2013年9月17日火曜日

フェイスブックが顔認証技術の優先採用やデータ使用ポリシー変更をめぐるプライバシー問題(その2完)












(1)米国のカリフォルニア州北部地区サンノゼ連邦地裁のFacebook に対する和解決定(筆者注7)のロイター記事の仮訳
 裁判官は、8月26日にFacebookが行っている取引は子供たちのプライバシーを保護するのにはるかに及ばないとする反対にもかかわらず、同社が未成年者に対するターゲット広告を行ったとする集団訴訟(Fraley, et al. v. Facebook, Inc., et al., Case No. CV-11-01726 RS)につき、Facebookに対し、2,000万ドル(約19億8,000万円)の和解につき、最終的な承認を与えた。

 5人の原告は2011年にFacebookに対して集団訴訟を起こした。同裁判において、ソーシャル・ネットワーキングの巨人が2011年1月から提供を開始したSNS版口コミ広告である「Sponsored Story」プログラムにおいて、ユーザーのページにオプト・アウト権を認めることなく友人と特定の広告主が共同して断定的「いいね」の評価広告を行う「Sponsored Stories」プログラムを行ったと主張した。

(筆者追加注)Sponsored Stories program:
2011年1月25日Facebookは、「いいね!」ボタンのクリックやFacebook Placesでの「チェックイン」などのユーザーの行動を広告に変える新しいサービス「Sponsored Stories」を発表した。
 Sponsored Storiesでは、広告主はユーザーのFacebookページの右側に、ユーザーの友人の特定の行動――広告主のファンページの「いいね!」ボタンをクリックする、など――を表示することができる。
 例えばStarbucksが広告主の場合、友達がStarbucksについて「いいね!」ボタンをクリックしたり、位置情報サービスPlacesを使ってStarbucksの店舗でチェックインすると、Facebookページの右側のSponsored Storiesコーナーに「○○さんがStarbucksについて『いいね!』と言っています」などのメッセージが表示される。

 企業の広告が直接表示されるわけではなく、ユーザーは友達が広告主やその商品について「いいね!」と言ったり、広告主の店を訪問しているのを目にするため、口コミ的な宣伝方法になるという。(2011年1月6日ITメディアニュース記事から引用)。

 本裁判では、ユーザーへの広告内容を金銭化するために、プライバシーへの懸念とFacebookの運用の間で緊張関係を際立たせた。
Facebookは、和解条件の下で集団訴訟のメンバーに補償するために2,000万ドル(約19億8,000万円)を支払うとともに、ユーザーに彼らの内容がどのように共有されるかに関するより多くの制御をするプログラム内容の変更を加える( 原告弁護士が最高1億4,500万ドルの価値を持つと推定している ) という約束を行った。
Facebookは、2011年1月から2012年8月の間にSponsored Storiesのためにほぼ2億3,400万ドル(約231億6,600万円)を請求したと裁判所は記録している。

 また、同裁判において子供の権利擁護団体は、未成年者が彼らの個人情報の内容を広告主と共有してはならないと主張した。
 しかし、8月26日の裁判所の和解命令において、サンノゼ連邦地裁のリチャード・シーボーグ(Richard Seeborg)判事は、「今回の和解は反対者の何人かが好むかもしれないすべての特徴を取り入れているというわけではないが、重要な価値を持つ」と書いた。
 Facebook、原告または反対者の代表は、この和解命令につきにただちにコメントは行わなかった。

5.2012年8月10日の米国連邦取引委員会(FTC)がFacebookに対し、プライバシー設定を超える個人情報の共有に対する消費者の事前同意等具体的改善内容に関する最終和解(同意命令) 
 その最終和解(同意命令)についてFTCのリリース文を仮訳するとともに、関係文書のURLにリンクさせる。
 
*「FTCはFacebookとのプライバシー保護強化に関する最終和解案を承認」
 Facebookは定着したプライバシー設定を超えてそれらのユーザー情報を共有する前に、ユーザーの同意を得なければならないこととなった。

 FTCは、このほどFacebookにかかるコメント期間に続いて、Facebookとの間で、ユーザーによるFacebookが自分達の情報を私的に保持し、次にそれを共有、公表されるのを繰り返して許容している状態を通じ、Facebookは消費者をだましているという告発を受け入れるべきと指摘する告訴についての最終的な和解案を承認した。

 本和解は、未来において、(1)ユーザーに対しプライバシー設定を超えて彼らの個人情報を共有する前に人目を引く通知と彼らの明示の承諾を得ること、(2)ユーザーの個人情報を保護するために包括的なプライバシー・プログラムを維持し、かつ(3)今後20年間にわたり独立した第三者機関による2年に一度のプライバシー監査を得ること、を含むことを各確実にするための数ステップで取ることことをFacebookに求めるものである。

委員会投票では、ジェイ.トーマス・ロッシュ(J. Thomas Rosch)委員が最終案に反対し、またモーリーンK.オーハウゼン(Maureen K. Ohlhausen )委員が不参加であったが、3-1-1で委員会メンバーの最終命令とパブリック・コメントを出した人々への声明文書とともに承認された。

また、FTCは委員長のジョン・D・リーボビッツ(Jon D. Leibowitz )、イーディス・ラミレス( Edith Ramirez )およびジュリー・ブリル(Julie Brill)が書いた見解声明文を公表した。

 この委員会声明は、スタッフの広範な調査に基づいて、本解決が公益にかなうと信じる強い理由があり、かつ本命令の各条項がFacebookは広範囲にわたる詐欺的行為に責任があることを明らかにする点を確言した。
 ロッシュ委員は、そに独立した声明文に詳しく説明されているように、Facebookの明確な責任否定表明が「公衆のため」であったと「信じる理由」を提供したかどうかを疑って、明確にFacebookでなされたすべての表現をカバーしていないかもしれないという懸念を述べ、同委員は最終的な同意決定の承認に反対した。 ( 2011年11月29日のFTCプレスリリースを参照)


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(筆者注7)常にFacebookの訴訟や裁判所文書などで登場するEdward Palmieri氏の写真はインターネット上では皆無である。ユーザーの写真はこれだけ氾濫している一方で、皮肉なことである。

(筆者注8)クラスアクションの原告が立ち上げた組織(fraleyfacebooksettlement.com)は、クラスアクションの概要、facebookとの間の和解内容について,裁判所の公文書、Q&A等を含め詳しく解説している。


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