2009年12月24日木曜日

米国連邦財務省がウェルズ・ファーゴとシティグループから総額450億ドルを返済受領

12月23日、米国連邦財務省は「不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief Program:TARP)」にもとづき資金投入していたウェルズ・ファーゴとシティグループから合計450億ドルを受け取り、現在、不良資産救済プログラムによる金融機関からの返済総額は1640億ドルに上る旨のリリースが同省広報局から筆者の手元に届いた。

このニュースはわが国のメディアも夕刊で取り上げるであろうが、その内容の正確性を期すため筆者なりに仮訳してみた。

なお、12月24日午後13時現在で財務省の最新プレスリリース・サイトを見たが23日のリリースはまだ掲載されていない。


(仮訳) 米国連邦財務省は、このほどウェルズ・ファーゴとシティグループから「不良資産救済プログラム(Troubled Asset Relief Program:TARP)」に基づく資金投入に関し、合計450億ドル(約4兆500億円)の返済金を受領した。これにより、TARP投入資金の総額(約7千億ドル)中、1640億ドル(約14兆7600億円)の返還を得たことになる。

 今回、ウェルズ・ファーゴは「公的 資本注入計画(Capital Purchase Program:CPP)」の下で250億ドル(約2兆2500億円)を返済、またシティグループは「不良債権損失補てん計画(Targeted investment Program:TIP)」(筆者注1)の下で200億ドルを返済し、これら銀行からの返済総額が2010年の終わりまでに1750億ドルを超えると見込んでいる(これは10年間かかると見込んでいた銀行への総納税負担リスク(総額約7千億ドル)を4分の3に削減することになる)。

 さらに12月23日付けで、財務省、連邦準備制度理事会、連邦預金保険公社(FDIC)およびシティグループは、米国政府が元々3000億ドル(約27兆円)のシティグループ資産の損失を分担する合意を「解除」した。この合意は、2009年1月に成立し、当時、財務省により「特定不良債権損失補てん制度(Asset Guarantee Program:AGP)」の下で締結され、その補償期間は10年間と予想されていた。(筆者注2)


 連邦政府は、同合意の下で何らの損失も負担せず、かつ米国政府はそのような保証のための考慮されていたシティグループにより発行される普通株のための証明書と同様に保証された「トラスト型優先証券(trust preferred securities)」により、70億ドル中52億ドルを維持できた。この合意解除により、AGPは納税者へ利益を確保した。


 現在、財務省は金融システムを安定させる目的をもつ“TARP”について、配当、利息、早期返済、および新株引受権販売により利益を上げられると見込んでいる。 当初2009年財政年度において760億ドル(約6兆8400億円)の負担により 総額2450億ドル(約22兆500億円)に上ると予測していた銀行への資金投入は、現在、利益をもたらすと予測される。

 米国の 納税者は、“TARP”から既に160億ドル(約1兆4400億円)の利益を得た。また、財務省が行う数週間先の追加的な新株引受権販売により、その利益はかなり高いものになるであろう。

(筆者注1)「 特定不良債権損失補てん制度(Targeted investment Program:TIP)」とは、 「2008年緊急経済安定化法(H.R.1424)第102条に定めるもので不良資産の損失補てんのため「保険プログラム」の創設が認められている。財務省はシティグループ向けの支援策として2008年12月の段階では同条の適用を検討していた。

(筆者注2)シティグループは2009年1月15日に米国連邦財務省、連邦預金保険公社およびニューヨーク連邦準備銀行との損失分担プログラムにつき最終合意している。

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2009年12月7日月曜日

Googleのストリートビュー・サービスをめぐる海外Watchdog の対応とわが国の法的検討課題

スイス連邦情報保護および情報自由化委員(以下「情報保護委員」という)(Der Eidgenössische Datenschutz- und Öffentlichkeitsbeauftragte:EDÖB/ PFPDT)(筆者注1)Hanspeter Thür氏は、Googleおよびスイス・グーグルに対し2009年9月11日に行った画像等の非特定性(ぼかし)を確認したうえでの中止勧告に同社が適切に応じなかったこと等を理由に、連邦情報保護法(DSG)等に基づき11月13日、連邦行政裁判所(Bundesverwaltungsgericht)(筆者注2)に提訴した。

実はこのような各国のプライバー監視・監督機関による監視強化やGoogleとの条件交渉は、Googleのサービス提供国数の増加(米国や欧州ほかアジア等100都市以上)とともに欧州やカナダの保護委員等で見られるように拡がっている。(筆者注3)

これらの監視・監督機関の要求内容を整理すると、①撮影に当り該当市町村への事前通知義務、②映像のぼかし技術の徹底、③ぼかし修正前の原画像データの一定期間内の完全廃棄、④情報主体者の公開拒否手続の簡素化等である。
なお、Googleは、本提訴に関し11月13日付けのブログ“European Public Policy”で反論を載せている。本ブログと併せ参照されたい。

また、スイス(UBS)と米国の間には金融取引における個人情報保護をめぐる秘密保持義務と課税回避措置をめぐる民事裁判(“John Doe” summons)の和解や政府間合意問題(筆者注4) (筆者注5)やセーフ・ハーバー協定問題があるが、今回のGoogleの告訴とは関係なさそうである。

今回のブログ作成にあたり筆者自身“Street View Service”( 「Google マップ」サービスの一環である)で具体的にどのような内容が町並みや家並みとして見ることができるのか、その精度、非特定性や最新性等について実際に検証してみた。その結果、その潜在的とはいえプライバシー面やデータの精度から見た重大なリスクに気がついた。(筆者注6) 特に、筆者が懸念するのはカナダやギリシャに見られるとおりストリート・ビュー類似サービスが広がっていることである。各国とも法解釈や立法措置の検討が遅れた結果、近い将来に悔いを残すことがないよう慎重かつより掘り下げた専門的検討の重要性を改めて感じた次第である。

一方、わが国の法的規制等の議論はどうであろうか。本文で述べるとおり、国のレベルでの実質的議論は皆無であり、東京都の「情報公開・個人情報保護審議会」や「町田市議会」等の意見書がせいぜいである。対応が遅れている最大の理由は言うまでもなく、わが国では「プライバシー権」という極めて法概念が曖昧で定義になじまないすなわち行政処分や裁判等になじみにくい問題について独立性をもった“Watchdog”が存在しないことが最大の理由といえよう。
さらに言えば中立的かつ国民の考え方等につきメディア等にも強い影響力を持つ“Watchdog”的人権擁護団体や行政感覚を持った研究者がいないということであろう。

今回のブログは、限られた時間でまとめたので補足すべき点が多いと思うが、特に憲法等人権法関係者だけでなく海外から「物言わぬ日本人」と指摘されない、すなわち「問題の本質をとらえ正確に問題指摘と行動が行える日本人」といわれるよう日頃からきちんと勉強しておきたい。


1.スイス連邦情報保護委員のGoogle等に対する勧告および連邦行政裁判所への提訴
 スイス連邦情報保護委員会委員Hanspeter Thür氏は、2009年9月11日に米国Googleおよびスイス・グーグル(以下“Google”)に対し、同社が提供する「ストリートビュー・サービス」について個人のプライバシー保護の観点から各種保護手段をとるよう求めたが、Googleは大部分の項目において応じなかったため、委員は11月13日に連邦行政裁判所に提訴した。
 以下、リリースの内容および訴状の概要を紹介する。(筆者注7)

(1)委員のリリースの内容
 11月17日付の同委員サイトで告訴に至る経緯や問題の本質がわかりやすくかつ正確に解説(英文)されているが、ここではリリースに基づき紹介する(両者を併せ読んで欲しい)。
「2009年8月中旬にオンラインサービスを開始した「ストリートビュー・サービス」は多くの関係する個人の顔や車のナンバープレートにつき個人情報保護の観点から十分な特定不能措置とりわけ病院、刑務所や学校といった機微性の高い場所での撮影において配慮すべきであった。これらの理由から、本委員は9月11日、Googleに対し情報保護やプライバシー保護に努めるよう求める勧告書を発した。10月14日にGoogleから書面による回答があったが、その内容は当方からの要求の大部分を拒否するものであった。

 Googleが、サービス開始にあたり本委員に予め提出した情報は不完全な内容であった。例えば、Googleは主として都市部中心街を撮影すると発表していたが、インターネット上で公開された写真は多くの町や都市部の包括的なイメージ写真を掲載していた。 辺ぴな地区の写真は、顔の簡単なぼかしのみであり個人の特定を回避するには不十分であった。そこでは、主としてウェブサイトのズーム機能により同サービスのユーザーは画面上で個人の写真イメージを取り出し、拡大することを可能にする。

また、勧告書で問題視したとおりGoogleの撮影車上のカメラが撮影する高さ(2.75M)も問題が多い。それはフェンス、生垣や壁の上からの視界を提供する結果、ユーザーは普通の通行人として見る以上のものを見ることが出来る。 これは、囲い込んだ土地(庭や中庭)でもプライバシーが保証されないことを意味する。

 これらの理由から、本委員は本問題をさらに重要視するとともに連邦行政裁判所に提訴することを決定した。(訴状(Klageschrift)の全文はドイツ語のみで利用可能である)」

(2)訴状の概要(筆者注8)
・訴状の標題:スイス連邦情報保護法(1993年7月1日施行)第29条第4項(Art. 29 Abs. 4 DSG)(筆者注9)および連邦行政裁判所法(2007年1月1日施行)第35条b号(Art.35 b VGG)(筆者注10)の委任に基づく公法上の訴(Klage in öffentlich-rechtlichen Angelegenheiten (Art. 29 Abs. 4 DSG, i.V.m. Art. 35 lit. b. VGG)

・被告:米国グーグル社およびスイス・グーグル社
・原告:スイス連邦情報保護委員会 (EDÖB) 住所地:ベルン
・事件名: 2009年9月11日付け連邦情報保護委員の個人を撮影した写真およびナンバープレートのインターネットでの適正な扱いとその公開に関する勧告について

