筆者注16-2)EUのテロ対策戦略の専用サイトがあり、最近時の具体的取組みをフォローするうえで参照すべきである。また、EUの行政、立法機関である「欧州連合理事会」、「欧州委員会」、「欧州議会」はそれぞれテロ対策専門サイトを用意している。
その内容を比較すると基本的な項目は共通するものの、個別テーマの内容となると理事会や委員会が最新動向をフォローしている点は言わずもがなである。
(訳者注17) EUの重要インフラの定義指令(COUNCIL DIRECTIVE 2008/114/EC of 8 December 2008 on the identification and designation of European critical infrastructures and the assessment of the need to improve their protection)は、テロの脅威によりその範囲は広がっている。
(訳者注18) EUにおける急進主義やシンパ勧誘と戦う戦略(the EU strategy for combating radicalisation and recruitment to terrorism (CS/2008/15175) )の一部として、欧州委員会はその調査を支援しまた加盟国における急進主義や勧誘活動の研究のため 「欧州急進主義専門家ネットワーク(the European Network of Experts on Radicalisation)」:英国ロンドンに本部(the change insitute)」を設置した。例えば地域社会社会の政策、対話や刑務所内での急進派対策等加盟国主導型のプロジェクトであり、同プロジェクトは約5百万ユーロ(約5億5千万円)をテロ被害者の協力化ネットワークに提供している。
(筆者注19) “GMES”は”Global Monitoring for Environment and Security:GMES”12/11①をいう。
(筆者注20) 欧州理事会の「2004年3月25日テロと戦うための宣言(Declarration on Combating Terrorism)」参照。
(筆者注21) 2010年8月26日、欧州委員会から欧州議会や欧州連合理事会等への情報伝達「デジタル化一元化によるインターネットの高速化や相互運用性による経済・社会的なメリット」COM(2010) 245 参照。
(筆者注22) 欧州委員会は、2011年に「サイバー犯罪センター」設置のための実行可能性調査を完了する予定である。
(筆者注23) 欧州警察大学(European Police College:CEPOL)は、2000年12月、欧州連合理事会決定(OJ 2000, No. L 336, p. 1)に基づき設置されている。この組織は、国内警察訓練機関の協力を最適化し、警察幹部への教育を向上させることにある。その後、2005年9月に法人格化、特権や免除、設置国および設置目的等を全面的に見直し同決議を廃止のうえ、新たな理事会決定(OJ2005,No.L256/63)をもって「新CEPOL」を設置している。
(筆者注24) 「EU運営条約(TFEU)」第80条。”The policies of the Union set out in this Chapter and their implementation shall be governed by the principle of solidarity and fair sharing of responsibility, including its financial implications, between the Member States. Whenever necessary, the Union acts adopted pursuant to this Chapter shall contain appropriate measures to give effect to this principle.”
(筆者注25) 米国TSAの「登録旅行者プログラム(Registered Traveler Program)」とは、事前に生体情報(指紋又は虹彩) 等を登録した米国市民の旅客検査を簡素化する「登録旅行者」プログラムをいう。この実証パイロット実験は、2004年7月から2005年の2年間行われ、さらに2008年7月まで更新された。なお、米国国立公文書館記録管理局(National Archives and Records Administration)に保管された記録はすべて無効化された。
(筆者注26) 欧州委員会情報伝達(Commission communication)「海上監視体制の統合に向けてーEUの海事領域のセキュリティに関する共通環境情報:COM(2009)538」 参照。なお「海事領域のセキュリティ対策」の意義については米国DHSの解説参照。
(筆者注27) EU税関規則制定に関する欧州連合理事会規則(Council Regulation(EC) 2913/92)を改正する同理事会規則(Regulation(EEC) 648/2005)参照。
