最近、わが国でも話題となったコンビニ店主やアルバイト店員が万引き犯を殺傷したり、逆に店員が犯人に殺されてしまうなどの事件が多発している。これらの問題はブログなどでも紹介され多くのコメントを集めているようである。
一方、米国でもこのような万引き犯をめぐる経営者の怒りは収まらないのか、逃げる犯人を素手で追いかけたり、防犯ビデオの記録を犯罪直後にYouTubeに載せてしまい警察から警告を受けた事例がアリゾナ州マリコパ郡のメサ(メサ)であった。
今回は、本事件の概要を紹介するとともに、この事件をアーストラリアのプライバシー保護団体がどのように見ているのかについて簡単に解説する。
なお、筆者が参加しているオーストラリアのプライバシー保護に関するディスカッション・グループ(EFA)はこのような米国など海外のローカル記事情報を網羅している。一度代表幹事に情報収集のノウハウについて聞いてみたいものである。
1.事件の経緯
今年10月末の週末に2人の万引き泥棒が約2,000ドルの価値の1組の腕時計を盗んで逃走したが、彼らは盗んだもの以上のものを得た。すなわち、インターネットの動画サイトYouTubeのスターとなったのである。
被害者となった「Big Sticks」の経営者であるボブ・ゲルタン(Bob Guertin)は、直ちに犯行現場の防犯カメラの映像をYouTubeに登録するとともに司法機関に犯人を引き渡すことに協力した人には1,000ドルの懸賞金を払うことを希望すると述べたのである。ゲルタン氏は「自分は犯人を有名にしたかった。彼らはひとかけらの良心もなく、犯人の一番の友人が明日1,000ドルで攻撃する(捜査情報の提供)ことになるかもしれない」と述べている。
しかし、ゲルタン氏の登録画面がほどほどの関心を呼んでいる一方で、地元のメディアはゲルタン氏の策略をかぎつけただけで、メサ警察の有効な本件に関する捜査には結びつかなかったということになった。
ゲルタン氏は、このような手段をとることがしばしば警察の支援を頼みとする事業主の中で流行と確信しており、また比較的小額の犯罪についてのメディアの関心を引くと考えている。
泥棒の1人が犯行日の翌日に同店に戻ってきて、腕時計を陳列ケースから取り出すほどの自信のある態度をとったことも、ゲルタン氏の怒りを増す結果となった。
これらの犯行現場のビデオは、YouTubeのゲルタン氏のクリップで閲覧が今でも可能である。彼自身、このような手段が店内や地元に配るホームメイドの容疑者のチラシよりも有効であると考えたのである。彼は、このような手段を繰り返すこともないし、さらに他の被害者が出ないことを願うとしている。
一方、地元メサ警察のスポークスマンは、このような犯罪防止について経営者の怒りは理解できるが、実際ゲルタン氏が泥棒が逃げ去る前に容疑者が乗っていたバンを追いかけ、ナンバープレートまで確認した行為は仮に犯人が武装していたならば極めて危険な行為であるとコメントしている。万引きや強盗に入られた時は、あくまで冷静に対応し直ちに警察を呼ぶ等安全な対応を取って欲しいと指摘している。
2.オーストラリアの人権保護グループのコメント
オーストラリアのプライバシー保護団体はこの問題について、オーストラリアでこのようなことが起きたらどうなるであろうか、というコメントがサイト上出ていた。そこ思わずクリックしたら“Australian Privacy Foundation ”(筆者注)
のサイトでオーストラリアの州や郡の個人情報保護法が列挙されていただけである。ここから先は自分で考えろという意味か。
筆者としてはこの記事を紹介したRoger Clerk氏にコメントを求めるつもりであるが、当該ビデオが見れなくなると困るのでとりあえず掲載することとした。
(筆者注) “Australian Privacy Foundation”は、オーストラリアの情報化社会の人権保護を支援する2団体の1つである。もう1つは“Electronic Frontiers Australia Inc,”(EFA)であるが、筆者が理解する限りこの2団体の人脈はかなり共通しているように思える。すなわちEFAのデスカッション・グループ・メンバーに送られてくる各種のデータの発信者は、前者の理事会のメンバーであることが極めて多い。
なお、EFAについてこの機会に簡単に紹介しておく。
オンラインの自由と権利について全豪のインターネット・ユーザーを代表するNPO団体であり、1994年に設立され同年5月に成立した「1994年改正法人化法(Associations Incorporation Act)」に基づき法人化している。政府や民間企業等から独立し、運営の資金源はオンラインにおける市民の自由を支持する個人・法人メンバーの会費と寄付からなっている。
主たる活動目的は、(1)インターネットといった通信手段を基盤とするユーザや運用者における市民としての自由の推進、オーストリアや言論の自由を規制するその他地域の法律や規則等の改正の支援、(2) 通信手段としてコンピュータの利用に伴う社会的、政治的および市民の自由に関する見問題に関する地域社会への啓蒙活動である。
〔参照URL〕
http://www.azcentral.com/business/articles/1106mr-cigarrobb1106.html
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