I. 訴えの内容( Begehren)
(法律の規定上の措置形式)
1.米国グーグル社および現地子会社である有限会社スイス・グーグルは、スイス国内でスイス連邦情報保護法第33条第2項 (筆者注11)に定める連邦行政裁判所による緊急的救済措置に関する暫定決定の対象となる禁止される写真撮影を行った。

2.Googleは、今後正式通知があるまでスイス国内での撮影行為は禁止すべきである。

(起訴事由の枠組み)( Im Rahmen der Klage)
1.Googleは、「グーグル・ストリート・ビュー・サービス」において完全に特定不可とした場合のみ顔やナンバープレートの写真を公開すると偽った。

2.Googleは、「グーグル・ストリート・ビュー・サービス」において女性の保護家(夫の暴力から逃れてきた妻を保護する家:Frauenhäusern )、刑務所(Gefängnissen)、老人ホーム(Altersheimen)、学校(Schulen)、社会福祉事務所(Sozialbehörden)、後見人局(Vormundschaftsbehörden)、裁判所(Gerichten)、病院(Spitälern)など機微性の高い場所での匿名性を保証すると偽った。

3. Googleは、「グーグル・ストリート・ビュー・サービス」において個人の私的管理エリア(生垣で囲われた中庭や庭等(umfriedete Höfe, Gärten usw)の撮影は行わないとし、すでに撮影済データについては、同サービスから削除すると偽った。

4.Googleは、「グーグル・ストリート・ビュー・サービス」において私道からの撮影につき同意がない場合は行わないと偽った。

5.Googleは、少なくとも撮影の1週間前に当該市町村にその旨を通知すべきである。

6.Googleは、ネット上への写真の登載につき1週間前に該当市町村に通知すべきである。

II.情況証拠(Sachverhalt )
1.2009年3月19日、被告であるGoogleは共同してスイス国内の道路において特殊装置車(筆者注12)による撮影を開始した。

 これらの撮影の目的は、ユーザーがGoogle マップ((http://maps.google.ch/maps?hl=de&tab=wl))により道路位置の確認およびインターネット上で360度の視界をもってバーチャルな道路歩行を体験できるようにすることである。

2.Googleのストリートビュー・サービスは数州(Ländern)で導入または導入が予定されており、またEUの「EU保護指令第29条専門調査委員会(die Artikel 29 Datenschutzgruppe der Europäischen Union)」(筆者注13)は2009年6月、その調査の取組みを開始している。

 また、Googleは十分な情報に基づく公開の承認および特定される個人情報につき適当な期間は削除が求められるべきである。

 Googleは、スイス国内において写真掲載の承認前に十分な情報が提供されるべきとする保護委員会の意見に反対した。すでに新サービスに関し意見が分かれている時点で写真を公開しようとしたため、2009年9月14日本委員は第1回目の削除要求書面を用意した。

3.2009年8月17および18日の夜、Googleはスイスでのストリートビュー・サービスのウェブページを立ち上げた。Googleのデータによると公開した写真は2千万枚以上であった。保護委員に対し不特定性が不十分な写真や私道、私有財産の写真に関する多くの苦情が寄せられた。

4. これら問題の解決を目指した保護委員とGoogleの数回の議論の結果、2009年9月4日付けの手紙で2009年9月2日の交渉の場でGoogleはぼかしの次期使用ソフトにおいて非特定性を図るという提案を行った。しかしながら、この提案の実現には組織化と計画が必要であるというものであった。
 さらにGoogleは今後スイス国内では新たな写真は撮影しないとした。

5.2009年9月11日に保護委員はGoogleに対する勧告を発したが、Googleは10月14日付けで拒否する旨およびストリート・ビューについては2009年末までのみ新しい写真は撮影しないという旨の回答書を送ってきた。

IV. 争点の要旨(Formelles)
 訴状内容については長くなるので項目のみ以下紹介する。それぞれ重要な意味があるので研究者はさらに読み込んで欲しい。特にDSGの第4条の諸原則はわが国の個人情報保護法の第17条や第18条の規定をさらに保護面で明確化した内容であり、EU保護指令(95/46/EC)第6条等にも準拠した内容である。
 わが国が今後あらたに「プライバシー保護法」を策定する際のメルクマールといえる内容と考える。

・個人情報の処理内容(Bearbeitung von Personendaten)

・連邦情報保護法の適用可能性(Anwendbarkeit des DSG)

・米国とスイス間の個人情報保護に関するセーフ・ハーバー協定の適用問題
(Anwendbarkeit des U.S. – Swiss Safe Harbor Framework und DSG)

・Zuständigkeit des EDÖB 連邦情報保護委員の裁判管轄権(Zuständigkeit des EDÖB)

V.法的考察(Erwägungen)
・DSG第4条第1項に基づく取扱いの合法的手段原則(その1)(Zum Rechtmässigkeitsprinzip gemäss Art. 4 Abs. 1 DSG (1))

・優先的課題:DSGの視点からみた米国Googleの個人情報の取扱いについての分析(Vorfrage: Untersuchung der Datenbearbeitung durch Google, Inc. in den USA im Lichte des DSG)

・DSG第13条第2項e号に基づく法律に定める非特定性の配慮(Rechtfertigungsgrund gemäss Art. 13 Abs. 2 lit. e DSG)

・個人の識別・特定不可性のレベル問題(Grad der Unkenntlichmachung)

・潜在的な個人プライバシーの侵害についての考察(Erwägungen zu einer möglichen Persönlichkeitsverletzung)

・連邦情報保護委員による事前の検査結果の要旨(Zusammenfassung der Vorprüfung)

・DSG第4条第1項に基づく取扱いの法的節度(合法的手段)原則(その2)( Verhältnismässigkeitsprinzip Art. 4 Abs. 2 DSG)

・DSG第4条第2項の個人情報処理にあたっての節度性原則(信義誠実や行き過ぎた行為の禁止原則)(Ihre Bearbeitung hat nach Treu und Glauben zu erfolgen und muss verhältnismässig sein.)

・DSG第4条第3項に基づく取扱目的の節度性(収集目的、状況から明確または法の規定内)原則(Personendaten dürfen nur zu dem Zweck bearbeitet werden, der bei der Beschaffung angegeben wurde, aus den Umständen ersichtlich oder gesetzlich vorgesehen ist.)

・DSG第4条第4項に基づく本人の要認識性原則(Erkennbarkeitsprinzip gemäss Art. 4 Abs. 4 DSG)

VI. Googleの見解(Zu den Anmerkungen von Google, Inc.)

VII. 結論(Fazit)

2.スイス以外の国々における“watchdog”によるGoogleの規制強化や住民等による撮影等の直接的反対運動

(1)カナダのプライバシー委員のGoogleのデータ保存期間に関する説明内容に対する意見書や連邦議会関係常任委員会での審議

A.カナダのプライバシー委員
 カナダの連邦個人情報保護法は、 「1985年プライバシー法(Privacy Act :Act(R.S., 1985, c. P-21)」、「2000年個人情報保護および電子文書法(Personal Information Protection and Electronic Documents Act:PIPEDA) (2000, c. 5) )」 の2法からなる。州の保護法との関係でやや複雑である。(筆者注14)
 2009年8月21日、カナダのプライバシー保護監視機関である「カナダ・プライバシー委員事務局(the Office of the Privacy Commissioner)」は、Googleのカナダ政策担当弁護士(policy counsel)(筆者注15)に対し次のような内容の意見書を再度送っている。
 「我々は8月5日にGoogleが提示した原画像の保存期間および原画像の破棄に関する提案内容につき、1年間の保管経過後に完全にぼかしを行い、その結果、再度原画像を見るという逆作業はありえないと理解した。
 全体として我々はGoogleがカナダの民間部門の保護法の責務を果たしている限りにおいて業務目的から見て一定期間の原画像データの保存は合理的であると考える。
 また、我々は原画像が適切かつ安全な手段により保護されるべきと述べてきた。連邦議会下院の「情報公開法改正、プライバシーおよび内閣等の政治倫理に関する常任委員会」(The House of Commons Standing Committee on Access to Information, Privacy and Ethics)」におけるGoogleの証言時の説明にあるとおり確実に保護するという発言を信頼する。
 さらに我々は、再度データ主体の撮影や公開に関する情報提供や同意が必要な点を強調する。すなわち、Googleはデータ主体に対し、「いつ」、「なぜ」写真が撮影され、また当該写真の削除方法に関する情報の提供義務があると考える。また、我々はGoogleが撮影対象とする地域に関して住民が敏感になるよう働きかけることになろう。
 最近の本委員への説明において、Googleはいくつかの点で原画像の保存期間の短縮について言及しているが、その点は歓迎するとともにその完全破棄を含め更なる改善を求めたい。」

B.連邦議会下院「情報公開法改正、プライバシーおよび内閣等の政治倫理に関する常任委員会」(筆者注16)の研究報告に見るGoogle問題
”Study: Privacy Implications of Camera Surveillance (Google, Canpages(筆者注17), etc.)” と報告されている。問題の政治的な機微性かどうかは不明であるが、Googleの証言内容も含めその内容は非公開である。今後の議論の展開によっては公開されるであろうし、筆者自身同委員会サイトの情報を直接入手する手段はあるので機会を見て分析したい。

 なお、同常任委員会の重要な研究テーマである「情報公開法(1980 Access to Information Act)」の改正問題やカナダの情報公開Watchdogである「情報公開委員事務局(the Office of the Information Commissioner of Canada)」(臨時委員Suzanne Legault氏)、さらには「利益衝突倫理委員(the Conflict of Interest and Ethics Commissioner)」(筆者注18)の取組みはわが国としても重要な研究テーマであるが今回は省略する。