(筆者注28) 欧州委員会の欧州領域におけるEUROSURシステム(Examining the creation of a European Border Surveillance System :EUROSUR)の開発および共通的情報環境(CISE)の開発にかかる提案は、COM(2008)68 2008.2.13.)とCOM(2009)538 (2009.10.19)でそれぞれ提出された。 CISEを設立するための6つの段階的計画表は最近、COM(2010)584 で採択された。
(筆者注29) FRONTEX(欧州欧州域外諸国間境界協力管理機関)は、2004年10月のEU規則により設置された。なお、FRONTEXとEUROSURに関する措置、特に共同の国境警備活動への加盟国の参加強化については、2008年中に前進する可能性がある。これに合わせて、国境監視を強化する準備も進められている。(駐日欧州連合代表部「21世紀の統合された欧州国境管理制度への包括的展望(2008/02/13)より一部引用。
(筆者注30) EU海事麻薬分析および運用センター(Maritime Analysis and Operations Centre – Narcotics:MAOC-N)は、7カ国(スペイン、フランス、アイルランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、英国)からなる政府間の麻薬密輸入に取組む作業部会をいう。
(筆者注31)反麻薬仲介対策共同センター(Centre de Coordination pour la Lutte Anti Drogue en Méditerranée:CeCLAD-M)はフランスのトゥーロン港(Touron)に本拠を置く。西地中海沿岸国の内務大臣による政府間会議(CIMO10か国)においてはオープン参加ができる。
(筆者注32) このプロジェクトは地中海、大西洋および西ヨーロッパ海の監視の効率を最適化を目指す”BlueMassMed”(筆者注33)や”Marsuno”(筆者注34)などの他の統合海事監視プロジェクトと補完しあうことになろう。
(筆者注33) ”BlueMassMed”は、フランス、ギリシャ、イタリア、マルタ、ポルトガルおよびスペインの6カ国からなる地中海および大西洋沿岸における海事監視統合パイロット計画である。
(筆者注34)”Marsuno”は、EU海域における共通的情報共有を目的として欧州委員会の政策過程の支援による創設されたパイロット計画で、10カ国24機関からなる。指導役はスェーデンの沿岸警備隊である。
(筆者注35) 欧州委員会の「自由、セキュリティおよび司法分野に関する情報管理部門の概要に関する議会等への情報伝達」-COM(2010)385
(筆者注36) ”EASO”は、2009年2月欧州委員会が設置規則案を欧州議会に提案し、2010年前半に議会が承認し2010年月29日にEU規則(439/2010)が公布された。EASOの任務は次の3つである。①出生国の情報交換の促進、加盟国における翻訳や通訳の支援、認知された難民の再配置に関し難民管理官の教育や支援を行う。②加盟国における特に早期警戒システムの設置についての圧力の下で適宜の受入れ施設の管理や調整支援のための専門家チームと協力する。③最も良い実践手段の収集や強制の実施にあたり介入し、難民に関する年次報告やEUにおける難民保護手段のためのガイドラインや運用マニュアル等技術文書の採用や作成する。
(筆者注37) 「EU運営条約(TFEU)」第222条(solidarity clause)
(筆者注38) 2009年11月の「EU域内における災害の予防の枠組みに関する欧州連合理事会結語文書」参照。
(筆者注39)「現状分析センター(Joint Situation Centre:SitCen)」は、テロ対策強化を要する域外第三国に対するEU の優先的取組機関であり、EU加盟国の諜報・治安機関の要員から成る。その一方でその自体は明らかでなくEUの人権擁護団体である”StateWatch”の報告「Secret Truth-The EU Joint Situation Centre-」読んでも理解できない点も多い。
(筆者注40) 2010年7月20日、欧州連合理事会は「欧州対外行動庁(EEAS)」の設立および機能に関する決定を採択した。この点につき駐日欧州連合部がキャサリン・アシュトン欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表によるプレスリリース内容(1枚もの)を仮訳しているが、EEASの内容がほとんど理解できない。ここでは、決定内容の原文にもとづき、基本的な役割や機能に関する部分を抜粋して仮訳した。
(筆者注41)「より強いヨーロッパの災害応答に向けてー市民の保護と人道援助の役割」-2010.10.26欧州委員会の情報伝達(Towards a stronger European disaster response: the role of civil protection and humanitarian assistance ) COM(2010) 600
(筆者注42) 「EU運営条約(TFEU)」第71条。 また、「域内の安全に関する運用上の協力にかかる常設委員会」の設置については、欧州連合理事会決定(Council Decision2010/131/EU)を参照。
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