C.「行政オンブズマン」事務局
 カナダでは連邦法に基づく単一機関ではなく、7つの地方州単位で州政府や公的機関の監視や地域住民からの苦情を受付け、調査や和解交渉を行う議会を支援する独立「行政オンブズマン」事務局が州など地区ごとの法律に基づき設置されている。例えば、ブリティッシュコロンビア州オンブズマン(Ombudsperson)では“Ombudsperson Act[RSBC 1996]”がその権限や活動の根拠法である。プライバシー委員はこれらの「行政オンブズマン」事務局との共同的調査活動も行う。

(2)ギリシャの例:
 2009年5月11日、ギリシャ個人情報保護委員会(Hellenic Data Protection Authority:HDPA) はGoogleおよびギリシャでの同サービスの関連会社である“kaupou.gr”に関し、許可条件文書を発した。
 同委員会はギリシャ憲法上独立性が保証された機関(筆者注19)で、 「1997年個人情報の取扱いに係る個人の保護に関する法律(Law 2472/1997)」および2002年のEU指令(個人情報の処理と電子通信部門におけるプライバシーの保護に関する欧州議会及び理事会(2002年7月12日)の指令(2002/58/EC)」に基づき2006年に改正された「1997年法律2472の改正および電気通信分野における個人情報保護とプライバシーに関する法律(3471/2006)」に基づく保護機関である。
 許可文書の内容について概要を記すが、EUの大国以上に具体的でかつ厳しい内容を含むものである。
「HDPAは、通知内容を検討し、「保護指令第29条専門調査委員会」の見方を考慮に入れた後に、特定のサービスが個人的なデータを保有や収集がギリシアの領土に合致した手段によって行われるように、処理の合法的を判断することが有効であると判断した。
 その結果、HDPAはGoogle等による追加的明確化要件の承認後まで合法性の決定権を留保し、それまでは写真の収集の開始は許可しないこととした。 特に追加的に要求する事項の内容は次のとおりである。:
①ギリシャ国内でのGoogleの代理権者の指名通知およびサービス提供エリアの明確化に関し、ギリシャ国内に設立した関連会社の役割の明確化を実行すること。
②サービスの特性および情報主体の権利に関する適切かつ十分な情報を提供すること。専用撮影車であることの表示のみでは情報主体に知らせる適切かつ十分な手段とはいえない。
③機微個人情報が漏洩されるかもしれない地域の写真を撮ることを避けるために、実施する具体的対策に関して報告すること。
④ぼかし処理前の原画像の保有期間の十分な正当性および保有目的や保管の必要性について、これらのデータの可能な受取人のカテゴリーを決定すること。
⑤定期的なセキュリティや情報保護監査を専門的監査会社により行うこと。

 Googleのギリシア内の関連会社であるKapou.Ltd.によって提供される同等のサービスに関して、当分の間、HDPAはテッサロニキ(Thessalonica)(世界遺産) 、アテネとトリカラ(Trikala)において、法律に従った義務的な通知を提出するとともに有効に個人情報を保護する対策を実施するため、通過する人々の確認できる顔、車のナンバー・プレートのぼかし処理など適切な処理を行い、同処理が完了するまではGoogleに要請したのと同様、一般公開は禁止する。」

(3)英国の例:
 2009年4月3日付けの英国のメディア(TimesOnline)は、バッキンガムシャー州の村でGoogleの撮影専用車が村人の人の鎖により撮影阻止が始まり、警察がその間に入ったため撮影車は村人に屈したと報道している。
 英国の例では撮影車が 警官に不審車扱いにされている写真が公開されている。
 ところで、英国のWatchdogである英国情報保護委員事務局(Information Commissioner’s Office:ICO)はどのような意見・対応を行っているのか。

 2009年3月30日および4月23日にICOが後述する英国の人権保護団体“Privacy International”の意見書に対する回答を行っている。
 4月23日の要旨は次のとおりであるが一般常識論に終始しており、後記ローファームの見解と同様、リスク・アセスメントの重要性やプライバシー権の基本が理解できていないように感じたのは筆者だけではなかろう。
「ICOは、人々のプライバシーを保護するためにこれらのイメージをぼかす重要性を強調した。 Googleは、現在行っているように、すばやく削除要求と苦情に応じなければならない。 ICOは、このことが実際に実践され続けているのを確実にするために緊密に監視する。しかしながら、Googleのストリートビューが画面に掲載されることが即保護法には違反しないと考える。テレビのニュースを見て欲しい。そうすれば、人々が通りでレポーターの前を通り過ぎているのを見るであろう。これらについて本人は同意していない。
 2008年7月に、ICOはストリートビューがどのように実行されるだろうかについて議論するためにGoogleに説明を求めた。 ICOは、主体者個人が不満に思う写真を報告するよう手続の重要性を強調して、Googleが人々のプライバシーへの不当な侵入を避けるために適切な安全装置を適所に置いていたことに満足した。

 ICOはGoogleのストリートビューに関して多くの苦情と調査を受けた。 これらは彼らの写真がストリートビューにあることが不幸と思う人々を含んでいる。 要するにICOとしては一般論ではなく、Googleが問題の多い写真の除去を適格に行っていない感じる個人によって提起された具体的問題には手を打つつもりである。」
 なお、英国の大手法律事務所のサイト“OUT-LAW news”で各国の監視機関の対応記事を読んだ。感情論はいけないという指摘については、果たして法的な意味で曖昧のままでよいのか、そこでの指摘には筆者自身大いに疑問が残る。

(4)ドイツの例
 “Spiegel Online”の記事やドイツ連邦情報保護・情報自由化委員(Bfdi) (ペーター・シャール:Peter Schaar )氏や州(land) 情報保護・情報自由化委員 (筆者注20)のサイトでドイツのWatchdogの取組み状況を確認したが、スイスの連邦情報保護委員のような裁判所への提訴といった明確な法的規制活動は行っていないようである(連邦情報保護法(BDSG)により連邦保護委員の権限自体が連邦機関の監督であることが最大の理由であろう。後述するハンブルグ州の保護委員のコメントでも同様である)。

 一方、ハンブルグ州の情報保護委員ヨハネス・カスパー氏(Johannes Caspar)(筆者注21)は、Googleとの交渉によりおそらく世界で初めてのケースとなるであろう、顔、財産や車のナンバーの削除要求に応じる際、ぼかし修正前の「原画像データ(Rohdaten)」を削除することなどにつき合意した。(筆者注22)
この合意について、ハンブルグ州の保護委員サイトでは次のとおり解説するとともに、同委員はデータ主体の自己決定権や情報開示請求権等につきドイツにおける新たな立法措置等に言及する発言も行っており、併せて紹介する。

「2009年6月17日、Googleはストリートビュー・サービスに係るハンブルグ保護委員の要求を受け入れることに合意した。本日、同社がすでに保有する個人、財産および乗物に関する写真の「原画像データ」は永久に削除される。さらに、Googleは委員が指摘したデータ主体の削除権および市町村への書面による事前通知につき迅速に対応することとなった。

ヨハネス・カスパー保護委員は、今回の合意を歓迎して次のとおり語っている。
「Googleがタイミングよく以前からの論争問題に関し、原画像データの削除等我々が要求したすべての妥協案につき明確な発言を行ったことを歓迎する。我々は現時点で限定的効果しか期待できない法的手段は無視する。しかし、緊密なモニタリングを行い、時期を見て我々は適切かつタイミングを見て具体的取組み方につき検討することとなろう。Google本社のある米国の保護監督機関の反対の見解にもかかわらず、我々は適切にデータ処理が行われていないと強く信ずる。今後、Googleはサービスの中止や原画像データに関するぼかしの技術面や組織面の安全対策の記述に関する訴訟による反対手続等についての包括的文書を作成する旨保証している。

 ドイツ連邦保護委員は、Googleに対しどのような法的手段が可能かとりわけ法執行力のある手段が可能かと言うぎりぎりの要求は避けた。ストリートビュー・サービスは世界的なデジタル・ネットワーク社会にとって優れた方法であるとする議論は、ドイツ連邦情報保護法(BDSG)に基づく1世紀前のホコリをかぶった道具立てであり有効性に欠ける。

 将来的には自分の情報について自己決定権を保護するための効果的かつ法執行力をもつ立法措置が必要であり、そのような問題は情報保護機関が不適切な情報収集や手続について禁止命令が出せない全体として不十分な現在の法的状況に適用されるべきであり、本委員はこの立法議論にすすんで参加するつもりである。」

(5)フランスの例
 フランスの公的個人情報監視Watchdogである“CNIL(La Commission nationale de l’informatique et des libertés)” (略すときの呼び方は「クニル」である)はストリートビュー・サービス開始に対し、どのように対応しているか。
 2008年7月3日、CNILはフランスのストリートビュー・サービス開始の情報とその開始に当り顔やナンバープレートのぼかし措置や利用方法を特集したサイトを立上げ、プライバシーや個人情報保護法等から見た基本的問題点やぼかし処理に関し100%はないとの技術的課題を簡単に解説している。

 そこではフランスでのサービス開始のきっかけは「ツール・ド・フランス」参加者にコース上の「大きな曲がり角(grande boucle)」の効率的な確認情報を提供することであると説明している。
また、2009年8月3日には引続き個人からの苦情が届いていることや、最近パリ、リールやオンフルール(Honfleur)において三輪自転車による撮影が始められており、これらは車が入れない場所での撮影用に使用されているとの情報を提供している。その他、Google画面上での公開拒否手続等について説明している。
 なお、スイスのような法的保護措置の可能性についてCNILサイトでの情報はなかった。

(6)国際的な人権保護団体の意見書等
 英国“Privacy International”やオーストラリア“Australian Privacy Foundation(AFP)”といった保護団体における独自の取組み内容について簡単に説明しておく。なお、米国の代表的人権擁護団体である“EPIC”や“CDT”のサイトではストリートビュー・サービスの問題を正面からとりあげていない。いつもこのような問題にはまずとびつくのにどうしたのか。

A.Privacy International
 2009年3月23日付けで英国情報保護委員事務局(Information Commissioner’s Office:ICO)宛ストリートビュー・システムのぼかし技術の確実性に関する「苦情申立書」を提出している。Privacy InternationalとGoogleは2008年5月に顔やナンバープレートのぼかし技術に関する確認書簡の交換を行っており、その不実行についての説明が主たる内容である。特に英国の「2008年改訂CCTV Code of Practice(監視カメラ実施規範)」違反問題や身体的な不具合をもつ人々の人権保護等についても言及しており、わが国の検討において参考となろう。

B.Australian Privacy Foundation(AFP)
 2008年8月に“APF Policy Statement re Google StreetView”を再度公表している。 ストリートビュー・サービスは同月オーストラリアで開始されたが、撮影や公開されることによる各種リスクを踏まえ、通常行われるべき「リスク・アセスメント」をGoogleは的確に行っていないとする内容で、2008年5月に行った予備政策綱領(preliminary policy statement)を正式にまとめあげている。項目のみあげておく。
「サービス開始直後であり、Googleオーストラリアの努力にもかかわらず、いくつかの具体的重要な懸念が明らかとなった。
①The Difficulty of Finding Where to Report a Problem:特定性で問題のある箇所の指摘にかかるヘルプ画面の内容や手続きがわかりにくい。
②The Lack of a Complaints Channel:適切な苦情窓口の欠如
③The Lack of a Privacy Policy Statement(Googleのプライバシー・ステイトメントはあるがGoogle Mapについては存在しない)
④The Lack of Formal Undertakings by the Company:大企業としてのオーストラリア「競争取引および消費者保護法(TRADE PRACTICES ACT 1974)」第52条第59条)等的確な法運用と遵守姿勢に欠ける)」(筆者注23)

 なお、オーストラリアの「連邦競争・消費者保護委員会(Australian Competition & Consumer Commission:ACCC)」は同法に基づく公的Watchdogである。(筆者注24)

3.わが国でGoogleのストリート・ビューに適用できるプライバシー保護等に関する規制法問題
 
 筆者自身、実際“Google マップ”の「ストリート・ビュー」で自宅の写真を調べてみた。わが家は一応一戸建てであるが、自分で歩いて町並み散歩している感覚で写真が見れる。問題となっている特定情報のぼかしの程度を見てみた。カースペースにある車(当然、中古のおんぼろ車)のナンバー・プレートや表札の文字は判読不可である。しかし、車の専門家であれば車種や年型を判断することは容易であろうし、自治会の案内図(筆者注25)や市役所の公的地図と合わせて確認すれば個人の家の特定は可能である。
 いずれにしても、Googleが地図情報とりわけ市街地ではない住宅地を対象とした概観写真サービスの意図する本当の目的は何か。単なるのぞき行為とどこが異なるのか(単なるのぞきなら映像は犯人の脳やカメラのメモリーにしか残らないが、Googleは世界中の人が見ることができるし、特に悪意をもった人間が見た時の反応は誰でも予想できよう)。
 また、Googleは特に公道からの撮影で私有地に無断で入っての撮影ではない点を主張している。しかし、写真を見ると単に車内からの撮影だけでなく2.75メートルの位置から撮影している。実際はGoogle専用車の表示をつけた車で撮影を行っている。 
 これらの問題について、わが国ではいわゆるプライバシー法の専門家による分析を読んだ記憶がない。以下、筆者なりに問題点を整理する意味で具体的な疑問点をあげておく。なお“atwiki”でGoogleの行為の違法性を問うために法的観点から問題を整理しており読んだが、明らかに説明や分析が不足している。(筆者注26)

(1)軽犯罪法23条1条23号
 「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見る行為」があたる。Googleの写真で見ると昼間に撮影しているせいか、さすがに風呂場内が写っているものはなかろう。しかし、後述する牧野二郎弁護士は「同法にいうのぞき見については、単純に1回ののぞき行為を問題としており、機械を設置して記憶装置に記録するという行為形態を予定していないことは明らかであり、こうした営業的なあるいは反復して閲覧可能という光学的記録が違法性において格段の違いがあることはあきらかである。」と指摘する。(筆者注27)

(2) 刑法130条前段(住居不法侵入罪)
 無断で私有地に入れば住居不法侵入罪(正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入し、または要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しないこと)に該当する。しかし、公道やそれに準ずる道路から撮影しているGoogleには適用できないであろう。
 住居不法侵入について、Googleは撮影上注意を払っているようである。例えば、筆者の自宅の北側道路は公道とつながった敷地延長地であり、奥の家の写真を正確に撮るためには車を乗り入れるべきであったと思うが、実際は乗り入れていない。全体的に見て住宅地のメイン通りからの撮影で、私道や敷地延長地などには乗り入れていないようである。この結果、データの精度や対象の建物に偏りがある。
 さらに、Googleへの申入れに基づき削除は可能(筆者注28)であり、筆者の近隣でも4~5軒分が完全に抜けているエリアが複数ある(推測であるが、その理由の1つとして考えられるのは「政党ポスター」であり、後日削除したのか初めから撮影しなかったのかは不明である。いずれにしても、Googleはトラブルを回避したものと思う)。

(3)憲法上のプライバシー権侵害
 わが国では最高裁判決はあるものの「プライバシー権」の定義そのものが明確に確立されておらず、いまだに多くの解釈論が存在する。
この点について、弁護士の牧野二郎氏がまとまった形で整理しており、筆者も賛同する点が多いので一部引用・加筆する。
 同氏は多くの法律専門家も明確に説明していない「プライバシー権」と「個人情報保護権」とを峻別し、別々の法律により保護すべきであると主張している(わが国の個人情報保護法は後者の保護法であり、前者を包含するものでない点を明確化している)。
「すなわち「プライバシー」とは「内心の自由を含む場所的・空間的私的領域概念」であり、茫漠たる多数の権利を包摂する最も価値の高い部分である。プライバシー権とは、こうした空間に無断で介入することを拒否し、みずからの情報を提供することの可否を決定する権利(自己決定権)を包摂するものである。(その意味で、筆者は公道からの撮影は私的領域を侵していないとするブログ(atwiki)の分析例を批判する。)
 一方、「個人情報保護とは、管理されている情報の管理、利用、処分に関する基本的ルール(ガイドライン)であり、個人情報保護法とは、情報管理者規制・規律法である。」

(4)個人情報保護法の「取扱事業者」の該当問題
 実際にGoogleマップでストリート・ビューを見ればすぐに気がつくと思われるが、検索したい家や建物の住所さえ分かり入力するだけで、写真は正確にリンクでき、当該家の写真(家の全体像や特に玄関周り)が瞬時に閲覧可となる(まさに、そこがGoogleの同サービスの「売り」である)。
 すなわち、同法2条(個人情報の定義)1項「この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。」および同条2項「この法律において「個人情報データベース等」とは、個人情報を含む情報の集合物であって、次に掲げるものをいう。
一 特定の個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」
の適用問題は後述(4.(2))する東京都情報公開・個人情報保護審議会でも指摘されているとおり、Googleが取扱事業者に該当することは間違いなかろう。

(5)都道府県迷惑条例
 東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(平成16年条例第179号・平成17年4月1日施行)5条1項において、「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。」と定め、卑わい行為の一形態として規制されている盗撮行為について違法性の高い「言動」にあたるとして罰則を強化(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)している。
 筆者がGoogleの撮影で見た限りベランダや庭に干してある下着の撮影例はないようであるが、仮にあればあきらかに同条例違反に該当することとなろう。

(6)肖像権
 「肖像権」とは、一般的に自己の肖像(写真、絵画、彫刻)をみだりに撮影されたり、使用公表されたりしないプライバシーを守る人格的権利である。
 筆者も実際にストリート・ビューを見て気がついた点の1つであるが、家並みの写真のなかに歩いている個人が結構写っている点である。個人を特定できる程度の鮮明度があるいか否かは別として肖像権に違反する危険性はあろう。

4.わが国の国や地方自治体の取組み事例
(1)国の対応
 経済産業省がGoogleに対し数回にわたる改善要求を行っている旨のメデ居ア報道(産経新聞)もあるが、筆者自身その根拠が確認できないため無視する。
 次に首相官邸サイト「犯罪対策閣僚会議」が2008年12月22日にまとめた「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008 ―『世界一安全な国、日本」の復活を目指して』―」8頁以下を見ておく。

第1 身近な犯罪に強い社会の構築
2 犯罪に強いまちづくりの推進
「③ 道路周辺の映像を表示するサービスに係る防犯対策等の検討
実在する道路周辺の映像をインターネット上で立体的に表示するサービスについて、防犯上の問題点等を検討し、問題点がある場合は、対策について検討する。」
 これだけである。なんともコメントのしようがない。

(2)東京都「情報公開・個人情報保護審議会」の「ストリート・ビュー問題」の審議内容
 委員の顔ぶれを見れば中央官庁の審議会とあまり変わらなく、そこでの議論内容はわが国のプライバシー問題や人権問題および消費者保護等に関する専門的議論と解しえよう。(ただし、筆者もそうであるが、一部委員はこの問題が議題となって初めて同サービスについて改めて勉強したことや、わが国の関係する法律から見た違法性については具体的な議論はまったく行われていない点は問題である。法律専門家が中心の会議の割には常識論に終始しており、スイスやカナダの保護委員会による企業告訴など司法活動等に比べインパクトが極めて弱い(欧米の大企業は完全に無視するであろう)。わが国の審議会方式の限界が見える。)
 2008年11月と2009年2月の2回にわたり審議している。また、第39回会合ではグーグル株式会社執行役員広報部長の舟橋義人氏とポリシーカウンセルの藤田一夫氏を招いての審議が行われている。
[第38回会合]:平成2008年11月25日(火)開催。第39回会合での第38回審議に関する事務局報告等に基づき、筆者の責任で審議内容を要約する。

①基本的な問題
・サービス提供の目的として、利便性や娯楽性が挙げられているが、日本のような住宅事情や生活環境では公道から撮影されたものであったとしても、プライバシー侵害を引き起こしやすい。
・本人が知らないうちに、そのような映像がインターネットに公開されることの必要性が、サービス提供の目的と比較衡量した場合に、不十分である。(公開の社会的な公益性が明確ではない。)
・個人情報保護法との関係が整理されても、肖像権の侵害などプライバシー侵害については、民事の損害賠償の問題として個々に判断されることになる。
・グーグル社は、「私道からの撮影は行わない」「削除の申し出があれば画像削除する」などの対応は行っている。
・「規制か企業の自由か」と対立的に捉えるのではなく、社会的な合意形成が望まれる。そのためには、利便性とプライバシー保護との比較衡量に立った、企業の自主的なプライバシーヘの配慮が求められる。

②プライバシー配慮の具体策
 「撮影の事前通知・公表を行ってはどうか」「インターネット公開の時点での事前通知・公表を行ってはどうか」「撮影カメラ位置の高さ(2.5メートル)を再検討してはどうか」「商業地、観光地と住居専用地域の線引きはできないか」などの意見が出された。

③海外の動向
「諸外国の状況」については、「諸外国でも活発に議論されているが、フランスやカナダだけでなく、ドイツのある州は違法宣言をした結果Googleが撤退した例やオプトインを条件に認めるべきとする意見等各国とも意見が二分している。(筆者注29)

④「個人情報保護法の問題」
「個人情報保護法についても結論は出ておらず、直ちに保護法違反といえる状況にはない」との意見や「個人の顔や表札等が明瞭に判別できる画像については、意図的に取得され、かつ恒常的にインターネットで公開されており、本人や知人には識別できるので、個人情報保護法(第2条第1項)で定義する個人情報に該当するとみてよいのではないかという意見が出された。
 「自宅や生活状況の画像について」は、公道からストリートの映像を撮影しているだけで、個々の家の名称を示しているわけではないので個人情報に該当するかどうかの判断は非常に難しいが、その映像のなかに個々の家が含まれており、それがデータベース化されて、住所録や苗字の入った地図と照合すると容易に特定の個人の自宅や生活状況が検索できるので、個人情報保護法で定義する個人情報に該当するとみてよいのではないかという意見が出された。

⑤「地域安全の問題」
 後述する町田市議会の意見書にもあるとおり「犯罪等に悪用されるのではないかという懸念がある」との意見が出された。

(3)2008年8月の地方自治法99条に基づく町田市議会決議「地域安全に関する意見書」
 意見書の一部を抜粋する。市民の問題意識が反映されていると感じた。
「画像撮影に際し、被写体となる地域や個人への事前告知も撮影告知も公開許可願いもなくインターネット上に公開された。画像には、民家やその家庭の私物、車、敷地内の様子、通行人や自宅内にいる人の姿等が写し込み、自動でぼかすとされた人の顔が判別出来るものや、車のナンバー、表札の文字が読み取れるものが少なくない。空き巣や振り込め詐欺等の犯罪に悪用される危険性、児童生徒の通学路や教育施設等に防犯上の不安を生むとする声もある。
問題のある画像については利用者から申し出れば削除に応じているが、そもそもインターネットを利用しない人に対し、自宅等が世界に公開されている現状が十分に行き渡っていないという現状もある。」

5.筆者の総括(conclusion)
 これからはGoogleの撮影活動そのものが市民のビューの被写体になる?。
 筆者自身改めてGoogleの行動に関する情報を集めてみた。その1例を紹介する。英国でストリート・ビューの特殊撮影車が警察官から不審車として尋問されている写真である。
 欧米では市民や人権擁護団体であるウォッチャーの目は厳しいし社会的影響力も大きい。従来から身についた人権意識や正義感かも知れないが、要注意である。独立的権限を持つ公的機関や行政監督機関である“Watchdog”だけでなく、英国のように組織化されていない市民の監視や実力行使により、Googleの撮影活動自体がつぶされる日が日本でも来るかも知れない。
 また、わが国ではあまり論じられていないが、スイス保護委員の訴状が指摘しているとおり、「他人にそこにいること自体を知られたくない」もしくは「他人が知ることで更なる危険が起こりうる」場所(sensibler Umgebung)があるはずである。例えば女性の保護家、刑務所、老人ホーム(ケアサービス機関を含む)、学校、社会福祉事務所(ハローワーク等)、裁判所、病院、弁護士事務所など機微性の高い場所での匿名性を保証していかなければならないものである。
 このように限定される範囲は数え上げればかなり多いはずであり、Googleが解決すべき課題は多い。


(筆者注1)スイス連邦情報保護および情報自由化委員を根拠法(連邦情報保護法)に則して訳すと「情報保護および情報自由化に関する連邦議会公選委員」である。サイトでその任務が説明されており、任務の柱は(1)情報・プライバシー保護、(2)連邦行政の透明性に対する国民の情報公開支援である。その意味では、ドイツで同様の公選委員会形式の機関である“Der Bundesbeauftragte für den Datenschutz und die Informationsfreiheit”(直訳すると「情報保護および情報の自由化に関する連邦議会公選委員」と共通するし、(2)の任務は海外の先進国の趨勢である。しかし、スイスの保護委員の情報保護の対象は官民の活動を問わないのに反し、(筆者注20)で説明するとおり、ドイツ連邦保護委員はあくまで連邦行政機関・準機関の行為に対する保護(州の委員は民間企業の直接監視機能もある)機関である点を理解しておく必要がある。

(筆者注2)スイスの連邦や州(canton)の裁判制度を理解していないと、連邦保護委員がなぜ行政裁判所に裁判を提起したか、その手続上の意味が分からないと考え、筆者なりに調べてみた。
連邦最高裁判所(Bundesgericht )のサイトが唯一簡単に解説している。しかし、海外の法律専門家向け説明としては内容的に不満であるが、内外を含め他に使えるものがない(おそらく先進国の司法サイトの中で最も説明が不足している(その最大の理由は、後述するとおり裁判官に法律家以外もなるという古典的司法制度である)。EU加盟国であれば他国との整合性をもった比較が出来ようが、このような点は金融・ビジネスでは一流国でも政治面ではスイスの大きな課題であろう)。従って、ここで「連邦」レベルの司法制度に関する部分のみ一部仮訳し簡単に整理しておく。

B Auf Bundesebene(連邦レベル)の裁判所の役割・機能

1.Das Bundesgericht (連邦最高裁判所):
連邦最高裁判所の主導的役割は、最終審として州および連邦で提起された法的問題を決定、判断することにある。取扱う事件は民法、刑法、行政法および憲法に関するものである。最高裁判所は判決を通じ最終的な連邦としての決定を下すことで、連邦最高裁判所としての連邦法の統一的適用を保証し、その強化を図る。

2.Das Bundesverwaltungsgericht(連邦行政裁判所)
以前はスイス連邦控訴委員会および連邦省庁に対する告訴サービス部門であったが、新たに再度「連邦行政裁判所」として統合された。
連邦行政裁判所の判決は、連邦最高判所判決の一部として引用される。

3.Das Bundesstrafgericht(連邦刑事裁判所)
ベリンツォーナ(スイス南部)にある連邦刑事裁判所は、刑事事件の第一審として連邦裁判所の管轄事件(テロ、爆弾犯罪、禁止された諜報犯罪、反逆反罪、マネーローンダリング、組織犯罪、ホワイトカラー犯罪)の裁判管轄権を持つ。その判決は連邦最高裁判所判決として引用される。連邦刑事裁判所の第一公訴部はさらに連邦検事の職務遂行や不作為、強制措置および裁判管轄に関する争いについての起訴責任を持つ。

 また、司法警察の捜査全般の監督や連邦レベルの犯罪の捜査活動において優先的捜査権をリードする。強制的な措置に関しては連邦最高裁判所に上訴することができる。

 第二公訴部は、特定の国際的な犯罪行為に対する公訴の可否を決定する。この決定に対しては連邦最高裁判所への限定的な上訴手続が存する。

4.Militärgerichte(軍事裁判所)
軍事裁判所は、基本的に軍人が犯した犯罪行為に関する裁判所で軍事刑法が適用される。

C Richter, Zusammensetzung der Gerichte, Anwälte(裁判官、裁判所の構成、弁護士 )
Allgemeines(総論)
 スイスでは、必ずしもすべての裁判官が博士や修士という資格を持つ高度な司法教育を受けてはいないため諸人権についての理解は完全でない:すなわち治安判事職にある人が司法の専門的な教育を受けていないため健全な人権について理解できない。しかし、彼らも仲裁当事者としては適している。兼務者として任務を遂行する裁判官もいる。法教育者や弁護士は、彼らの時間の一部を裁判官活動にさいている。女性は従来以上に多く裁判所から数多く指名されている。一定の裁判(例えばレイプ事件)では共同した作業が必要となる。このような事件では裁判所による釈放は全員が参加する裁判官会議で行われる。

1.Zusammensetzung(裁判所の構成)
A Zivilgerichte(民事裁判の場合)
 通常裁判は1人の裁判官または素人の陪審裁判官2人で行う。通常時の裁判は地域的に限定されて(町や郡)おり公衆が利用しやすい施設内にある。第一審裁判官または地区裁判官は、1人または3人の陪審裁判官が判決を行う。

B.Strafgerichte(刑事裁判の場合)
―警察裁判所:第一審では通常、裁判長が弁護士とともに1人で判決する。
―第一審の刑事裁判所:中程度に重い犯罪行為(それ自身最高刑に算定される)の場合は最低3人からなる刑事裁判所裁判官と1人の必須とされる担当弁護士で構成される。また公判は、裁判長となる1人の法学者と陪審リストから選らばれる数人からなる陪審で構成される。

―刑事裁判所、巡回裁判所:刑事裁判所は第一審刑事裁判所の判決に対する控訴にもとづく重大犯罪を裁く裁判所で7人の裁判官(うち3人は法律家)で構成する。巡回裁判所は1人の法律家(裁判長)、一定数の市民および市民陪審で構成する。

C. Verwaltungsgerichte(行政裁判の場合)
 行政裁判所は通常3部構成で裁判を行う。裁判長は法律家と素人からなる陪席裁判官であるが、しばしば関係分野の実務専門家:例えば税問題の場合は公認会計士、受託者、公証人等も任務に当たる。

D.Bundesgericht und erstinstanzliche eidgenössische Gerichte(連邦最高裁判所の場合)
 連邦最高裁判所は3人または5人の裁判官からなり全員が法律家である。イスラム法に関する裁判など特別な裁判では行政裁判所で多くの判決を経験した1人の裁判官が担当することもある。連邦最高裁判所においては緊急性から公的な法的手段が明らかにゆるされないとき以外は1人の裁判官での裁判開始決定は禁止される。
(以下、省略する)

(筆者注3)EUのプライバシー保護に関する代表的な域内共通NPO“Watchdog”は“EDRi”である。同組織そのものについての詳細は、同団体のホーム・ページで「European Digital Rightsは2002年6月に設立、 現在、27のプライバシーや市民権団体がEDRIの会員資格があり、EUの17の異なる国に拠点または事務所を置いている。 “EDRi”会員は、情報社会で市民権を守るために力を合わせる。 EUでの活発な組織の協力の必要性と目的は、EUや国際的な規制・監督機関に対し、EU域内におけるインターネット、著作権、およびプライバシーに関するより多くの影響力のある規制強化に向けた規則等を作り出すことである。」と説明している。
 なお、同団体の週刊広報ニュース“EDRi-gram”の最新号(11月18日付)の項目10でスイスの保護委員による提訴の情報を報じている。同ニュースはは「」一覧性があり、効率的に人権問題に関する情報検索が出来る。

(筆者注4) 決着が長引いていたスイス(UBS)と米国の間の金融取引における個人情報保護をめぐる秘密保持義務と課税回避幇助問題の和解合意については、2009年8月13日に海外メデイアが報じたとおりである。なお、当時のロイター通信等の記事では和解文書や政府間の合意文書の内容については明らかでないとしていた。
 UBSや米国連邦財務省連邦税課税庁(IRS)等の資料に基づき、本件につき筆者が調べた範囲で解説する。
【UBSの2つのリリースの概要】
 2009年11月17日にUBSは次のリリースを発表している。極めて実務的に詳細にまとめられており、また顧客に対する説明としても分かりやすい(さすが世界的金融機関である)。和解文書の署名日は2009年8月19日であり、基本的な合意内容はリリースされているが、政府間の問題でもあり、公表までの水面下の調整や準備作業があったといえる。以下、両リリースの内容を統合してその要旨をまとめておく。
・今回の合意に伴うUBSの支払はない。
・UBSは2009年8月19日、「“John Doe” summons(米国の司法制度において裁判所は被告個人名を特定することなく召喚(summon)することが出来る。例えばIRS は,VISA,MasterCard 及びAmerican Express からのオフショアのクレジットやデビットカード口座を利用している米国市民や居住者についての情報を要求し,世界の77カ国からクレジットおよびデビットカードの口座情報を受け取っているとされる。(長崎大学経済学部助教授栗原克文氏「各国間での税制の相違と国際的租税回避問題」381頁から引用、一部補筆)」に関し、2008年7月21日に米国IRSおよび連邦司法省がフロリダ南部連邦地裁に起こした民事訴訟の却下につき和解文書に署名した。

・同和解により、2009年8月31日、米国IRSはスイス連邦財務省国税局(Eidgenössische Steuerverwaltung :ESTV/ Swiss Federal Tax Administratiom:SFTA)に対し既存の米国・スイス間の二重課税防止条約(US-Switzerland Double Taxation
Treaty:DTT/Doppelbesteuerungsabkommens zwischen den USA und der schweis)に基づきスイス国内でUBSが管理する直接またはオフショア会社を経由した米国民の約4,450口座につき行政支援要求が承認された。
 本要求を受領次第、ESTVはUBSに対し、DTTに定める「課税回避詐欺行為等(tax fraud or the like)」の基準に基づき米国・スイス政府間で合意した特別な基準に合致する口座に関する情報提供提出命令を発する(連邦裁判所のレビューを受ける)。
ESTVが述べているとおり、これらの口座は既存のDTTが定める「課税回避詐欺行為等」の要件を100%満たすか否かにつき調査が行われる。スイス・米国政府間の合意内容に基づく特別な基準は11月17日にESTVが発布した別添のとおりである。
・UBSは、現在該当する顧客に対し米国IRSがDTTに基づき行う要求の範囲内で顧客への通知を行っており、今回の和解合意に定める期限(2009年9月1日から270日)以内に要求された口座情報をESTVに提出する。
(“John Doe” Settlementおよび2国間の条約手続について詳細内容
  また、米国政府は、2009年12月31日までに本条約によりカバーされない全口座に関する疑念を持った“John Doe” summonsを撤回する。

・米国税法における自発的開示手続(Voluntary disclosure)
 IRSは永年米国の納税者に対し米国連邦税法の完全な遵守のため自発的情報開示の慣行を働きかけてきた。この慣行は現在も残されており税還付やUBSにあるオフショア口座保持の結果その他の義務を負う米国の納税者は、2009年10月15日に期限がきれる2009年3月23日に通知された任意開示要求に関するIRSの特別な罰則回避措置(special penalty initiative)にもかかわらず可能である。(なお、“special penalty initiative”とはいかなるものを指すのか。自信はないが次のような内容ではないか。「タックス・シェルターの開示イニシアティブ」( Tax Shelter Disclosure Initiative )やセトルメント・オファー( ‘Settlement Offer’ )と称されるものである。これらは、一種のアムネスティ・プログラム( Amnesty Program )であり、納税者が濫用的なタックス・シェルターへの関与の事実等を自主的に開示すれば、附帯税の部分的な免除やタックス・シェルターに係る費用(プロモーターに対する手数料等)の控除・税務上の損金処理を認めるというものである。(税務大学校研究部教授松田直樹氏 「租税回避行為への対抗策に関する一考察」68頁以下から引用)。IRSが永年実施してきた“voluntary disclosure practice”
への参画は一般的に納税者への刑事訴追を排除することになる。

 顧客は口座情報をIRSに提供するよう支持することが出来る。すなわち“John Doe” summonsに関し、顧客はUBSに対し自身に代り口座情報をIRSに提供する合意や指示を行うことが出来る。

(筆者注5)スイス連邦財務省国税局(Eidgenössische Steuerverwaltung :ESTV/ Swiss Federal Tax Administratiom:SFTA)サイトでは、米国外に口座を持つ米国人納税者における2国の当局間の情報共有について解説がある。

(筆者注6)市民の感覚では納得で出来ない不安感を一例であるが「あるブログ」が代弁している。Google は削除依頼を受け付けてはいるが、実際わが国の消費者自身が海外のような委員会等公的機関の後押しなしに差止め請求等を実行できるであろうか。この問題についても機会を改めて述べたい。

(筆者注7)“EDÖB” のストリート・ビューに関する問題意識はかなり高い。専用サイトを設けている。
 なお余談であるが、スイスの大衆メデイアである“swissinfo.ch”の本件に関する日本語版記事を読んだ。
 記事の内容はおおむね事実であるが、「連邦情報保護・透明性維持担当課 ( EDÖB(筆者注:連邦情報保護委員会のドイツ語略称)/PFPDT(筆者注:フランス語の略称))) 」のハンスペーター・トュール氏は8月21日に発表されたコミュニケで述べた。」と言う説明はおかしい(「連邦情報保護委員」が正しい)。また、「こうしたストリートビュー実施以前に、「スイス情報保護委員協会 ( Privatim ) 」のチューリヒの責任者ブルノー・ベーリスヴィル氏は、「本人の承認を得る以前の個人情報漏れ」がストリートビューの問題だと主張していた」とある。“Privatim”はスイスの州(kanton)の保護委員協議会(die schweizerischen Datenschutzbeauftragten)の新名称である。同協議会は保護法に基づくもので“Dr. iur. Bruno Baeriswyl”氏は同協議会のチューリヒ州代表委員である。
 念のため筆者自身フランス語の記事の原文も読んだが、保護委員会については正式名称である“le préposé fédéral à la protection des données et à la transparence”が使われている。“le préposé” は仏和辞典で見ると「担当者、職員、係員」であるが、“Google Translate”で訳すと、同委員会の英文表示である“The Federal Data Protection and Information Commissioner”となり正しい意味が理解できる。
 欧州委員会(European Commission)のように当初の小規模時の機関名がそのまま残っているが、実際は2万5千人を擁するEU全体の強力な行政機関もあるのである。言語は生きている、仏和辞典の限界か。
 同記事の最後に(仏語からの翻訳、里信邦子)とあるが、特に法律関係の場合、単に記事の日本語への置き換えだけでなく、その内容に関する事項については関係サイトに当たるなど努力と工夫が必要であろう。

(筆者注8)訴状固有のURLはない。起訴状原本を閲覧するときは連邦保護委員のプレス・リリースの最後にある“Klageschrift”をクリックして欲しい。

(筆者注9) わが国では参考にできるものがないので、スイス連邦情報保護法の関係条文を仮訳しておく(EUの公式サイトの英文訳もデータが古い)。
①スイス連邦情報保護法第29条 (Art. 29 Abklärungen und Empfehlungen im Privatrechtsbereich) 第3項(Art. 29 Abs. 3)
「委員は、自らの調査に基づき個人データ処理の変更または停止処理について勧告することができる。」
②第29条第4項(Art. 29 Abs. 4)
「3項の委員勧告が不遵守または拒否されたときは、委員は連邦行政裁判所の案件として判決を求めることが出来る。また、委員は同判決に対し控訴する権利がある。」

(筆者注10)スイス連邦行政裁判所法第35条b号(Art.35 b VGG)(仮訳)
「連邦行政裁判所は次の問題につき第一審として判決を行う。
A号 略
b号 連邦情報保護法(1992年6月19日)第29条第4項に定める情報保護にかかる民間部門の監督機関の勧告に係る紛争」

(筆者注11) スイス連邦情報保護法第33条(仮訳)
「委員が委託された事案において、第27条第2項または第29条第1項の規定に従い状況を調査した結果、個人について更なる補償されるべき重大な損害を被る脅威が存すると判断されるとき、連邦行政裁判所の情報保護につき権限をもつ部門長に緊急措置を申請することができる。
その手続は、「連邦民事訴訟法に関する連邦法(1947年12月4日)」第79条から第84条を準用する。」

(筆者注12)撮影用カメラつき撮影専用車は自動車とは限らない。パリや米国の場合、三輪自転車(tricycle) も使われている。

(筆者注13) EUの「保護指令29条専門調査委員会」、1995年EU保護指令(95/46/EC)に基づき設置された機関で情報保護とプライバシーに関する独立諮問機関である。業務内容は同 指令第30条および「個人情報の処理と電子通信部門におけるプライバシーの保護に関する欧州議会及び理事会(2002年7月12日)指令(2002/58/EC)」15条に規定する。

(筆者注14) 「カナダ・プライバシー委員事務局」の任務とその根拠となる2つの連邦プライバシー保護法(“Privacy Act”と“PIPEDA”)等について簡単に説明しておく。公式の体系的法解説もある。
(1)「委員」のジェファニー・ストダータ(Jennifer Stoddart)氏を代表とする事務局はカナダ連邦議会(上院・下院)の直属機関であり、副委員はシャルタン・ベルニエ氏とエリザベス・デナム氏の2人である。
 委員は“Privacy Act”上の監督責任があり、副委員は“PIPEDA”上の監督責任があるという2法に基づく分業体制がとられている。具体的な責任業務内容は次のとおりである。
①プライバシーに関する苦情の調査、監査の指揮および2つの連邦保護法に基づく裁判活動
②官民の機関・団体における個人情報の取扱いの慣行等の報告・公表
③プライバシー問題に関する調査の支援、受託や出版
④プライバシー問題に関する国民の認識や理解についての推進

 なお、余談であるがカナダ政府が実施している電子政府の一環としての官報のデジタル・アーカイブは有益である。 「カナダ国立図書館・文書館(LAC)が、官報“Canada Gazette”のバックナンバー(1841~1997年)をデジタル化しています。1998年以後のものは、すでに政府のウェブサイトで公開されていますが、LACはそれ以前のものを対象にしています。2009年にデジタル化完了見込みとのことですが、デジタル化済みのものはすでに検索できるようになっています。
なおこのCanada Gazetteを検索できるウェブサイトは、Canada Gazetteに関する電子展示の一部として、2008年5月に構築されています。」(国立国会図書館カレントアウェアネス・ポータル2008年6月10日より一部抜粋)
 この官報の電子化はいろいろな意味でカナダの法令検索の効率化に貢献している。
 
(2)カナダ「1985年プライバシー法(Privacy Act:Act (R.S., 1985, c. P-21)」
 同法は約250の連邦政府部局の個人情報の収集・使用・公開を制限して国民のプライバシー権を保護するものであり、国民はこれら機関に対し個人情報への自身のアクセスや修正権を定める。なお、連邦議会図書館のサイトが同法の内容をわかりやすく解説している。
カナダ「2000年個人情報保護および電子文書法(Personal Information Protection and Electronic Documents Act:PIPEDA) (2000, c. 5) )」
 同法は民間機関や団体の商業活動における個人情報の収集・使用・公開に関する基本ルールを定めたものである。プライバシー法と同様、国民はこれら機関に対する個人情報への自身のアクセス権や修正権が定められている。なお、PIPEDAは制定当初は政府の監督下にある銀行、航空会社、電気通信など民間企業の商業活動における個人情報の収集、使用および公開に適用されていたが、現在は、小売業、出版社、製造メーカー、その他地方で事業展開する規制される企業(ただし、その従業員の個人情報には非適用)にも適用される。
特に、同法は州の保護法の実質的内容が連邦“Act”と同様であるとして、連邦政府が適用除外としていないすべての商業活動を行う機関、団体等に適用される(現在、該当する州は、ブリティッシュコロンビア、アルバータ、ケベックの3州のみである)。
 一方、カナダでは米国と同様、連邦や州法で分野別保護立法(Sector-Specific Legislation Dealing with Privacy)が存在する。例えば、連邦銀行法(Bank Act)は連邦規制監督機関が保有する個人の取引情報の使用や公開に関する規制条項を含む。また、ほとんどの州では消費者信用報告での個人情報の取扱いに関する法規を持つとともに医師等機微情報を扱う専門家の収集する情報の扱いに関する規定を有している。

(3) プライバシー委員事務局の外部諮問委員会(External Advisory Committee) 機能とメンバー構成について紹介する。
 無数の公共政策の展望に関するプライバシーや情報保護におけるバランスの取れた考え方を提案し、委員の活動に反映させることである。委員は電話、電子メールや私的会合等を通じ特定の疑問に答えるとともに制度全体のイニシアティブに関する問題については頻繁なる会合を重ねる。委員の顔ぶれを見るとオタワ大学情報工学部助教授、カナダ製造輸入会社のCEO(元連邦内閣閣僚)、ビクトリア大学政治科学部教授、ケベック大学州立行政学院(École nationale d'administration publique)授、コラグループ(Cora Group)(官民の戦略開発企業グループ) 代表、プライバシー問題や情報政策の専門家・コンサルタント(元ブリティシュコロンビア州の情報保護委員)等計16人である。

(筆者注15)わが国の民間企業ではなじみがないであろう“policy counsel”とはいかなる任務を行い資格等が必要か。たまたま、GoogleワシントンD,C地区担当の“privacy policy counsel”の公募要綱を見つけた。土地柄、連邦議会担当(ロビー活動)という特殊性があるのかもしれないが。
The role: Privacy Policy Counsel
As a Privacy Policy Counsel, you will handle U.S. federal government relations and public policy issues related to privacy and consumer protection issues in a dynamic and growing business environment. In this role, you will advocate Google's public policy positions in a way that reflects the goals and values of the company. Areas of focus include a deep understanding of privacy law and emerging privacy policy issues especially as they relate to the online world. This role also requires significant experience with congressional committees and federal agencies engaged in privacy policy making. In addition, as Privacy Policy Counsel, you will help advise product and engineering teams on the public policy implications of products and will work as part of a closely coordinated and cross-functional global team.

(筆者注16)カナダ連邦議会下院「情報公開法改正、プライバシーおよび内閣等の政治倫理に関する常任委員会 (Standing Committee on Access to Information ,Privacy and Ethics(ETHI)」の正確な役割・権能について理解するため、補足しておく。
 まず、連邦議会との関係では2004年12月14日に恒久委員会として承認された。具体的な法案研究機能報告の項目は次のとおりであるが、連邦保護委員との協同作業関係が明らかである。
①1980年情報公開法改正問題
②2008年財政年度情報公開委員年次報告
③2008年財政年度プライバシー委員年次報告
④プライバシー法改正問題
⑤カメラ監視(Google、Canpages等)に関するプライバシー問題とのかかわり
⑥2008年度個人情報保護および電子文書法の適用に関するプライバシー委員報告
⑦大臣や国務大臣ガイドにおける政治倫理基準のレビュー、他

 なお、筆者は同員会の模様を確認したところ連邦議会上院・下院の本会議や委員会の審議内容が好きな時間に自宅等で居ながらにして音声等で確認できる専用サイト“ParlVU”を見つけた。そこでは” ParlVU just keeps getting better! At a glance, you can now view and scroll to specific times within an event” と説明されている。主権者である国民が議会の活動が簡易にかつ正確に出来るものである。わが国でも国会審議の放映は一部行われているが「検索性」はまだまだである。時間のあるときにじっくり研究するつもりである。

(筆者注17)カナダ“canpages”はGoogleやYahooと同様の総合検索サイトである。そのHPを見ると「業種」「人物」「逆引き」「交通手段・地図」が利用できる。特定の企業を地図情報で確認してみたが、最大に拡大してもGooglのように写真はない。

(筆者注18) カナダ「利益衝突倫理コミッショナー(the Conflict of Interest and Ethics Commissioner)」の機能については、齋藤憲司「政治倫理をめぐる各国の動向―アメリカ、英国及びカナダの改革―」(国立国会図書館「レファレンス2008年9月号35頁以下) が詳しく解説している。

(筆者注19) “authority”を個人情報保護委員会と訳した理由は、そのメンバー構成を見て考えたものである。大学教授、最高裁判事と弁護士からなり代替委員も含め法執行専業機関とは思えないことによる。

(筆者注20)ドイツ連邦情報保護・情報自由化委員(BfDI)や州(land) 情報保護・情報自由委員の法的根拠も含む任務や権限についてわが国ではまとまった解説が少ないのでここで簡単に説明しておく(詳細な内容は最新の保護法や1BfDIサイトで確認して欲しいが、BfDIのサイトの情報の正確さの順位は当然ながら独語、仏語、英語等である)。
ところで、ドイツ連邦情報保護法では“Bundesbeauftragten”という用語が出てくる。その意味するところは情報保護に関する「連邦政府・議会の全権委任(選挙)を得た連邦機関・準連邦機関に対する独立監査委員」ということである。海外で一般的に第三者機関として官民を問わず保護機能を持つとされる「コミッショナー」との相違の有無があるのか具体的権限や法的地位等を調べてみたが、特にドイツが特殊とは思えない。また、ドイツ保護委員事務局の保護法の公式英文訳も“Bundesbeauftragten”を「コミッショナー」としている。
一方、わが国で従来から使われているドイツのみ「データ保護監察官」と言う訳語がどこから来ているのか良く分からない(第22条第4項で連邦政府との関係では公法上の官吏と定められていることや連邦政府の監督下におかれることがその理由か否かは不明である)。
 しかし、連邦議会の定数の過半数による投票で信認されるということつまり国民代表の委任に基づく法的地位と独立性をもつ点が重要である。「コミッショナー(保護委員)」と呼ぶにつき、例えば2007年9月25~28日にカナダで開催された「第29回国際プライバシーおよび情報保護監督者会議」のメンバーリストの表示を見て欲しい。(わが国は従来から不参加)
Germany: Federal Data Protection Commissioner (Bundesbeauftragten für
den Datenschutz) International Conference of Privacy and Data Protection Authorities ACCREDITED AUTHORITIES(公認監督機関)(As of the 29th Conference held in Montreal, Canada—September 25-28, 2007)
 また、連邦の準監督機関として州の保護委員も参加(バイエルン州の例:Bavaria: Privacy Commissioner (Bayerische Landesbeauftragte für den Datenschutz)と表示されている。第30回の同会議参加者は60カ国、570名である。なお、過去の会議の一覧はオーストラリアのサイトで確認できる。
 ところで第30回会議はドイツのストラスブルグで開催されており、その会議の模様はビデオなどでも詳細に確認できる。( “opening speeches”を行っているのが連邦情報保護委員のPeter Schaar氏である。
(ちなみに2009年11月4~6日に第31回会議がスペインのマドリッドで開催されている。)

(筆者注21)フランクフルト州の情報保護委員ヨハネス・カスパー氏の例で、ドイツの保護委員のキャリア特性を見てみる(ハンブルグ保護委員およびハンブルグ大学サイトから引用した。一般的といえるか否かは自信がない)。また同氏が決して憲法や保護法の専門家でない点が面白いし研究材料であろう。
1962年 誕生(現在47歳)
1989年 第一次司法試験合格
1992年 ゲッティゲン大学法学系で博士号取得
1994年 第二次司法試験合格
1995年~1999年 ハンブルグ大学研究部で教育担当
1996年以降 ハンブルグ大学法学部講師
1999年~2000年 航空法(Luftverkehrsrecht)専門弁護士(ハンブルグ、ベルリン) 
2000年~2002年 フランクフルトのドイツ国際教育学研究所(Internationale
Pädagogische Forschung in Frankfurt a.M.)で教育法にかかる資金運用と運用部勤務
2002年~2009年 シュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州議会の学術公務部長代行
2004年 生涯公務員資格(das Beamtenverhältnis auf Lebenszeit)の任命にもとづき行政
部長に指名
2007年以降 ハンブルグ大学法学部非常勤教授(Honorarprofessor)
2009年5月以降 ハンブルグ州情報保護・情報自由化委員

(筆者注22)ドイツにおける州の保護委員は、州や自治体の機関に対する監視だけでなく、州の住民からの苦情・調査要求等に基づき民間企業に対する直接的な監視・監督ならびに改善要請が出来る。(2007年度(財)NEC C&C財団調査研究事業「オーストリア・ドイツ・エストニアにおける電子行政サービスの動向」(2007年11月)14頁参照)

(筆者注23)オーストラリアの“Trade Practice Act 1974”の訳語を調べてみた。同法は公正競争と消費者保護法として極めて重要な法律であるが、わが国での訳語は「取引業務法」(jetro)「公正取引法」(jetro)「取引慣行法」(公正取引委員会、消費者庁、オーストラリア競争委員会 )等区々である。わが国の消費者庁や公正取引委員会等ともかかわる問題であり、筆者なりに法律の内容を調べてみた。
 同法は,競争法規と消費者保護法規の2つの主要部分からなっており、競争・消費者委員会(Australian Competition and Consumer Commission:ACCC)(1995年11月に取引慣行委員会(Trade Practices Commission,1974年創設)と価格監視委員会(Prices Surveillance Authority,1983年創設)の2つの組織が統合されて設立された組織で,連邦法たる取引慣行法および州・準州法たる競争コードの執行面に責任を負う唯一の独立の競争当局)の法執行業務の根拠法である。
 そうであるとなら表面的な名称からみると意訳になるが、あえて訳語は「競争取引および消費者保護法」と言ったほうがACCCとの関係も含め正確に理解されると思うがいかがか。(同法を具体的に見ると、競争規制規定が中心であり、消費者保護に関する部分は一部(第5章、6章)であり、内容的に見てわが国の現行法と比較すると「製造物責任法」や「特定商取引に関する法律」等の内容が近い。)

(筆者注24)オーストラリアのACCCの12月5日付ニュースで最近面白いテーマが取り上げられていた。
 ACCCは、オーストラリア・アイスホッケー連盟は選手が同連盟が承認しない試合でプレーするのを阻止するというポリシー通知(同ポリシーはレフリーやコーチ陣を含むすべての選手と連盟職員に適用される。)を破棄するよう働きかける勧告通知(案)を発布したというものである。その理由は、①連盟の通知行為はライバルのホッケーリーグが効率よく競争を行う能力を減じさせ、また選手の参入障壁をつくり、アイスホッケー競争機構・管理サービス規定に関し新たな拡大解釈をもたらすこと、②同行為は個人的なリーグ経営者のリンク賃貸や競争能力を制限させるというものである。

(筆者注25) 地図情報と自治会の地図の関係について気になっていたのであるが、筆者自身散歩がてら近隣住宅地の自治会の地図の状況をWatchしてみた。すると最近手当てしたと思われる自治会会員名のみ(番地表示は残してある)とした自治会地図看板を見つけた。上からペンキで塗ってあることから急遽手当てしたものと思われる。ちなみに、わが自治会の地図はそのまま表示されている。前記のような例を集め自治会長に相談せねばと思い帰宅した。

(筆者注26) 「考えられる法的根拠」にあげられている項目のみ参考とした。

(筆者注27)筆者は「光学的記録の違法性」以上にストリート・ビューの場合、被写体である本人がまったく撮影の事実を知りうる機会やその「オプト・アウト」権が完全に保証されないまま、世界中に閲覧可能とする営業行為の違法性こそが「場所的・空間的私的領域」を前提とするプライバシー権上問題視すべきであると考える。

(筆者注28)Googleはサイト上で本人による「削除」の具体的方法を説明している。筆者はその説明に則して11月25日午後4時3分に削除要請を行った。即受付済メールが届き、翌26日午前9時過ぎには自宅の周りのビューは不可(画面自体黒く変わり「この画面は都合により公開を停止しています」と表示)と相成った。
 この手続自体は決して難しいものではなく、Googleが対外的に説明しているとおりである。ただし、要請者から出された削除理由についてどこまで厳格に運用しているかは不明である。筆者の身元を十分承知しているがゆえの措置かもしれない。気になる読者はまず確認のうえ是非ためされてはいかがか。

(筆者注29)筆者が問題視したいのは、立法政策・戦略論議をすべき審議会での説明で唯一海外の状況を説明すべき研究者の説明があまりにも情報不足(または意図的に焦点をぼかしているのか不明であるが)なことである(いずれの研究者も筆者は面識があるだけに残念である)。今回のブログと議事録を比較していただければその点は明らかであろう。筆者は欧米の議会証言(testimony)を読む機会が多いが、そこでの責任は極めて重く、その反面、議員やメディアへの影響も明らかである。


〔参照URL〕
・スイス連邦情報保護委員のサイトのリリース文である。なお、起訴状原本(Klageschrift:ドイツ語のみ)についてはリリースからのみリンクできる。(独語/英語)
http://www.edoeb.admin.ch/aktuell/index.html?lang=de
http://www.edoeb.admin.ch/aktuell/index.html?lang=en
・スイス連邦情報保護委員のサイトの2009年3月以降のstreet view問題の経緯説明(英語)
http://www.edoeb.admin.ch/themen/00794/01124/01595/index.html?lang=en
・スイス連邦情報保護法第29条(独語のみ)
http://www.admin.ch/ch/d/sr/235_1/a29.html
・スイス連邦行政裁判所法35条(独語のみ)
http://www.admin.ch/ch/d/sr/173_32/a35.html
・EU指令第29条専門調査委員会の専用サイト(英語)
http://ec.europa.eu/justice_home/fsj/privacy/news/index_en.htm
・カナダのプライバシー委員によるgoogleに対する原画写真情報の保存期間など再改善意見書(英語)
http://www.priv.gc.ca/media/nr-c/2009/let_090821_e.cfm
・ギリシャ個人情報保護委員会のstreet viewの許可条件書に関するニュースサイト(ここからリリース内容にリンク可)(英語)
http://www.dpa.gr/portal/page?_pageid=33,43547&_dad=portal&_schema=PORTAL
・ドイツ・ハンブルグ州保護法委員サイトのGoogleとの「原画像データ」削除の合意報道(独語のみ)
http://www.hamburg.de/datenschutz/aktuelles/1546460/pressemeldung-2009-06-17.html
・フランスCNILのstreet viewと情報・プライバシー保護法に関する説明サイト(仏語のみ)
http://www.google.fr/intl/fr/press/streetview/privacy.html
・英国“Privacy International”の情報委員(ICO)に対する意見書
http://www.privacyinternational.org/article.shtml?cmd%5B347%5D=x-347-564039
・2008年11月25日(火)第38回東京都情報公開・個人情報保護審議会議事録
(ただし配布資料そのものは見れない。)
http://www.metro.tokyo.jp/POLICY/JOHO/JOKO/SHINGI/e7j1k400.htm

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